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【eiicon支援事例/小野薬品工業】新領域の2つの新事業を短期間で具体化できる機会に――ヘルスケア事業への進出を目指し、eiicon支援のもと初の“ビジネスビルド型”オープンイノベーションプログラムを実施。

【eiicon支援事例/小野薬品工業】新領域の2つの新事業を短期間で具体化できる機会に――ヘルスケア事業への進出を目指し、eiicon支援のもと初の“ビジネスビルド型”オープンイノベーションプログラムを実施。

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300年以上の歴史を持つ医薬品メーカーで、がん治療薬『オプジーボ』を開発・製品化したことで知られる小野薬品工業。同社は、創薬分野におけるオープンイノベーションに積極的に取り組んでおり、現在、国内外で300件以上ものバイオベンチャー企業やアカデミアなどと提携しています。

2024年1月には、「医薬品以外」の事業ドメインを開拓することを見据えて、『HOPE-Acceleration2024』というオープンイノベーション型事業創造プログラムを開始しました。がん免疫分野で業界をリードする同社が、本プログラムのテーマに掲げたのは、「がん患者さんとそのご家族のウェルビーイング向上」です。

▲『HOPE-Acceleration2024』では、「がん患者さん」・「がん患者さんのご家族」・「がん治療医療従事者」という3つの切り口で共創パートナーの募集を行った。

このテーマで共創パートナーを募集し、選考を通過した企業が小野薬品工業の社員とチームを組んで5月30日、31日に開催した2日間の事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)に参加しました。そこで構想したビジネスアイデアを基に約3カ月のインキュベーションを実施し、8月30日の最終審査会で発表。通過したプロジェクトは現在、事業化に向け準備を進めています。

▲2024年1月にスタートした『HOPE-Acceleration2024』のスケジュール

オープンイノベーションや新規事業の支援を行っている株式会社eiiconは本プログラムの運営を支え、共創プロジェクトの実現に向けて伴走支援を行っています。そこで今回TOMORUBAでは、『HOPE-Acceleration2024』の最終審査会を終えたタイミングで、プログラムの主催者である小野薬品工業の藤山氏と若松氏に、eiiconの支援内容に対する評価や成果について伺いました。

ベンチャー企業との連携により、多様な事業の創出を目指すプログラム

――まず、オープンイノベーション型事業創造プログラム『HOPE-Acceleration』を開始した背景からお聞きしたいです。

藤山氏 : 当社は1717年の創業以来、300年を超えて患者さんに薬をお届けしてきました。さらには拡大するヘルスケア分野のニーズを捉え、新たな価値を提供し続けるため、事業ドメインの拡大に取り組んでいます。

私たちは、ヘルスケア事業の創出に向け、社内から事業案を募集したり、部内で新しいアイデアを探索したりしてきました。それらの活動に加えて新たに始めたのが、ベンチャー企業との連携により多様なタイプの事業の迅速な創出を目指す、オープンイノベーション型事業創造プログラム『HOPE-Acceleration2024』です。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 部長 藤山昌彦 氏

――2024年1月に『HOPE-Acceleration2024』をスタートされました。本プログラムには運営のパートナーとしてeiiconを起用されています。

藤山氏 : eiiconを選んだ理由は2点あります。1点目は、伴走経験の数の豊富さです。eiiconさんは、日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーマーとして多くの経験を積んでおられ、信頼できると考えました。

2点目は、共創パートナーとマッチング後の伴走支援の手厚さ。事業創造プログラムは6カ月程度の期間にわたりますが、マッチング後に2日間の事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)でしっかりと協議を行い、その後も3カ月程度伴走してもらえる点が魅力的でした。eiiconの営業担当の方に、こちらの要望を柔軟に受け止めていただけたことも決め手となりましたね。

※事業共創ワークショップ「ビジネスビルド」とは……

小野薬品事業開発担当・パートナー企業・eiiconメンター・外部メンター(VC/有識者)・社内役員が一堂に会し、2日間で一気に「小野薬品×パートナー企業」の共創ビジネスプランをブラッシュアップしていく2日間。

――『HOPE-Acceleration2024』内で、事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)を開催されました。2日間という短い期間で、ベンチャー企業と共創事業の骨子を練り上げる内容でしたが、こちらのイベントについてはいかがでしたか。

藤山氏 : 事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)は初めての体験でしたが、取り組んでよかったと感じています。2日間で共創事業案をある程度まで進めていなければ、軌道に乗るまでに時間がかかり、何も進まないまま8月の最終審査会を迎えていたかもしれません。スタートダッシュを切る良い機会だったと思います。

若松氏 : 事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)を通じて相互理解が深まったと感じます。オンラインで複数回数時間話すよりも、顔を合わせて一気に2日間話し合ったほうが、ベンチャー企業の強みに対する理解度が高まりました。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 OIP課 課長 若松大将 氏

――事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)の改善点も、ぜひお伺いしたいです。

若松氏 : 初日のセッションでは顧客課題とソリューションを考える段階でしたが、十分に考えが深まらないままメンターとの壁打ちが始まり、論点が明確にならず壁打ち機会をうまく活用できないチームもいました。ですから、メンターとのディスカッションの前段階で、もう少し長く時間を取ればよかったかもしれません。

――プログラムの準備段階から最終審査会までいくつかのフェーズがありましたが、様々な困難や壁があったかと思います。それらを乗り越える上で印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。

藤山氏 : 外部との事業共創が初めての社内メンバーが多かったので、eiiconの伴走支援者から「この場合はこうですね」といったアドバイスが安心材料になったと感じます。また、ベンチャー企業との間で折り合いがつかなかったり、お互いに言いづらいことが出てきたりする場面もあります。そうした際、eiiconさんが第三者的に議論の場にいてくれることで安心感が生まれたのではないかと思いますね。

5月30日、31日に開催された事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)の様子。eiiconのメンター陣が各チームに伴走しつつ、鎌田和博氏(Spiral Innovation Partners ジェネラルパートナー)、笹原優子氏(株式会社NTTドコモ スマートライフカンパニー ライフスタイルイノベーション部長)といった外部のメンターも参加した。

▲事業共創ワークショップ(ビジネスビルド)の最終プレゼンの場には、小野薬品工業株式会社で代表取締役 副社長執行役員/経営戦略本部長兼 サステナビリティ推進部長を務める辻󠄀中聡浩氏も参加。すべての発表に対してフィードバックを行った。

参入を図るヘルスケア領域で事業化に向けた共創に着手、社内向けに具体例を示せる機会にも

――『HOPE-Acceleration2024』の最終審査会を終え、採択された2社と事業化に向け準備を進めることとなりました。現時点での成果については、どのような感触をお持ちですか。また、プログラムを通じて得られた気づきなどもお伺いしたいです。

藤山氏 : 事業創出の観点から言うと、『HOPE-Acceleration2024』を通じて出会った2社と現在、新規事業の立ち上げに向けて準備を進めています。1社とは、がん患者さんのアピアランスケアのテーマで取り組んでいます。これはもともと当社が関心を持っていた領域でしたが、自社にアセットがなく着手できずにいました。今回のプログラムを通じて出会った企業と事業に向けた検討を始める機会を得られたことは、大きな収穫だったと思います。

もう1社については、提案内容から新たな顧客課題を発見することができました。これは、当社がその企業と出会わなければ気づけなかった顧客課題だったので、新しいチャンスを得られたと感じています。私たちはがん患者さんの抱える問題を解決したいと考えているのですが、がん患者さんの課題の発見や、新規事業の検討を始めることができたことが、本プログラムの成果だと感じています。

若松氏 : 私も2社目について同意見で、新規事業を作ろうとする際、顧客課題を起点に解決できる企業を探すことが多いですが、ソリューション起点で顧客課題が見つかるケースもあると、今回のプログラムを通じて気づきました。ですから、課題だけを持って探すというよりは、逆の目線で広く探索することも重要だと感じました。

また、プログラム全体を通じて、改めて新規事業における当社の関与の仕方とその意義について、一人ひとりが真剣に考えることができました。「そのサービスを、当社が誰にどう届けるのか」という点は、いずれ考えなければならないことでしたが、このプログラムで一気に考える機会を得ることができ、私自身も多くを学びました。

▲最終審査会は、8月30日にオンライン形式で開催された。

――事業創出の観点以外では、どのような成果を得られたとお感じですか。

藤山氏 : 事業創出以外では2つあります。ひとつは社内向けの情報発信に関してです。これまで社内に対して「がん患者さん向けのトータルケアサービスを展開したい」という考えは伝えていましたが、具体例を示すことができていませんでした。このプログラムを通じて得た具体的な事例が、今後の説明材料になると期待しています。

もうひとつは人財育成の観点です。今回は社内チャレンジジョブ制度(※)を活用し、現場への知見が深い他部署のメンバーもプログラムに参加しました。約半年間の経験を通じて、「協業に向けてどう動くのか」を学べたと思います。今後、参加したメンバーが自部署に戻った際に、この経験は活かせるはずですし、その兆しは見えてきたと感じます。

※社内チャレンジジョブ制度:社員の視野拡大や人財交流等を目的に、現部署に在籍しつつ労働時間の20%を別部署での業務に充てる制度。

――初開催となるプログラムを無事に終えられました。最後に、今後の目標やビジョンについてお聞かせいただけますか。

若松氏 : 新たに立ち上げたプロジェクトを推進できる人財の確保が直近の課題でもあるので、プロジェクトマネジメントだけに限らず、社内の人財育成や教育にも注力していきたいです。

藤山氏 : オープンイノベーションは、事業領域を拡大させるための有効な手段のひとつだと思うので、この活動を定着させていくことが重要だと考えています。現状では提携数が少ないため、社内のケイパビリティを強化しつつ、より多くの提携先を作り、活動を拡大していきたいです。自社だけで新たなサービスを作ろうとは思っていないので、例えば「がん患者さんを救う」という目的を持った大きな枠組みを作り、その中で企業間連携を促進するような活動もできればと思っています。

取材後記

医薬品領域を主軸に事業展開してきた同社が、新たにヘルスケア領域へと事業拡大を目指すなかで、『HOPE-Acceleration2024』が開催されました。そして現在、プログラムを通して出会った2社と新規事業の立ち上げに向けて準備を進めているという、確かな成果が生まれています。いずれも「がんとの共生」を叶えることを目指す、新たな事業。それらが今後、どのように社会に実装されていくのか、注目していきたいと思います。

eiiconは、アクセラレータープログラムやオープンイノベーションプログラムの支援実績も豊富です。各種プログラムの開催を、企画段階から支援してほしいというニーズにもお応えしていきますので、お気軽にお問い合わせください。

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※『HOPE-Acceleration2024』に関するインタビューやレポート記事は、eiiconが運営するメディア「TOMORUBA」に掲載されています。あわせて、ご覧ください。

メインテーマは「がん患者さんとそのご家族のウェルビーイング向上」――小野薬品が創薬分野外で「がん患者さんとそのご家族、医療従事者のための価値創造」を目指すプログラムに迫る。

患者支援プラットフォーム、アピアランスケア、栄養摂取サポート、運動習慣プログラム、センサー付きデバイス――小野薬品が採択企業5社と挑む、「がん共生のニュースタンダード」を共創するワークショップに密着

「がん共生のニュースタンダード」を共創する――小野薬品による『HOPE-Acceleration 2024』最終審査会(DemoDay)をレポート!

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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  • 後藤悟志

    後藤悟志

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