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meet ▶[アルガルバイオ]:藻類のソムリエが目指す、石油や天然ガスに依存しない社会

meet ▶[アルガルバイオ]:藻類のソムリエが目指す、石油や天然ガスに依存しない社会

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https://auba.eiicon.net/projects/25501

近年、環境問題の解決策として注目を集めている藻類。その使用用途は広く、食品や美容の原料になるほか、工業における環境負荷を軽減するなど、さまざまなメリットが期待されている。そんな藻類の可能性を最大限に広げているのが株式会社アルガルバイオだ。東京大学における20年以上の研究成果をもとに創業された藻類バイオテックベンチャーで、これまでにない藻類ビジネスを展開している。

これまでも藻類を使ったビジネスは存在したが、その多くの企業は特定の単一の藻のみを用いて用途開発をしている。同社は東京大学時代の研究成果を基にした藻類ライブラリーを駆使し、クライアントのニーズに合わせてマーケットイン型でソリューションを提供する「藻類プラットフォーム」を構築している。

eiicon companyのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社アルガルバイオ 代表取締役社長 CEO 木村 周氏にインタビューを実施。事業の詳細から藻類が持つ可能性、今後の展望・ビジョンについて聞いた。


▲株式会社アルガルバイオ 代表取締役社長 CEO 木村 周氏

商社時代に目の当たりにした「食」の衝撃的な裏側

――木村さんは2020年、アルガルバイオにジョインしていますが、まずはその経緯を聞かせてください。

木村氏 : 私は前職の総合商社で「食の安定供給」をテーマに働いていました。食品が私たちの口に届くまでのサプライチェーンを管理し、健康で環境にやさしい食品作りに貢献する仕事です。しかし、その仕事で目にしたのは、衝撃的な食品作りの現場でした。

たとえば野菜を作るのに必要な肥料は、窒素やリン酸からできていますが、そのためには鉱山を開発したり天然ガスを採取する必要があります。私たちの食を支えるために、日々ショベルカーで山を掘る様子を見て、地球の資源に大きな負担をかけていると感じました。

世界の人口が増えていく中、今のようなサプライチェーンのままでは、持続的に食を支えるのは難しい。そう考えた私は、2015年から商社の中でフードテックスタートアップに投資を開始しました。

――どのようなスタートアップに投資していたのでしょうか。

木村氏 : たとえば代替タンパクや培養肉の研究をしているスタートアップです。代替肉で有名な「ビヨンド・ミート」の投資にも携わりました。

特に私は「タンパク質クライシス」への関心が強く、動物肉に替わる新しいタンパク源を開発しているスタートアップを探していたのです。そして、その選択肢の一つとして、藻類にも当時から注目していました。

――アルガルバイオにジョインする前から藻類に注目されていたんですね。

木村氏 : そうですね。そのような経緯もあり、2020年にアルガルバイオの創業者である竹下(毅氏)から「経営を手伝って欲しい」と言われ、ジョインすることにしたのです。当時のアルガルバイオはシリーズAの資金調達を終え、いよいよ事業をスケールさせるタイミング。経営面の強化を図っていたので、私に声がかかったのです。


▲2022年11月29日に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.5」に登壇した木村氏。

企業のさまざまなニーズに応える「藻類のソムリエ」

――改めて事業内容について聞かせてください。

木村氏 : 私たちのビジネスはクライアントからの要望に合わせて、藻類を使ったソリューションを提供することです。これまでも藻類を使ってビジネスを展開する会社はありましたが、それらの会社が扱っている藻類は特定の種類のみ。

一方で、私たちは20年に渡る東京大学の研究で培った藻類株のライブラリー(約500株を蓄積)と培養ノウハウがあるため、要望に適したソリューションを提供できるのです。以前フランスの展示会で、このビジネスモデルを説明したところ「藻類のソムリエ」と評されました。

――企業からはどのような問い合わせが多いのでしょうか。

木村氏 : 大きく「健康」「食糧」「環境」の3つの領域に分かれています。健康領域はサプリや化粧品の原料としての問い合わせが多く、食糧では代替タンパクや色素として活用されることが多いです。環境領域ではCO2の回収や浄水の浄化といった活用がされています。

――なぜ多くの企業が藻類に注目しているのか教えてください。

木村氏 : 問い合わせをいただくどの会社にも共通して言えるのは、カーボンニュートラルの実現に力を入れていることです。ほぼ全ての藻類が光合成を行うので、藻類を取り入れるだけでCO2削減に貢献できます。

また、業界によっては安心安全な商品作りのために藻類を活用する企業も増えています。たとえば化粧品も化学品で作られたものより天然のもので作られたものにこだわる人が増えていますし、食事でも添加物を気にする人が増えてきました。そのような社会のニーズに応えるために藻類に注目するケースが増えています。

――万能に見える藻類ですが、弱点もあるのでしょうか?

木村氏 : 「大量に安く作りたい」というニーズに応えるのは難しいかもしれません。また、領域によっては商業化にかかる時間が長くなる場合もあります。たとえば、「燃料を作れないか」という問い合わせがありますが、商業化しようと思えば20年以上の計画が必要です。

また、燃料の開発ほどではありませんが、環境領域の研究は他の食糧や健康の領域に比べて時間がかかる傾向にあります。

――環境課題の解決には時間がかかるんですね。

木村氏 : 「CO2の有効活用」や「排水汚染の浄化」などのテーマはもっと短期間で商業化できますが、それでも数年間はかかります。しかし、社会に大きなインパクトを与えられるのも環境領域でのプロジェクトです。短期的には健康や食糧のプロジェクトで会社を成長させながらも、しっかり腰を据えて環境問題にも取り組んでいきたいと思います。

再生可能な藻類が社会インフラとなる社会を目指して

――今後の事業展開についても聞かせてください。

木村氏 : 現在、挑戦しているのが自社開発です。私たちは多様な藻類株のライブラリーを保有していますが、その全てを活用できているわけではありません。企業からのニーズには合わなくても、有用な藻類は数多くあるので、それらを使った自社商品を作っていく予定です。

既にサプリメントが完成しており、販売も予定しています。今後は販売パートナーを探しながら、自社製品の展開にも力を入れていきたいと思います。

――最後に、これから目指すビジョンについてお願いします。

木村氏 : 藻類が社会インフラになっている世界を作りたいと思っています。私たちの生活は、知らず知らずのうちに石油や天然ガスに囲まれています。それをゼロにするのは難しいですが、その一部でも再生可能な藻類に置き換えていきたいです。

今は石油や天然ガスの方が安いため、大量生産を前提にした社会では、どうしてもそれらに頼るしかありませんでした。しかし、一方で石油や天然ガスを大量消費した環境負荷のコストを誰も支払ってこなかったのも事実です。これから「カーボンプライシング」、つまりは環境負荷をコストに上乗せされるようになれば、石油や天然ガスの値段も格段に上がるでしょう。そうなれば、経済的にも藻類を活用するメリットも高まり、より社会に浸透していくと期待しています。


(取材・文:鈴木光平)

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今話題のスタートアップがピッチを行い、共創につながる“出会い”を生み出す「eiicon meetup」。このイベントに登壇した企業に話を聞くインタビュー企画が『meet startups!!』です。注目のサービスやプロダクト、テクノロジーを有したスタートアップが登場します。