
小型ライフサイエンス実験装置の開発などを手がけるDigitalBlast、タイの航空宇宙メーカーmu Spaceと月面探査で提携
宇宙産業の次なるフロンティアとして月面探査が注目を集める中、小型ライフサイエンス実験装置の開発などを手がける株式会社DigitalBlastはタイの航空宇宙メーカー mu Space and Advanced Technology Co., Ltd.と月面探査プログラムの共同推進に向けた覚書(MoU)を2025年4月25日付で締結した。
この提携は、タイ政府が推進する国家宇宙戦略「National Space Experiment and Exploration(国家宇宙実験・探査計画)」の一環であり、両社は今後、宇宙技術分野における研究活動・人材育成・知識共有を通じて連携を深めていくという。
日本の国際宇宙ステーション「きぼう」での事前実証も視野に
提携内容の主な柱は以下の通りだ。
月面ミッションの組織化とライフサイエンス実験の実施支援
宇宙ステーション「きぼう」での事前実証実験の支援
ポストISS時代を見据えた宇宙ミッションおよび実験支援の組織化
特に注目すべきは、日本の国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟を活用したプレ実験の取り組みである。月面での実験環境に類似した軌道上環境において、ライフサイエンス分野の検証を行うことで、実運用に向けたリスク低減とデータ蓄積が期待されている。
タイ現地で議論進む、AITとも連携
5月20日には、DigitalBlastのCEO 堀口氏がタイを訪問し、mu Spaceや同国の名門理工系大学院であるアジア工科大学院(AIT)の関係者と会談を実施。1月にAITとも覚書を締結していたDigitalBlastは、産学官を巻き込んだ多層的な宇宙開発体制の構築に取り組んでいる。今後は、タイ国内における宇宙人材の育成やスタートアップ支援といったテーマでも連携が見込まれている。
会談後、堀口氏は「国境を越えた協業によって、月面探査を現実のものとするための基盤づくりが着実に進んでいる。日本の技術とタイの挑戦精神が結びつくことで、新たな宇宙ビジネスの可能性が広がる」とコメントしている。
mu Spaceは2017年に設立されたタイ・バンコク拠点の宇宙企業。人工衛星の電源システムや構造部品の開発に加え、NASAのプロジェクトへの参加実績も持つ。現在は、宇宙データセンター、自律型ロボット、宇宙服、宇宙船などの開発を進めており、将来の有人宇宙探査を見据えた技術基盤の整備を進めている。
CEO & CTOのJames Yenbamroong氏は「アジア諸国が主体となった宇宙探査は、持続可能で実用的な未来を切り拓く第一歩になる」と語っている。
DigitalBlastの挑戦:軌道上R&Dからテラフォーミングへ
DigitalBlastは2018年設立の宇宙ベンチャー企業。ISSを活用した創薬や材料研究、バイオプリンティングといった軌道上R&Dに加え、地球外環境における「人が住める環境」=テラフォーミング事業の実現を目指す。宇宙という極限環境での研究開発・製造に特化したプラットフォーム事業を展開し、宇宙産業に新たな価値を提供し続けている。
“宇宙に価値を”というビジョンのもと、同社は今後も国内外の連携を通じて新たな宇宙エコシステムの形成に挑んでいく構えだ。
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(TOMORUBA編集部)