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「がん共生のニュースタンダード」を共創する――小野薬品による『HOPE-Acceleration 2024』最終審査会(DemoDay)をレポート!

「がん共生のニュースタンダード」を共創する――小野薬品による『HOPE-Acceleration 2024』最終審査会(DemoDay)をレポート!

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創業から300年余り、薬業一筋で邁進してきた小野薬品工業。企業理念「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」のもと、患者さん本位の情熱は、がん治療に新たな選択肢をもたらす画期的な新薬の創製へとつながり、社会に貢献している。

そんな同社が、新薬開発にとどまらない新たなサービスを開始すべく、2024年から始めたのが『HOPE-Acceleration2024』というオープンイノベーション型事業創造プログラムだ。がん患者さんとそのご家族、がんに関わる医療従事者の課題解決に向けた新規事業を立ち上げるべく、広く共創パートナーを募集した。

エントリーの受付は2024年1月末に始まり、書類選考と面談選考を経て選出されたパートナー企業5社が、5月末に開催された事業共創ワークショップに参加(※レポート記事)。その後、描いた事業計画をもとに、約3カ月間にわたり、インタビューやアンケートを通じ顧客課題の探索や検証に取り組んだ。

そして去る8月30日、その成果と最終的な事業案を発表する審査会がオンラインで行われた(本審査会に臨んだのは4社)。――本記事では、がんと共生する時代の新たなスタンダードが描かれたイベントの様子をレポートする。

【開会の挨拶】 新規事業部門としては同社初の共創プログラム、将来の姿に思いを馳せる1日に

冒頭、本プログラムの主催者である小野薬品工業株式会社の藤山昌彦氏が、参加者らに向けて挨拶を行った。

藤山氏の挨拶によると、同社は創薬部門では長くオープンイノベーションの実績を積んできたが、新規事業部門がこうしたプログラムに取り組むのは初めてだという。初回のプログラムであることから、「どんな企業から応募してもらえるのか不安はあった」と話す。しかし、実際に取り組みを開始してみると、数多くのベンチャー企業からエントリーがあり、最終的に4社のパートナー企業に審査会へと進んでもらうことができたとし、藤山氏は「この日を迎えられたことを大変嬉しく思う」と喜びを伝えた。

また、このプログラムを開始した原点には、同社の「がん患者さん、そのご家族、医療従事者など、がんに関わる皆さんの困りごとを解決したい」という想いがある。そこで、オープンイノベーションの大きなメリットに着目し、外部の様々な知見や発想などを得て、新たなイノベーションを生み出すべく先進技術やビジネスモデルを持つベンチャー企業との共創による事業化を目指していることが説明された。

最後に、藤山氏は「本日は、ベンチャー企業と当社が一緒に取り組むと、がん患者さんやそのご家族のために新たな価値を提供できるのではないか、そういう可能性を強く感じられる日になるのではないかと思う。その将来の姿も想像しながら聞けることを、楽しみにしている」と期待を示した。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 部長 藤山昌彦 氏

【共創ピッチ】 小野薬品工業とパートナー企業のメンバーがワンチームで発表、がん患者さんたちの悩みに向き合う4つの共創事業

開会の挨拶終了後、最終審査会がスタート。小野薬品工業の担当者らと、共創パートナーの代表者がチームを組み、5月に開催された事業共創ワークショップ後に実施したニーズ検証などを踏まえて、今後、実現したいことを発表した。なお、最終審査会通過後は、PoC(実証実験)へと進む流れだ。

審査は「顧客課題と解決策の質」「競合優位性」「収益・事業持続性」「事業拡張性(市場性)」「実現可能性」「事業リスク・参入課題の抽出・対策」の6つの観点から行われ、次の7名の審査員が評価した。

・ 辻󠄀中 聡浩 氏(小野薬品工業株式会社 代表取締役 副社長執行役員/ 経営戦略本部長 兼 ビジネス デザイン部長 兼 サステナビリティ推進部長)

・ 藤山 昌彦 氏(小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 部長)

・ 小林 正克 氏(小野デジタルヘルス投資合同会社 エグゼクティブインベストメント ディレクター)

・ 錦織 正憲 氏(小野デジタルヘルス投資合同会社 インベストメント ディレクター)

・ 鎌田 和博 氏(Spiral Innovation Partners ジェネラルパートナー)

・ 笹原 優子 氏(株式会社NTTドコモ スマートライフカンパニー ライフスタイルイノベーション部長)

・ 村田 宗一郎 氏(株式会社eiicon 執行役員)

【発表タイトル】 がんをサバイブできる身体を創る 運動習慣プログラム

一つ目のチームは、がんを克服するための運動習慣プログラムを提案。パートナー企業の持つ健康管理デバイスとアプリを活用し、運動を継続してもらうことを目指す。

初期検証の対象は、運動の必要性が高いとされる乳がん患者さんで、特に副作用で体重が増加しやすいホルモン療法中設定。実際に、ホルモン療法中の方4名にインタビューを実施した結果、非常に高い評価を得ており、意識せずに運動を継続できる点が特に評価されているという。

【発表タイトル】 医療と患者の“はざま”を医療機関と解決する 患者(QoE)改善 医療機関向けソリューションプログラム

続いてのチームは、患者さん起点の医療機関向けソリューションを提案。パートナー企業が展開する看護師と患者さんのテキストコミュニケーションサービスを、医療機関を通じて導入する。院外の看護師が細やかな悩みに寄り添うことで、医療体験の質の向上を目指すという。

初期検証は、地域のがん患者さんと密接な関わりがあるものの、がん専門のスタッフが少ない中小病院に設定。まずは医療機関のニーズを確認し、サービスの有効性を検証したいと話す。この事業を通じて、医療と患者の“はざま”にある課題を発見し、それを医療機関と共に解決して、医療体験の質の向上を図りたいとした。

【発表タイトル】 がん・尿モレとの共生~「尿モレがあっても、私らしく」~

次のチームは、手術後の尿モレに悩む患者さん向けのソリューションを提案。センサーデバイスとアプリを活用し、尿モレの改善をサポートする。初期ターゲットは、子宮頸がんなどで子宮に関連する手術を受けた女性で、退院後から職場復帰の時期を想定。この時期は、相談できる医療者が少なく、自分で尿モレと向き合う必要があるためだ。

尿モレに悩む4名にサービスコンセプトを紹介したところ、好意的な反応を得られ、「1日でも早く使用したい」「自分で立ち直れるものがあれば嬉しい」との声が寄せられた。また、治療アプリの協議に関わる泌尿器科医からも「非常に有用性を感じた」と期待する声が上がっている。

【発表タイトル】 爪から患者・家族を笑顔に!~『認知』の課題を解決するスマイルギフトモール~

最後のチームは、がん患者さんの見た目の変化がQOLや治療意欲に影響を与えることを問題視。そこで、アピアランスケアサービスの開発を目指す。アピアランスケア商品の認知度が低いため、がん拠点病院などに美容冊子を配置。冊子からECサイトへ誘導し、商品を比較しながら、自分に合うものを選べる。

ニーズ調査では、患者さん本人だけでなく、家族や友人からの見舞い品としての需要も確認できたという。まずはネイルケアからスタートし、将来的には「見た目」ケア市場のリーディングカンパニーを目指したいと語った。

【審査員総評】 「社内だけでは察知できない、多くの可能性を検討することができた」

審査会の締めくくりとして、7名の審査員が総評を行った。小野薬品工業株式会社の辻󠄀中聡浩氏は、「前回のワークショップからアップデートしていただき、皆さんの熱意が伝わるプレゼンテーションばかりだった。我々も良いサービスが提供できるよう、精一杯努力したい」と述べた。

▲辻󠄀中 聡浩 氏(小野薬品工業株式会社 代表取締役 副社長執行役員/ 経営戦略本部長 兼 ビジネス デザイン部長 兼 サステナビリティ推進部長)

小野薬品工業の藤山氏は「我々が今まで気づかなかった部分で、新規事業の可能性を検討できているのは、本プログラムにエントリー頂いたベンチャー企業の皆さんのおかげだ」と感謝の意を示した。その上で、双方のビジネスが連携することで、お互いが幸せになるように、今後の進め方を検討していきたいと語った。

▲藤山 昌彦 氏(小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 部長)

医療用医薬品以外のヘルスケア事業に取り組むベンチャー企業への投資を行う、小野デジタルヘルス投資合同会社から参加した小林正克氏は「聞きながら目頭が熱くなる内容も含まれ、非常に良い機会だった。改めて、患者さんのためにできることがまだまだ多くあると、可能性を感じることができた」と述べた。

▲小林 正克 氏(小野デジタルヘルス投資合同会社 エグゼクティブインベストメント ディレクター)

同じく小野デジタルヘルス投資合同会社の錦織正憲氏は「これまで当社が察知できていなかったニーズや患者さんの課題が多く含まれており、提案いただいたことに深く感謝している。今後、事業化に向けて話し合いや検討を進められることを楽しみにしている」と伝えた。

▲錦織 正憲 氏(小野デジタルヘルス投資合同会社 インベストメント ディレクター)

Spiral Innovation Partnersの鎌田和博氏は「どのチームも、小野薬品さんとパートナー企業が発表を分担して行っている点が印象的だった。次のステップに向けて両社で協議しながら、さらに進めてほしい」とコメントした。

▲鎌田 和博 氏(Spiral Innovation Partners ジェネラルパートナー)

株式会社NTTドコモの笹原優子氏は「前回のワークショップでは、スタートアップの皆さんのコメントの方が強いように感じたが、今日は両社が交わられている様子が伝わってきた。協業がこのように進んでいくのは素晴らしい」と評価した。

▲笹原 優子 氏(株式会社NTTドコモ スマートライフカンパニー ライフスタイルイノベーション部長)

株式会社eiiconの村田宗一郎氏は「患者さんや医療現場を最優先に考えたプロジェクトばかりだった。今後、色々な人から多くの意見やアドバイスを受けることになると思うが、答えは絶対に現場の人たちが持っている。その点をしっかり追求してほしい」と伝えた。

▲村田 宗一郎 氏(株式会社eiicon 執行役員)

取材後記

『病気と苦痛に対する人間の闘いのために』を企業理念に掲げる小野薬品工業が、創薬分野以外では初めてとなるオープンイノベーション型事業創造プログラムに挑戦した。審査会の発表では、がん患者さんやそのご家族、医療従事者に対するインタビューの内容が多く共有されたが、その生の声からは患者さんたちが抱える潜在的な悩みや課題がまだ多く解決されていないと感じられた。このプログラムを通じて、患者さんや家族の希望となる解決策が一つでも多く生まれることを期待したい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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  • 後藤悟志

    後藤悟志

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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