
「未来の眠気」を予測して事故を防ぐ――予兆制御AIを提供するアドダイスとセイノーラストワンマイルが実証実験を実施
「事故が起きてからでは遅い」。物流業界ではこの当たり前の認識が、いまAIの力で一歩先へと進みつつある。株式会社アドダイスとセイノーラストワンマイル株式会社は、ドライバーの眠気を事前に予測する実証実験を開始した。キーワードは「未来の眠気リスク」と、それをスコア化する「予兆制御®AI」だ。
背景にあるのは「人手不足」と「健康リスク」
物流業界では、少子高齢化とEC市場の拡大がダブルパンチとなり、ドライバー不足と業務過多が深刻化している。推計によれば、2000年に97.3万人いた運転従事者は2030年には51.9万人にまで減少する見込みだ。業務負荷の増大はドライバーの心身に影を落とし、特に“眠気”という形で事故リスクを高める要因となる。
こうした状況を背景に、ドライバーの健康を見守り、重大事故の予兆を未然に捉える取り組みが求められている。
眠気を「予測」して知らせるAIとは?
アドダイスが提供する「予兆制御AI」は、特許技術「SoLoMoN® Technology」に基づき、生物や機械、環境に潜むリスクの“兆し”を捉えることに長けた自律型AIだ。今回は物流業界向けに、ドライバーの心身から「眠気の兆し」を解析する仕組みを実装した。
ドライバーにスマートウォッチを装着してもらい、心拍数などのバイタルデータを収集。それをAIがリアルタイムで解析し、「今の眠気(実測値)」と「これから訪れる可能性のある眠気(予測値)」を0~10の「眠気スコア」として提示する。このスコアに応じて、運行管理者は早めの対応ができるというわけだ。
実証実験の詳細と狙い
今回の実証は、セイノーラストワンマイル関連会社であるココネット株式会社、株式会社地区宅便、日祐株式会社の協力のもと、2025年1月から4月にかけて実施されている。
具体的な実証内容は、ドライバーが装着したスマートウォッチからのバイタルデータをもとにAIがスコアを算出し、管理スタッフが対応するというもの。アンケートも併用して実感覚とAI解析結果のギャップを把握し、精度向上につなげる。
評価軸は大きく3つ――眠気スコアの正確性、安全性向上への寄与、そしてアルゴリズムの進化である。特に、事故の「未然防止」という観点から、眠気スコアによるアラートがヒヤリハットや交通事故の削減にどれほど貢献するかが注目されている。
「AI」と聞けば、画像や文章を生成する“ChatGPT”的な存在を思い浮かべがちだが、アドダイスのAIはまったく別物だ。自律神経のように、外部環境や心身の状態を感知し、自律的に調整を図る“自律型AI”である。このAIがもたらすのは単なる技術革新ではなく、人の健康と命を守るための社会インフラとしての可能性だ。居眠り運転による悲惨な事故を防ぐ「兆しの検知」は、物流業界にとって重要な転換点となるだろう。
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(TOMORUBA編集部)