『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は、日経トレンディの2021年ヒット商品ベスト30で1位となった『TikTok売れ』にフォーカスします。TikTokは「若者のもの」というイメージがあり、多くのビジネスパーソンにとってとっつきにくいものに感じられるかもしれません。ところが、「TikTok売れ」の詳細を知ればマーケティングのチャネルとしていかに優れているかがわかるはずです。
TikTokで紹介された30年前の小説がリバイバルヒット
『TikTok売れ』を語る上で欠かせないのは、小説『残像に口紅を(著:筒井康隆)』のリバイバルヒットでしょう。同作は1989年に出版された30年以上も前の作品ですが、TikTokクリエイターのけんご氏が書評を投稿した2021年7月以降、11万部を増刷する大ヒットとなりました。
2022年にTikTokの全世界の月間ユーザー数は15億人突破へ
アプリ市場の調査会社であるAppAnnieの発表した調査では、TikTokは2022年には月間ユーザー(MAU)が15億人を突破する見込みとなっています。MAUが10億を超えているアプリは現在、WhatsApp、Instagram、Messenger、WeChat、Facebook、YouTubeがあり、TikTokもビックテックに肩を並べることになります。
なお、TikTokの日本のMAUは2021年時点で950万と言われています。日本で人気のSNSアプリのMAUはそれぞれ、LINEが8900万、Twitterが4500万、Instagramが3300万、Facebookが2600万となっており、TikTokは今後これらのアプリと同等の規模に成長する可能性があります。
参照ページ:2022: A World Transformed — 6 Mobile Forecasts to Help You Succeed
マーケティング視点でのTikTokの特徴は「潜在層」へのアプローチ
SNSがマーケティングチャネルとして優秀で、モノを売るためのプラットフォームとして重宝されているのは周知の事実ですが、TikTokにはどのような特徴があるのでしょうか。
ひとつはTikTokが「潜在層」へのアプローチに強いことが挙げられます。例えばInstagramは好きなブランドのアカウントをフォローすることでユーザーは情報を得ますが、これはすでにブランドを認知している「顕在層」へのアプローチです。
対して、TikTokはフォローのフィードよりもおすすめのフィードがよく見られています。TORIHADAの調査では、「商品/サービスの購入や申し込みをする際に参考にするTikTokの機能」について質問したところ、約72%が「おすすめフィード」と回答しています。ユーザーが好むコンテンツを提供するレコメンド機能がTikTokの強みになっているのです。
TikTok利用者の平均年齢は34歳でコンテンツ支出金額が高い
TikTokは10代~20代の若者がメインのユーザーだと思われがちですが、DIGIDAYによると平均年齢は34歳とのことです。その他のSNSと比較すれば平均年齢は若いですが、極端に若い世代に偏っているわけではありません。
引用:日本の TikTok ユーザーは平均34歳、博報堂調査が示す実態 : 要点まとめ
さらに興味深いデータとして、TikTokユーザーはコンテンツ支出金額が多い傾向があることがわかっています。支出金額の全体平均が約4万2538円なのに対し、TikTokユーザーは約8万5862円と2倍近い金額をコンテンツに消費します。
引用:日本の TikTok ユーザーは平均34歳、博報堂調査が示す実態 : 要点まとめ
日本ではデジタルマーケティングのチャネルとしてはFacebook(Instagram)やLINE、Twitterなどが定番化していますが、TikTokの存在感はまだまだです。『TikTok売れ』のブームが示したように、TikTokが順調にユーザー数を伸ばせば、新たなデジマのチャネルとして国内で立場を確立できる可能性はありそうです。
【編集後記】TikTokクローンは成功するのか
新しいSNSが誕生するたびに注目されるのが「クローン」の存在です。かつて、24時間で消える投稿が大ヒットしたSNS『Snapchat』ですが、Instagramが「スナチャクローン」としてストーリー機能をリリースしました。
また、今年ブームを巻き起こした音声SNS『Clubhouse』も、Twitterがクローン機能のSpacesをリリースしたことで話題となっています。
TikTokもご多分に漏れず、FacebookやInstagramのReels機能によってクローンされています。こうしてビックテックと新興勢力による「買収か、クローンか」のせめぎ合いは続いていますが、TikTokの命運はどうなるのか個人的には気になるところです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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