
自動運転で酒類・飲料の物流革新へ T2と大手4社が幹線輸送の実証実験を開始
株式会社T2は2025年6月9日より、酒類・飲料の物流子会社4社とともに、自社開発の自動運転トラックによる幹線輸送*1の実証実験を開始する。参加企業はアサヒロジ株式会社、キリングループロジスティクス株式会社、サッポログループ物流株式会社、サントリーロジスティクス株式会社の4社。関東から関西までの高速道路を往復するルートで、それぞれの製品を積載した実証を通じて、自動運転技術の実用性と物流の未来像を検証する。
自動運転で「2024年問題」に挑む
背景には、トラックドライバーの人手不足が深刻化する「2024年問題」がある。国の試算によれば、2030年には輸送能力が34.1%不足する可能性があるとされる。*2
T2はこうした課題に対し、2027年からのレベル4*3自動運転トラックの商用運行開始を目指している。レベル4の完全自動運転が実現すれば、ドライバーの拘束時間に縛られずに運行できるため、これまで1日1運行(片道)が限界だったドライバーあたりの輸送能力を、将来的には往復運行で2倍に高めることが可能となる。
酒類・飲料物流における危機感と期待
酒類・飲料業界は、季節波動が大きく輸送量が多い業界として知られており、繁忙期にはドライバー確保が一層困難となる。そうした事情もあり、物流の持続可能性を高めるための対応が急務とされている。今回の実証では、T2が提供するレベル2*4の自動運転トラック(ドライバー同乗)を用いて、4社の主力製品を積載し、実際の幹線輸送における運行パターンや物流品質を確認する。
実証概要
本実証は2025年6月から11月まで、計16回(8往復)を予定している。6月には以下のルートが設定されている。
往路:キリンビール横浜工場→神戸工場、復路:アサヒビール吹田工場→茨城工場
往路:サッポロビール千葉工場→大阪物流センター、復路:サントリープロダクツ宇治川工場→海老名配送センター

積載物にはアサヒ「アサヒスーパードライ」、キリン「一番搾り」、サッポロ「黒ラベル」、サントリー「クラフトボス ラテ」といった各社の代表的な商品が使用される。
未来に向けた連携と検証
今回の取り組みでは、T2が全体のマネジメントと車両提供を行い、各社が製品を提供。走行ルートやリードタイム、物流品質、さらにはオペレーションの有効性まで多角的に検証される。
なお、本実証はすべてレベル2相当の運転モードで行われ、ドライバーが同乗しながら安全性を確保する。
今回の実証実験は、単なる新技術の試行ではない。人手不足が深刻化する今、自動運転を活用した幹線輸送の実用化は、産業全体の供給網を支える根幹的な課題への解決策となりうる。物流の先行きを見据え、業界横断で連携しながら変革を進める試みとして、注目が集まる。
*1 工場で生産された商品を全国の配送拠点に主要な輸送ネットワークを通じて効率的に運ぶこと
*2 経済産業省開催「第3回持続可能な物流の実現に向けた検討会」における「「物流の2024年問題」の影響について」(株式会社NX総合研究所)(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/003_01_00.pdf)
*3 特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態(参照:https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf)
*4 ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転
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(TOMORUBA編集部)