
核融合スタートアップMiRESSO シリーズAで18.3億円を調達し、累計総額42.8億円を達成
核融合関連技術の実用化を目指す株式会社MiRESSOは、シリーズAラウンドの1stクローズにおいて総額18.3億円の資金調達を実施した。リード投資家を務めたのはSpiral Capitalで、大平洋金属、ジェネシア・ベンチャーズも出資に参加。創業から約2年半で累計調達額は補助金を含め42.8億円に達した。
調達した資金は、青森県八戸市に建設中のベリリウム製造パイロットプラント「BETA」(Beryllium Testing plant in Aomori)に投じられる。同社は2027年度中の生産開始を目標に掲げ、核融合エネルギーの社会実装に不可欠なベリリウムの安定供給体制を構築する。
SBIR採択と大平洋金属社との提携
MiRESSOは2023年10月、文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」に採択され、20億円の支援を獲得。低温精製技術を活用したベリリウム生産の実証に挑む。さらに2024年10月には大平洋金属と包括的業務提携契約を締結。大規模な金属製錬の知見を持つ同社の製造所内にBETAを設置し、事業化を加速させている。
MiRESSOはベリリウム事業にとどまらず、低温精製技術を活かしてリサイクル分野や他の鉱物資源精製にも展開する技術プラットフォーム事業を推進。複数領域への応用を見据えている。
投資家の視点 「核融合サプライチェーンの要」
今回の調達に参加した投資家からも期待が寄せられている。Spiral Capitalの直井氏は「商用炉の本格稼働にはサプライチェーンの整備が不可欠。MiRESSOはベリリウム供給の革新を担う存在であり、核融合産業における重要なプレイヤーになる可能性がある」と強調した。
大平洋金属株式会社 代表取締役社長の岩舘氏も「当社の製錬ノウハウとMiRESSOの技術は高いシナジーを持ち、両社の協力でフュージョンエネルギーの社会実装に貢献できる」とコメント。ジェネシア・ベンチャーズの曽我部氏は「量子科学技術研究開発機構(QST)の知見を基盤に生まれたMiRESSOの低温精製技術は、ベリリウムの低コスト供給を可能にする」と述べ、成長余地に強い期待を示した。
今後の展望
MiRESSOの代表取締役 CEOの中道氏は「鉱物資源の可能性を引き出し、明るい未来を次世代につなぐ」というミッションのもと、BETAの建設を進めていくと表明。「ベリリウムの安定供給によって核融合エネルギーの社会実装に貢献する」とし、サプライチェーン構築に挑む姿勢を示した。核融合を支えるベリリウム供給の新たな担い手として、研究開発と事業化の両立に挑む同社の動向は、エネルギー産業全体にとってますます注目が集まるだろう。
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(TOMORUBA編集部)