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世界に挑戦するスタートアップで「はたらく」。グローバルマインドの企業にフィットした人材とは?――Startup Career Fair 2023レポート②

世界に挑戦するスタートアップで「はたらく」。グローバルマインドの企業にフィットした人材とは?――Startup Career Fair 2023レポート②

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政府は2022年をスタートアップ創出元年と位置づけ、5カ年計画による大規模な創出を打ち立てた。東京都も2022年11月に都の抱える課題の解決と成長につなげることを目標とする戦略「Global Innovation with STARTUPS」を策定。同戦略では、スタートアップの成長と人材確保の支援に乗り出している。こうした中、スタートアップを有力な就職・転職先として候補に挙げ、新たなキャリア形成を考える人も増加中だ。

これを受け、東京都とスタートアップエコシステム協会はスタートアップでのキャリアに関心のある人材と、人材採用に関心のあるスタートアップが一堂に会する「STARTUP Career Fair 2023」(1/27〜28)を開催した。

同フェアでは採用に向けたピッチが行われると共に、スタートアップで「はたらく」ことの意義やメリット、デメリットなどを有識者たちが議論するセッションを実施。TOMORUBAでは、各セッションの様子をレポートしていく。第2弾となる本記事では、セッション2「日本からグローバルを目指す組織で働く」を取り上げる。

<登壇者>


秋山広宣氏/株式会社INFORICH 代表取締役社長兼執行役員CEO

香港生まれ日本育ち。2007年にユニバーサルミュージックで3ヶ国語を駆使したアーティストとして活躍。2012年に香港に移り住み、福岡県香港駐在事務所顧問、2014年にマザーズ上場をした株式会社IGNIS設立時の海外事業室長など、日本企業の香港誘致、M&Aなどのクロスボーダービジネスのコンサルティング業を担う。2015年に株式会社INFORICHを創業。現在ChargeSPOTをグローバルサービスに展開。


西勝清氏/Notion Labs Japan 合同会社 ゼネラルマネージャー

2020年9月より日本1号社員としてNotionに入社。現在は日本代表として、営業・マーケティング活動を始めビジネスオペレーション全般を担当。Wiki、ノート、ドキュメント管理、プロジェクトマネジメント全てをオールインワンで行え、かつ柔軟性の高いツールで企業がより高い生産性を実現することをサポートしている。


橋本翔太氏/コミューン株式会社 共同創業者 / 取締役CPO

東京大学経済学部卒業後、Google Japanに入社。2017年にGoogle米国本社に転籍し、プロダクトマーケティングに従事した後、コミューン株式会社を共同創業。取締役CPOとしてプロダクト開発を管掌。2022年より取締役Head of Japan としてcommmune日本事業を統括。

<モデレーター>


鈴木絵里子氏/株式会社Kind Capital 代表取締役

サステナビリティ、ウェルビーイング、Web3領域などへのベンチャー投資家、兼ESGコンサルタント。日本初ESG重視型ベンチャーキャピタルMPower Partnersの創業にマネージング・ディレクターとして参画し、他複数のVCを率いてきた。モルガン・スタンレーの投資銀行部門にてキャリアを開始し、グローバルM&AやIPO業務に従事。後に米国のドローンベンチャーの日本法人を立ち上げ日本代表に。

著書『これからは、生き方が働き方になっていく』(2018年4月、大和書房)。訳書『ミッション・エコノミー:国×企業で「新しい資本主義」をつくる時代がやってきた』(2021年12月、NewsPicksパブリッシング)。2児の母でもある。

手がけるサービスやプロダクトを鑑みて、初めからグローバルを狙う

初めに話し合われたテーマは「スタートアップはなぜグローバルに挑戦しているのか」だ。モデレーターの鈴木氏が「初めからグローバルを考慮して事業展開している理由は何か」と問いを投げかけた。

橋本氏は2つあると回答。「一つは市場規模。当社が行うビジネスは企業とユーザーが融け合う『コミュニティサクセス』というSaaS領域の事業。この領域では日本だけを見るよりグローバルを見たほうが圧倒的に大きい。もう一つの理由は今がチャンスだから。まだはっきりとした勝者がいない領域なので、グローバルを目指した。まずは日本市場を席捲するという考えもあるが、日本に特化するとグローバルのニーズとのズレが生じる可能性がある」と語った。

その上で、「これはあくまで当社のプロダクトが日本の法規や商習慣にとらわれていないものだから。もしとらわれるものだったら、考え方はまったく異なってくる。必ずしもグローバルで戦うのが正解ではない」と付け加えた。


また、「なぜグローバル企業を就業先として選んだのか」との問いに、西氏は「どちらかというと『個人的な思い』があってグローバルを目指した」と話した。

「私は外資系企業に勤めたが、外資系でなくてはならないということはなかった。私がミッションとしていることは、『日本がグローバルで尊敬され続ける存在にすること』。尊敬の源泉となる一つは経済力だから、日本に一番いいテクノロジーを紹介して日本の生産性を上げなくてはならないと考え、このミッションのために優れたテクノロジーを持つ外資系企業を選択した」と伝えた。


カルチャーの違いを楽しむことも求められる

続いて、「どういう人がグローバルマインドの会社にフィットするか」との問いが出された。秋山氏は「固定概念を持たないこと」と回答。「日本だとこうするとか、どうしても自身の背景にあるカルチャーで物事を考えてしまいがち。無意識のうちにもステレオタイプな考え方をしてしまう傾向にある。相手がなぜこのようなことを言うのか、何を伝えようとしているのか、理解しようとする姿勢が欠かせない」との見解を示した。


西氏は同意し「普通こうだよねと思っていることが、相手にとって普通ではないことも多い。それを楽しめる人がフィットする」と話した。さらに「同じグローバルでも、例えば、アメリカでも大企業とスタートアップはやはり違う。その中で、スタートアップにフォーカスするなら、一つのキーワードは『ビルディング』。スタートアップには何かをビルディングするのが好きという人が多い印象がある」と付け加えた。

これを受けて橋本氏は「グローバルで働くことだけを目的にすると、後で辛くなるのではないか。一口にグローバルといっても、アメリカとアジアでは異なる。何を目指しているのか、明確にしないといけない。スタートアップで働くには、ビジョンやミッションへの共感が必要不可欠。私自身も『世界中の情報を整理する』というミッションに共感してGoogleに入社した。グローバル企業だから選んだのではない」と自身の経験を振り返った。鈴木氏は「『グローバルマインド』とは別に『スタートアップマインド』という軸で、企業を選ぶことも大事になりそう」とまとめた。


国や地域による違いは障壁になるのが前提

次に「グローバルに展開する際の苦労話」に話題が移った。西氏は「主に3つある。1つめはプロダクトのローカリゼーション。海外のプロダクトをそのまま別の国に持ち込むとどうしても違和感が生じる。2つめはプライシング。各国で経済状況が異なるため、価格設定は常に議論になる。3つめはカルチャーニュアンス。例えば、交渉に対する考え方やスタイルは各国でもかなり違う。ワークスペースアプリ『Notion』もこれらの点で大変に苦労している」と語った。

秋山氏は「本当にその3つに尽きる」と強く同意。「当社の展開するスマホ充電レンタル『ChargeSPOT』も香港のやり方をそのまま日本に持ち込むことができなかった。また、法律の違いが壁になることもある。当社は香港で上場した後、日本でも上場したが、求められることが大きく異なった。現地からはなぜこんなことをするのかという問い合わせがかなりあり、丁寧に説明する必要があった」と実際に直面した苦労を明かした。

壁が出てきたらどのように対処するのかと鈴木氏が投げかけると、西氏は「当社には経験豊富な人材が集まっており、スタートアップのIPOについてもノウハウがある。それでも基本的にはケースバイケース。壁が生じるたびに、議論をしながら進めている」と伝えた。


橋本氏は今、直面している状況を明かしながら、日本とアメリカの違いを解説した。「日本だとプロダクトのニュースリリースを行えば、一定程度の反響が期待できる。しかし、アメリカではそれほど期待できない。Googleのように知名度があっても、アウトバウンドは積極的に行っている。市場に対して日本より積極的なアプローチが求められる。また、プロダクトについては、他の製品との連携が重要になる。プロダクトの開発に当たっては、構想力と開発力が問われる。日本ではあまり重要視されないことだが、市場にあわせてプロダクトを進化させていかねばならない」と紹介した。

グローバル展開をする際は、会社を超えて共通の悩みを抱えることも多い。状況や解決策を共有するために今後はコミュニティのようなものが発展すると良いのではないかとの意見が出され、セッションの幕が閉じられた。


(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:古林洋平)


■連載一覧

第1回:スタートアップで「はたらく」を考える。キャリアにどのような変化をもたらすのか?――Startup Career Fair 2023レポート①

第2回:世界に挑戦するスタートアップで「はたらく」。グローバルマインドの企業にフィットした人材とは?――Startup Career Fair 2023レポート②

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