
ALSP市場で成長をめざす、生成AIと専門士業の融合で企業法務に革命を──「クラウドリーガル」が1.6億円を調達
生成AIを搭載した企業法務アウトソース・サービス「クラウドリーガル」を展開するa23s株式会社が、プレシリーズAラウンドで1.6億円の資金調達を実施した。リード投資家には株式会社ANOBAKAを迎え、日本生命グループのニッセイ・キャピタル、リコーのCVCであるRICOH Innovation Fund、そして弁護士ドットコムが出資。ALSP(Alternative Legal Service Provider)という新興市場において、クラウドリーガルは日本型モデルの旗手として急速な存在感を強めている。
法務ニーズの激増と人材不足という構造的課題
現代の企業活動において法務のカバー範囲は年々拡大し、従来の契約書チェックや法令遵守に加え、人権・労務対応、ESG、経済安全保障、サイバー攻撃への備えなど多岐にわたる。しかし、それに応じた法務人材の確保は追いついていない。少子高齢化を背景に弁護士や法務担当者の採用は困難を極め、大企業のみならず中小企業、スタートアップにとっても喫緊の課題となっている。
こうした背景のもと、ITサービス単体では補いきれない法務の専門性と、スピード感が求められる現場のニーズに応えるべく誕生したのが「クラウドリーガル」だ。
弁護士×生成AIのハイブリッド型バーチャル法律事務所
クラウドリーガルは、Web上からいつでも・どこでも・気軽に弁護士にアクセスできる「バーチャル法律事務所」として、スマート契約書作成、契約書レビュー、カスタム法務相談など多岐にわたる機能を提供している。生成AIによる自動化と、専門士業(弁護士・司法書士・弁理士・行政書士など)によるチェックを組み合わせることで、精度と効率を両立させている点が大きな特長だ。
相談内容に応じて最適な専門家リソースを迅速にアサインし、企業規模や地域を問わず、高品質な法務サービスをクラウドで提供するという点において、まさに“法務の民主化”を推進する存在である。
投資家も高評価──ALSP市場への期待と評価
出資元の各社も、クラウドリーガルの可能性に期待を寄せている。
ANOBAKAの萩谷聡氏は、「テクノロジーの恩恵を受けにくかった企業にも届くソリューション」と評し、法務の新たな形の確立を支援するとコメント。ニッセイ・キャピタルの藤木夏輝氏は「会社員にとって夢のようなALSPサービス」と語り、現場感のある評価を示した。
また、リコーや弁護士ドットコムといった既存のリーガルテック分野のプレイヤーからの資本提携も、事業拡大における戦略的な後押しとなる。弁護士ドットコムの澤田将興氏は「ALSPにより法務部はより高度な業務に集中できる」と述べ、クラウドリーガルがもたらす業務改革の意義を強調している。
日本におけるALSPの未来を担う存在へ
今回の資金調達を通じて、クラウドリーガルはサービス性能・機能拡張とサポート体制の強化を進める。BPOサービス「ネオキャリ」との業務提携や、生成AIに強みを持つ弁護士の招聘、日経リーガルサミットへの登壇、さらに電子契約・文書管理を手がける「WAN-Sign」との連携など、サービス網を拡張する動きも加速している。
欧米で広がりを見せるALSPの波が、いよいよ日本にも本格到来しつつある。クラウドリーガルはその中でも先駆者として、生成AIと専門士業の融合というユニークな立ち位置を確立しつつある。法務の高度化と効率化という二律背反に挑むこのモデルが、日本の法務業界にどのような変革をもたらすのか。今後の動向に注目が集まる。
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(TOMORUBA編集部)