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神戸市内の特色ある5社が共創パートナーを募集!2期目を迎える神戸市主催のOIプログラム「Flag」を紐解く<後編>

神戸市内の特色ある5社が共創パートナーを募集!2期目を迎える神戸市主催のOIプログラム「Flag」を紐解く<後編>

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神戸市が2022年度より開催している、オープンイノベーションプログラム「Flag」。神戸市内に拠点を置く企業が募集テーマを掲げ、応募企業とともに共創でイノベーションの創出に挑むプログラムだ。今年度は、農業、金属加工、アウトドア、赤外線センサ、上履きといった特徴的な強みをもつ5社がホスト企業となり、募集テーマを提示している。

前編の記事では「Flag」の主催者である神戸市に加え、「小池農園こめハウス」「伊福精密」のホスト企業2社のインタビュー内容を紹介した。続く後編では「好日山荘」「センサーズ・アンド・ワークス」「ラッキーベル」の3社について紹介する。

今年度のホスト企業が本プログラムに参加した背景や、各募集テーマを設定した意図、共創で実現したい世界観などについて詳しく聞いた。

【好日山荘(アウトドア)】「人生100年時代 心身共に豊かなアウトドアライフを過ごしてもらうための、健康に寄与するサービスの実現」

▲株式会社好日山荘 広報室 担当課長 松浦由香 氏

――御社が本プログラムに参加することになった理由や、「人生100年時代 心身共に豊かなアウトドアライフを過ごしてもらうための、健康に寄与するサービスの実現」というテーマを掲げられた背景についてお聞かせください。

松浦氏: 当社は2024年に100周年を迎える登山用品の専門店で、この節目を機に一歩進んだ新たな登山の魅力を提供できる企業になりたいと考え、本プログラムに挑戦することにしました。昨今のコロナ禍は、自然への考え方を振り返るきっかけになりました。

登山、ハイキング、ランニング、ヨガなどのアクティビティを楽しむ人々が増え、ワークライフバランスや健康への関心も高まりました。こうした意識の変化に対し、私たち好日山荘も何かできることがあるのではないかと考えています。

たとえば、人生100年時代と言われるなかで、加齢による体力の衰えや、怪我や病気で登山を楽しめなくなり、リタイアを余儀なくされる方々がおられます。そんな人たちに対して、何らかの道具や体のケアを提供し、登山をより長く楽しんでもらいたいと思っています。また将来的には、アウトドアをフックにさまざまなコンテンツを総合的に提供する場所をつくる構想も持っています。アウトドアを楽しむ人々が、より健やかに豊かに過ごせる場所を提供していきたいのです。

――御社は神戸電鉄さん、神戸市さんと連携協定を結び、神鉄沿線の地域活性化にも取り組まれています。

松浦氏: 2021年頃より他社との事業連携を強化しており、外部と調整を行うプロジェクトチームも設けています。私もそのチームの一員ですが、さまざまな部署から横断的にメンバーが参画し、外部との連携に取り組んでいます。

そのなかで、神戸電鉄さん、神戸市さんとは「KOBE Rail&Trail」というプロジェクトを推進しており、神鉄谷上駅を拠点に「裏六甲」の隠れた魅力を情報発信したり、神鉄沿線のハイキングコースの広報活動を共同で実施したり、登山道を整備したりとさまざまな活動に取り組んでいます。

――本プログラムでは、どのようなパートナーとともに、どんなアイデアを実現したいのでしょうか?

松浦氏: 第一に、医療・ヘルスケアに関連するアセットをお持ちの企業さまを探しています。たとえば、個々のストレス・睡眠・姿勢・体組織といった健康データを収集・可視化・分析できる技術などです。ウェアラブルデバイスでデータを取得したり、AI技術を導入して分析・可視化するようなイメージを持っています。これにより、個人の健康状態に合わせたサービスを提供したいと思っています。

第二に、登山は健康によいとされていますが、科学的なエビデンスに基づく裏づけは不十分です。ですから、登山による健康への影響を科学的な見地から可視化する技術をお持ちの企業さまとも一緒に取り組みたいです。具体的には、脳の活性具合や心拍数、登山前後での筋肉量の変化、幸せホルモンの分泌量を測定するような技術を想定しています。そうしたテクノロジーと、私たちの持つ登山に関する知見を組み合わせ、お客さまがアプリで閲覧できるようなサービスを開発していきたいです。

最後に、「山 × 食」「山 × エンタメ」「山 × ゲーム」「山 × VR」など、幅広く山の新たな楽しみ方を提案するサービスの創出も目指しています。登山未経験者にとって、登山は少しハードルが高く感じられるものだと思います。ですから、登山と身近なものとかけ合わせることで興味喚起し、若年層を含めた新規のお客さまも取り込んでいきたいと思っています。

――本プログラムで活かせる御社の強みは?

松浦氏: 全国56店舗、クライミングジム7店舗のほか、アウトドア専門のECショッピングモール「GsMALL(ジーズモール)」を運営しています。GsMALLでは522ものアウトドアブランドと提携しています。好日山荘のメンバーズ会員は100万人程度。そのうちアクティブにご購入いただいている会員数は約34万人で、もっとも会員数が多いのは50代です。これらの顧客接点を活かして、アウトドア愛好家へ発信することができます。

また、当社はアウトドアに関する深い知見を持っています。全国に在籍するスタッフが登山レポートを随時投稿しており、現在約2万4,000件以上の報告が蓄積されています。それに、プライベートブランドウェアの開発・販売実績も有しています。実証フィールドとして、新神戸駅にある登山支援拠点「トレイルステーション神戸」を活用することも可能です。歩いて10分程度の場所には滝があり、すぐそばに自然があるという良好な立地にあるのが魅力です。

▲登山や自然を安全に楽しむために必要な知識や技術を提供する「登山学校」も展開。好日山荘は登山に関する豊富なノウハウを有している。

――応募企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

松浦氏: まだ見ぬ応募企業の皆さんとともに、登山を通して日本中、世界中の人々に登山・アウトドアと触れ合う機会を提供したいと思っています。私たちは新たなサービスを提供し、登山業界を盛り上げていきたい考えです。応募企業の皆さんにも夢があると思いますので、私たち好日山荘が微力ながら、夢の実現にご協力できればと思います。ぜひ一緒に新しい取り組みを進めていきましょう。

【センサーズ・アンド・ワークス(赤外線センサ)】「自社開発センサと人検知技術により、にぎわい・安心・安全を実現させる新たなサービスの創出」

▲株式会社センサーズ・アンド・ワークス 代表取締役 堀江聡 氏

――御社が本プログラムに参加した理由からお聞かせください。

堀江氏: 当社は大学発のベンチャー企業で、約10年前に人流データサービスを開始しました。直近5年間は、街中の人流計測を行い、それを街づくりに活かす事業に特化しています。昨今、スマートシティの概念に加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが徐々に浸透してきました。DXとは、最終的にはデータの利活用を指します。スマートシティやDXが広がることで、データ利活用のニーズも高まってきましたし、ニーズ自体が多様化しています。

そのなかで私たちは、センサをもとに人流の取得に継続的に取り組んでおり、計測データを使って、都市のなかの人々の活動量や、再開発・再整備による人流の変化などを分析してきました。ただ、当社で取得・保有しているセンサデータだけでは不十分だと感じるように。そこで、共創パートナーとともに、より充実した新しいソリューションをつくっていきたいと考え、本プログラムに参画することにしました。

――御社で取得できるデータの特徴は?

堀江氏: 当社で取得できるデータは、人の外観から得られるものに限られます。「人であるかどうか」が検知基準なので、「そこに人がいる」や「その人が部屋から出た」といった情報は入手可能です。また、カメラソリューションを使えば、性別・年齢なども把握できますが、赤外線センサでは「人であるかどうか」以外の情報は取ることができません。

――本プログラムでは、「自社開発センサと人検知技術により、にぎわい・安心・安全を実現させる新たなサービスの創出」という募集テーマを掲げられました。どのような共創イメージをお持ちですか?

堀江氏: 3つの共創アイデアを挙げています。1つ目は、私たちのセンサでは取得できない属性データなどを取得できる、あるいは保有する企業とのコラボレーションです。人流データと、「何の目的で来街しているのか」「購買意欲があるのか」などの属性データを連携させることで、街のにぎわい創出に貢献していきたいと考えています。

2つ目については、これまでの事業活動から、収集したデータを一般市民向けに開示することで、より高い相乗効果が得られると感じています。現状、私たちでは「にぎわっている」や「混雑している」というような物理的な指標をマップに落とし込むことはできていますが、ここに属性データを加えることで、「こういう購買目的の来街者が多い」などの情報を示せるようになります。

そうすれば、情報の提示の仕方も変わってくるでしょうし、変えられる可能性があります。ですから、一般市民や利用者向けのUIに強みを持つ企業やアプリケーションの開発に長けた企業とも共創していきたいです。

3つ目のアイデアとして、人流データの活用先をさらに開拓していきたいと考えています。たとえば、工事現場や工場、病院、郵便局など、さまざまなフィールドが挙げられます。人流データを活用できるフィールドは保有するものの、具体的なソリューションにまで結びつけられていない企業がおられましたら、お会いしたいです。業務効率化や安全性向上など、多様な観点で人流データを活かせる可能性があります。

▲熱源集合検知による滞留や体温推定など赤外線エネルギー計測を主とした人検知技術を用い、人の存在だけでなく移動方向を検知する人流センサ「Sign TYPE-B」。センサーズ・アンド・ワークスが自社開発している。

――次に本プログラムで活かせる御社の強みについてお聞きしたいのですが、人流データ以外だと、どのようなものがありますか?

堀江氏: 当社では人流データを取得するだけではなく、データ分析や伴走型コンサルティングもワンストップで提供しています。たとえば、街の再開発に取り組む行政に伴走する形で、再開発前と再開発後の人流データを取得し、街づくりに活かすプロジェクトも手がけています。そうした業務を通じて得た知見も、共創の場で発揮できるでしょう。

また、当社は中小企業なので、制約は多くありません。大枠では人流をテーマにしていますが、決められた枠内にとらわれることなく活動しています。こうした点でもご期待ください。

――最後に応募企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

堀江氏: データを利活用するためには、現場のニーズを正確に把握しフィットさせることが必要ですが、そのことばかりに集中すると中長期的な視点が失われることもあります。だからこそ、両方の視点を持ちながら見ていくことが重要です。

昨今、実証の機会をいただくことが増えましたが、一過性の実証で終わらず、使ったツールやハードを長期的に活用することが大事だと思います。即効性はないものの数年のスパンで考えると効果が生まれることもあるので、両方の視点を持ってプロジェクトを進めていきたいです。

【ラッキーベル(上履き)】「子どもの健全な成長をサポートする、『正しい靴』を履き続けられる仕組みの創出」

▲ラッキーベル株式会社 代表取締役社長 有吉譲治 氏

――スクールシューズの専門メーカーとして長い歴史をお持ちの御社が、本プログラムに参加しようと思った理由からお聞かせください。また、「子どもの健全な成長をサポートする、『正しい靴』を履き続けられる仕組みの創出」というテーマを設定された背景にある想いについてもお伺いしたいです。

有吉氏: 当社は1961年に設立され、今年で62年目になります。当時子どもたちが学校で履いていた安価な上履きの代わりに、足の成長に良い上履きを全国へ普及させることを目的に立ちあげました。

また、当社の「ラッキーベル」という名称は、ベルマークのベルに由来しています。会社設立時より全ての靴にベルマークをつけて販売。集めた点数で学校の設備を購入できるベルマークの仕組みに協賛し、子どもたちの教育環境改善に貢献してきました。しかし時代は変わり、設備が足りないという学校は減りましたし、靴の機能も良くなりました。ですから私たちも、新たなアプローチで子どもたちの成長や未来に貢献をしたいと考えるようになりました。

そうしたなか、私たちの抱いている問題意識は、子どもたちが適切なサイズの靴を履いていないこと。学校で靴のサイズを合わせる際、ご両親が「すぐ大きくなるんだから、大きめのサイズを買っておきなさい」とおっしゃるのをよく耳にします。ですが、大きい靴を履き続けていると、足を痛めてしまいます。やはり、正しいサイズの靴を履くことが重要です。

正しいサイズの靴を履こうとすると当然、履き替えの頻度が高まるので、廃棄しなければならない靴が増え、環境にはよくありません。ですから、廃棄する靴をリサイクルする仕組みを考えたい。制服はリユースして使われるケースも多いですが、靴は生地も激しく傷みますし、底もすり減り、歩き方の癖も付きます。

そのままリユースすることは困難ですから、廃棄する靴を回収して、もう一度ゼロから作り直すような方法で、環境負荷を減らしながら正しいサイズの靴に履き替えられる仕組みをつくれないかと考え、本テーマを設定しました。

▲ラッキーベルのスクールシューズは全国の学校で学校指定商品として採用され、年間約100万足を販売する。

――どのようなパートナーとともに、どのようなアイデアを実現したいですか?

有吉氏: まず、靴のリサイクルに関していうと、靴は靴底や上部の生地(アッパー)など異なる素材で構成されているため、リサイクルが難しく、どのようにすれば実現できるのか、私たち自身もアイデアがありません。

たとえば、単一素材があって、それを発泡させるとクッション性や耐久性のある靴底にもなるし、それを繊維状にすればアッパーもつくれる。そんな素材を製造できる技術などをお持ちの企業があればお会いしたいです。実際、欧米にはそういった活動を進めているベンチャーもあるので、実現不可能ではないと思っています。

実現したいアイデアの2点目は、子どもたちに自分に合った靴を提供することに関してです。当社は学校で使う靴を、販売代理店を通じて大量に提供するというビジネスモデル。したがって、消費者と直接コミュニケーションをとる機会が乏しく、得意ではありません。ですから、消費者とのコミュニケーションツールやアプリを一緒に開発できるような企業とも出会いたいです。

――どのような消費者向けサービスをイメージされていますか?

有吉氏: たとえば、靴に何らかの仕掛けを施しておき、消費者が買い替え時がわかるようにしたり、子どもの足の写真から足の状態をフィードバックする仕組みを構築したり、今履いている靴の写真から適切な靴をオススメできるアプリを開発したり。そんなイメージを持っています。

また、当社は現在、靴や足が子どもの姿勢、運動能力などに与える影響について、大学と共同研究を行っています。なので、子どもの姿勢を撮影し、改善すべき点をフィードバックするようなツールも開発できればと思います。こうしたアイデアを一緒に具現化してもらえる企業とお会いしたいです。

――本プログラムで活かせる御社の強みは?

有吉氏: 当社の靴は、全国3000校程の小中高および幼稚園に採用されており、それらの学校とネットワークを有しています。実際に教育現場で、子どもたちに靴を履いてもらい、フィードバックをもらうこともできます。

学校以外にも、病院や足に関する専門家ともコネクションがありますし、当社のなかにも足や靴に関する豊富な知識の蓄積があり、それらが私たちの大きな資産です。さらに言うと、当社はメーカーですから、自社で靴をデザインして試作することも容易。アイデアさえあれば迅速に形にできる点は、当社だからこそだと言えます。

――応募企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

有吉氏: 冒頭でも触れましたが、子どもたちの成長と多くの人々の健康に貢献することが当社のミッション。現在、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化していますし、環境問題が子どもたちの未来に関わる大きな課題となっています。これらに向き合いながら、子どもたちのよりよい未来のために一緒に取り組みませんか。

取材後記

「Flag」として2期目を迎える今回は、農業、金属加工、アウトドア、赤外線センサ、上履きなどユニークな企業が集結した。それぞれにオリジナルの強みがあり、共創にかける熱意も高い。神戸市内の企業とともに、行政の協力も得ながら新しい価値を生み出したい企業は、応募してみてはどうだろう。

なお、8月23日にはオンライン・オフラインのハイブリッドによる「プログラム説明会」が予定されている。オフラインでは昨年度の「Flag」参加企業によるトークセッションも催されるそうだ。本プログラムについて、より詳しく知りたい方は、ぜひ参加してみることをお勧めしたい。

KOBE OPEN INNOVATION 「Flag」 2023 9/5(火)応募締切

(編集・取材:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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