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【2025総括/特別記事】宇宙から物流、そして核融合まで――キーワードで振り返る。共創は“構想”から“実証”へ

【2025総括/特別記事】宇宙から物流、そして核融合まで――キーワードで振り返る。共創は“構想”から“実証”へ

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2025年も終わりを迎えようとしています。みなさまにとってどのような年だったでしょうか?

TOMORUBA編集部では今年も様々なニュースやイベントレポート、インタビューを通して、オープンイノベーションや新規事業のリアルを捉えつつ、その現在地をお伝えしてきました。本稿では、2025年1〜12月をキーワードで振り返りながら、総括としてTOMORUBA編集長のコメントをお届けします。ぜひ、最後までお付き合いください。

2025年をキーワードでふりかえる――「停滞」ではなく「変化が積み重なった一年」

■宇宙ビジネスの新時代の幕開け

2025年、年明けと同時に宇宙ビジネスの新時代がスタートしました。これまで遠い未来の話と捉えられがちだった宇宙開発が、産業の現場に接続しはじめた年だったといえるでしょう。

その象徴となったのが、トヨタ自動車の子会社ウーブン・バイ・トヨタと、北海道発のロケット開発スタートアップ・インターステラテクノロジズによる資本業務提携です。ウーブン・バイ・トヨタは、シリーズFラウンドのファーストクローズにおいて約70億円を出資しました。

※関連記事:宇宙の総合インフラ会社 インターステラテクノロジズとウーブン・バイ・トヨタが資本業務提携を発表―ウーブン・バイ・トヨタがシリーズF ファーストクローズまでに約70億円出資

さらに、宇宙ビジネスのフロンティアはロケット開発のみにとどまりません。小型ライフサイエンス実験装置の開発を行うDigitalBlastは、タイの航空宇宙メーカーmu Spaceと提携し、月面探査プロジェクトを始動。異業種・異国間での連携は、まさにボーダーレスな共創の体現といえるでしょう。

※関連記事:小型ライフサイエンス実験装置の開発などを手がけるDigitalBlast、タイの航空宇宙メーカーmu Spaceと月面探査で提携

また、アークエッジ・スペースとPale Blueのスタートアップ同士の共創も注目を集めました。アークエッジが開発した超小型衛星「AE1c」に、Pale Blueの水蒸気式推進機が搭載され、宇宙空間での実証に成功しました。

※関連記事:アークエッジ・スペース、超小型衛星「AE1c」でPale Blueの水蒸気式推進機を実証――スタートアップ同士の共創が実を結ぶ

■ トランプ関税

日本経済は円相場・長期金利・物価という三つの経済変数の揺れに直面し、企業の中期経営計画や投資方針が慎重に――。為替では、「ドル高・円安」が続きました。特にエネルギー・原材料輸入依存の高い業界では物価上昇およびコスト増が経営を圧迫しました。

また、2025年4月には米国が対日「相互関税」を発表。いわゆる“トランプ関税ショック”により日本の株式市場は急落し、日経平均株価は一時8か月ぶりの安値水準(3万3千円台)まで下落しました。輸出依存の製造業に打撃が広がり、特に自動車・半導体関連株や銀行株が大幅安となりました。このトランプ関税ショックは単なる株価下落に留まらず、輸出企業の収益見通し悪化、グローバルサプライチェーン再構築コスト、為替・資材コストの乱高下といった実体経済への不安を再燃させました。日本の輸出型経済の脆弱性が改めて浮き彫りになり、1〜3月のインフレ・円安による揺らぎに対外ショックが重なったことで、企業にとって「守り」か「構造再構築」かの判断は一段と難しくなりました。

■大阪・関西万博

2025年4月、大阪・関西万博が開幕。半導体・DX/GX・テクノロジー活用型サービスなど、ディープテックや先端技術をベースとする投資が行われ、特にモビリティやドローン関連でスタートアップ × 大企業 × 万博関連の協業・共創 というスキームも生まれました。

例えば、テラドローンとJAXA(宇宙航空研究開発機構)は万博会場を活用して、有人機と無人機を統合運用する次世代警備システムの実証実験を実施。本システムによって突発任務でも安全かつ迅速な調整が可能であることを確認し、次世代の空の警備インフラ実装に踏み出しました。

※関連記事:国内外でドローン運航・UTM(運航管理)システムを提供するテラドローン 有人機・無人機を統合運用する警備実証を実施

また、万博後の“遺産”として残される構造物や空域・実証フィールドをどう次代の産業や市民生活に還元していくのかも議論が進みました。IR(統合型リゾート)や「大屋根リング」など、社会実装のフィールドとしての継続利用が期待されており、アフター万博を見据えた長期構想も動き出しました。

※関連記事:IRや大屋根リングなどのレガシー…「アフター万博」がもたらす大阪・関西万博閉幕後の計画と経済効果を解説

■AI(生成AI・自律型AI・AIロボット)

生成AI・自律型AI・AIロボットの実装が加速した2025年。教育、物流、小売、マーケティングなど幅広い分野で、大企業とスタートアップによる協業・実証が相次ぎました。

背景には、少子高齢化による労働力不足への対応や、個別最適化・高精度化された顧客体験の追求といった社会的ニーズがあります。

千葉工業大学と教育系スタートアップDOUは、ChatGPTとブロックチェーンVCを活用した“AI大学講師”の実証を開始。個別最適な指導と学習履歴の信頼性確保を狙います。

※関連記事:国内初、AIが大学講師に 千葉工業大学とDOUが個別最適化教育を実現

名古屋鉄道とギブリーは、生成AIと自律型エージェントを活用したマーケティング基盤の実証を開始。仮想顧客の生成やクラスタリングで新たな顧客体験の創出を目指しています。

※関連記事:名古屋鉄道×ギブリー 生成AIで地域価値を高める次世代マーケティング基盤の実証実験を開始

また、物流現場ではアドダイスとセイノーHDがAIでドライバーの「眠気予測」を実現。自律神経のように働くAIが事故リスクを事前に察知し、安全運行を支援します。

※関連記事:「未来の眠気」を予測して事故を防ぐ――予兆制御AIを提供するアドダイスとセイノーラストワンマイルが実証実験を実施

■自動運転

自動運転業界は国内スタートアップを中心に、資金調達・技術実証・社会実装の各フェーズで大きな進展を見せました。交通インフラや物流の逼迫、ドライバー不足といった社会課題が顕在化する中で、自動運転技術の実用化が“解決策のひとつ”として現実味を帯びています。

加えて、政府の成長戦略としての後押しや法整備の動き、投資家による大型出資などが重なり、スタートアップの成長が加速。レベル4(無人運転)に向けた本格的な取り組みが各地で動き始めています。

チューリングは「完全自動運転AI」構築を掲げ、シリーズAで約153億円を調達。環境認識から制御までを単一AIが担うEnd-to-End設計が注目を集めています。

※関連記事:完全自動運転の開発に取り組むチューリング、シリーズA 1st closeとして153億円の資金調達を実施

トラック物流では、ロボトラックがレベル4実証走行に成功。創業1年未満で経産省支援のもと12億円調達、東京–大阪の運用開始を視野に入れます。

※関連記事:トラックの自動運転システムを開発するロボトラック、プレシリーズAラウンドで約12億円の資金調達

またT2は、アサヒ・キリン・サントリーなど大手飲料4社と連携し、高速道路での自動運転トラック実証を展開。人手不足の抜本解決を狙います。

※関連記事:自動運転で酒類・飲料の物流革新へ T2と大手4社が幹線輸送の実証実験を開始

さらにティアフォーはサウジアラビアのElm社と提携。ロボタクシーや人材育成プログラムを通じ、「自動運転の民主化」を掲げた海外展開を本格化させています。

※関連記事:自動運転の民主化を掲げるティアフォー、Elmとサウジアラビアで自動運転ソリューションを推進へ

■核融合

かつて“夢のエネルギー”と呼ばれた核融合がいよいよ実用化へと現実味を帯びはじめた2025年。気候変動対策とエネルギー安全保障の観点から、再生可能エネルギーだけでは賄いきれない未来に向け、核融合が“次の基盤電源”として国内外から注目を集めています。日本では、炉設計・制御・材料といった各専門領域に特化したスタートアップが次々と台頭し、それらの連携と官民ファンドによる資金支援を通じて、社会実装の“前夜”から“実証・市場形成期”へと移行し始めています。

EX-Fusionはレーザー核融合技術で26億円を調達。連続反応の実証に挑みつつ、光制御技術の医療・宇宙応用も視野に入れています。

※関連記事:レーザー核融合発電の実装を目指すEX-Fusion、シリーズAで総額約26億円の資金調達を実施

LINEAイノベーションは中性子を出さない「p-B11核融合」に挑み、大林組・三菱電機と連携。クリーンで安全な次世代炉の商業化を目指します。

※関連記事:先進核融合スタートアップのLINEAイノベーション、シリーズAで17.5億円の資金調達を実施

材料面ではMiRESSOが42.8億円を調達し、青森で核融合炉用ベリリウムの製造拠点建設を加速。低コスト・国産供給体制の構築を目指します。

※関連記事:核融合スタートアップMiRESSO シリーズAで18.3億円を調達し、累計総額42.8億円を達成

Helical Fusionはアオキスーパーと国内初の電力売買契約を締結し、実用炉開発に弾み。需要家の参加により、社会実装のリアリティが高まりました。

※関連記事:ヘリカル型核融合炉を開発するHelical Fusionが、アオキスーパーと電力売買契約を締結

2025年の総括――TOMORUBA編集長からのコメント

2022年、日本は「スタートアップ育成5か年計画」の始動とともに、"スタートアップ元年"と呼ばれる転換点を迎えました。あれから3年。制度や支援環境は着実に整い、スタートアップと大企業、自治体が交わる風景も、以前に比べて当たり前のものになりつつあります。

一方で、私たちを取り巻く事業環境は、決して安定しているとは言えません。トランプ関税に象徴される地政学リスクは、サプライチェーンの分断や調達コストの不確実性を高め、製造業や流通業を中心に経営判断の難易度を一段と押し上げています。

加えて、生成AIの急速な普及を背景にサイバー攻撃は高度化・巧妙化し、企業規模を問わず情報漏えいや事業停止リスクと常に隣り合わせの状況が続いています。さらに、気候変動の影響による猛暑・豪雨・地震などの自然災害の激甚化は、事業計画そのものを見直す必要性を突きつけています。

エネルギー価格の変動や脱炭素対応、労働人口減少による人材不足なども重なり、従来の延長線上にある事業モデルや製品・サービスの価値が、予期せぬ形で揺さぶられる局面が増えています。

だからこそ今、新たな価値づくりをスピーディーに行える「共創」や「オープンイノベーション」という手法の重要性は、これまで以上に高まっています。自前主義だけでは捉えきれない変化に対し、外部の知や技術、視点を取り込みながら、試行錯誤を重ねていく。その柔軟性とスピードこそが、不確実な時代を生き抜くための競争力になります。

TOMORUBAでは、こうした考え方を実践する現場のリアルを伝えるべく、南出や明治といった共創事例を発信してきました。たとえば南出の事例では、自社だけでは気づきにくかった技術の新たな活用可能性を、外部パートナーとの対話や実証を通じて引き出し、既存事業の延長線上にとどまらない価値創出につなげています。

一方、明治の共創では、余剰資源や既存アセットを起点に外部パートナーと組むことで、スピード感を持って『MILK MOON』という新たな商品・市場を立ち上げるプロセスが示されました。

いずれの事例にも共通するのは、「完成形を最初から描き切らない」姿勢と、外部と組むことを前提にした意思決定の速さです。小さく試し、学びながら前進する。その積み重ねが、結果として事業成果や次の挑戦につながっている点こそ、今の時代における共創の本質だと言えるでしょう。

オープンイノベーションは、単なる手法ではなく、企業や組織の"文化"として根付いてこそ力を発揮します。2026年以降もTOMORUBAは、挑戦と試行錯誤の最前線にある事例を丁寧に掘り下げ、共有していきます。不確実性の高い時代だからこそ、共に学び、共に前へ進む。そのためのハブであり続けたいと思います。

TOMORUBA編集長 眞田幸剛

編集後記

TOMORUBA編集部は、来年も現場と未来のあいだに立ち続けたいと思います。ここから先の歩みも、みなさまもぜひ一緒に見届けてください。

今年も最後までお読みいただき、ありがとうございました。それではよいお年をお迎えください!

(構成・文:眞田幸剛・入福愛子)

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  • 眞田幸剛

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