大学を中心とした共創コミュニティの構築が目立つ石川県のオープンイノベーションを紐解く
オープンイノベーションを実践する地域の取り組みを紹介するシリーズ企画「CLOSEUP OI」。今回は石川県をピックアップします。
石川県の主な工業は機械・繊維・食料品製造で、全体の約8割を占めています。そのほかにも漆器や箔押し、陶磁器など全国的にも有名な工業が多々あるエリア。また、全国の中でもおいしい米の産地として知られる一方で、水産業も盛んです。
このような産業の特徴を持つ石川県では、大学を中心とした共創コミュニティの構築やスタートアップ支援によるイノベーション創出が推進されています。本記事では、それらの取り組みを紹介していきます。
金沢大学が取り組む共創
1862年創立、1949年大学設置と、歴史ある金沢大学では、各種機関やプログラムなどを設置。民間企業との共創やコミュニティ形成などに取り組んでいます。
●先端科学・社会共創推進機構
基礎研究から応用研究に至る全領域の研究支援と、 産学官連携により得られる研究成果の社会還元を促進するため、2019年2月に発足した先端科学・社会共創推進機構。研究支援においては、リサーチ・アドミニストレーター(URA)を配置し、プロジェクトの立案から研究資金獲得、研究成果発信、知的財産管理を通して研究者のサポートを実施。また、産学官連携及び地域連携の推進においては、大学の有する人的・物的資源を活用しながら地域イノベーションに係る学内外のネットワークの基盤形成を推進し、グローバルな視点から地域の課題解決に取り組んでいます。
●金沢大学産学連携協力会
金沢大学産学連携協力会は、金沢大学先端科学・社会共創推進機構の事業を支援し、金沢大学と産業界が地に足のついた産学連携と相互の日常的な交流を進めることを目指し、設立。会員企業と大学の関係をより強化するため、研究シーズの紹介や産学官に関するフォーラムの告知などを積極的に行っています。
●金沢大学共創の場支援プログラム(COI-NEXT)
金沢大学では、石油由来プラスチックに代わる「再生可能多糖類植物由来プラスチック」の開発、社会への普及を目指すプロジェクトが、2021年度科学技術振興機構(JST)の共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)(本格型)に採択され、同年11月から、10年間にわたる活動を開始しました。
このプロジェクトは、地球規模の課題である、海洋プラスチックごみ、CO2の削減に向けて、石油由来プラスチックから植物由来プラスチックへのパラダイムシフトを引き起こします。
●金沢大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)
VBLは、起業により新たなビジネスの創造を目指す教員・学生をサポート。起業コーディネーターによる支援や相談窓口の設置、3Dプリンターやスキャナーといった設備のレンタルも行われています。
金沢工業大学が取り組む「白山クリエイティブ・ビオトープ」
金沢大学に続き、金沢工業大学でもイノベーション創出に資するようなユニークな取り組みが推進されています。
●KITイノベーションハブ
金沢工業大学白山麓キャンパス内にあるKITイノベーションハブは、広大な中山間地における自然環境の活用や地域コミュニティとの連携を軸に、防砂、エネルギー、教育、医療、福祉などを含む産業の発展を目指す実証実験を展開する拠点として機能しています。
●HAKUSAN CREATIVE BIOTOPE(白山クリエイティブ・ビオトープ)
学びと創造のコミュニティとして創設された白山クリエイティブ・ビオトープ。「ネットワーキング&問いの創出」「実験機会の提供」「発表・発信の場の提供」という3つの機能を有しており、都市では実現できない里山ならではの機能、プログラムを提供しています。また、以下のような6つのチャレンジ領域を設けています。
石川県内のスタートアップ育成プログラム
それでは次に、石川県内で推進されているスタートアップ育成の取り組みを紹介していきます。
●いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)
独立行政法人中小企業基盤整備機構が手がけている「いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)」は、ベンチャー企業の創出を目指すインキュベーション施設。石川県、野々市市、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、金沢工業大学、石川県立大学と一体となり、これら4大学から生み出されるライフサイエンス、医療、環境、食品等分野の研究成果を事業化することにより、ベンチャー企業の創出を目指しています。
起業を目指す大学の研究者や、大学と連携して研究開発を行う企業が入居するための試作ラボ、ウェットラボ、ドライラボ、スモールオフィスを整備。インキュベーションマネージャーが施設に常駐して入居者に対するビジネス支援を行っています。
●スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ
石川県産業創出支援機構が実施している「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ」。革新的な強みを有するビジネスプランによって石川県内で起業する意欲を持つ方等を全国から募集し、飛躍的な成長が期待できる起業家を認定し、集中的に支援することで、将来の石川県のベンチャー企業の創出と育成を図っています。
このコンテストは、2007年から毎年開催し、15回の開催実績があります。これまでに、バイオ、IT関連など独自の技術をもつ企業や、まちおこしなどをテーマとした企業など、ユニークなビジネスプランを含め、数多くのビジネスが輩出されてきました。
「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2022」の最優秀起業家賞に選ばれたのは、株式会社コノミー・尾島氏です。同氏は、『地産地消から“地産外商”へ ~地元の新鮮な食材とAIを用いたPersonalized Meal Kit~』というテーマを掲げ、石川県産を中心とした新鮮な食材とAI(人工知能)を活用した利用者好みのレシピをセットにした冷蔵ミールキットを定期宅配するサービスについて発表しました。
また、優秀起業家賞には、男性向け妊活サポートサービス『SPERMAN GYM』を提供するGranate・小寺氏や、従業員のストレスをケアする匿名チャットアプリ「+ta(プラスタ)」を提供する株式会社メンヘラテクノロジー・高桑氏が選ばれました。
▲「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ2022」のダイジェスト動画
(TOMORUBA編集部)