サステナブルな価値の提供を目指す旭化成の共創プログラムが始動!ポリマーエアロゲルシート、高品質リサイクルポリアミド66(PA66)、セルロース連続長繊維不織布、バイオマス原料由来のプラスチック開発、新規ケイ素材料といった多彩なテーマを深堀りする。
マテリアル・住宅・ヘルスケアという3事業を柱として、多様な分野に事業を展開する旭化成株式会社。2022年に100周年を迎えた同社は、技術領域の幅広さや高い技術力で世の中に貢献している。
その旭化成が、世の中に求められるサステナブルな価値の提供を目指すオープンイノベーションプログラム『Asahi Kasei Value Co-Creation Table2023』を昨年度に引き続き、スタートさせる。「次の100年に向けた明日の一歩」として、何ができるかを、パートナー企業と共にオープンにディスカッションをするプログラムだ。今回募集するテーマは、以下の5つとなる。
【テーマ1-1】 ポリマーエアロゲルシートの新たな活用方法の探索
【テーマ1-2】 高品質リサイクル「ポリアミド66(PA66)」の活用方法探索とエコシステム構築
【テーマ1-3】 セルロース連続長繊維不織布「ベンリーゼ」の活用方法の探索
【テーマ2】 新たなバイオマス原料由来の環境配慮型プラスチック開発
【テーマ3】 透明・光学樹脂の加工技術パートナーの探索
【テーマ1-1~1-3】では、旭化成が保有する素材技術や製品の特長を活かせる用途や、参入を目指す市場の課題・ニーズを共創パートナーと共に探索し、共創パートナーの持つ技術やその市場の知見などのリソースと掛け合わせ、新たな価値創出を目指す。
【テーマ2】は、旭化成の技術開発力を活用できる新たな原料の探索や、原料を新素材として活用するための技術開発ニーズの探索といった、パートナー企業の持つ原料と旭化成の素材開発力を活用して新たな製品、市場の開拓を目指すものだ。
【テーマ3】は、旭化成が開発を進める新規ケイ素材料の活用に向け、部材やモジュール開発に必要な加工技術(コーティングや薄膜・微細加工プロセス等)を持つ企業との共同開発・研究といった共創パートナーの探索を進める。
――今回TOMORUBAでは、5つのテーマオーナーにインタビューを実施。各テーマの詳細や課題、共創パートナーと共に実現したいことなどについて伺った。
<テーマ1-1>ポリマーエアロゲルシートの新たな活用方法の探索
――まずは本テーマを扱う「研究・開発本部 先端技術研究所」のミッションについて教えてください。
森氏 : 新しい素材の探求研究から、次世代の事業化推進までを幅広く行う組織です。そのなかで今回の我々のテーマは、0→1です。世の中にない素材を、特定用途に向けて開発検証しています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端技術研究所 機能性材料・膜システム技術開発部 主査 博士(理学) 森裕貴 氏
――本テーマで掲げられている「ポリマーエアロゲルシート」は、どのような特徴を持つ素材なのでしょうか。
森氏 : 2019年ごろ、特定用途で求められる材料の性能に対して、既存の素材では到達できないことがわかってきました。そこで私たちの所属する部署が持つノウハウや知見を活かして、目標に到達しうる新しい素材の検討を始めたのです。その結果、新たなポリマーエアロゲルシートが生まれました。これは従来のものが同時に併せ持つことができなかった性質、例えば耐熱性と軽量性、透明性と強度を同時に備えることができます。
活用用途として一番考えられるのは、透明の断熱材です。従来のものはガラスと同じ素材を基本としていましたが、そのために曲げられませんし、大きな面積に塗布することができません。しかし私たちのポリマーエアロゲルシートは、曲げることができ、薄く塗布することができるという、柔軟性と成形性を持ちます。
――共創によって実現したいことをお聞かせください。
山下氏 : 私たちは研究開発畑の人間ですから、材料の特性を明確に示すことはできますが、そこから先の応用範囲を検討するのには限界があります。そのため本プログラムでは、外部の視点から今回の材料がよりよくフィットするアイデアを一緒に考えていくことを期待しています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端技術研究所 機能性材料・膜システム技術開発部 上級高度専門職 博士(工学) 山下順也 氏
――どのような共創相手をイメージしていますか?
森氏 : 当社は素材メーカーであるためBtoBがメインですが、より川下のメーカーさんや、BtoCで付加価値を生み出していくようなパートナーもイメージしています。分野としては、断熱材、電子材料系、航空宇宙系など、幅広い企業や研究機関をイメージしています。
山下氏 : 可能性は検証する必要がありますが、透明材料であるため医療業界にも活用できる可能性があると考えています。
――共創相手に提供できるリソースと活用ポイントについてお聞かせください。
森氏 : 私たちの方で、基礎的な取り扱いはある程度確立しています。共創パートナーのアイデアに応じた成形や加工プロセス、樹脂の組成の変更など、技術的な相談に対応することができます。
山下氏 : ある用途が見つかり、「もっとこうした物性が欲しい」という要望があれば、チューニングできると考えています。全体の形状も柔軟に対応します。もう一つ、「こういうことが期待できるが、物性はどうか」という質問があれば、外部機関を活用してデータを測定することが可能です。
――最後に、応募を考えている企業にメッセージをお願いします。
森氏 : 私たちは素材メーカーですが、アイデアの幅には限界があります。そのため、私たちが思いつかないようなアイデアをぜひ出していただきたいですね。特に昨今、時代の流れが速く、単独では変化のスピードについていけない危機感があります。今回の共創で、アイデアの検討を加速させることができればと思います。
山下氏 : ポリマーエアロゲルシートは、特徴のある面白い材料です。そのため、もし「突飛なアイデアかな」と思っても、少しでも可能性があればぜひご提案ください。私たちも真摯に対応し、可能性を考えていきますので、ご提案をお待ちしております。
<テーマ1-2>高品質リサイクル「ポリアミド66(PA66)」の活用方法探索とエコシステム構築
――今回のテーマについてお聞かせください。
宮武氏 : 私たちは当社が事業として展開しているポリアミド66(PA66)のリサイクル技術を開発しています。リサイクルを行う理由としては、会社の責任として作っているものを廃棄するのではなく使い続けることが重要だと考えているからです。今回のテーマは、そこにアプローチするものです。
リサイクルには2通りあります。ひとつは、様々なところに使われている材料からポリマーを取り出し、ポリマーのまま再利用するマテリアルリサイクルです。もうひとつは、ポリマーを解重合してモノマーに戻し、そこからまたポリマーを作ってものづくりをするケミカルリサイクルです。今回のテーマは、前者のマテリアルリサイクルに関する案件です。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 化学・プロセス研究所 新素材開発部 主幹研究員 宮武令 氏
――ポリアミド66は、どのようなところに使われているのでしょうか。
宮武氏 : エアバッグ、自動車のエンジン回り、タイヤの骨組み製造に使用するタイヤコード、、アパレル、など様々な用途・形態で複合素材として活用されています。私たちは、そこから選択的にPA66を取り出し、精製する技術の開発をしています。これまでエアバッグ用のシリコンコート布は再利用しにくく破棄されていましたが、私たちのプロセスを通すと、取れたPA66で糸を引くことができますし、その糸を使ってもう一度エアバッグを作るところまで実装できている段階です。こうした事例は世界的に見てもあまり例がなく、そこが技術の強みとなっています。
――共創パートナーとしてイメージしている企業をお聞かせください。
宮武氏 : ひとつは、リサイクルしたPA66を、粉末やペレット・糸にすることは私たちの技術でできます。それを活用いただけるユーザー様との共創です。
また、私たちのプロセスを通して取れるPA66の粉末は、もともとの耐熱性や強度があることに加え、多孔質という物性があります。そして粉末として粒度分布を制御することが出来ます。ですので、そうした特徴を活かした新しい用途を検討していけるパートナーにも出会いたいと考えています。
一方、リサイクルをするうえで原料調達は重要な課題です。車回り、アパレルなど様々なところからどう回収していくかも課題です。そのリサイクルの原料を提供していただけるパートナーとのつながりも作りたいですね。業界は絞らず、広く可能性を探っていきたいと考えています。
――多孔質という特性には、どのような利点があるのでしょうか。
宮武氏 : ひとつは、表面積が大きいことです。そして、この粉末そのものがリサイクル品であるため、同じような物性を持つリサイクル品ではない素材よりも高付加価値をつけることができます。ただ、これがすべての利点ではないと思いますので、もしこのPA66を触っていただき、物性を活かしたアイデアを頂ければありがたいですね。多孔質性、粒度分布はある程度制御することができます。
――パートナーに提供できるリソース、アセットについて教えてください。
宮武氏 : 私たちのプロセスはまだ開発中ですが、基礎技術は確立しつつあるため、来年度はスケールを上げたパイロット設備での実証を計画しています。そこが着実に進めば、サンプル供給の体制もできます。また、例えば原料複合素材にPA66がどの程度含まれているのかという解析技術や、多孔質性・粒度分布など物性をある程度制御できるプロセスの開発は、アセットとして提供できます。
――最後に、パートナー企業へのメッセージをお願いします。
宮武氏 : 本テーマのPA66はリサイクルでできたものであり、物性も特徴的です。そのため、採用していただくことで、共創パートナー様のサステナビリティに貢献できると思います。本製品に触れていただくことで、当社だけでは見つけられなかったニーズを探り当てられたらと思っています。少しでも興味をお持ちいただけたら、ぜひご応募ください。
<テーマ1-3>セルロース連続長繊維不織布「ベンリーゼ」の活用方法の探索
――本テーマを扱うベンリーゼ営業部のミッションについてお聞かせください。
森嶋氏 : ベンリーゼという付加価値の高い不織布を販売しています。比較的高単価であることから、単純に「モノ売り」というよりも、いかにその価値を提供するのかを主眼に置いた「コト売り」を行っています。ブランドメーカーやユーザーと直接対話をしながらニーズを引き出し、そこにベンリーゼの持つ強みをマッチアップさせていくことが私たちのミッションです。
また、直接営業だけでは限界があるため、商社や加工場などの販路を通して、完成品を最終ユーザーに提案することも行っています。フェイスマスク、ガーゼ、クリーンルーム用ワイパーなどの用途で、旭化成の商標を活用し、ブランディングにも力を入れています。
▲旭化成株式会社 ライフイノベーション事業本部 ベンベルグ事業部 ベンリーゼ営業部 部長 森嶋誠 氏
――ベンリーゼにはどのような特徴があるのでしょうか。
森嶋氏 : ベンリーゼは、50年の歴史があります。優れた生分解性、吸液性、保液性、低リント性、湿潤時の柔軟性や透明性といった、尖った性能を発揮できる、旭化成ならではの素材です。そのため、先ほど挙げた用途の中でもニッチな製品に使われています。汎用的な用途で大量に販売するというよりは、ニッチな領域に響いていますね。特に、そのジャンルの中でのハイエンド製品に活用されています。
――共創パートナーと実現したいことについてお聞かせください。
加藤氏 : 森嶋が話したように、ベンリーゼはニッチなニーズに合致したときに価値が創出され商品になります。ただ、ニッチなニーズを我々だけで見つけることは難しいため、今回のプログラムに参加してベンリーゼを広く知っていただき、ニーズを引き出してマッチングできたらと考えています。
▲旭化成株式会社 ライフイノベーション事業本部 ベンベルグ事業部 ベンリーゼ営業部 第二担当 課長代理 加藤拓也 氏
有賀氏 : ベンリーゼは50年の歴史がありますが、ずっと同じ用途に活用されていたわけではなく、その時々でメインの製品用途が変遷しています。長くビジネスを続けるには、次の柱になる用途が必要です。しかし、その柱は私たちだけで検討するのには限界があるため、様々なアイデアを頂きたいと思っています。
▲旭化成株式会社 ライフイノベーション事業本部 ベンベルグ事業部 ベンリーゼ営業部 部付 有賀三起子 氏
――共創パートナーとしてイメージしている相手についてお聞かせください。
森嶋氏 : ニッチなニーズに合致するものなので、特定の業界ではなく幅広く募集をしていきたいと思います。その中でも強いて挙げるとすれば、ネガティブエミッション関連分野や、生分解性を活かせる分野、食品関係の資材などは、未開拓であるためチャンスがあると思っています。そういった用途で共創をしていける企業をイメージしています。
梅氏 : ベンリーゼは特殊な素材ですから、ハンドリングも加工も他の素材とは異なる難しさがあります。お客様にそのまま素材を渡して使って頂けないこともままあると思いますので、ニーズをお互いに探りながら、一緒にモノづくりをしていきたいですね。
▲旭化成株式会社 ライフイノベーション事業本部 ベンベルグ事業部 ベンリーゼ営業部 部付 課長代理 梅翔午 氏
――共創パートナーに提供できるリソースについてお聞かせください。
森嶋氏 : ベンリーゼには、各分野のハイエンド製品に活用されてきた実績の中で培われたノウハウがあります。サービス、サポート、品質、ブランド、そのようなノウハウの提供が可能です。
有賀氏 : 旭化成には、ベンリーゼ以外の不織布もあるため、社内で横連携して全体の知見も活用しながら共創に取り組めると考えています。
加藤氏 : 当社は原反メーカーであるため、さまざまな加工業者や商社ともお付き合いがあります。ベンリーゼの活用用途についてご提案を頂けるパートナー様に、「こういう形に加工できないか」「こういうものと複合させられないか」といったご要望があれば、当社のネットワークや知見を使って実現していくことができるかもしれません。あるいは、加工業者さんから手を挙げていただくことも期待しています。
――最後に、今回のプログラムへの期待、そして応募企業へのメッセージをお願いします。
森嶋氏 : 短期的な視点では、脱プラスチック用途で、石油由来の不織布の代替ニーズが多いです。そして中長期的には、サステナブル社会に貢献できる素材として、興味を持っていただけるようなメーカーとの共同開発も進めていきたいです。
加藤氏 : ベンリーゼは、当社でしか製造していない素材です。だからこそ、私たちと一緒にベンリーゼを使った開発をする先には、他社には真似できないものができる可能性があると思います。難しいですが、ぜひ一緒にチャレンジしていきましょう。
梅氏 : オンリーワン素材だからこそ、ニーズと特徴が合致したときには唯一無二のものができると信じています。ぜひ、一緒に探索していけるような共創パートナー様と組んでいきたいですね。
有賀氏 : 様々な業界から手が挙がることを期待しています。私たちがこれまで参入していなかった領域に入ることで、より広く社会に貢献できるはずです。ぜひご応募ください。
<テーマ2>新たなバイオマス原料由来の環境配慮型プラスチック開発
――本テーマを掲げる「化学・プロセス研究所 新素材開発部」のミッションと、テーマの概要についてお聞かせください。
米田氏 : 化学・プロセス研究所 新素材開発部は、その名の通り新しい素材の開発を行う部門です。高分子化学とバイオテクノロジーを基盤技術として、様々な素材開発を進めています。昨今、材料開発にもサステナビリティが求められておりますが、バイオマス原料活用はそのためのアプローチの一つです。
しかしながら、私たちは技術開発に関しては自信を持っておりますが、原料であるバイオマスの選定や利用に対してはまだまだ取り組みが足りないと感じています。そこで、オープンイノベーションを活用して、より原料側にもアクセスしていきたいと考えています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 化学・プロセス研究所 新素材開発部 主幹研究員 米田久成 氏
――原料であるバイオマスにアクセスすることは難しいのでしょうか?
米田氏 : 近年、さまざまなバイオマス資源が提唱されてきていますし、原料調達自体が難しいわけではありません。我々は機能性材料や高付加価値材料など、さまざまな素材の開発を行っていますが、それらに適したバイオマス資源の選定が難しいのです。ここをパートナー企業・団体と一緒に進めていけたらと思っています。
――どのような企業と共創をしていきたいですか?
米田氏 : 例えば稲わらやもみ殻、米ぬかやコーヒーかす、リグニンといったバイオマスを取り扱ったり、余剰に抱えたりしている企業や自治体です。あるいはもっとニッチなものでもいいかもしれません。
現在は燃やしたり、廃棄したりしているだけのものを、当社で活用することで新しい機能性材料の創生に結びつくかもしれません。「何かに使えないだろうか」「燃やすだけでは勿体ない」という方々の声を繋げていければと思います。
バイオマスの場合、場所によって組成が異なったり、時期によって純度や品質などにバラつきがあったりしますので、これまでは利活用が限定されていたかもしれません。当社の素材開発を通じて新たな知見が得られれば、パートナー企業・団体にも新たな広がりが生まれるのではないかと考えています。
――共創において提供できるリソースについても教えてください。
米田氏 : 私たちは新素材開発に注力した組織です。材料の高機能化・高付加価値化に向けて、重合、変成、分離精製などを行って参ります。
例えばペレットやフィルムに加工して力学特性、熱特性や光学特性を測定するなど、一連の材料評価サイクルを提供できます。検討を通して例えばバイオマス中の有効成分の特定などに繋がるかもしれません。こういった一連の技術開発サイクルを一緒に回せていけたらと思います。
――最後に、応募企業へのメッセージをお聞かせください。
米田氏 : バイオマスを使ったモノづくりは、適材適所で進めていく必要があると思っています。どこかにまだ価値を活かしきれていない原石が眠っていると思います。ぜひ一緒に磨いていけたらうれしいです。
<テーマ3>透明・光学樹脂(新規ケイ素材料)の加工技術パートナーの探索
――まずは、今回のテーマで実現したいことについてお聞かせください。
山内氏 : 私たちが開発した新規ケイ素材料は透明で熱や光への耐久性も非常に高いといった特徴があり、これらの特徴を活かして先進デバイスの用途展開を目指しています。具体的な用途のイメージとしては、光学部品、情報通信関連のデバイス、センサーなどです。この新規ケイ素材料は塗布して固めて使用できますが、こういった先進デバイスへ適用するには、よりきれいに塗布したり、微細な加工を行ったりすることが必要となります。
私たちは材料の設計や合成を得意としていますが、そういった加工プロセスの開発を自前ですべてやるには限界があります。加工技術を持つパートナー企業と共創し、材料のポテンシャルを引き出して、具体的な用途に繋げていきたいと考えています。また、このような新規材料を活用してみたいというデバイスメーカーからのアプローチにも期待しています。
▲旭化成株式会社 研究・開発本部 化学・プロセス研究所 新素材開発部 主幹研究員 山内一浩 氏
――共創パートナーとして、どのような企業をイメージしていますか?
山内氏 : 材料をきれいに塗布したり、薄く塗布したりする加工技術を持つ企業、あるいは微細パターンの表面加工が得意な企業は、重要な共創パートナーと考えています。デバイスメーカーについては、特にターゲットを絞らず、間口を広くして募集していきます。最先端の材料は何に活用できるか未知数であることが多いため、「一度試してみたい」というところにお声がけいただきたいですね。
米田氏 : 例えば、「クリーンルームや露光装置など、設備やインフラがあるのだけど活用しきれていない。」と考えていらっしゃる企業などもマッチするのではないかと思います。
――今回の共創で提供できるリソースについてお聞かせください。
山内氏 : 加工するにあたり、「こういった特性が欲しい」という要望があれば、材料の最適化、チューニングが可能です。それが、材料メーカーの強みだと思います。
米田氏 : 私たちは新素材に特化して研究開発をしているため、材料の開発力だけでなく、解析や評価、化学品に関する法対応なども高いレベルでフォローできます。そういった無形の価値も提供できるリソースになるのではないでしょうか。
――プログラムへの期待や、応募企業へのメッセージをお願いします。
山内氏 : この新素材を設計した段階では予想していなかったのですが、この材料は最先端の用途に活用できることがわかっています。最先端の材料は、実際に使って評価してみなければわかりません。ポテンシャルのある材料だと思っていますので、少しでも興味を持ったのであればお声がけいただければと思います。
米田氏 : 私たちは、加工技術を持った会社やデバイスメーカーとのつながりが余り強いわけではありません。この機会をぜひ活かして是非良い共創パートナーと出会いたいと考えています。良いコラボレーションができるよう期待しています。
取材後記
世の中のどこにもない素材、歴史と突出した特徴のある素材、材料メーカーだからこその高度な技術など、旭化成の独自性の高い素材や技術を結集させたようなテーマ設定だ。それだけに、共創アイデアがぴったりと嚙み合えば、とてつもない価値が生まれる可能性がある。各テーマオーナーが話していたように、少しでも可能性を感じ、興味を持ったなら、ぜひディスカッション面談に申し込んで欲しい。
※『Asahi Kasei Value Co-Creation Table2023』の詳細は以下よりご確認ください。
https://eiicon.net/about/asahi-kasei2023/
(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)