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【ディープテック基礎知識⑨】農業の未来を変える画像解析技術の可能性

【ディープテック基礎知識⑨】農業の未来を変える画像解析技術の可能性

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様々な領域でイノベーションを起こすと期待されている画像解析技術。それは農業も例外ではありません。農業をより効率的に、より効果的に行うための多様な画像解析サービスが生まれています。

新規事業やオープンイノベーションに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい【ディープテック基礎知識】の第9弾では、農業×画像解析技術について取り上げます。どんな領域で技術が確立されてきているのか、どんなスタートアップが注目されているのか紹介するので参考にしてください。

農業における画像解析サービスの種類

まずは農業において画像解析技術がどのように使われているのか見ていきましょう。

葉色解析サービス

ドローンで農地を真上から撮影し、水稲の葉色診断をはじめとした各種AI画像解析を行い、圃場管理を効率化するクラウドサービスです。葉色の濃度から生育状況・栄養状態が測定できるという水稲の特性を活用し、葉色診断では水稲の葉色の濃淡をAI解析によって数値化して可視化できます。

減農薬栽培サービス

画像解析を用いてターゲットを絞った農薬散布を行い、結果として減農薬栽培を実現するサービス。まずドローンで空撮した圃場の画像をAIで解析し、病害虫などが検出された地点にドローンが移動して、農薬などを散布していきます。

自動収穫ロボット

収穫適期の作物を自動で収穫するロボットも開発されており、そちらにも画像解析技術が活用されています。このロボットは、AIを駆使して収穫すべき作物と枝などその他の部位を判別しながら、作物の間を自動走行します。さらに発見した作物に対してAIが画像解析し、収穫適期かどうかを判別できるのです。

画像解析技術が農業にもたらすメリット

まずは農業で画像解析技術が使われている背景を見ていきましょう。

人材不足の解消

農業従事者は年々減り続けており、このまま減り続けると今の収穫量を確保できなくなります。少ない人数でも生産性を高めて収穫量を維持するには、最新技術の活用が欠かせません。画像解析技術を使えば、少人数でも効率的に農業が行えるため、農業人材が減っても生産量を維持できます。

熟練技術の継承

農家は長年にわたって培った経験と勘を頼りに、農作物の生育状態を判断し、適切な環境を整え、水や施肥、害虫駆除といった作業を行っています。しかし、このような能力は伝えるのが難しいため、実際に何年も農業に従事するしかありませんでした。

しかし、急速に人材不足と高齢化が進む中では、より効率的に技術を伝えていかなければなりません。画像解析技術を使えば経験がなくとも、熟練者と同じような作業が可能になるため、経験が浅くても効率的な農業を可能にしてくれます。

気候変動への対策

近年は異常な高温や大雨、日照不足、冷夏などの異常気象が頻発しています。熟練の農家であっても、そのような異常気象の中で安定して農作物を育てるのは容易ではありません。これまでの経験や勘が通用しない異常気象に対策しながら農業をしていくためには、画像解析技術をはじめとしたAI技術が必要だと言われています。

生産性向上

画像解析技術を使うことで生産性も上げられます。画像解析によって農作物の生育状況がわかれば、それだけ作業を減らせますし、人よりも正確に問題を見つけられるでしょう。また、病害虫などを発見した場合は、ドローンがピンポイントで農薬を散布することで、収穫量アップを期待できます。

収穫量の予測

画像解析技術で生育状況を判断すれば、より正確に収穫量を予測できます。収穫量が予測できれば、取引先との信頼を得やすくなりますし、翌年以降の計画も立てやすくなるでしょう。より正確に収穫予測ができれば、それだけ売り上げも安定し、農業で食べていくハードルを下げてくれます。

農業に画像解析技術の課題

農業における画像解析技術の導入には、以下のような課題があります。

導入コスト

AI技術の導入には多額のコストがかかります。AIを活用したクラウドサービスはもちろんのこと、トラクターや田植え機、コンバインなどの大型農機や収穫ロボット、選別機に至るまで「AI搭載」型になると価格が跳ね上がります。

今後、AIなどを活用したスマート農業を普及していくためには、それらのコストを下げるなどして導入のハードルを下げる必要があります。

技術的な課題

画像解析技術は非常に高度な技術であり、それを農業に適用させるのは容易ではありません。特に、農業ではさまざまな要素が絡み合っており、それらをすべて把握し、適切に反映するためにクリアすべき問題は多岐にわたります。

画像解析技術で農業の生産性を上げるには、より多くのデータやサービスのアップデートが必要になるでしょう。

データの取得と管理

画像解析を行うためには大量のデータが必要です。これらのデータを効率的に収集し、管理するためのシステムが必要となります。また、データのプライバシーとセキュリティも重要な課題となります。

人材不足

AIや画像解析技術を適切に利用するためには、それらの技術を理解し、適用できる人材が必要です。高齢の農家にAIを活用してもらうために手厚いサポートが必要となりますが、現在はスマート農業のコンサルティングをしてくれる人材が足りていません。

農家のリテラシーを高めると共に、AI人材を増やすことが農業での画像解析技術の普及には欠かせないでしょう。

世界の「農業×画像解析」企業

世界では多くの「農業×画像解析技術」サービスが存在します。どのような企業がサービスを展開しているのか見ていきましょう

Blue River Technology

ブルーリバー・テクノロジー社は、2011年に設立されたアメリカの農業用マシンスタートアップ。2017年に、農業・建設用機械を製造するアメリカのJohn Deere社に買収されました。

同社が開発したSee & Sprayマシンは、画像認識アルゴリズムによって個々の作物を検出し、必要な場所にのみ除草剤を的確に噴射できます。この方法により、散布する除草剤の量を90%削減しながら、大量散布には適さない他の除草剤を利用した効果的な除草を可能にしました。

https://www.bluerivertechnology.com/

BASF

ドイツに本社を構える世界最大旧の総合化学メーカーBASF社は、画像解析技術を用いたxarvio(ザルビオ)というサービスを展開しています。衛星データとAIを活用した最先端の栽培管理支援システムで、圃場の最大活用を支援し、持続可能な農業に貢献しながら、効率化、時間短縮、栽培管理の最適化を実現するサービスです

たとえば衛星画像を解析して圃場の地力ムラ・生育ムラを確認したり、病害毎の発生リスクを予測し、予防に適した散布時期を提示してくれます。それらの機能によって収量アップやコストダウン、作業の効率化を支援しています。

https://www.basf.com/global/en.html

Harvest Automation

Harvest Automationは、アメリカに拠点を置く企業で、農業分野におけるロボット技術を開発しています。同社は世界クラスのロボット技術者の小チームによって2008年に設立されました。

同社が開発した「HV-100」は、人々と一緒に働く完全自律型ロボットです。鉢植えなどの荷物を見つけて拾い上げ、設定されたパターンに従って移動します。単に人間の指示通りに動くだけでなく、配置も最適化することで水や農薬、除草剤、肥料などの非労働生産コストも削減してくれます。

https://www.public.harvestai.com/

日本の農業画像解析スタートアップ

日本の画像解析技術を使ったアグリスタートアップについても見ていきましょう。

株式会社スカイマティクス

株式会社スカイマティクスは、AIと地理情報システム(GIS)を活用し、農業や建設測量、設備管理などのスマートDXサービスを提供しているスタートアップ。同社が提供している「いろは」は、ドローンや衛星画像を活用した葉色解析クラウドサービスです。

このサービスによって、ドローンで撮影した農地の画像をインターネット上で管理・診断できます。画像データに変換された農地を解析することで、色味を定量的に表示したり、作物個体の数や大きさを計測したり、地面の高低差を見える化したりなどを可能にしています。

https://smx-iroha.com/

株式会社オプティム

株式会社オプティムは、スマート農業の課題解決をワンストップで支援する「スマート農業プロフェショナルサービス」を開始しています。たとえば「ピンポイントタイム散布」は、日本全国で多数の防除実績がある中山間地域、平地向け・米、大豆、麦向け生産者向けの圃場別デジタル解析によるドローン適期防除サービスです。

AIやIoTを活用した様々なサービスを展開しており、そのうち圃場管理サービスでは画像解析技術を用いて、効率的な圃場管理を可能にしています。農業以外でも建設業界や医療業界のDXサービスを展開しています。

https://www.optim.co.jp/services

株式会社美らイチゴ

株式会社美らイチゴは、沖縄県で観光農園を営んでおり、2018年10月より、撮影した画像をAIで解析し、病害虫や収量予測を行うシステムの開発に携わっています。このAIのディープラーニングと画像解析を担当しているのは、先程紹介した株式会社オプティムです。

スマートフォンとAIの画像解析技術を活用し、イチゴの撮影画像から収穫予測と病害虫の検知ができる汎用性の高いシステムを確立することにより、イチゴの生産作業の最適化を図るのが目的。

具体的には、美らイチゴのスタッフが定期的にイチゴの状況を写真や動画で撮影し、それをオプティムに送信すると、オプティムがAIを用いて着果数から収量予測、画像から病害虫を検知します。その後、美らイチゴのスタッフがAIの判別結果が正しいかどうかを目視で確認し、その結果をオプティムに報告。この作業を繰り返すことで、AIはディープラーニングを行っています。

https://www.chura-ichigo.jp/

(TOMORUBA編集部 鈴木光平)

■連載一覧

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