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まちづくり×テクノロジーでウェルビーイングを実現!「Be Smart Tokyo」発の実践的な共創事例に迫る<Be Smart Tokyo Meet up イベントレポート>

まちづくり×テクノロジーでウェルビーイングを実現!「Be Smart Tokyo」発の実践的な共創事例に迫る<Be Smart Tokyo Meet up イベントレポート>

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東京都が推進するスマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo」は、デジタルやテクノロジーの力で都市課題を解決し、ウェルビーイングの実現を目指す取り組みだ。自治体・デベロッパーなど都市基盤を提供する側と、革新的なスマートサービスを持つスタートアップの共創を促進し、実証から社会実装へとつなげている。

その一環として10月30日(木)、港区立産業振興センターにて「Be Smart Tokyo Meet Up supported by eiicon ―まちづくり×テクノロジーで実現するウェルビーイング―」が開催された。

本イベントでは、フィールド提供者によるリバースピッチ、都内でスマートサービスの社会実装を進めるスタートアップによるピッチ、さらに現在進行中の共創プロジェクトの紹介などが行われ、まちづくりとテクノロジーの掛け合わせによって新たな価値を生み出す実践的な事例が発表された。本記事では、3プロジェクトによる共創ピッチにフォーカスしてイベントの様子をレポートする。

デザイナーと企業、そして地域をつなぐ「Minato Creators Park」

●港区立産業振興センター × 株式会社ユナイトライ

港区立産業振興センター 西岡氏

株式会社ユナイトライ 加藤氏

共創ピッチのトップバッターは、港区立産業振興センターの西岡氏と、株式会社ユナイトライの加藤氏が登壇。同センターが抱えていたコミュニティ形成の課題を起点に、新たな共創プラットフォームの構想を紹介した。

西岡氏はまず、施設の現状を説明した。港区立産業振興センター9F「MINATO BASE」には、コワーキングスペースと、ものづくり支援施設であるビジネスサポートファクトリー(以下ビジサポ)があり、多くの創業者やデザイナー、クリエイターが日々利用している。登録会員は約5,800名、ビジサポの利用者も月間延べ800名に上るが、「機器の利用を目的に来館する方が多く、横のつながりが生まれにくい。せっかく多様なクリエイターが集う環境なのに、コミュニティが形成されないのはもったいない」と課題を共有した。

この状況を打開するため、共創をスタートしたのがユナイトライだ。同社は、人と人のつながりを軸に、クリエイター同士が支え合うオンラインプラットフォーム「HOWDY」を開発・運営している。その知見をもとに、両者は新たに「Minato Creators Park」を立ち上げ、デジタルとリアルを融合したクリエイティブ・エコシステムの構築を目指している。「クリエイターが自律的に活動を続けられる仕組みをつくり、企業や自治体との協働によって経済的な循環も生み出していきたい」と語る加藤氏は、オンラインとオフラインを行き来する“自走するコミュニティ”の実現を描いた。

西岡氏も、「クリエイター同士の交流だけでなく、企業とつながり、実際の仕事や地域課題の解決につながるような案件を掲載していく」と展望を述べる。デザインコンテストや地方創生プロジェクトなど、多様なチャレンジの機会を創出し、クリエイターが活躍できる場を拡張していく構えだ。さらに同氏は、「我々の目指すのは“1億総クリエイター化”。AIの時代だからこそ、人間が発揮すべきは創造性。プロのクリエイターに限らず、誰もが創造性を発揮できるプラットフォームに育てていきたい」と力を込めた。

港区立産業振興センターではすでに年間60本以上の共催イベントを実施し、100を超える団体とのネットワークを構築している。今回の「Minato Creators Park」は、その第2のエコシステムとして新たな位置づけを担う。クリエイティブの力で地域と企業そして人が有機的に結びつく、港区発の共創モデルとして今後の広がりが期待される。

地域回遊性を高める「無人モビリティ」で描く、多摩発のスマートまちづくり

●S&D多摩ホールディングス × 合同会社Limot

S&D多摩ホールディングス株式会社 渡辺氏

合同会社Limot 香西氏

トヨタ販売店ネットワークを通じて多摩地域の交通・生活インフラを支えるS&D多摩ホールディングスと、モビリティによるまちづくりを手がけるスタートアップLimot。両者は「移動を通じて地域の楽しさを発掘する」ことをテーマに、多摩エリアでの共創プロジェクトを進めている。

Limotは、トヨタ自動車出身のメンバーが立ち上げたまちづくり系スタートアップで、小学生でも乗れる電動モビリティなど、無人で貸し出せる移動手段の開発を進めている。モビリティの提供にとどまらず、街の体験設計そのものを行い、「目的と手段の両方をつなぐ」ことで地域の回遊性を高める仕組みを提案。香西氏は「移動手段を置くだけでは人は動かない。目的地の魅力や体験価値まで設計してこそ、街に“回遊の流れ”が生まれる」と語る。

一方のS&D多摩ホールディングスは、多摩地域で約100店舗のトヨタ販売店を展開している。社是である「誠実と努力(Sincerity & Diligence)」の頭文字を社名に掲げ、地域に根ざしたモビリティサービスを展開してきた。渡辺氏は「クルマに限らず、あらゆるモビリティで“Smile & Delight”を届けたい」と語り、地域密着企業としてLimotの提案に共感し今回の共創に踏み出したと説明した。

現在両社は、2025年にリニューアルが完了した多摩中央公園を拠点に、実証実験を実施中だ。人の手を介さずに貸し出せるモビリティにGPSガイドを搭載し、謎解きやスタンプラリーのような仕掛けを組み合わせながら、公園内外の回遊を促す仕組みを構築している。英語・中国語など4カ国語に対応し、訪日客の周遊にも対応。取得した行動データはマーケティングに活用し、地域経済の循環を生み出す計画だ。

香西氏は「S&Dが地域の中心に立ち、私たちはシステムで支える。地域事業者にも収益が還元される仕組みを設計している」と説明する。短期的には公園内の活性化、長期的には大学・商業施設を巻き込み、多摩全域に展開していく構想だ。「人の移動が笑顔と賑わいを生む“モビリティの循環”を、地域の皆さんと共につくりたい」と香西氏。老舗ディーラーとスタートアップの共創から、多摩発のスマートまちづくりモデルが動き出している。

ウェルビーイングを“商業施設から広げる”──未病データとリアルの融合で新しい健康体験を創出

●小田急SCディベロップメント × WELL BE INDUSTRY × HIL

株式会社小田急SCディベロップメント 加藤氏

株式会社WELL BE INDUSTRY 花高氏

株式会社HIL 小熊氏

小田急SCディベロップメントは、スタートアップの力を取り込みながら、沿線地域で“未病”をテーマにしたまちづくりを推進している。同社の加藤氏は、「不動産や商業施設に付加価値をつくる新規事業の中で、ウェルビーイングを軸にした“ウェルネス不動産”を成立させたい」と語る。掲げるビジョンは「エキチカは、マチチカ、ヒトチカへ」。駅や商業施設を、人が健やかに暮らす“ヒトチカ”へと進化させることを目指している。

11月8日には第1弾となるイベント「からだラボ体験フェス」を開催し、来場者が自らの身体状態を知り、健康サービスと出会う体験を提供した。その実現のために共創しているのが、WELL BE INDUSTRYとHILだ。両社はいずれも“未病”をキーワードに、予防・行動変容・データ活用の観点から独自のサービスを展開している。

HIL代表の小熊氏は、医療現場での経験を通じ「生活習慣病は防げる病気」と痛感したという。その思いから生まれたのが、超音波技術で脂肪や筋肉の状態を可視化する「お腹ソムリエ」だ。

2万人以上のデータをもとに開発され、特許も取得済み。体験者の8割以上が「生活習慣を改善したい」と回答するなど、強い行動変容効果を生み出している。今回の共創では、商業施設をリアルな健康体験の場として、「お腹ソムリエ」で得た個々の健康データと、店舗や商品をつなぐ新たなウェルビーイングエコシステムの構築を目指す。

WELL BE INDUSTRYは、LINE上で無料で未病状態を判定できる「WELL BE CHECK」を提供するスタートアップだ。代表の花高氏は、元々バイオサイエンス領域で研究していたバックグラウンドと母親を乳がんで亡くした経験をもとに、未病産業の創出に挑む。同サービスでは、50問の自覚症状に関する質問に直感的に答えるだけで、分子栄養学に基づくアルゴリズムが体と心の状態をスコア化。AIが食事の写真から栄養分析やレシピ提案を行い、ユーザーは健康改善と同時にポイントを獲得できる。花高氏は「“ポイ活”感覚で未病対策に参加できる仕組みで、健康に関心のない層も自然と巻き込める」と語る。

この両社の技術と、小田急SCディベロップメントが持つ沿線ネットワークが組み合わさることで、リアルとデジタルの両面から“未病を可視化するまちづくり”が動き出した。加藤氏は「“あなたの健幸をデザインする”という発想で、商業施設を健康のハブに変えていきたい」と展望を語る。商業施設の価値を“消費の場”から“ウェルビーイングを育む場”へ。駅やショッピングセンターが、住民一人ひとりの健康を支えるインフラへと変わる日も近い。

………………

全12企業・団体によるピッチが終了した後には、会場内にてネットワーキングが行われた。活発な交流が生まれ、会場は終始熱気に包まれた。尚、eiiconが推進するBe Smart Tokyo事業は、2027年3月まで続く。

取材後記

イベントを通じて印象的だったのは、「Be Smart Tokyo」が単なる実証支援にとどまらず、自治体・企業・スタートアップがそれぞれの強みを持ち寄り、具体的な共創へと踏み出している点だ。フィールド提供者とスタートアップが共に描くまちの未来像は、構想段階から“実装”へと確実に移行しつつある。フィールドの広がりも着実に進んでおり、ウェルビーイングという共通のテーマのもと、地域発のイノベーションが芽吹いている。

まちづくりにおけるテクノロジーの役割は、効率化だけではない。人と人をつなぎ、心地よく暮らせる都市の形を共に描くことにこそ、価値を発揮する。「Be Smart Tokyo」の取り組みは、そうした“共創の文化”を都内各地に根づかせる原動力となりつつあるのではないだろうか。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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Be Smart Tokyo Supported by eiicon

東京都が推進する「Be Smart Tokyo」は、独創性・機動力にあふれるスタートアップ等への支援を通じて、都内全域をフィールドにスマートサービスを実装することで、都民の暮らしの利便性・QOL向上を目指す実装促進プロジェクトです。 2024年より、eiiconでは「マッチングプログラム」「社会実装プログラム」「スタートアップ支援プログラム」の3つの軸で実装促進支援を行っています。