AstroXとJAXA、新技術で宇宙イノベーションを加速 — 気球用姿勢制御装置の共同開発が始動
AstroX株式会社(以下、AstroX)と宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)は、宇宙関連事業の新たな可能性を追求するべく、「JAXA 宇宙イノベーション パートナーシップ(以下、J-SPARC)」の枠組みのもと、革新的な技術開発に乗り出した。今回の取り組みは、高高度での気球運用を支える「気球用プラットフォーム懸垂型姿勢制御装置」の研究開発であり、これにより気球の運用性向上と多様な用途への活用を目指す。
技術革新と課題解決の融合
AstroXは、「宇宙開発で"Japan as No.1"を取り戻す」というビジョンのもと、気球とロケットを組み合わせた「ロックーン(Rockoon)」方式による低コストで高頻度の衛星打ち上げを目指している。これまで、気球を用いた姿勢制御装置の試作と試験を進めてきたものの、成層圏環境での実証試験や専門知見の不足が課題として浮上していた。
一方、JAXAでは天文観測などを目的とした大気球の運用経験が豊富であり、大型望遠鏡やセンサーの高精度姿勢制御技術を蓄積している。この技術と経験がAstroXの課題解決に寄与することが明らかになり、2023年5月に両者が対話を開始。その結果、技術的・事業的に双方が利益を享受できると判断し、共創活動への合意に至った。
具体的な取り組み内容
本共創では、AstroXが地上評価試験や耐久性向上、装置のパッケージ化開発に注力。一方でJAXAは実フライト試験環境を整備し、開発装置の技術実証を行う。これらの活動を通じて、2025年度には地上試験、2027年度には姿勢制御装置の完成を目指している。
また、本プロジェクトの成果は、宇宙関連事業のみにとどまらない。AstroXは気球技術をHAPS(高高度プラットフォームステーション)や地上用クレーンなど非宇宙分野にも展開し、事業領域の拡大を図り、JAXAは今回の技術を次世代の気球天文観測や実験基盤の向上に活用し、さらなる科学的発展を目指す。
AstroXの小田翔武代表取締役は、「JAXAとの強力なパートナーシップにより、革新的な宇宙輸送技術を生み出し、人類社会に貢献したい」と意気込みを語っている。また、JAXA宇宙科学研究所の福家英之グループ長も、「本技術の高機能化で、理工学分野の多様なニーズに応える」と期待を寄せている。
今回の取り組みは、日本が宇宙開発におけるリーダーシップを取り戻し、新しいイノベーションを生み出す好例となるだろう。気球技術を軸としたこの挑戦は、宇宙と地上をつなぐ技術の可能性を広げるだけでなく、未来の宇宙事業に向けた新たな道を切り開くことに繋がりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)