地域の発展を加速させる!街づくりスタートアップ&大企業が語る未来とは?――eiicon meet up!!イベントレポート
去る8月24日、eiiconによるオリジナルピッチ企画「eiicon meetup!!vol.8」がSHIBUYA QWSにて開催された。このイベントは新規事業・オープンイノベーションコミュニティの活性化を目的に、話題のスタートアップ企業がピッチを行い、共創につながる“出会い”を生み出す場としての役割を持つ。
第7回の「未病ヘルスケアスタートアップ~人生100年時代の未病ヘルスケア~」に続く今回のテーマは、「地域発展に貢献する観光・街づくり」だ。様々な社会課題の解決を目指すスタートアップ3社(あめつちデザイン株式会社、株式会社KINCHAKU、株式会社NearMe)が登壇し、事業やビジョンについて会場に語り掛けた。さらに今回は、東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボが登壇。同テーマに取り組む大企業が“リバースピッチ”を実施した。――本記事では、同イベントの様子をダイジェストでお伝えする。
※後日、スタートアップ各社の個別インタビューを『meet startups!!』ページにて掲載予定です。
【東急】 常時募集のオープンイノベーションプラットフォーム「TAP」を展開し、”世界が憧れる街づくり”の実現を目指す
■東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ 武居 隼人氏
東急は2015年に鉄道業界としては初のアクセラレータープログラムをスタートした。当初は、スタートアップを支援するという意味を込めて「TOKYU ACCELERATE PROGRAM(TAP)」という名称だったが、2021年にスタートアップと共に未来を作るというメッセージを込めて「東急アライアンスプラットフォーム(TAP)」にリブランディング。
TAPの1つ目の特徴は常時募集を受け付けていること。そのため、必要なときにスタートアップと出会うことができる。2つ目の特徴は東急グループ内の27の事業が参画しており、21の多様な領域でアライアンスを組めるようにしていること。TAPのWebサイトには常時、東急グループ各社が抱えている課題やニーズを公表しており、それらの課題を解決できるアイデアや技術を常に受け付けている。
プロトタイプをもっている企業であれば応募が可能で、スタートアップだけでなく上場企業でも応募することができる。これまで1000件以上の応募、そして100件以上の協業実績があり、スタートアップと共に”世界が憧れる街づくり”の実現を目指していくという。
※東急のPRページは以下よりご覧ください。
https://auba.eiicon.net/projects/445
【あめつちデザイン】 EC×DXで宿を地域のショールームに
■あめつちデザイン株式会社 代表取締役兼CEO 霜竹 弘一氏
あめつちデザインは、宿泊体験DXと+物販EC機能を併せ持ち、顧客満足度の向上、業務効率化と収益向上を同時に実現するサービス「cocodake(ココダケ)」を展開しているスタートアップだ。旅行中に、宿に置かれている地元の工芸品や食品を買いたいと思った人は少なくないだろう。「cocodake」はそんな体験を促進し、宿を「地域のショールーム」にする。
宿泊客が、ほしいと思った商品をタブレットやスマホで購入すると、地元の製造業者に注文が届き、国内外の自宅に配送される。荷物を増やすことなく、手ぶらで帰ることができ、気に入ればリピート購入に繋げることも可能。深刻な人手不足で悩んでいる宿にとっても、ECを運営する手間をかけずに宿泊客の満足度を高められるというメリットがある。
また、宿のDXを促進する機能も搭載されており、広告物などをデジタル化することができるという。画一的な情報を提示するだけでなく、旬な情報をリアルタイムに配信できるため、旅行体験をよりリッチにすることもできる。あめつちデザイン代表の霜竹氏は、「今後、宿を旅の拠点にしてもらいながら、街歩きを促進して地方の関係人口を増やす取り組みを進めていきたい」と語った。
※あめつちデザインのPRページは以下よりご覧ください。
https://auba.eiicon.net/projects/37270
【KINCHAKU】 デジタルウォレットで”脱・財布”を実現する
■株式会社 KINCHAKU 代表取締役 新宮 ドミ氏
2018年に設立されたKINCHAKUが提供するのは、「〇〇券」や「〇〇証」といったパスをすべてデジタル化できる電子券プラットフォーム「KINCHAKU(キンチャク)」。これは、デジタルカードを活用して顧客管理や業務効率化を支援するクラウドサービスだ。「KINCHAKU」は、紙やプラスチックで行っていた煩雑な業務を改善することもでき、さらにキャッシュレス決済にも対応することでレジ業務の軽減、利用履歴から顧客の特徴を把握してその人に合ったプロモーションなどにも活用可能だ。
実際に観光や街づくり領域における利用も広がっており、様々なイベントや施設のチケットがデジタル発行されている。シートマップも簡単に作成できるため、席の場所を指定した予約もできる。また、施設をまたいだ共通券も簡単に作成でき、街全体で取り組むイベントなどにも利用可能だという。KINCHAKU代表の新宮氏は、「デジタルチケットの発行から決済まで一貫して行えるため、気軽に導入できる点が強みだ」と話した。
※KINCHAKUのPRページは以下よりご覧ください。
https://auba.eiicon.net/projects/8241
【NearMe】 タクシーの乗り合いで地域の交通課題を解決
■株式会社NearMe 代表取締役社長 髙原 幸一郎氏
NearMe(以下、ニアミー)は、独自のAIを活用した「シェアによって、お得でスムーズ」な移動体験を提供するシャトルサービスを提供するスタートアップ。コロナ禍の影響でドライバーが激減したタクシー業界。一方で外国人観光客がコロナ禍以前と同じ水準に戻るなど、街には人流が増えており、配車アプリを使ってもタクシーをつかまえられない状態が続いている。
その課題を解決するのがタクシーの「シェア」だ。4名で乗れるタクシーに一人で乗るということは、残りは空気を運んでいるのと同じで、大きな無駄が発生している。そこでニアミーでは、AIマッチングを駆使し、無駄なくタクシーの「シェア乗り」を実現している。
現在提供しているサービスの一つは、空港までの「シェア乗り」サービス。アプリで到着時間やピックアップの時間を予約すれば、当日何箇所かに寄りながら空港まで移動することができる。配車アプリと違うのは、事前に予約することでお得にタクシーを利用できること。例えば、渋谷駅から羽田まで最もおトクなシェア割で2,980円で移動できるというお得感から、これまで60万人に利用されてきた。
今後は同じ仕組みを地方に展開していくという。地方の自治体や交通事業者と組んで、地域の回遊性を高める取り組みを開始。人口数万人の地域では、交通機関がほとんど機能しておらず、免許を返納した高齢者などがほとんど移動できない地域も少なくない。そのような地域でライドシェアを広げることで、住民の移動を促進し経済を活性化させていくと、髙原氏は語った。
――5社のピッチが終了した後は、登壇者と参加者によるネットワーキングが実施された。なお、「eiicon meet up!!」については、公式facebookで情報を発信しているのでぜひチェックいただきたい。
取材後記
今回は地域の課題を解決するために、様々なアプローチをしている企業が登壇した。改めて、日本の地方が多様な課題を抱えていることを認識した方も多いはずだ。このまま地方の過疎化が進み、自治体が減っていけば、その影響は国全体に及ぶ。地方の問題は、そこに住む人たちだけの問題ではなく、日本に住む人たち全体の問題でもある。今回登壇したような企業を応援すると共に、地域との繋がりを持つ人の重要性を感じるイベントだった。
(取材・文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)