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meet ▶[Vook]:日本にハリウッド並みの映像制作環境を構築――Vookが目指す日本のコンテンツ産業の未来とは

meet ▶[Vook]:日本にハリウッド並みの映像制作環境を構築――Vookが目指す日本のコンテンツ産業の未来とは

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YouTubeやTikTok、Netflixといった新たなメディアの登場により、映像市場が急拡大を続けている。今後も「コミュニケーションのスピードを上げる手段としての映像・動画」が増え続けると予想される一方、日本では映像クリエイターの教育環境や労働環境の整備が追い付いていないことも事実だ。

株式会社Vookは、このような日本の映像制作環境にまつわる様々な課題を解決すべく、メディア事業、スクール事業、キャリア支援事業などを展開。また、同社は経済的リターンと測定可能な社会的インパクトを同時に生み出す「インパクト投資」の対象として、日本テレビが実施するインパクト投資の1号案件としての出資も受けている。

eiiconのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社Vook 代表取締役 岡本俊太郎氏への取材を実施し、起業の背景や同社の事業・サービスの特徴、将来のビジョンについて語っていただいた。

▲株式会社Vook 代表取締役 岡本俊太郎氏

大学在学中、学生団体「adoir」を立ち上げ、映像コンテストを主宰。2012年、株式会社アドワール(現:株式会社Vook)創業。2016年、動画・映像制作Tipsサイト『Vook』を立ち上げる。現在は、日本最大級となった『Vook』を核に、ビジョンである「映像クリエイターを無敵に。」を叶えるべく映像クリエイターの学び・仕事・繋がりを支援するサービスとして『Vook school』『Vookキャリア』を展開。

※Look PRページ https://auba.eiicon.net/projects/39322

#教育サービス #イベント

日本とは大きく異なるハリウッドの映像制作環境に衝撃を受けた

――まずは起業の背景について聞かせてください。

岡本氏 : 私が高校生の頃にMIXIや楽天、ライブドアのようなメガベンチャーが登場したこともあり、私自身も「いつかは自分で起業して社会を変えたい」と考えていました。大学進学後は、CMなどの映像コンテストを主催する学生団体を立ち上げ、その流れで2012年に映像制作をメイン事業とする株式会社アドワール(現:株式会社Vook)を立ち上げました。

――最初は映像制作そのものを行う会社だったとのことですが、現在の『Vook』のような事業にピボットすることになった経緯を教えてください。

岡本氏 : 日本とは大きく異なるハリウッドの映像制作環境に触れたことが直接的なきっかけです。企業CMを制作するクライアント案件を受注した際、アメリカに出張して撮影を行ったのですが、予算数百万円で撮影するインディーズ的な案件であったにも関わらず、日本とは何もかも状況が違っていたのです。

――日本とは異なっていたハリウッドの映像制作環境の特徴について教えてください。

岡本氏 : 世界中からクリエイターが集まっているため、とにかく人材が豊富でした。また、映像のデジタル化が進んでおり、インディーズレベルでも非常にハイクオリティな映像を制作できる環境が整っている点も特徴だといえるでしょう。

クリエイターの労働環境も日本の業界とは異なっており、「18時以降は1.5倍の給与を支払わなければならない」「撮影期間はクルーに食事を出さなければならない」「撮影内容によってはクルー全員が保険に入らなければならない」などといったルールが徹底されていたことにも驚かされました。

たとえば映像業界にはAD(アシスタントディレクター)という職種がありますが、日本ではADの地位が低いイメージもあります。一方でアメリカのADはプロフェッショナルとして認められているため、権限もありADの指示にも従います。ADも含めて各領域にレベルの高いプロフェッショナルが揃っており、撮影が円滑に進むような仕組みが出来上がっていました。

――そのような環境の違いが生まれる理由はどこにあるのでしょうか?

岡本氏 : 先ほどお話ししたように世界中からクリエイターが集まってくることも理由の一つだと思いますが、何よりも大きいのは映像を取り巻く教育環境の違いです。

日本では未経験で映像業界に入る人が多かったり、独学で映像技術を学んだりする人が多いのですが、アメリカにはフィルムスクールがたくさんあり、そこで学んでから映像業界に入る人が多く、また、Webサイトなどのメディアを通じた情報のシェアも活発に行われており、しっかりと後進を育てようとする文化があります。

このようなアメリカと日本の映像制作環境の差を埋め、クリエイターの育成や労働環境を向上させたいと考えたことが、現在の『Vook』を中心とするプラットフォーム事業やスクール事業を立ち上げる直接的な動機となりました。

プラットフォーム・スクール・キャリア支援の3セグメントで事業を展開

――それでは現在のVookの事業内容について改めて教えてください。

岡本氏 : 当社では、大きく分けて3つのセグメントで事業を推進しています。一つは動画・映像に特化した制作ナレッジ共有サービス『Vook』を軸とするプラットフォーム事業です。現在、『Vook』は月間約36万人のユーザーに利用されています。

二つ目の事業は『Vook』のプラットフォームを活かしたスクール事業である『Vook school』、三つ目の事業は映像・動画に特化した人材と企業・仕事をつなぐキャリア支援事業である『Vook キャリア』です。

スクール事業の『Vook school』に関しては、個人向けの「ビデオグラファーコース」「モーショングラフィックコース」を設けており、3カ月から半年程度のカリキュラムで映像のプロを目指せる教育を提供しているほか、今年の4月からはソニーPCLさんと一緒に、バーチャルプロダクション人材の輩出を目指す「PXO’s VP Academy for VAD」という新しいコースを立ち上げました。

また、法人向けのスクール事業に関してはスマートフォンを活用した映像制作を学べる『Vook biz for Education』の提供のほか、制作会社向けの研修や、自社内での制作体制構築を目指す企業様へのインハウス・内製化支援なども行っています。

▲国内最大級の映像クリエイター向けTipsサイト『Vook』(https://vook.vc/)。プロの映像クリエイターや映像制作関連のメーカーが参画し、映像制作における知識やTipsノウハウを共有するWebメディアの運営を核に、映像クリエイターの学びとつながりをサポートしている。

――『Vook school』の新たなコースである「PXO’s VP Academy for VAD」で学べるバーチャルプロダクションとは、どのような技術なのでしょうか?

岡本氏 : バーチャルプロダクションは、LEDウォール(LEDパネルを組み合わせた大型映像ビジョン)を活用することで、実物の被写体と背景の仮想空間を同時に撮影し、合成する技術です。

すでにハリウッド映画などでは頻繁に使われているほか、日本の映画やCMでも徐々に導入が進められており、ソニーさんをはじめとする国内大手企業によるスタジオも少しずつ増えてきている状況です。

▲バーチャルプロダクション技術を学ぶプロフェッショナル向け講座、「PXO’s VP Academy for VAD」(画像出典:プレスリリース

――今後、3つのセグメントをどのように成長させていきたいとお考えですか?

岡本氏 : 現在は先行してスタートした『Vook』によるプラットフォーム事業の売上比率が高い状況ですが、今後は新しく立ちあげたスクール事業やキャリア支援事業も積極的に伸ばしていきたいと考えています。

日本をアジアでNo.1の映像コンテンツ大国に押し上げたい

――現状、それぞれの事業を推進するにあたって解決しなければならない課題、クリアしなければならないハードルなどがあれば教えてください。

岡本氏 : 日本におけるコンテンツ産業の輸出額は比較的大きいものの、現状ではアニメと漫画が大半を占めており、実写領域は非常に規模が小さいです。逆にアメリカやフランス、韓国では実写が強く、先ほどお話ししたバーチャルプロダクション分野の人材育成についても、韓国では国を挙げて強力な支援を行っているようです。

当社では、実写領域も含めた映像業界の変革、人材の育成、人材流動性向上を目指す事業を展開しておりますが、日本社会全体で実写の領域に投資をしたり、お金を掛けて人材育成を行ったりするような機運は、まだまだ高まりきっていないと感じます。

もちろん日本でも、政府の掲げる新成長戦略の中でクリエイター育成に言及したり、著名な映画監督たちが環境改善の声明を発表したりするなど、少しずつ業界の雰囲気が変わりつつあることも確かですが、そのような機運を生み出すスピード感をさらに加速させていく必要があると考えています。

――Vookは日本テレビのインパクト投資第一号として出資を受けるなど、インパクトスタートアップとしての取り組みも注目されていますが、今後のビジョンや事業展望についてお聞かせください。

岡本氏 : 短期的には、先ほどお話ししたような『Vook school』における教育事業、とくに新しく立ち上げたバーチャルプロダクション人材を育成する「PXO’s VP Academy for VAD」のような最先端人材の育成、さらには企業の内製化ニーズに応えるような領域を伸ばしていく方針です。また、キャリア事業の『Vook キャリア』にも注力することで、映像人材の流動性を高めていきたいと考えています。

中長期的には、各事業の成長を通して日本をアジアでNo.1の映像コンテンツ大国に押し上げ、日本をアジアのクリエイティブハブのような存在にしていきたいと考えています。また、日本の映像業界は、まだまだ男性のスタッフが圧倒的に多いなど、20世紀型のビジネスから脱却できていないため、業界全体に多様性を生み出すような取り組みにもチャレンジしていくつもりです。

そのような未来を実現するためにも『Vook』を立ち上げるきっかけとなったハリウッドのような映像制作環境を目指し、「情報の壁」「学習の壁」「キャリアの壁」を解決する事業を強力に推し進めることで、日本の映像コンテンツ産業全体が潤い、たくさんの人たちが映像業界に入り、その人たちが着実に成長できる仕組みを構築していきたいと考えています。

​​▲2024年3月に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.10」に登壇した岡本氏。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤直己)

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