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旭化成の研究開発部門が研究技術・実証フィールドなど多くのリソースを提供するOIプログラムを開始!森林資源、セルロース防音材・多孔粒子、深紫外線という3つのテーマ詳細に迫る。

旭化成の研究開発部門が研究技術・実証フィールドなど多くのリソースを提供するOIプログラムを開始!森林資源、セルロース防音材・多孔粒子、深紫外線という3つのテーマ詳細に迫る。

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1922年に創業した旭化成株式会社。滋賀県膳所での繊維製造と、宮崎県延岡での合成アンモニアの製造をルーツに、幅広い事業領域にて数々の製品を世の中に提供してきた。一般的に知られているところだと、「サランラップ(R)」やスーツの裏地などに使われる「ベンベルグ(R)」、それに戸建て住宅「へーベルハウス(TM)」も旭化成ブランドだ。

今年で100周年を迎え、マテリアル・住宅・ヘルスケアという3事業を柱とする同社だが、新領域開拓に向けた研究開発にも余念がない。年間987億円(2021年度実績)にもおよぶ研究開発費を投じ、マテリアルやヘルスケア領域を中心に、幅広い分野で最先端の研究を日々行っている。

そんな旭化成がオープンイノベーションプログラム『Asahi Kasei Value Co-Creation Table』を開始する。“次の100年に向けた明日の一歩”を模索するにあたり、様々なパートナーと共創を前提に、オープンにディスカッションを行う取り組みだ。対象はスタートアップに限らず、アイデア段階からもディスカッション可能。現時点でプロダクトやソリューションがなくても申し込み可能だという。募集テーマは以下の3つ。旭化成グループの研究開発部門のメンバーらと直接対話できること、実証フィールドの提供を受けられることなどが、大きな特徴となっている。

【テーマ①】 森林資源を活用した新たなカーボンニュートラルの仕組み構築

#カーボンニュートラル #森林活用 #CO2クレジット #バイオマス #DX #脱炭素推進企業 #林業 #木材流通

【テーマ②-1】 植物由来の素材を用いて、空間を快適に(セルロース防音材)

#モーター・自動車の部品部材メーカー #家電の部品部材メーカー#住宅の部材メーカー #静かで快適な環境を実現したい企業

【テーマ②-2】 植物由来の素材を用いて、空間を快適に(セルロース多孔粒子)

#食品検査 #食品・飲料メーカー #医療現場の衛生管理 #衛生管理を実現したい企業

【テーマ③】 次世代の「光」を用いた、新しいソリューションで、さまざまなくらしや産業を革新する。

#光学機器・医療機器・医薬品メーカー #ヘルスケア・生活用品メーカー #抗菌・殺菌 #衛生ケア #製造業



TOMORUBAでは、本プログラムの事務局メンバーとテーマオーナーにインタビューを実施。プログラムを開催する意図や、各テーマの設定背景、共創イメージについて聞いた。


「価値の共創」を通じて、サステナブル社会に向けた一歩を踏み出す

まず、事務局メンバーに『Asahi Kasei Value Co-Creation Table』の狙いやゴール、参加メリットについて伺った。


――本プログラムの開催背景からお聞かせください。

永瀬氏: 旭化成グループでは、様々なパートナーとつながりながら事業ポートフォリオを転換し、社会・環境の変化やニーズに対して、昨日まで世界になかったものを提供してきました。

そうしたなか、これからのサステナブル社会の実現に向け、これまで当社の事業と関わりのなかった企業とも共創し、未来の社会に見合った新しい価値をともに考え、新たな事業構想につなげる場を設けたい。このように考え、本プログラムを開始することにしました。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 技術政策室 新事業戦略部 マネージャー 永瀬 裕康 氏

佐伯氏: 本プログラムのポイントは、「価値の共創」にあると考えています。私たち旭化成グループは従来、価値の基準をモノのスペックや価格だと捉え事業を続けてきました。しかし、今後は少し変わってくると思います。サステナブルという言葉がよく使われるようになりましたが、サステナビリティの価値を決めるのは誰かというと、私たちメーカーではありません。おそらく、お客さまでもないでしょう。その価値は、社会が決めていくものだと思います。

そう考えると、社会全体でつながって価値をつくっていかねばならない。そのためのオープンイノベーションだと捉えています。そこで、従来の研究開発の手法とは異なる、新しい手法を試してみるトライアルとして、本プログラムを開始することにしました。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 技術政策室 新事業戦略部 戦略グループ グループ長 佐伯 友之 氏

辻󠄀氏: サステナビリティという文脈になると、今までの事業のメトリクスは大きく変わってくると思います。そうすると、新しいバリューチェーンや新しいエコシステムが構築されてくるはずで、その可能性を探っていきたいというのが、今回の取り組みの背景にある考えです。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 技術政策室 新事業戦略部 部長 辻󠄀 秀之 氏 博士(地球環境学)

――現在、様々な種類のオープンイノベーションプログラムが存在します。『Asahi Kasei Value Co-Creation Table』の特徴や、共創パートナーから見たメリットは、どのような点にありますか。

永瀬氏: このプログラムの特徴は、旭化成グループが推進する新規事業のミッシングパーツを探すだけではなく、新たな事業構想に向けた可能性を探索する点にあります。ですから、共創パートナーの皆さまとは、最適なゴール設定を行うところから議論を開始し、共創検討を行っていくことができると考えています。

また本プログラムでは、当社グループの研究開発部門がテーマ設定に参画しています。現状の課題を熟知した技術者と直接議論ができることが大きな特徴です。加えて、旭化成グループが保有する自然資産や研究所、工場といったアセットを用い、実証検討を行えることもポイントのひとつです。

佐伯氏: 私たちの所属する研究・開発本部内には、様々な分野にまたがる7つの研究所があり、それらと連携することができます。また、お客さまと接点を持ち、製品を販売しているのは事業本部ですが、私たちが間に入って事業本部につなぐこともできます。旭化成グループは非常に多角化しているので、多様なアセットをご紹介できると思いますね。

辻󠄀氏: 現在、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域が、旭化成グループの柱となっています。そのなかでも、非常に細分化された多彩な事業を展開しているので、そうしたチャネルもご活用いただける可能性はあります。

――今回の共創で目指しているゴールについては、どのようにお考えですか。

佐伯氏: 当社では、3~5年毎に中期経営計画(中計)を定め、研究・開発を進めています。今年度、新たな中計がスタートしたばかりですが、今回のプログラムに期待しているのは、次の中計のなかに盛り込める核となるテーマを生み出すこと。つまり、本プログラムを通じ、次の事業の柱となるテーマの候補を探索したいのです。そのために、社外のパートナーの皆さんと一緒に、「価値の共創」を進めていければと考えています。

永瀬氏: 共創パートナーの皆さまとは、技術視点だけではなく新たな事業構想という視点で、共創の可能性を探索していきたいです。新たな事業構想として議論が進展すれば、共同研究に向けた開発環境整備も進め、事業化に向けたゴールを目指していければと思います。

テーマオーナーに聞く――共創イメージや提供できるリソース・アセットとは

続いて、今回募集する3つのテーマの担当者にインタビューを実施し、テーマ設定の背景や共創イメージについて聞いた。(テーマ②のインタビューはオンラインで実施)

【テーマ①】 森林資源を活用した、新たなカーボンニュートラルの仕組み構築

――本テーマを設定したきっかけからお伺いしたいです。

赤木氏: きっかけは、創業100周年を記念して宮崎県延岡市で行った、市民参加型の未来を描く活動でした。そのなかで出てきた未来像が、森林を活用していこうというもの。延岡市には豊富な森林資源があり、林業がさかんではあるのですが、一方で活用されずに放置されている森林が多く存在しています。

こうした未活用森林は延岡市に限った話ではありません。全国的な課題である未活用森林を使って、新規事業を創出したいというのが、本テーマの背景にある想いです。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 技術政策室 新事業戦略部 研究員 赤木 優子氏

――共創を通じて実現したいことは?

赤木氏: 今回のプログラムでは、森林によるCO2吸収を活用して、企業活動のGHG(温室効果ガス)削減につなげられる仕組みの構築に取り組みます。すでにメーカー各社においてGHGを削減する活動は進めていますが、最終的にカーボンニュートラルを目指すためには、CO2クレジット等を利用しオフセットする必要があると考えています。

ですが、単に市場に出回っているクレジットを買ってくればいいのかというと、それだけでは環境に貢献しているとは言えません。重要なのは、森林が適切に整備され、活用された結果としてクレジットが創出され、その価値がさらに森林の整備に還元される。こうしたエコシステムを構築することだと思います。

今回のプログラムでは、色々な企業の皆さんの力を借りて、このエコシステム構築に向けたディスカッションを開始したいと思っています。

――CO2クレジット創出・活用のエコシステムを構築するにあたり、現段階で把握できている課題はあるのでしょうか。

赤木氏: 今、分かっている範囲では大きく3つの課題があります。1点目は「クレジット創出」に関してです。クレジットを創出するには、森林状態の把握や吸収量のモニタリングなどを適切に行う必要があります。しかし、森林所有者にヒアリングをした際、「非常にコスト・労力がかかり大変だ」とおっしゃっていました。ですから、クレジット創出のプロセスを、採算が取れる形でどう効率化するかが課題だと思います。例えば、低コストで簡易的な吸収量測定、森林所有者に価値を見える化し森林を集約化、クレジット認証プロジェクト全体の効率化等が考えられるかと思います。

2点目が「クレジットの活用」で、現状だと一部の環境意識の高い企業だけが、クレジット活用を行っている状況です。せっかく創出したクレジットが、十分に活用されていません。ですから、例えば企業でコンソーシアム等を形成し、クレジットが活用されることが保証されるような仕組みが求められているように思います。

3点目が「クレジットの価値還元」で、クレジットの価値を、特に収益化が難しい植林や育林等において森林整備が進む方向に還元する仕組みが必要だと考えています。

加えて、クレジットだけでは経済は回っていかないので、クレジットの創出だけではなく、素材として木材が適切に使われる仕組みづくりも手がけていきたいです。地産地消で木材の活用が進めば、GHGの削減にもつながりますし、地域貢献にもなります。旭化成でバイオマス発電所を所有しているので、まずはバイオマス燃料の安定的な供給スキームも一緒に考えていけたらと思っています。例えば、適切な森林の抽出、伐採から育林までの森林サイクルのマネジメント、林地残材などの未活用資源マネジメント等が考えられるかと思います。

――どのような共創パートナーをイメージされていますか。

赤木氏: 共創相手としては、クレジット創出の効率化・クレジット活用や、バイオマス燃料の安定的な供給スキームの構築、全体のエコシステム構築についてのアイデアやソリューション、要素技術を持っている企業をイメージしています。あるいは、一緒にクレジットの需要を高めていける企業。それに、林業の現場を把握している企業や自治体ともディスカッションを行いたいです。アイデア段階からもディスカッションしていきたいので、現時点でプロダクトやソリューションがなくても積極的にお話ししていきたいと思っています。

――活用できるアセットについては、いかがでしょうか。

赤木氏: 当社の保有する森林やバイオマス発電所を、実証実験の場として使うことができます。創出したクレジットを旭化成で活用することも検討可能なので、創出から活用検討までの一連の流れを検証することもできるでしょう。

また当社では、工場IoTやマテリアルズ・インフォマティクスなど、様々な分野でデータ活用の研究開発を行っています。森林データの分析・活用において、当社と共同研究を行うこともできると思います。

――本テーマに応募を検討されている方に向け、一言メッセージをお願いします。

赤木氏: 当社ではセルロースという森林成分の活用は行ってきましたが、森林自体を活用していく取り組みは初めてです。また今回は、新たなバリューチェーンやエコシステムの構築という従来のビジネスの在り方とは異なる取り組みに挑戦しようとしています。

まずは、必要最小限の要素技術・サービスに狙いを定め実証実験から開始し、将来的には大きなプラットフォームを実現できればと思っているので、賛同いただける方はぜひご応募ください。

【テーマ②‐1】 植物由来の素材を用いて、空間を快適に(セルロース防音材を活用)

――本テーマで活用する「セルロース防音材」の開発背景についてお聞かせください。

谷口氏: 昨今、自動車業界でEV化が促進されていますが、従来のエンジン車では存在しなかった様々な課題も出てきています。そのひとつが、EVとなり、駆動方式のモーター化に伴って顕在化する特有の音。例えば、モーターに由来する振動音に加えて、従来エンジン音に隠れていたエアコンのコンプレッサーの振動音、風切り音や、アクチュエータ等が発する比較的低周波の音です。これらのEV特有の音は、従来の防音材では対処が難しい音で、周波数は1000Hz程度とされています。こうしたEVの音の課題を解決するため、私たちのチームでは1000Hz程度の周波数をも取り除ける防音材の開発に取り組むことになりました。


▲旭化成株式会社  研究・開発本部 繊維サステナブル開発部 谷口穂鷹氏

――「セルロース防音材」を使って、どのようなことができるのですか。

谷口氏: このセルロースナノファイバーでできた防音材は、軽くて薄いという特徴を有しながら、開発品の組成を変えることで、自由にその音域をとることができるという特徴を持っています。

また最初から、三次元の立体的な防音材をつくることができる点も、従来のものにはない強みです。例えばモーター音を取り除きたい場合、従来だとシート状のものを貼りつける必要がありましたが、「セルロース防音材」を使えば、モーターの形状にあわせた立体的な防音材をつくることができるため、取りつけの手間を省くことができます。


――共創パートナーと一緒に、どのようなディスカッションや共創を行いたいとお考えですか。

谷口氏: 上述のEV化に伴う騒音を中心に顧客ニーズを模索してきましたが、それら以外にも静音ニーズはあるのではないかと思っています。ですから、どの部分に防音材が必要なのか。そういったディスカッションをできればと考えています。

また、自動車に限らず、家電や建物など様々なところに静音ニーズはあるはずです。私たちの「セルロース防音材」の材料特性を活かせる領域があれば、ぜひアイデアをいただきたいです。

――何らかの共同開発に向けて動き出す場合、どれくらいのスピード感で進められるものなのでしょうか。

谷口氏: まだ開発の段階ではありますが、サンプルの調達から製造に至るまでのフローは完成しています。ですから、実現したいイメージの形状で作成することはいつでも可能です。試作品の完成までに要する期間は、デザインにもよりますが遅くても半年程度。金型から起こす場合は少し時間が必要となります。

――本テーマに応募を検討されている方に向け、一言メッセージをお願いします。

谷口氏: この「セルロース防音材」は、立体的な構造にすることができたり、組成を変えるだけで様々な周波数域の音がとれたりする、従来にはなかった特徴を持つ材料です。

色々な静音ニーズをお持ちの皆さんとディスカッションをすることで、今まで当社で気づいていなかったようなニーズを、ひとつでも多く見つけられたらと期待しています。たくさんの方と議論をしたいので、少しでも静音ニーズをお持ちの方は、ぜひご応募ください。

【テーマ②‐2】 植物由来の素材を用いて、空間を快適に(セルロース多孔粒子を活用)

――まずは本テーマで活用する「セルロース多孔粒子」の特徴からお聞きしたいです。

原氏: 今まで、微生物や細胞を培養・吸着・除去するものとして、表面がつるつるとした滑らかな構造の粒子が広く使われてきました。そうしたなか当社では、裏地などに使われるベンベルグ繊維の技術を応用し、セルロースでなおかつ内部に穴が空いている粒子の開発に成功。現在、この「セルロース多孔粒子」は、コロナ禍で必要とされているワクチンの製造を効率化するための粒子としても使われています。

――本プログラムに参加しようとお考えになった理由は?

原氏: 「セルロース多孔粒子」を、対細胞・対ワクチン製造以外の領域にも広げていきたいと考えたからです。その中の一つとして微生物(菌など)をターゲットとしていくなかで、「この粒子に対して、どのように菌が付着するのか、近づいていくのか」という原理を解明しています。その原理を用いて、一緒に共同開発ができるようなパートナーを求めています。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 繊維サステナブル開発部 主幹研究員 原 雄一氏

――どのような共創イメージをお持ちですか。

原氏: 分かりやすい例を2つ挙げると、現在世の中では菌体を検査・診断する機会が増えています。例えばコロナ禍によって皆様の意識が環境の衛生管理に向いていたり、あるいはHACCPと呼ばれるような食品製造プロセスでも菌が混在することを防ごうとする動きがさかんになっています。こうした点から、「菌を診断する」という用途に対して、一緒に取り組んでもらえる最終ステージのメーカー、もしくは、診断ツールをキット化する製造技術をお持ちのメーカーと共創できればと考えています。

また2点目として、現在、腸内の環境改善や、新たな物質生産など高い機能を持つ菌体が広く開発されています。サステナビリティという領域を進めるにあたっても土壌・水質改良、バイオプラスチックの生産などを行うことが出来る様々な菌体が開発されている状況です。こうした背景から、それらの菌と私たちの粒子を組み合わせて、新たな領域に展開できる可能性もあるのではないかと思っています。

私たちのチームにできることは、「セルロース多孔粒子」の製造や改良です。ですから、この粒子を用いて「菌を診断する」や「高機能菌を有効活用する」といったところで、一緒に取り組めるパートナーを求めています。もちろんこれら2つの例に限らず、広く可能性を探索していきたいです。

――何らかの共同開発に向けて動き出す場合、どれくらいのスピード感で進められますか。また、「セルロース多孔粒子」のカスタマイズ性はどうなのでしょうか。

原氏: 本粒子はワクチンの製造プロセスで使う粒子として、すでに販売をしています。それをカスタマイズしてお出しすることは、早いタイミングで開発が可能だと考えています。また更なるカスタマイズ性については、粒子自体を変えたり、表面の機能化をさらに広めていくこともできます。

――本テーマに応募を検討されている方に向け、一言メッセージをお願いします。

原氏: 旭化成では古くからセルロースを基準として、様々な開発に取り組んできましたが、粒子に関しても他社に負けないユニークな技術を持っていると自負しています。これらの技術を活かして、新たな社会課題を解決したいと考えているので、興味をお持ちいただけましたらぜひご応募ください。

【テーマ③】 次世代の「光」を用いた、新しいソリューションで、あらゆるくらしや産業をアップデート

――本テーマで活用する「深紫外線」とは、どのようなものなのでしょうか。

𠮷川氏: 一般的に紫外線は「日焼けしてしまう」「太陽光の危ない光」といったイメージを持たれていますが、深紫外線は紫外線よりもさらに危ない光です。どう危ないかというと、DNAをそのまま破壊してしまうほど。人体に当てると皮膚ガンになってしまう可能性もあります。しかし逆に言うと、深紫外線を使うことによって、ウイルスや細菌を殺すこともできるのです。


▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端デバイス技術開発センター 主幹研究員 𠮷川 陽 氏 博士(工学)(左)

▲旭化成株式会社 研究・開発本部 先端デバイス技術開発センター 主査 張 梓懿 氏 (右)

名古屋大学 久志本 真希 先生 (中央)

――どのような共創イメージをお持ちなのでしょうか。

𠮷川氏: 大きく分けて2点あります。1点目は、先ほどお話した「殺菌」。コロナ禍でアルコール消毒を行う場面が増えましたが、そういったところに対して、深紫外線をひとつのソリューションとして提供していきたいと考えています。ただ、深紫外線のLEDはすでに旭化成から製品化済みで、販売もしています。今回、共創パートナーの皆さんとディスカッションしたいのは、レーザーダイオードです。

例えば、殺菌用途で考えた場合、LEDだと5分程度の照射が必要なところを、レーザーダイオードであれば、ボタンを押して1秒以下で終わらせることもできます。もちろん危険な光なので、使う場所を制限して用いる必要がありますが、手術室や食品工場のような入室できる人を限定した場所であれば、活用の可能性があると考えています。

2点目が「ウイルス検知」です。レーザーはLEDよりもエネルギー密度の高い、強い光を出せます。それで何ができるかというと、深紫外光を当てることで目には見えないレベルですが、ウイルスを光らせることができるのです。

コロナ禍では無症状の陽性者が、知らず知らずのうちにウイルスを呼気から放出しているケースが多くあります。そうしたケースに対し「深紫外線レーザーダイオード」を使うことで、感染状況のスクリーニングを行う装置をつくれるのではないかと考えています。


――どのような共創パートナーだと実現できそうですか。提供できるリソースについてもお伺いしたいです。

𠮷川氏: 一緒に商品開発を進めることのできる、バイオ関連企業や医療機器、光学機器メーカー、そして大学の医学部なども想定しています。提供リソースとしては、「深紫外線レーザーダイオード」の技術です。旭化成は2011年に、アメリカのベンチャー企業であるCrystal IS社を買収し、窒化アルミニウムという基板を手に入れました。この基板を製造できる会社は、まだ世界に2社しかありません。

ですから、この基板を用いる「深紫外線レーザーダイオード」は非常にユニークな技術であり、世界中で我々だけが実現できています。また現在、名古屋大学の天野先生(天野浩氏:2014年ノーベル物理学賞受賞)の研究室と共同研究を行っているため、そのネットワークをご活用いただくことも可能です。

――最後に本テーマに応募を検討されている方に向け、一言メッセージをお願いします。

𠮷川氏: 殺菌やウイルス検知という用途以外にも、この「深紫外線レーザーダイオード」を使ってできることは多々あると思います。科学の歴史を振り返ると、誰かが今までにない波長のレーザーをつくり、そこから研究や産業が花開いていきました。ですから、本プログラムを通して、より多くの方に興味を持っていただき、そこから新しいコラボレーションを生みだせたらと思っています。


取材後記

3つのテーマが提示されたが、1つ目のテーマに関しては、森林資源と脱炭素を絡めた大きなエコシステムを構築しようとするもの。2つ目以降のテーマに関しては、旭化成グループが誇る最先端の要素技術を用いて、新たな製品・ソリューション開発に共同で挑もうとするものだ。いずれも、研究開発部門の研究者らと直接議論をしながら、共創の道筋を切り拓いていくことができる。対象はスタートアップに限らず、アイデア段階からもディスカッション可能。現時点でプロダクトやソリューションがなくても申し込み可能だという。規模問わず共創の可能性がありそうな企業は、『Asahi Kasei Value Co-Creation Table』にディスカッション面談の申し込みをしてみてはどうだろうか。


(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:北野翔也)

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