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【ディープテック基礎知識③】医療業界を革新すると期待される「IoMT」の可能性とは。その種類と国内スタートアップを紹介

【ディープテック基礎知識③】医療業界を革新すると期待される「IoMT」の可能性とは。その種類と国内スタートアップを紹介

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近い将来、全てのものがインターネットに繋がる「IoE(Internet of Everything)」時代が到来すると言われていますが、それは医療の世界も例外ではありません。医療分野に特化したIoTは特に「IoMT」と言われており、大きな注目を集めています。

新規事業やオープンイノベーションに関わるビジネスパーソンなら知っておきたい【ディープテック基礎知識】の第3弾では、IoMTを取り上げ、そのメリットや種類を紹介していきます。

IoMTとは

IoMTとは「Internet of Medical Things」の略称で、医療分野に特化したIoT(Internet of Things)のこと。IoTは、あらゆるモノをインターネットに接続し、ネットワークを介して情報を共有する技術です。

医療機器や設備にIoTを導入することで、患者のリアルタイムなデータ取得、機器・設備の動作状況の監視が可能になります。これにより医療従事者にかかる負担を減らし、機器や設備の保守を容易にするとしてIoT(IoMT)が世界的に注目されているのです。

また、取得したデータを蓄積してAIで分析することで、今までにない新しい発見や知見が得られるでしょう。医療におけるサービス革命が起きる可能性も秘めており、未来の医療はさらに便利で可視的なものへと変化していくと大きな期待を集めています。

IoMTのメリット

IoMTを利用することで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

医療従事者の負担軽減

医療機器や設備にIoTを導入することで、患者のリアルタイムなデータを取得したり、機器・設備の動作状況を監視できます。これまで医療従事者が行ってきた業務をIoMTが代わりに行うことにより負担を大きく減らせるでしょう。

患者の健康管理の向上

ウェアラブルデバイス型のIoMTによって、患者の健康状態をリアルタイムでモニタリングできるため、異常があればすぐに対応できます。また、取得したデータを蓄積してAIで分析することで、より正確な診断や治療が可能になるでしょう。

遠隔診療の実現

過疎地や被災地では、IoTの導入によって遠隔診療が可能になります。たとえば自宅でIoMTが利用されれば、そのデータが医師にも共有され、わざわざ通院しなくても診療を受けらるれようになるのです。離島や山間部など、通院が難しい場所に住む患者にも、十分な医療を届けられるようになるでしょう。

医療ミスの防止

IoTの導入によって患者の病状や治療の経過などの医療データが可視化され、医療従事者で共有されることで、医療ミスを防ぐこともできます。また、薬を正確に処方するには患者の正確なデータが必要になりますが、IoMTによってこれらのデータも確実に共有されるため、誤投与も防げるでしょう。

IoMTを普及させる難しさ

様々なメリットのあるIoMTですが、普及させる上で様々な課題も存在します。特に大きな問題がセキュリティとプライバシーの問題。医療データは医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律 (HIPAA)によって厳しく規制されています。その結果、医療機関はセキュリティ侵害を防ぐために大きな負担を強いられているのです。

安全に医療データを取り扱えるサービスを開発すると共に、IoMTの普及に向けた規制緩和が今後の鍵となるでしょう。また、IoMTが普及することで「管理社会」が浸透していくなど、モラルの問題も無視できません。

個人情報はどこまで提供されるべきか、ユーザーが情報提供するかどうかの選択の自由はあるかなど、プライバシーをどう守っていくのかをしっかり考えていく必要があります。

IoMTの種類

一口にIoMTといっても、様々な種類が存在します。どのような種類があるのか見ていきましょう。

手術支援ロボット

手術支援ロボットは、外科手術を支援するロボットのこと。例えば、メドトロニック社の「Hugo™️ 手術支援ロボットシステム」や、インテュイティブサージカル社の「ダ・ヴィンチ」などがあります。

これらのロボットは、外科医が操作し、患者の体内に挿入されたカメラで体内を立体的に映し出して手術を行うものです。ロボットのアームは執刀医の指・手の動きの通りに操ることができ、執刀医の手の震えが自動的に取り除かれて手術機器に伝達されます。これにより、繊細かつ正確な手術操作が可能となるのです。

患者さんにとっても、傷口を小さくすることで出血量を抑え負担を減らしたり、術後の回復が早かったりなど、様々なメリットがあります。

電子カルテシステム

電子カルテシステムとは、医療機関で使用される患者の診療情報を、電子的に管理するシステムのこと。紙ベースのカルテを電子化し、会計システムやオンラインで繋がる検査や処方等のシステムを中心とした患者の病状や、治療経過の診療情報を保存・分析するものです。

電子カルテシステムを利用することで情報を管理・活用でき、データの閲覧や検索などが迅速かつ簡単にできるようになります。また、医療情報の共有が瞬時にでき、間違いを未然に防げることや業務の効率化に繋げられるのも大きなメリットです。

電子カルテシステムは、オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型の3種類があります。オンプレミス型は院内にサーバーを設置するタイプで、クラウド型は企業側のサーバーを利用するタイプ。ハイブリッド型は、院内にサーバーを設置し、クラウド上でもサーバーを運用する形(バックアップ)となります。

遠隔医療システム

遠隔医療システムとは、情報通信機器を利用して、医師が遠隔地にいる在宅患者へ医療を行うことができるシステムのこと。遠隔医療は、離島や僻地における慢性的な課題であった医師不足などの解消にもつながると期待されており、参入を図るベンチャー企業も増えてきています。

遠隔医療システムには医療へのアクセス改善、医療の質の向上、臨床効率の向上など様々なメリットがあります。また、患者と医療提供者とのつながりをより良くし、臨床医や専門家へのアクセスを改善できるため、患者と医療提供者の双方がリスクの高い環境を回避できるのも大きなメリットです。

ただし、診療報酬に課題が残ることや細部を目視できず正確な判断ができなかったり、個人情報保護やデータセキュリティも厳重に扱わなければいけないなど様々な課題も残っています。

ウェアラブルデバイス

ウェアラブルデバイスは、IoMTの一部として、患者の心拍数や血圧などを測定するモニタリングに使用されます。計測の手間が省ける上に、異常などがあった際にすぐに気づけるため、今後普及することが期待されています。

遠隔診療と組み合わせることで、家にいながら正確な医療データを共有し、病院に行くのと変わらない医療サービスを受けられるようになるでしょう。

IoMTを開発している日本のスタートアップ

日本でもIoMTを開発しているスタートアップが続々と現れています。その一部を紹介します。

A-Traction

A-Tractionは、国立研究開発法人国立がん研究センターの認定ベンチャーで、腹腔鏡手術支援ロボットの開発に取り組んでいるスタートアップ。同社が手掛ける腹腔鏡手術支援ロボットは、術者の視野確保や臓器の牽引・テンション維持など、術者をサポートする助手の機能に特化したロボットです。また執刀医師自らが、通常の腹腔鏡手術をしながら当ロボットを操作できることも大きな特徴です。

2021年には朝日サージカルロボティクス株式会社(旧 朝日インテック)に買収され、現在は医療機器承認に向けて取り組んでいます。

参考ページ:株式会社A-Tractionの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

リバーフィールド

リバーフィールドは文部科学省STARTプロジェクトの支援を受けて設立された、医療機器開発・販売を行う東京工業大学と東京医科歯科大学発スタートアップ。2015年には内視鏡把持ロボット「EMARO(R)」を上市し、現在はその他複数の手術支援ロボットを開発しています。

2023年には九州大学、東京工業大学、順天堂大学、山口大学と共同開発を行っていた眼内内視鏡・眼内照明保持ロボット「OQrimo®(オクリモ)」について製品化に成功しました。

参考:プレスリリース

メドレー

メドレーは、クラウド診療支援システム「CLINICS」を提供しています。CLINICSは「CLINICS予約」「CLINICSオンライン診療」「CLINICSカルテ」と3つのプロダクトがあり、全てを導入することで、オンラインでの診療予約からオンライン診療、電子カルテの入力、決済、処方箋の配送とワンストップで行えるようになります。

CLINICSを導入している医療機関は日本全国で2,000件近くとなっており、認知が広がっています。

https://clinics-cloud.com/

(TOMORUBA編集部 鈴木光平)

■連載一覧

第1回:【ディープテック基礎知識①】SAR衛星が地球観測にもたらした革新とは?活用事例と開発企業を紹介

第2回:【ディープテック基礎知識②】幅広い領域で利用される「ゲノム編集」の活用事例とは?国内スタートアップと併せて紹介