meet ▶[MentaRest]:誰もが気軽にカウンセリングを受け、メンタル不調のない社会へ
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#働き方改革 #メンタルヘルス #メタバース #共同研究 #資金調達したい #ネットワーキング #スタートアップ
コロナ禍になってから急増している「メンタル不調」。休職せざるを得ないほど症状が悪化する人も多く、様々な企業が対策を講じている。しかし一方で、カウンセリングはハードルが高く、体調を崩してもなかなかカウンセリングを受けない方も少なくない。
そのような問題にメタバースを活用して取り組んでいるのが株式会社MentaRestだ。メタバース空間で専門家に気軽に相談でき、体調を崩す前にカウンセリングを受ける流れを作り出している。
eiiconのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社MentaRest 代表取締役/CEO 飯野 航平氏にインタビューを実施し、起業の背景から同社サービスの強みや将来のビジョンについて語っていただいた。
▲株式会社MentaRest 代表取締役/CEO 飯野 航平氏
自身のメンタル不調が起業のきっかけに
――まずは起業までの経緯を聞かせてください。
飯野氏 : 私は学生時代から起業を考えており、組織運営を学ぶため大手IT企業に入社して人事部に配属されました。1年目は現場を知るために新規営業を担当し、ナンバーワンの営業成績を残すなど必死に働いたのです。
一方で、知らない間に心身は疲弊しており、体調を崩しがちになっていて。病院で診察してもらったところ、メンタル不調と診断されたのです。休職を余儀なくされ、経済的にも困窮し、その後のキャリアアップも難しい状況になり、「どうすれば予防できたのだろうか」と考えるようになりました。
その後、復職して人事部に戻った私は、私と同じようにメンタルを崩し休職する人が多いことを知ります。そして、その原因の一つが人事部と現場の意識のギャップにあることに気付きました。
――どのようなギャップがあったのでしょうか。
飯野氏 : 人事部は現場の人たちに快適に働いてもらいたいため、ストレスチェックなどを実施し、健康状況を細かく把握したいと思っています。しかし、現場の人たちは「もしもストレスが溜まっていることを人事に知られたら、査定に響くんじゃないか」と、隠そうとするのです。それは、メンタルを崩す前の私も一緒でした。
結果的に、症状が悪化するまで人事は干渉できず、休職になってしまうケースが非常に多かったのです。特にコロナ禍になってからは、そのようなケースが急増しており「自分と同じような人を増やしたくない」という想いから、起業を決意しました。
――メンタルケアなど既存のサービスもあると思いますが、それでは不十分だったのでしょうか。
飯野氏 : カウンセリングを受けるのはハードルが高く、多くの場合、症状が悪化してから受診するケースがほとんどです。ストレスチェックと同じで「産業医に相談したら査定に影響するんじゃないか」という不安もあります。私もメンタルを崩した時に産業医に相談することもできましたが、結局、相談しませんでした。
メタバースならではの気軽さがサービスの売り
――サービスの特徴について教えてください。
飯野氏 : 最大の特徴は、気軽にサービスを利用できる「カジュアルさ」です。多くの類似サービスが「メンタル不調」の人向けにサービスを作っていますが、私たちは健康な人向けにサービスを作っており、メンタルサービスだと悟られない設計を心がけています。
「メタバースってどんなものだろう」「面白そうなサービスだな」と思って、私たちの空間に入っていただき「いろんな相談もできるんだ」と思ってカウンセリングしてもらうのが理想です。そのため、具体的な自覚症状がなくても「生産性を上げるにはどうすればいいですか」と気軽に相談してもらえます。
――メタバース空間に入りたくなるような工夫もあるのでしょうか。
飯野氏 : メタバース空間は島になっていて、ボートを運転したり、バスケットコートで遊んだりと、様々なアトラクションが楽しめるようになっています。自然や美術品を楽しむことができるため、それだけでもリラックス効果を得られるはずです。
弊社のCSがコンシェルジュとして島や操作の説明をしてくれるので、メタバースが初めての方でも安心できるでしょう。島を楽しんでからカウンセリングを受けることで、緊張もほぐれリラックスして相談できるはずです。
――カウンセラーはどのような方が多いのでしょうか?
飯野氏 : カウンセリングを担当しているのは、「臨床心理士」「公認心理師」の資格保持者に限定しています。創業期から力を貸してくださったカウンセラーさんが、マインクラフトなどを使って復職支援などをしている方で、その方を中心にネットワークを広げてきました。
カウンセラーさんの中には「症状が悪化する前に相談に来てくれればいいのに」と思っている方も多く、私たちが目指すビジョンに共感してくれています。現在は40名弱のカウンセラーさんたちにご協力いただいていますね。
――リアルとメタバースでは、カウンセリングの勝手も違うのではないでしょうか。
飯野氏 : たしかにメタバースでのカウンセリングはリアルに比べると、一長一短があります。メリットは、自分の見た目を気にしなくていいこと。人と対面して話すことが苦手な方も多いので、そのような方にとっても、メタバースなら気軽に相談できるはずです。
デメリットは、相談に来た方の目線や表情が見えないことですが、私たちがしようとしているのは治療ではないので、さほど問題ではありません。既にメンタルを崩している方のカウンセリングなら細かな情報も見逃せませんが、健康な方がメンタル不調に陥らないための予防のアプローチになるので、まずはカウンセラーとコミュニケーションをとることが重要だと考えています。
――現在はどのような企業からの引き合いが強いか聞かせてください。
飯野氏 : 現在は従業員の多い大手の企業に導入していただくケースが多いです。そのような企業の多くが抱えている課題が「若手社員のマネジメント」です。若手社員の早期退職を防ぎ、活躍できる環境を整えるためにサービスに興味を持ってくださる企業が多いですね。
私たちのサービスはエンタメ要素が多いため、若い方も興味を持ってくださりやすいのです。また、会社によってはメタバース空間を使って、自社のサービスや歴史を知ってもらう社内広報としても利用できないかとご相談をいただいており、今後はカウンセリングに閉じないメタバース空間の活用を広げていきたいと思っています。
▲2023年5月に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.7」に登壇した飯野氏。
「人生の質を上げるために」カウンセリングを受ける社会をめざして
――今後のオープンイノベーション戦略として、どのような企業を探しているか教えてください。
飯野氏 : メタバース内で提供できる、様々な「コンテンツを持っている会社」と組んでいきたいと思っています。たとえば私たちのサービスは、メタバースオフィスとしても利用できるので、サーベイ系の会社と組んで組織を分析・可視化することもできます。VTuberと組んで、よりエンタメを強化してもいいかもしれません。
他にも、他社のサービスの一環として私たちのサービスを利用していただくことも可能です。たとえば保険会社のようにユーザーから相談を受けるサービスは、メタバース空間を活用することができます。
――メンタルヘルスに限らず、様々な相談ができるようになるのですか。
飯野氏 : そうですね。他にも弁護士をはじめとした士業など、相談できるサービスは今後広げていきたいと思っています。今のサービスは自分たちでカウンセラーを集めて作ってきましたが、今後は他社と組みながら展開していきたいですね。利用者さんがどのようにサービスを利用したのか、その履歴も分析してサービスの改善にも使えるため、様々なメリットも提供できるはずです。
――最後に、今後のビジョンを聞かせてください。
飯野氏 : 誰もが気軽に専門家に相談して、人生の可能性を広げられる世界を作りたいと思っています。たとえば、身体の不調に関しては体温計で熱を測って、熱があれば病院に行って診察してもらいますよね。しかし、メンタルについては体温計のようなわかりやすい指標がないため、よっぽどひどい状況にならなければ診察にも行かないのが現状です。
些細な変化でも、気軽に相談できるような仕組みを作って、私のようにメンタルを崩す人を一人でも減らしたいと思っています。もしくは、不調を治すためではなく、より人生を充実するためにもカウンセリングをうまく活用してもらいたいですね。より人間関係を良好にしたり、ストレスフリーに生きるためにカウンセリングを受ける文化を作れたら嬉しいです。
(取材・文:鈴木光平)