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【Startup Culture Lab. 2024年度 #5レポート】YOUTRUST 、ゆめみ、ビズリーチが登壇。ティール型か、トップダウン型か?各社のユニークな組織論とケーススタディーとは

【Startup Culture Lab. 2024年度 #5レポート】YOUTRUST 、ゆめみ、ビズリーチが登壇。ティール型か、トップダウン型か?各社のユニークな組織論とケーススタディーとは

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イノベーションを起こし急成長するスタートアップならではの、人材・組織開発に関する学びと知見を広くシェアする研究プロジェクト「Startup Culture Lab.」。2023年は12のテーマを設定し、毎月一回スタートアップの組織開発の経験者・有識者をゲストに招いてトークセッションを無料開催してきた。

2024年度も56社の研究対象スタートアップが決定し、全12回に渡るセッションとワークショップを通じ、急成長するスタートアップの組織支援を進めていく。2024年度の第5回目となるテーマは、「組織の成長を促す人員配置とキャリアデザイン」。急成長企業における適切な人員配置とキャリア設計の重要性を議論し、効果的な人員配置戦略、キャリアパスの明確化などを探っていくという内容だ。

YOUTRUST 、ゆめみ、ビズリーチの人事責任者や研究者が語った事例やノウハウをレポートするので、ぜひ参考にしてほしい。

【登壇者】

・石原 沙代子 氏 / 株式会社YOUTRUST ヒューマンリソース部マネージャー

・太田 昂志 氏 / 株式会社ゆめみ 取締役CHRO

・友部 博教 氏 / 株式会社ビズリーチ ビズリーチ WorkTech研究所 所長

・原田 未来 氏 / 株式会社ローンディール 代表取締役(※モデレーター)

注目スタートアップのユニークな組織論

セッションの冒頭では、登壇者の自己紹介と併せて、それぞれの組織の特徴について語られた。最初に自己紹介したのはYOUTRUSTの石原氏だ。同氏は新卒で700名規模のメガベンチャーに入社後、2万人規模の医療法人、2社の創業期スタートアップを経て、現在のポジションに就いている。多様な組織を経験してきたからこその経験と、組織づくりのノウハウを共有したいと語った。

「YOUTRUSTは、個人と企業をフラットに繋げるプラットフォームを運営している会社です。キャリアアップのためには社内の異動だけでなく、社外との繋がりや他社での経験も有効なため、プラットフォームを通じて活躍できる機会を創出しています」

▲石原 沙代子 氏 / 株式会社YOUTRUST ヒューマンリソース部マネージャー

続いて自己紹介したのは、ゆめみの太田氏。2000年に創業した同社は400名規模の老舗ベンチャーで、企業のアプリケーション企画/開発/運用、UI/UXデザイン、内製化支援を行っている。様々な企業のニーズに伴走するため、社内には多様なスペシャリストを抱えており、約20もの職種を抱えるユニークな組織形態だと語った。

「多様な職種のメンバーが在籍しており、それぞれキャリアの積み方も違うため、自律的にキャリアを築いていけるような組織づくりを心がけています。また、社内にはユニークな制度がいくつかあって『全員CEO制度』や『給与自己決定制度』『有給取り放題制度』などがあります。

こうした取り組みが評価され、『開発者体験が良いイメージのある企業ランキング2024』で、4位にランクインしました(※)。本日は、そのような組織づくりをしていく中での経験をシェアできればと思っています」

※ゆめみニュースリリース:エンジニアが選ぶ「開発者体験が良いイメージのある企業ランキング2024」4位に

▲太田 昂志 氏 / 株式会社ゆめみ 取締役CHRO

次に自己紹介をしたのは、ビズリーチの友部氏だ。もともとアカデミックの世界で研究者をしていた同氏は、その後企業でデータサイエンスの領域で活動してきたという。名だたる企業で経験を積んだ後に、現在はビズリーチ WorkTech研究所の所長としてタレントマネジメントの研究をしていると語った。

▲友部 博教 氏 / 株式会社ビズリーチ ビズリーチ WorkTech研究所 所長

「HRというと採用の文脈で語られることが多いのですが、私たちが行っているのは『いかに働きやすい環境を作るか』の研究です。大量のデータを基に研究している中で、今回のセッションのテーマと大きく関わってくるのが『ELTV(EmployeeLifeTimeValue)』という考え方。

縦軸にパフォーマンス、横軸に時間を置いたもので、従業員の方がその会社に在籍した期間で生み出した価値を表します。その面積が大きいほど、企業に貢献したことを表すもので、従業員の面積を最大化するのが人事の仕事といえるでしょう。人材配置というのは、まさにELTVを最大化するための仕事ともいえるので、有効なトピックを紹介していきたいと思います」

最後に自己紹介を行ったのは、本セッションのモデレーターでありローンディールの代表を努める原田氏。10人ほどのスタートアップからキャリアをスタートさせ、大企業勤務も経験したのちにローンディールを創業している。

ローンディールの事業内容も原田氏自身の経験を活かして、大企業とスタートアップの「越境」がテーマだ。大企業の社員がスタートアップでの経験を経て成長し、また大企業に帰って活躍できる"企業間レンタル移籍プラットフォーム"を展開している。

「ローンディールでは、大企業の社員をイノベーション人材に成長させるのはもちろん、スタートアップの各フェーズにおける採用課題を解決するサービスを提供しています。たとえばスタートアップの創業初期は、正社員を抱えるリスクが大きい。スポットで大企業の優秀な人材をレンタルできる私たちのサービスが大変喜ばれています。

また、もう少し組織が成長すると、採用する人材の要件も変わってきて"組織で成果を出せる"という条件が加わってきます。そうなると、大企業が採用競合になるなど、採用のハードルが上がるケースも珍しくありません。その点、レンタル移籍という形で人材をまかなえる私たちのサービスに大きな価値を感じてもらっています」

▲原田 未来 氏 / 株式会社ローンディール 代表取締役

現場主体の人材配置を行うゆめみのティール組織

セッションの1つ目のテーマとして取り上げられたのは「人材配置」。まずは、ゆめみ・太田氏から、同社の人材配置について語られた。過去には階層型の組織設計により、戦略に合わせた人材配置をして失敗した経験もあるという。

想定通りに人や組織が動かないことも多く、戦略が間違っていれば組織が崩壊するリスクもある。そのような時期を乗り越え、7年ほど前から取り入れているのが「ティール組織」だ。経営層が明確に人材配置を行うのではなく、メンバーそれぞれが自由に異動できるような仕組みをとっている。同社の人材配置の特徴について、太田氏は次のように話した。

「ゆめみの大きな特徴は、主にスキルベースでの人材配置です。私たちの事業はプロジェクトによって求められるスキルセットが異なるため、必要なスキルを持つ人材を集める仕組みを構築しています。

組織形態も一般的な事業部や部署ではなく、職能別に分かれた「ギルド」という組織が複数存在し、それぞれが自主経営を行っています。こうしたギルドから各領域のプロフェッショナルがプロジェクトごとに集まって仕事に当たるスタイルです。

ただし、難しいのはエンジニアたちがやりたい仕事と、求められている仕事にミスマッチが生まれている場合。たとえばニーズはあるけど、エンジニアに人気のない言語もあるため、そのような場合はインセンティブを設計しながら仕事をしてもらうこともあります。こうした設計をするのが人事の仕事だと考えています」

ゆめみの組織戦略を聞いて、驚きを隠せないのがビズリーチの友部氏だ。同氏は、以下のように語った。

「一般的には経営戦略から人材配置を決めていくものなので、ゆめみさんの話を聞いてびっくりしました。一方で、ビジネスモデルによって向き不向きがあるのではないでしょうか。大規模な開発組織や営業組織には向かない可能性が高い一方で、少人数のプロジェクト単位で動くコンサルティング会社などにはマッチすると思います。

流行っているという理由で組織論を鵜呑みにするのではなく、自分たちのビジネスモデルや目指すべき組織に合わせて試行錯誤していくことが重要だということですね」

企業の成長過程で欠かせないトップダウン型組織

ゆめみが現場主体の組織づくりをする一方で、ボトムアップによる組織運営での失敗を語ったのがYOUTRUSTの石原氏だ。過去に所属していたスタートアップで定石通り、事業計画や経営計画から組織計画を練っていたと語るその新卒社員は、組織を30人くらいに成長させた時のエピソードを語ってくれた。

「当時は月に一度はメンバーにヒアリングして、中長期のキャリアビジョンを聞きながら人材配置などに取り入れていました。しかし、あまりにメンバーに寄り添いすぎていたのが問題なのか、ある時から事業の成長が止まってしまったのです。

一概にボトムアップがいけないとはいいませんが、事業フェーズによっては、トップダウンで組織が方向性を決める必要があるのだと学びました。トップダウンに切り替えたことで、当時は『意見を聞いてくれないのか』という声もありましたが、そのお陰で事業の成長に繋がったので必要な痛みだったと思いますね」

石原氏の話を受け、モデレーターの原田氏は「組織構造のトランジションについて見解があればお聞かせください」と、友部氏に話を振った。これに対して、「組織が大きくなるにつれてトップダウンが必要」と友部氏は語る。組織が小さいうちは経営との距離が近いため、ボトムアップ型の組織でも機能するという。しかし、企業によっても異なるが、30~300人の組織になってくると必然的にトップダウンにならざるを得ないという。

「組織が大きくなると現場と経営の距離が離れてしまうため、どうしても中間管理職のマネージャーが必要になり階層型の組織にならざるを得ません。その点、400名を超えて、メンバーが自由に動ける組織を作ったゆめみさんは本当にすごいです。

お話を聞いていると、それを可能にしているのは経営の透明性だと思います。会社の重要な情報が現場に届く仕組みになっているからこそ、メンバーが勝手に動いているように見えても、結果的に同じ方向を向けるのだと思います」

その評価を聞いて、ゆめみの太田氏は大きく頷く。意識的に経営の透明性を担保するため、様々な取り組みを行っているという。

「取締役会の様子もYouTubeを使って社内にライブ放送していますし、社内の年収情報もオープンにしています。経営に関する情報も、あえて鍵をかけずにアクセスできることが重要ですね。

そのように透明な経営を行っているのは経緯がありまして、実は過去にCTOが逮捕される事件があったからです。まわりからの信頼を失い、社内も不信が漂っている中で、信頼を勝ち取るには情報をオープンにするしかありませんでした。ピンチを脱するための手段としての透明性にこだわってきたのが、今では大きな武器となっています」

枠にとらわれない組織設計をするゆめみに対して、会場からは「ぶら下がり社員を生まないために、どんなアプローチをしているのか」という質問がなされた。働く人にとっては夢のような環境に、甘えてしまう社員がいてもおかしくないと思うのは当然のことだろう。太田氏は次のように回答した。

「私たちの組織は市場原理に基づいているので、原則的にぶら下がれないですし、透明性があるからこそ、パフォーマンスが悪い人は居心地が悪くなるはずです。誰がどんなコミュニケーションをしているのか、だいたい分かってしまうので、活躍していない人も浮き彫りになってしまいます。

また、ホワイトカード制度というものを取り入れていまして、会社の方針が変わるなどでマッチしない場合は、その方の活躍可能性を見据えた対話をする機会を設けています」

メンバーのキャリアデザインに会社はどう関わるべきなのか

続いてセッションのテーマは「キャリアデザイン」に移る。ビズリーチの友部氏は、タレントマネジメントの観点から、変わりつつあるキャリアへの価値観について次のように語った。

「コロナの前後で、キャリアに対する考え方は大きく変わってきました。かつては会社がある程度キャリアパスを用意して、メンバーに提示するのが一般的だったように感じます。しかし、アフターコロナではキャリアに対する価値観が多様化してきたことにより、メンバーそれぞれに考えさせる風潮が強まっている印象です。

最近では、本人とマネージャーにキャリアの方向性を委ねるような会社も見られるので、キャリアコンサルタントの重要性が高まっているのではないでしょうか」

マネージャーに相談してキャリアパスを考える社会人は多いと思うが、マネージャーという役職を置かないゆめみはどうしているのだろうか。太田氏はゆめみのキャリアデザインについて、次のように説明した。

「ゆめみでは、キャリアについて2つの考え方があると考えています。一つは用意されたガイドラインに沿ってキャリアを描いていくやり方。『職位ガイドライン』という形で公開しており、どういうスキルを積み重ねると、どんな役割を担えるのか言語化してまとめています。

もう一つは意図しない経験による成長です。これまでのキャリアを振り返ると、自分で進んで選んだ仕事ではなかったものの、その経験を通じて大きく成長したと感じることがあると思います。そのようなことを意図的に促すために、しっかりとヒアリングをしながら『健全な無茶ぶり』をするようにしています」

健全な無茶ぶりというワードに、YOUTRUSTの石原氏は肯定的な反応を示した。スタートアップでは無茶ぶりが必要な時も少なくない。その一例として、若手社員の抜擢人事を例に語った。

「新卒入社の社員が毎月目標を達成してくれたので、部署転換をしました。単なる無茶ぶりにならないよう、本人には会社がどういう期待をしているのか伝えるのはもちろん、周囲にもその背景や目的をしっかり伝えることが重要です。

その社員は自発的に、私を含め様々な部署の方に1on1を申し出て、フィードバックをもらい成長し続けていました」

1on1というワードが出たのをきっかけに、他の会社でどのような1on1をしているのか話題が移った。最近になって、1on1を再開したというのがゆめみだ。太田氏は次のように話す。

「私たちは、みんなが当たり前にやっていることを疑うことを大事にしていて、1on1が流行りだした時、ゆめみはあえて1on1を組織的に行いませんでした。7年近くやらずにきたのですが、その間にコミュニケーションで困ったことはあまりありません。

ただし、1点だけ課題に感じているのがリーダーが育たないこと。それは職位としてのリーダーではなく、まわりを引っ張っていけるようなリーダー人材が育っていなかったのです。現在は急いでリーダー育成に力を入れています」

セッションの最後には、モデレーターの原田氏から「本日登壇したみなさんから、それぞれセッションを通して印象に残った話をシェアしましょう」という呼びかけがあった。それに対し、「これまでの常識が覆された」とセッションをまとめたのはビズリーチの友部氏だ。

「私はこれまでクライアントに対して、経営戦略や人事戦略を作って、それに基づいて人員を配置しましょうと伝えてきました。それが今日のゆめみさんの話を聞いて『今までやってきたことだけでは足りなかった』と気づかされました。

一方で、ゆめみさんのような組織戦略を再現性を持って広げられるなら、様々な会社の人事課題を解決できる期待も持てました。これからゆめみさんを研究しながら、より働き方について探求していきたいと思います」

続いて「人事は流行に従う」という言葉を残したのはゆめみの太田氏だ。

「私たちは特徴的な組織を作ろうと思って様々な施策をしているわけではなく、『組織は戦略に従う』の通り、戦略に則って組織形態を作ってきました。そして、その言葉の続きとして私が考えているのが『人事は流行に従う』です。

多くの人事の方が、人的資本経営やスキル可視化など、本来は自分たちの組織に必要のないものまで流行に乗って取り入れているケースがよくみられます。流行に流されず、原理原則に従って、自分たちが理想とする組織に何が必要なのか考えて取捨選択してもらえると嬉しいです」

YOUTRUSTの石原氏は「フェーズによって戦略を変えるべし」という言葉で、セッションをまとめた。

「人材配置やキャリアデザインの目的は、あくまで組織成果を上げるためです。そのため会社のフェーズによっては組織に向き合いすぎずに、トップダウンで経営する方が得策な場合もあります。

組織に向き合いすぎてパフォーマンスが下がってしまっては本末転倒なので、自分たちの会社のフェーズを見極めて、本当に重要な戦略を描いていってほしいと思います」

最後にモデレーターの原田氏は、「本日のセッションでも話題に上がったように、非連続な成長機会を提供するために『健全な無茶振り』をすることがあります。実際、これによって社員が急成長するケースも見てきました。そういう瞬間を組織の成功体験にすると良いのではないか」と話し、セッションを締めくくった。

取材後記

いかに人材を配置し、メンバーが成長できる環境を整えるか、多くの会社が頭を抱えていることだろう。今回、登壇した3名はそれぞれ違ったアプローチで組織を活性化し、事業の成長に貢献してきた。全ての企業に共通する正解はないが、自分たちが理想とする組織を明確にした上で、組織を活性化するための参考になれば幸いだ。

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(編集:眞田幸剛、文:鈴木光平)

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