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【Startup Culture Lab. #11レポート】「フラットでオープンな組織風土」は本当に必要か?経営者たちが語った成長できる企業カルチャーのつくり方

【Startup Culture Lab. #11レポート】「フラットでオープンな組織風土」は本当に必要か?経営者たちが語った成長できる企業カルチャーのつくり方

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スタートアップエコシステム協会は、スタートアップの成長に必要なイノベーションを推進する人材・組織開発にフォーカスした、学びと知見を広くシェアする研究プロジェクト「Startup Culture Lab.」を立ち上げ、これまで10回のイベントを実施している。

本記事では11回目として開催された「フラットでオープンな組織風土のつくり方」をテーマとしたトークセッションのレポートをお届けする。

スタートアップ経営者だけでなく、スタートアップで働く人やこれから起業を考える人、組織開発に係る人材、VCやアクセラレーターにとっても有用なノウハウが詰まったトークが繰り広げられ、示唆の深い内容となった。

【登壇者】

・岩崎 由夏 氏 / 株式会社YOUTRUST 代表取締役CEO

・小澤 隆生 氏 / BoostCapital株式会社 代表取締役

・唐澤 俊輔 氏 / Startup Culture Lab.所長

・土屋 尚史 氏 / 株式会社グッドパッチ 代表取締役社長 兼 CEO

※関連記事:【Startup Culture Lab. #10レポート】スタートアップに多様性は本当に必要?グローバル企業のキーパーソンが戦える人材&組織を作るためにとったアクションとは

3人の経営者が語る「理想の組織」像

まずは登壇者それぞれが考える「理想の組織像」というテーマから始まった本セッション。これまでヤフーなどの大組織でマネジメントをしてきた小澤氏から発せられたのは「組織はできるだけ小さい方がいい」という答えだ。

「僕が思う理想の組織は、全員が同じ志をもって、それぞれが自分で意思決定できる状態です。当然ながら、組織が大きくなればなるほど、それが難しくなります。具体的な規模を挙げるとすれば30人ほどが限度だと思います」

しかしながら、大きな事業を作るには30人では無理がある。過去には月に数千人もの人材を採用してきた小澤氏だが、その際は志ではなく給与を含めた条件で採用するしかないと語った。自分の理想はおいておき、事業を成功させるために必要な人材を採用し、最もパフォーマンスが出る組織設計をしてきたという。

そのような大組織をマネジメントするのに、重要となるのが人事制度と評価制度だ。どうしたら給料が上がるのか示し、昇格と降格をしていくという。だが、それは決して面白い仕事ではなかったとも語る。

▲小澤 隆生 氏 / BoostCapital株式会社 代表取締役

続いて理想の組織について「健全な宗教」と話してくれたのは、現在60人規模の会社(YOUTRUST)を経営する岩崎氏。最近、事業フェーズの文化の変わり目としてバリューを刷新したという。最初に作ったバリューは、組織がまだ5~10人の時で、内容には自信があったものの口頭での説明が欠かせなかった。

メンバーが増えたことで、その意味が伝わりづらくなったため、誰が読んでも意味が伝わるような文言に刷新したという。新しく作ったバリューを「プロミス」(YOUPROMISE:私たちの約束)と表現し、満たせなければ一緒に船に乗ることはできないというメッセージを込めている。その背景にあったのは前職のDeNAでの経験だった。

「DeNAには『DeNAクオリティ』というものがあり、それが達成できているか毎回チェックさせられていました。達成できないからと言って罰則があるわけではないのですが、最低限の行動指針を示されたことで、求められる姿勢が理解しやすかったんです。今回、YOUTRUSTで刷新したバリューもDeNAと同じように組織に浸透していきたいと思っています」

▲写真左、岩崎 由夏 氏 / 株式会社YOUTRUST 代表取締役CEO。モニターに投影されているのが、YOUTRUST が刷新したバリュー(YOUPROMISE)だ。

続いて、グッドパッチの土屋氏は、「人材成長カンパニー」を掲げており、入社したら成長し続けられる環境を提供できる組織こそが理想だという。クライアントワークが事業の柱となる同社は、様々な会社の多様な事業フェーズに関わり、短期間で成果を求められるからこそ、常に成長できる環境があるようだ。

しかし、土屋氏がこのような意見を持てるようになるまでには、悲惨な過去も経験してきた。一人で会社を立ち上げ、5年で100人の組織にまで成長させた土屋氏。しかし、急成長フェーズで組織とカルチャーが崩壊し、年間離職率40%が2年に渡って続いた。

「当時、壁に貼っていたバリューのポスターがビリビリに破かれて、広報担当の机に置かれているという事件も起きました。そんな経験を乗り越えて組織を立て直し、上場して今に至るわけですが、私の組織論は創業時からはさほど変わっていません。ただ、コミュニケーションの仕方を変えたり、マネージャーをしかるべきタイミングで入れて共通認識を図ったりすることで、問題が起きないよう組織デザインしていきました」

▲土屋 尚史 氏 / 株式会社グッドパッチ 代表取締役社長兼CEO

「オープンでフラットな組織」は本当に必要不可欠なのか

次にテーマとして挙がったのが「オープンでフラットな組織」の是非だ。スタートアップにはオープンでフラットな組織が求められるというが、それは本当だろうか。

オープンな組織構造を心がけたことで、問題が起きたこともあると答えたのが土屋氏。組織が拡大する中で、オープンな場で経営の批判をするメンバーが現れたという。

最初は「ちゃんと問題提起ができる組織」とポジティブに捉えていた。しかし、あまりにも続いたことで「批判をするなら代案を出してくれ」と周知したところ「オープンな文化なのに、問題提起もできないんですか」と言われ、二の句が継げなくなった。

役員に相談しても「問題提起ができるならいいんじゃないか」と言われ、「経営陣が一枚岩になっていない」とさらなる経営批判が続く。

問題の根本を追求したところ、原因は組織構造であると気づいた土屋氏。

当時はマネージャーがおらず、経営陣とメンバーだけという2層構造。社長から見るとオープンにしているつもりでも、メンバーは忙しい社長に相談ができず不満が蓄積していたのだ。

「オープンでフラットな組織というのは文化の話であって、組織の構造と混同してはいけないことを学びました。文化的にフラットであることは重要ですが、構造をフラットにしてしまうと組織が崩壊してしまうこともあると痛感しました」

オープンでフラットな組織について「何のために」を考えるのが重要だと答えたのは小澤氏だ。小澤氏は、50名くらいまでの規模であれば社長が意思決定をして強い推進力を生み出した方が、事業の成功率は高まるという。

「採用や働きがいという観点ではオープンでフラットな組織は重要ですが、どこまで譲るのかよく考えなければなりません。特に小さな組織はトップが原動力になって組織を引っ張っていく必要があり、そのためにはどうしても構造が必要になるはずです」

リアルタイムで強力なリーダーシップを発揮しているのが岩崎氏だ。「全会一致で決めたものがよいものになるとは思えない」と、自らの現在の経営スタンスを明確に打ち出した。面白いものをつくるには誰かの狂気が必要で、メンバーに意見を求めることはあっても、重要な意思決定は絶対に譲らないという。

「特にミッションなどの重要事項はアイデアはみんなで出しつつも最後は経営で決定し、メンバーはそれを守ってほしいというカルチャーを作ってきました。もし不満があるならば、他の会社に移った方がいいかもしれません。

また、『フラット』や『オープン』、『心理的安全性』という言葉を私は使わないようにしていて、それは他者に期待するものではなく自分で作るものだと思っているからです。もちろん、情報に関しては議事録などを誰もが見られるようにしているので、経営としてはもちろん意識をしていますが」

理想の組織を作るカギは『採用』と『仕組みづくり』にあり

最後のテーマとして挙がったのは「理想の組織を作るためには」。岩崎氏が特に重視しているのは採用だという。サイバーエージェントが採用方針として掲げていた「素直でいいやつ」という考えに共感しているものの、創業当時は真逆のアプローチをしていたようだ。

「創業当初は性格を気にせず賢い人ばかりを採用することで失敗もしました。そこから学んだのは『賢い人』だけではなく『気持ちよく走れる人』を採用すること。それからアウトプットも出て、数字もついてくるようになり、諸々うまく回るようになりました」

続いて採用に関する持論を展開したのは小澤氏だ。基本的に社員は頑張りたいと思って働いているため、経営陣がすべきことは頑張る方向性を提示することだという。特に組織が大きくなるほど志は分散されていき、経営陣がメンバー全員の目を見ながらコミュニケーションするのは難しくなる。

だからこそ仕組みを作って、組織をデザインしていくことが重要だ。そして一番やってはいけないことが「何をやってもいい」とメンバーに任せてしまうこと。

「スポーツだってルールがあるから競技が成立するのであって、ルールがなければ何をしていいか分かりません。経営陣はルールを作って、その中で成果を出した人に何かしらのインセンティブを用意することが重要です。

ただし、マネジメントの採用は難しいので、私は会社ごと買うこともよくあります。会社ごと買えば、社長にマネジメントも任せられるからです」

続いて土屋氏が語ったのは、組織の新陳代謝について。誰もが辞めないよりも、適切な離職率を保つことが重要だという。かつてのような高い離職率ではなく、現在は10%台の離職率を保っているという土屋氏。

「メンバーが辞めていくのは心苦しいですが、その分、新たに優秀なメンバーも入ってきて徐々に組織が変化してきています」と語った。続いて、次のように話した。

「現在5,000人規模の大きな組織にも執行役員として関わっているのですが、そこは新卒入社の社員が99%で外部を経験してきた人がほとんどいない組織です。その分、カルチャーに一貫性があって素晴らしいのですが、一方で次のフェーズに移行しづらくもなっています。特にスタートアップはスピーディーにフェーズが変わっていくため、中途入社が当たり前です。多様な人材が定着する仕組みを作り、変化に合わせて適切な新陳代謝を保つことが重要だと思います」

最後に、会場に集まったオーディエンスに向けて、登壇者からのメッセージがあった。「人事業務は大変なことが9割、楽しいことが1割」と話し始めたのは、人事として働いていた経験を持つ岩崎氏だ。

「人事の仕事はしんどいことの方が圧倒的に多いですが、それでも私は素晴らしい仕事だと思っています。偉大な会社を作るために、直接組織に貢献できる珍しい職種だと思うので、人事の方はぜひがんばってください。」

土屋氏はメッセージの代わりに、小澤氏に対して「大企業はどのようにビジョン・ミッション・バリューを作るべきか」と質問を投げかけた。

「作るとしたら一言です。大組織でミッションが3つもあれば、人によって解釈の仕方もズレが生じますし、内容が曖昧であれば尚更です。ヤフーでも経営陣にはいくつかミッションがありましたが、全社で掲げていたメッセージは『爆速』のみ。それくらいシンプルでインパクトのあるものにした方がいいと思います」

小澤氏は組織デザインを決める人事の仕事は、ビジネスモデルを作るのと同じくらい重要だと語る。

「経営の2大柱はビジネスモデルと組織デザインです。ビジネスモデルは社長が作りますが、組織デザインを作るのは人事です。組織デザインというのはスポーツのルールのようなもので、スポーツが面白くなるかどうかはルールにかかってますよね。どういう仕組みにすればいい組織にできるか、人事の方はぜひ考え続けてください。」

取材後記

多くの企業が「オープンでフラットな組織」づくりに注力しているが、スタートアップの現場を見ていると、その弊害が目立つシーンも少なくないようだ。働く側からすれば働きやすい環境に移るかもしれないが、必ずしもそれが事業の成長とは繋がらないことが、今回のセッションからも見てとれた。目的のない「フラットな組織」は、ときに組織を崩壊させかねない。まずは、理想の組織像を描き、それを実現するためにどんな文化が必要なのか洗い出すことが不可欠だろう。

(編集:眞田幸剛、文:鈴木光平)

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