1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 【Startup Culture Lab. 2024年度 #3レポート】マネーフォワード、READYFOR、Notionが登壇!インナーコミュニケーション成功の法則とは?
【Startup Culture Lab. 2024年度 #3レポート】マネーフォワード、READYFOR、Notionが登壇!インナーコミュニケーション成功の法則とは?

【Startup Culture Lab. 2024年度 #3レポート】マネーフォワード、READYFOR、Notionが登壇!インナーコミュニケーション成功の法則とは?

  • 13026
  • 12950
2人がチェック!

イノベーションを起こし急成長するスタートアップならではの、人材・組織開発に関する学びと知見を広くシェアする研究プロジェクト「Startup Culture Lab.」。2023年は12のテーマを設定し、毎月一回スタートアップの組織開発の経験者・有識者をゲストに招いてトークセッションを無料開催してきた。

2024年度も56社の研究対象スタートアップが決定し、全12回に渡るセッションとワークショップを通じ、急成長するスタートアップの組織支援を進めていく。2024年度の第3回目となるテーマは、「経営陣の考えを共有するインナーコミュニケーション」だ。経営陣の考えを共有し、メンバー全員が同じ方向を向くための社内コミュニケーションのあり方について、セッションが行われた。

急成長するスタートアップでは、激しい環境変化に対して現場で柔軟に判断ができるよう、経営陣と現場メンバーの考えを常に同期しておかなければならない。今回は様々な経歴を持つスタートアップ経営層の方々が登壇。インナーコミュニケーションにおけるポイントや具体的なアクションについて語った内容をレポートしていく。

【登壇者】

・金井 恵子 氏 / 株式会社マネーフォワード グループ執行役員 VP of Culture

・草原 敦夫 氏 / READYFOR株式会社 執行役員CHRO / CLO

・西 勝清 氏 / Notion Labs Japan合同会社 ゼネラルマネジャー アジア太平洋地域担当

・林 史子 氏 / デジタル庁 CPRO(※モデレーター)

マネーフォワード、READYFOR、Notionーー注目のスタートアップ3社が登壇

セッションは、マネーフォワードの金井氏の自己紹介から始まった。

「私は2014年に、マネーフォワードの一人目のデザイナーとして入社し、会社のミッションやカルチャーの策定、社内浸透にもコミットしてきました。組織が小さかったころから様々なことを経験してきたので、本日はそれをシェアできればと思います」

▲金井 恵子 氏 / 株式会社マネーフォワード グループ執行役員 VP of Culture

続いて自己紹介したのはREADYFORの草原氏だ。

「READYFORは創業10年になる会社で、クラウドファンディングを祖業とするスタートアップです。現在は寄付や補助金の領域で、フィランソロピーアドバイザリー事業、遺贈寄付事業なども立ち上げて、複数の事業を展開しています。

私は6年前、シリーズAの資金調達をする直前にジョインし、当時は50人ほどの組織規模でした。ここ数年は人事も担当しながら、インナーコミュニケーションについても取り組んできたので、本日はそのお話をさせてもらいます」

▲草原 敦夫 氏 / READYFOR株式会社 執行役員CHRO / CLO

次に、グローバルに事業を展開するNotion Labs Japanの西氏の自己紹介が続く。

「弊社はアメリカに本社があるスケールアップ期の会社で、現在は約600名ほどの組織です。私はインターナショナル一人目の社員として約4年前にジョインしました。現在は日本のみならずアジア太平洋地域全体を担当しています。

インナーコミュニケーションについては、グローバルや本社、各地域それぞれで課題があり、その解決のために取り組んでいるため、これまでの経験をシェアしていきたいと思います」

▲西 勝清 氏 / Notion Labs Japan合同会社 ゼネラルマネジャー アジア太平洋地域担当

最後に自己紹介を行ったのはモデレーターの林氏だ。

「私はデジタル庁に所属しておりまして、CPROつまり広報の責任者をしております。キャリアとしてはライブドアを経て、LINE、リクルートとスタートアップから大手企業まで経験してきました。本日は行政から見たインナーコミュニケーションについてもお話できればと思っています」

▲林 史子 氏 / デジタル庁 CPRO

インナーコミュニケーションで、事業や組織の苦しい時期を乗り越えたREADYFOR

登壇者の自己紹介が終わり、セッションは「インナーコミュニケーションが必要だと痛感したタイミング」というテーマに移る。READYFOR・草原氏は次のように話す。

「インナーコミュニケーションの重要性を痛感したのは、組織が急拡大する中で事業の伸び悩みに直面した時です。資金調達後、採用を加速させて組織規模が拡大していた中で、リモートワークへの移行等も重なり、経営から社内に向けたメッセージや情報がうまく届いていないことを課題として感じるようになりました。

その立て直しのためにインナーコミュニケーションを強化することにしたのです。ミッション、経営方針、業績、組織のことなど、どのようなメッセージや情報を伝えるかを整理し、社内向けにも言語化しながら、社内の理解や信頼を高めるために様々な取り組みをしてきました」

その取り組みの一環として「全社会議の内容を変更した」と語る草原氏。それ以前はボトムアップで、各部署から全社への共有事項を吸い上げるのがメインで、経営陣からの発信にはリソースを割けていなかった。しかし、それではただの共有会になっていたと草原氏は続ける。

「経営陣でしっかりとメッセージを整理して、会社がどこに向かっているのか伝えるようにしました。ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)や経営方針の戦略についても、経営トップの口から直接伝えるよう意識したのです。

また、業績についても部長クラスまではしっかり伝えていたものの、それをメンバーに伝えるかどうかは部長次第でした。そこで、3ヶ月に一度はCFOから全社に向けて業績について伝えるようにしたのです。そのような取り組みをしたことにより、社内からも『業績が分かって安心した』『会社の方向性が分かって安心できた』と好感を持って受け止めてもらいました」

全社会議を、ボトムアップ型の情報共有会から経営メッセージを伝える場にしたことでインナーコミュニケーションの強化に成功したREADYFOR。しかし、経営メッセージを一方的に伝えるだけでは不十分で、それを補う取り組みも実施してきたようだ。

「経営メッセージを自分ごと化してもらうためには、定期的にオフラインで集まってそれぞれのメンバーが主体的に考える機会も重要です。直接『会社としてこういうことをやっていこうと思う』と伝え、それを受けてメンバーが咀嚼し、響き合いが起こることで、会社としてどこに向かうかが浸透し、方向性が揃ってきたように感じます。

また、経営とメンバーのハブになる部長クラスをどう巻き込むかも重要です。それというのも、部長の情報の出し方によって、メンバーへの伝わり方が変わってしまうからです。より正確にメッセージを届けるため、部長クラスに向けて会社のミッションや経営方針への理解度を高める工夫もしてきました」

モデレーターの林氏からは「情報の透明性を高めるために、どんな工夫をしてきたのか」との質問があり、草原氏は次のように回答した。

「もともと、オープンバイデフォルトの発想で、たとえばSlackでは原則DMでのやり取りを控えて、なるべくオープンな場でやり取りがされるように意識してきました。経営における秘匿情報や、人事の情報については例外的に非公開にしていますが、それ以外は情報をオープンにしています。

ただし、情報を公開したからといって、必ずしも伝わっているとは限りません。情報を公開するのと同時に、伝えるべき情報が伝わるような設計が必要だと感じています」

マネーフォワードが乗り越えたMVV作成の失敗談

続いてマネーフォワードの金井氏も、インナーコミュニケーションの重要性を痛感した背景について語り始めた。

「私たちがインナーコミュニケーションの重要性を痛感したのは、社員が50~80人ほどになった時でした。それまではリファラルでの採用がメインでしたが、一般採用が増えたことで価値観が多様化し、何を軸に意思決定をしているのか分からないという声が増えてきたのです。

当時はカルチャーマッチという概念もなく、スキル重視で採用していたこともあり、強い言葉を使うメンバーがいたり、社内に対立構造も生まれたりしていました。そのような状況を見かねて、代表が意思決定の軸を伝え、共通の価値観を浸透させようという話が出たのです」

当時はスタートアップ界隈でMVVという概念が広がり始めたころであり、同社もその重要性を感じたのだと金井氏は話す。MVVを策定したことで、バラバラだった採用基準が統一されたと語る金井氏に対し、林氏からは「どのようにMVVの策定したのか」と質問がとんだ。

「当初は創業メンバーが創業時に作った行動指針をベースにMVVに再設定しようとしました。しかし、それらは表現がハードで実践しづらく『ユーザーの人生に寄り添いたい』という価値観にフィットしなかったため、作り直すことにしたのです。

創業メンバーたちがよく口にする言葉を抽出し、大事にしたい価値観を経営層で検討し、社内とすり合わせながら策定していきました。ただし、会社のフェーズやそのときのメンバーによっても、大事にすべき価値観も変わってくるので、その都度見直しています」

今でこそ、適切にMVVを設定し社内にも浸透できているマネーフォワードだが、その過程では様々な失敗も経験してきたとも語る。

「MVVでよく聞く失敗は、トップダウンでMVVを作ったものの全く浸透しないという話です。しかし私たちは逆で、MVVの作成をボトムアップで任せてもらって失敗しました。本来なら『あるべき姿』を目指してMVVを作る必要がありますが、『今の行動指針』をもとに作ってしまったのです。

作成したMVVを発表するときも、経営陣が自分のメッセージとして語れずメンバーからは不評でした。それを機に、経営陣も自分たちがコミットして作るべきだと感じ、半年に渡ってじっくり話し合いながらMVVを作ったのです」

失敗談を語る金井氏に対し、林氏から「MVVをどのように浸透させたのか」との質問があった。

「今でも完全に社内に浸透しきったとは言えませんが、徐々に浸透してきているように感じます。それでも手応えを感じるまでに3年はかかりましたね。浸透させるための取り組みのひとつは、週次の朝礼で経営陣からカルチャーと絡めたエピソードを『マネジメントメッセージ』として、自分の言葉で語ってもらうこと。朝礼だけでなく、普段からできるだけMVVと絡めて発信してもらうことを、しつこく続けてきました」

Notionがインナーコミュニケーションで解決した2つの課題

続いて話を振られたのはNotionの西氏。グローバル企業であり、アジアという多国籍なメンバーが在籍するエリアをマネジメントする西氏は、どのようにインナーコミュニケーションに取り組んでいるのだろうか。

「私たちのインナーコミュニケーションにはグローバル、リージョナル、オフィスレベルと3つのコミュニケーションが絡み合っています。その中で課題になっていたものが2つあります。そのひとつが『戦略がわからない問題』です。

経営陣がみんなの前で戦略を話し、モチベーションが上がるメンバーがいる一方で、『戦略の解像度が不十分だった』と感じるメンバーが少なからずいたのです。これはグローバルでの問題で、組織が300人を超えたあたりから顕著になりました。

もうひとつの問題が『評価がわからない問題』です。これはオフィスレベルでの問題で、この2つの問題の解決に向けて、この3~4年は取り組んできました」

それぞれの問題について、インナーコミュニケーションを工夫することで解決してきたと西氏は続ける。

「戦略については、わからないポイントをしっかりヒアリングして、戦略に特化したミーティングを開催したことで解像度が高まりました。また、メンバーによって知識や経験が異なるのも、理解度に差が出る原因です。そこでCTOをはじめ経営陣に、Slackチャンネルの中で日々感じていることや読んでいる書籍について共有してもらったのです。

そうすることで、戦略がどのように成り立っているのかが分かります。戦略の背景にあるものや文脈がわかることで、より戦略への理解度が高まってきました。戦略そのものよりも、経営者が普段考えていることを知ることで、結果的に戦略を理解できるようになったのだと思います」

また、全社に向けた説明をするだけでなく、グループに分けて説明するのも効果的だったと西氏は話す。

「『戦略がわからない』や『評価が分からない』と訴える方は、コロナ禍になってから入社した人が多く、受け入れる側が思っている以上に距離を感じているのだと思います。そこで、全社への発信の他にも、コロナ禍以降に入社した人だけを集めて事業に対する理解を深めてもらったり、カジュアルなコミュニケーションをとるようにしました。それが後に信頼関係を構築するのに大きな効果があったと思います」

西氏の話を受けて、林氏からマネーフォワード・金井氏に対して、似たような取り組みをしていないか質問がとんだ。

「当社もSlackにそれぞれ個人チャンネルを持っていて、普段考えていることや誰とどんな話をしたのかシェアするようにしました。特にコロナ禍で満足にコミュニケーションが取れなくなってからは、全社に対して様々なテーマで経営陣同士がカジュアルに語り合う様子を配信してしています」

デジタル庁もまた、似たような取り組みをしていると林氏は紹介した。

「デジタル庁では毎月一回、トップが考えていることや直近の出来事を、Slackで全体に共有しています。また各部署とのランチ会もしており、情報共有をしながらチームに期待していることや、メンバーがどんな課題を感じているのかディスカッションも続けています。西さんが言うように、メンバーは戦略そのものよりも、トップが何を考えているか共有することでメンバーに応援してもらいやすくなると思いますね」

スタートアップが絶対にすべきインナーコミュニケーション施策

セッションの最後には「もしも組織が50人のころに戻ったとしたら、絶対に取り組むインナーコミュニケーション施策とは?」というテーマが振られた。マネーフォワード・金井氏は、カルチャー作りだと語る。

「もっと早くカルチャー作りをしておけばよかったとずっと思っています。合宿してみんな価値観をすりあわせ、共通言語ができてからとても楽になったので、もしも50人の組織に戻るならすぐにでもやります」

Notion・西氏が語ったのは、心理的安全性についてだ。

「メンバー全員が思ったことを思ったように言えるような環境作りをしたいです。成長のあるタイミングでは、些細なことを言う人に対して『なぜそんなことを言ってるの?』という雰囲気がありました。

しかし、ある時から『なぜそうなのか』と言葉の背景や意図を考える風潮が、よりよいメッセージの伝え方のフィードバックと共に社内に広がったことがあって。それから議論が本質的でより深いものになったと思うので、できるだけ早くそのような環境を作ることが大事だと思います」

最後にREADYFOR・草原氏が語ったのは、会社のコアメンバーを育成するためのカルチャーへの意識強化についてだ。

「会社のカルチャーを体現できるコアなメンバーをいかに育てるかが、組織を拡大していく上で大事だと思っています。その点、50人規模の組織でカルチャーへの意識強化に取り組めたら、カルチャーを体現するコアメンバーがつくられ、育っていく土壌ができると思います。

例えば、私たちは現在、毎週経営会議の際に経営メンバーでパーパスを唱和しているのですが、50人くらいの組織なら全員でもできるかもしれません。その中からコアメンバーが育っていくと、組織が大きくなってもカルチャーを守っていきやすくなるので、もし50人の組織に戻るなら、そういうのもアリかなと思いました」

取材後記

リソースが少ないスタートアップにとって、いかにMVVを社内に浸透させ、メンバーのモチベーションを上げるかは命題と言っていいでしょう。そして、MVVの浸透に欠かせないのがインナーコミュニケーションです。

今回のセッションでは、成長スタートアップが経験してきたインナーコミュニケーションの成功事例と失敗事例を語ってもらいました。一社でも多くのスタートアップが、そこから学びを得ることを期待しています。

※関連記事:

【Startup Culture Lab. #10レポート】スタートアップに多様性は本当に必要?グローバル企業のキーパーソンが戦える人材&組織を作るためにとったアクションとは

【Startup Culture Lab. #11レポート】「フラットでオープンな組織風土」は本当に必要か?経営者たちが語った成長できる企業カルチャーのつくり方

【Startup Culture Lab. 2024年度 #1レポート】スタメン・NearMe・RECEPTIONISTの代表が登壇! MVVの策定がスタートアップの経営に与えるインパクトとは?

【Startup Culture Lab. 2024年度 #2レポート】リンモチ×ログラス×SmartHRーー急成長企業における目標設定の実践ノウハウを紐解く

(編集:眞田幸剛、文:鈴木光平)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件

  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました