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「新卒でスタートアップ」はアリ?向いている人、新卒こそ狙うべきフェーズとは――Startup Career Fair 2023レポート⑦

「新卒でスタートアップ」はアリ?向いている人、新卒こそ狙うべきフェーズとは――Startup Career Fair 2023レポート⑦

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2022年11月、東京都は新しいスタートアップ戦略『Global Innovation with STARTUPS』の展開を発表した。この戦略はグローバルx10、裾野拡大x10、官民協働x10で未来を切り拓く「10x10x10のイノベーションビジョン」を掲げ、スタートアップエコシステムの構築に全力で取り組む姿勢を打ち出している。

これを受け、東京都とスタートアップエコシステム協会はスタートアップでのキャリアに関心のある人材と、人材採用に関心のあるスタートアップが一堂に会する「STARTUP Career Fair 2023」(1/27〜28)を開催した。

同フェアでは採用に向けたピッチが行われると共に、スタートアップで「はたらく」ことの意義やメリット、デメリットなどを有識者たちが議論するセッションを実施。TOMORUBAでは、各セッションの様子をレポートしていく。第7弾となる本記事では、『新卒はスタートアップか?』をテーマにしたセッションを取り上げる。

<登壇者>

■田野徹 氏/株式会社Select 代表取締役

■山下麻亜子 氏/株式会社ビビッドガーデン 取締役兼執行役員COO

■坂本典大 氏/起業準備中(元株式会社ニューズピックス代表取締役社長、株式会社ユーザベース執行役員)

<モデレーター>

■寺口浩大 氏/株式会社ワンキャリア Evangelist

「コンサルMgrと上場ベンチャー役員どっちがレア?」ファーストキャリアをどう決めるべきか

登壇者のファーストキャリアの話題からセッションははじまった。ニューズピックス代表取締役やユーザベース執行役員を経て現在企業準備中の坂本氏は「インターンとしてユーザベースで働き始めて、売上がゼロの時から参画していた」という。ビビッドガーデン取締役兼執行役員COOの山下氏のファーストキャリアは外資系コンサル大手のマッキンゼーで、10年ほど在籍した後にスタートアップの世界に飛び込んだとのこと。

登壇者のうち、大学在学中で起業している田野氏が20代で、それ以外の3名が30代であることから、モデレーターの寺口氏は「時代が変わってきている。僕らが大学生のときにスタートアップという言葉は一般的でなかった」と話す。学生時代にユーザベースでインターンをしていた坂本氏もこの肌感覚に同意して、「周りの優秀な学生は外資系金融かコンサルに行くのが一般的だった。スタートアップにインターンしている人は僕以外いなかった」と実感を述べた。

では坂本氏はどうやってユーザベースを見つけたのかというと「ユーザベースの創業者も外資系金融のUBS出身者たちで構成されていた。なぜわざわざスタートアップするのか不思議だったが『見ているだけではダサい』と思いインターンに挑戦した」と経緯を語った。

▲ビビッドガーデン取締役兼執行役員COOの山下氏

山下氏は就活がはじまった頃に働くことについて調べ始めたというが「呑気だった。スタートアップへのインターンができていればよかった」と後悔した過去を明かした。坂本氏は新卒として外資系コンサルのPwCコンサルティングに入社した時、とある起業家から「5年後に最年少でコンサルティングファームのマネージャーになるのと、上場ベンチャーの役員になるのと、どっちがレアだと思う」と問いかけられたという。

当時は後者のレアリティが圧倒的に高かったため「レアな方に行くべきだ」と助言を受けた。坂本氏はちょうどこの時、インターンしていたユーザベースから「戻ってきてほしい」とオファーを受けており、レアな人材になるべくユーザベースへの入社を決めたという。

コロナ禍世代の学生こそ“凸”してスタートアップを訪問すべき

話題はコロナ禍での就職活動・インターンに及んだ。現在進行形で大学生である田野氏は「僕はコロナ禍以前に入学したが、3年生以下は入学時からコロナ禍だった」という。寺口氏が来場者の大学生にマイクを渡して話を聞くと「私は今3年生だが、1年生からインターンしている。仕事もリモートだし、授業もリモートで、リモートに慣れきっている」と語り、この世代の特徴が浮かび上がった。

寺口氏は同じ学生に続けて「なぜインターンしようと思ったのか」と質問する。学生は「私は特殊かもしれないが、小学生の時からバリキャリになりたいと思っていたし、高校生の時から大学ではインターンすると決めていた」と、若くしてキャリアを描いていたことを明かした。

▲Select代表取締役の田野氏

山下氏はインターンを受け入れる側の経験から「いくつもインターンを掛け持ちしている学生よりも、ひとつの仕事に集中している学生の方が優秀」だと語る。その理由はひとつのことに集中する方が成長スピードが早いためだという。

寺口氏は「では、自分に合うインターン先をどうやって見つければいいのか」と山下氏にたずねる。山下氏は「情報に受け身にならないこと」と言い切る。就職市場は学生が少なくなっていることもあり、企業側が学生に向けて情報発信することが増えている。つまり、学生は受け身で情報収集していると企業側に都合の良い情報ばかり摂取してしまうことになるので、これを避けるためには自分から情報を取りに行くことが重要になる。

コロナ禍で学生生活を送っていた田野氏は「テニス部だったがコロナの影響で試合も練習もなくなった。その時に本田圭佑氏がインターンを募集しているのを見た。サッカーは好きだし、将来スポーツビジネスをするのもありだと思っていたので応募した。そこでスタートアップの面白さを知り、テニスをやめて起業した」と経緯を語った。

まさに「自分から情報を取りに行った」結果、スタートアップという選択肢に出会った田野氏の話を受けて寺口氏は「名古屋の大学で講義をした後に学生からDMで『凸』されてスタートアップについて教えてほしいと相談された」と経験を語った。続けて「講義を聞いた40〜50人のうち、ひとりだけ連絡してくれた。僕の感覚では学生の凸を断るのはありえないので、色々と教えた。学生ならば凸することに得しかない」と考えを共有し、学生による“凸”の有用性を説いた。

▲起業準備中で元ニューズピックス代表取締役社長、ユーザベース執行役員の坂本氏

山下氏も同意しつつ「若いほど会ってくれるスタートアップの人は多いはず。逆に年を重ねると実績を問われるのでハードルが上がる。学生だというアドバンテージを使わない手はない」と語った。

新卒スタートアップなら「早いフェーズ」で勝負

ワンキャリアは学生による企業の口コミが集まるサービスだが、学生のスタートアップへの関心はどうなっているのか。同社でエバンジェリストを務める寺口氏によると「定量的には学生のスタートアップへの関心は下がっている」という。

その理由は「コロナ禍によって学生がリーチできる情報がマスに偏っている」ことで、身近なスタートアップへ就職した先輩などから情報を得る「リアルの口コミ」の機会が減っているという現状があるのだそうだ。

▲モデレーターでワンキャリアエバンジェリストの寺口氏

その結果、コロナ禍世代の学生には日系大手企業やコンサルに人気が集中しているという。状況だけ聞くとリーマンショック前後に就活していた30代の時と似ているが、そうではないようだ。寺口氏は「かつては市場価値を高めるためにレア度の高いコンサルに就職していた。今はコンサルに就職するのは普通の選択肢になっているのでレア度が低くなっている」と説明し、今はコンサルを目指すにしても「なぜコンサルか」が問われるようになっているという。

コンサルからファーストキャリアを始めた山下氏は、ここ数年で日本のコンサル市場が拡大したことに触れ「先輩たちに『おれたちの時は少数精鋭だった』と言われるかもしれないが、いまだに良い選択肢だと思う。私は事業会社にピンときていなかったのでコンサルを選んだがそこで鍛えられた」と経験を語った。

コンサルでの経験を積みながら、パッションを注げる分野や事業を見つけられたらスタートアップへの転身を考えることも、学生の選択肢になりそうだ。

ここで会場の学生から「スタートアップに向いているのはどんな人か」と核心をつく質問が飛んだ。坂本氏は即答で「やりたいことがある人」と言い切る。自分の作りたい世界があるかどうか重要で、それを持たない人は「けっこう厳しい」とも語った。結局は「やりたいことがあって、それを実現する最短の方法がスタートアップならばスタートアップに行けばいい」ということに尽きるそうだ。

山下氏は少し違った視点を持っており「スタートアップに向いているのは不確実性に耐性がある、もしくは楽しめる人。私は事業が伸びるかどうかわからないフェーズで入ったのもある」と語った。

ここで坂本氏は「もちろんフェーズによって向き不向きは変わるが、新卒というテーマで言うならフェーズが早い方がいい」と付け加えた。スタートアップは性質上、フェーズが後になるほど優秀な中途が採用しやすくなる。反対にフェーズが早いと裁量もチャンスも大きくなる。つまり新卒がレイターで勝負するとなると優秀な中途との競争になるのだ。

セッションの最後に寺口氏は「結局、スタートアップは目的でも手段でもいい。しかし自分の中にテーマを持っている人が花開いている」と実感を語り、トークを締めくくった。

編集後記

新卒でスタートアップを検討する大学生だけでなく、スタートアップに関心がある多くの人にとって有意義なセッションで、最初から最後まで記事にできるような濃い内容となった。本セッションのテーマにとらわれず、会場の学生から活発に発言が飛び交った。学生から「起業したいが分野が定まらない」という悩みが出ると、坂本氏が「学生であるとか、お金がないとか、前提を取っ払って考えてみるべき」と応えるなど、参加者には貴重な体験になったのではないだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:久野太一)

■連載一覧

第1回:スタートアップで「はたらく」を考える。キャリアにどのような変化をもたらすのか?――Startup Career Fair 2023レポート①

第2回:世界に挑戦するスタートアップで「はたらく」。グローバルマインドの企業にフィットした人材とは?――Startup Career Fair 2023レポート②

第3回:スタートアップではたらく「アドバンテージ」と「リスク」とは?――Startup Career Fair 2023レポート③

第4回:スタートアップで働くベストなタイミングとステージで異なる役割――Startup Career Fair 2023レポート④

第5回:ドラマ内の事業アイデアはどう作る?最前線のクリエイターが語るスタートアップドラマの現場――Startup Career Fair 2023レポート⑤

第6回:「スタートアップはブラック」はもう古い?最前線のプレイヤーが語る理想と現実――Startup Career Fair 2023レポート⑥

第7回:「新卒でスタートアップ」はアリ?向いている人、新卒こそ狙うべきフェーズとは――Startup Career Fair 2023レポート⑦


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スタートアップでのキャリアに関心のある人材と、人材採用に関心のあるスタートアップが一堂に会する「STARTUP Career Fair 2023」。スタートアップの熱量を感じれるイベントをレポートします。