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【ディープテック基礎知識⑥】これまでの消費を大きく変えた「プラントマテリアル」とは。国内外のスタートアップを紹介

【ディープテック基礎知識⑥】これまでの消費を大きく変えた「プラントマテリアル」とは。国内外のスタートアップを紹介

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世界的に環境意識が高まる中、環境に優しい素材や原料の商品を選ぶ消費者が増えています。多少値が張ってでも、環境に優しい商品を選ぶことは「エシカル消費」と呼ばれ、若い世代からも大きな注目を集めました。当然ながら、企業も自然由来の素材で作られた「プラントマテリアル」を販売するケースが増えています。

新規事業やオープンイノベーションに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい【ディープテック基礎知識】の第6弾では、このプラントマテリアルをピックアップ。どんな素材が商品づくりに使われているのか、どんなスタートアップが存在するのか紹介していきます。

プラントマテリアルとは

「プラントマテリアル」とは、植物に由来する種々のモノのことで、植物を素材にした衣服、紙、家具、食品などを指します、たとえば国立民族学博物館の共同研究「プラントマテリアルをめぐる価値づけと関係性」では、アサなど民族衣装の素材、カジノキ紙、発酵茶、ナットウなどが取り上げられています。

近年は持続可能性を意識した取り組みが様々な業界で取り入れられたことに、プラントマテリアルが大きな注目を集めました。たとえば植物素材の食品である「プラントベースフード」は、新型コロナウイルスの規制緩和によって外食需要や訪日外国人が増えたことで、多くの外食産業や宿泊施設で採用が進んでいます。

その市場規模は2032年までに1,117億1,000万米ドルに達し、CAGR(年平均成長率)が12.5%と予測されており、これから多くの企業が参入すると考えられています。

プラントマテリアルのメリット

なぜプラントマテリアルが大きな注目を集めているのか。その理由を探ってみましょう。

環境への負荷が少ない

プラントマテリアルの一番の価値は環境への負荷が少ないことです。製造過程での環境負荷が少ないのに加え、リサイクルしやすく、廃棄しても自然に戻ります。今は世界的に環境問題が取り上げられており、各産業で環境負荷の少ない商品作りが求められています。プラントマテリアルはそのニーズに合致しているのです。

コストを下げられる

プラントマテリアルで使われる素材の中には、これまで捨てられていた原料を使っているものもあります。産業廃棄物は処理するだけでもコストがかかりますし、そのルールは年々厳しくなっており、コストも高騰しています。

プラントマテリアルとして利用することで、廃棄するコストを下げられるだけでなく、その利益を廃棄コストに充填することで、利益構造を改善できるのです。

人体に優しい

プラントマテリアルの中には、人体への優しさを売りにしている商品もあります。アレルギーをお持ちの方でも安心して利用できる商品や、消臭・防虫効果を期待できる商品もあり、その優れた機能にも注目が集まっています。

食の可能性が広がる

プラントベースフードには、様々な素材が使われているため、食の選択肢を広げることにも繋がります。動物性タンパク質や特定の原材料・食材を使わず食品を作ることができるため、アレルギーや多様な思想・信条・ライフスタイルに対応できるのです。

プラントマテリアルの注意点

様々なメリットのあるプラントマテリアルですが、同時にデメリットもいくつか存在します。

耐久性が低い

プラントマテリアルの商品は植物でできているため、合成素材を使った製品に比べれば耐久性が低い場合があります。そのため家具など耐久性が求められる製品の場合は、合成素材と組み合わせたり、適切なケアをする必要があるのです。

価格が高い

プラントマテリアルの素材は生産量が限られているため、大量生産の商品に比べて価格が高くなりがちです。そのため、客層が経済的に余裕のある人に限られ、市場を広げる妨げになる場合もあります。

品質にばらつきがある

プラントマテリアルの素材は自然由来のものであるため、品質にばらつきが生じる場合もあります。「一点もの」とブランド化できれば武器になりますが、粗悪品が顧客の手に渡るケースがあれば、評判にも傷がつくでしょう。

栄養素の偏り

プラントベースフードは環境にも人にも優しい食品ですが、ビタミンB12のように動物性の食品にしか含まれていない要素もあり、栄養素が偏る可能性があります。

海外のプラントマテリアルスタートアップ

海外で成功しているプラントマテリアルスタートアップを紹介していきます

Ginkgo Bioworks

Ginkgo Bioworksは、2008年にボストンで創業されたゲノムベンチャー企業。2021年に上場した際には16億ドルを調達しており、カリフォルニアやオーストラリア、フランス、オランダ、スウェーデンなどを研究拠点として、世界最大規模のゲノム開発事業を展開しています。

Sumitomo Chemical(住友化学)ともパートナーシップを締結し、合成生物学を用いて機能性化学物質を開発する新しいプログラムを発表しています。2021年以来、Ginkgoの合成生物学プラットフォームを使用して、個人用品や化粧品から農業や製薬に至るまでの業界で製品の生産に協力してきました。本プロジェクトは両社間の3つ目のプロジェクトの開始を示し、発酵による機能性化学物質の大量生産を可能にすることを目指しています。

https://www.ginkgobioworks.com/

Amyris

Amyrisは、アメリカの合成バイオテクノロジー企業。世界をリードする持続可能な成分の製造業者です。酵母菌等を用いてサトウキビなどの糖類を高付加価値の成分に代謝させる技術を持っており、合成生物学的手法を用いた再生可能化学品を製造、販売しています。

現在は合成生物学的手法を用いた再生可能化学品を製造、販売を行っており、ブラジルで再生可能ディーゼル燃料とジェット燃料を製造、販売も行っています。

https://amyris.com/

NotCo

NotCoはチリのフードテック企業で、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾスらも出資しているユニコーン企業。動物性たんぱく質の風味などを植物性成分の組み合わせで再現する独自AIプラットフォーム、「Giuseppe(ジュゼッペ)」を開発しています。

代替ミルクの「NotMilk」、代替パテの「NotBurger」、代替チキンの「NotChicken」といったブランドを展開しており、米国で12の特許を取得しています。2025年をめどにIPOを計画しており、それに向けて積極的な準備も進めています。

https://notco.com/

国内のプラントマテリアルスタートアップ

国内プラントマテリアルスタートアップについても見ていきましょう。

TBM

TBMは、石灰石から生まれた環境配慮素材「LIMEX(ライメックス)」と資源循環ビジネスを展開している日本のユニコーン企業。プラスチックや紙の代替となる素材で、排出量を可視化することができます。

SDGsの広がりや世界全体で気候変動や資源枯渇問題の深刻化が懸念される現在、サステナビリティ(持続可能性)を経営の根幹に据えて、環境配慮型の素材・資源循環ビジネスを通じて、脱炭素と循環型社会の形成を目指しています。

https://tb-m.com/

ファーラメンタ

ファーメランタは、植物から抽出されている成分を微生物生産法に置き換え、環境負荷が少なく、より安価なコストで原料生産を目指すスタートアップ。世界のスタートアップの多くが「酵母」を使っている中、同社は「大腸菌」によるプラントマテリアルを生産しています。

同社の研究を率いる石川県立大学チームは、15年以上大腸菌への遺伝子導入を検証し、プラントマテリアル生産成功の実績を残してきました。世界的に見れば市場の後発組でありながら、高単価で取引されるプラントマテリアルで独自のポジションを狙っています。

https://fermelanta.com/

アルガルバイオ

アルガルバイオは、東京大学における20年以上の研究成果を基に創業された藻類バイオテックベンチャー。従来の特定の藻類を活用してきた企業とは異なり、同社は藻類ライブラリーを駆使してニーズに合わせた製品を開発しています。

大きく「健康」「食糧」「環境」の3つの領域で事業を展開しており、サプリや化粧品、代替タンパクやCO2の回収など幅広い分野で藻類を有効活用しています。また、自社でもサプリメントを開発しており、これまで活用されてこなかった藻類の可能性を最大限に広げる予定です。

https://algalbio.co.jp/

(TOMORUBA編集部 鈴木光平)

■連載一覧

第1回:【ディープテック基礎知識①】SAR衛星が地球観測にもたらした革新とは?活用事例と開発企業を紹介

第2回:【ディープテック基礎知識②】幅広い領域で利用される「ゲノム編集」の活用事例とは?国内スタートアップと併せて紹介

第3回:【ディープテック基礎知識③】医療業界を革新すると期待される「IoMT」の可能性とは。その種類と国内スタートアップを紹介

第4回:【ディープテック基礎知識④】世界の食糧問題を解決する『培養肉』の可能性とは。注目スタートアップを紹介

第5回:【ディープテック基礎知識⑤】宇宙産業の大きな妨げとなる「スペースデブリ」とは。解決に向けた取り組みを紹介