meet ▶[プレイシンク]:NFTを誰もが簡単に利用できる社会に。プレイシンクが描くビジョンとは
https://auba.eiicon.net/projects/35691 #ブロックチェーン
デジタルアートでの活用によって、瞬く間に認知度が高まった「NFT」。新しい技術を世に広める好事例となったが、その一方で「NFT=デジタルアート」という関係性を強く印象付けることになってしまった。そうした中、NFTが有する様々な可能性を引き出し、事業の活性化に繋げているのが株式会社プレイシンクだ。同社はNFTを社会に浸透させるため、私たちの身近なシーンでのNFTサービスを数多く作っている。
eiicon companyのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、同社の代表である尾下順治氏にインタビューを実施し、起業の経緯やNFTの可能性、今後の事業の展望などを語っていただいた。
▲株式会社プレイシンク 代表取締役 尾下順治氏
「Web3を社会に浸透させる」というビジョンを胸に、カーブアウト企業に参画
――まずは起業の経緯を聞かせてください。
尾下氏 : プレイシンクはもともとゲーム会社オルトプラスの子会社で、2021年にカーブアウトしたスタートアップです。私自身は以前、アクセルマークという会社の代表をしていて、同社でも2018年ごろからWeb3の事業を展開していました。しかし、あまりに市場を先取りしたためグロースできなかったのです。
そんな時にプレイシンクがオルトプラスからカーブアウトするという話をいただき、改めてWeb3に挑戦するため参画したのです。現在はWeb3の技術をいかに社会に浸透させるかをテーマに、事業を展開しています。
――Web3が社会に浸透するとはどういう状況なのでしょうか。
尾下氏 : 私がイメージしているのは、インターネットの普及を再現することです。私は以前、KDDIの前身となる会社でモバイルインターネットサービスの立ち上げにも携わり、インターネット人口が急増する様を当事者として見ていました。20年前にも関わらず、モバイルインターネットの普及によって日本は約6000万人、つまり人口の半分もの人がインターネットにアクセスしていて、世界でもトップクラスのインターネット大国だったのです。
Web3も同じように、誰もが当たり前のように使っている時代を作るのが私たちのビジョンです。そのためには、NFTを特別な技術ではなく、リテラシーがなくとも誰もが使える身近なものにしなければなりません。
中央集権的な技術により安心・安全なNFTサービスを
――誰もがWeb3を使えるようにするために必要な条件を教えてください。
尾下氏 : 利用環境を整えることです。なぜ日本でインターネットが普及したのか。それは携帯さえ持てば常時インターネットに接続できたからです。それまではダイヤルアップで都度接続しなければならなかったので、携帯さえ持てば誰でも常時接続できるようになったことが、インターネット人口の増加を押し上げました。
Web3も一緒で、利用するために新たな手間が発生したり、リテラシーが必要な状況では広がりません。スマホで誰もがインターネットに繋がれるように、子供から老人まで誰もが簡単に使える環境が必要です。
――そのような環境を作るため、どのようなサービスを開発しているのでしょうか。
尾下氏 : 私たちが開発しているのは、NFTを簡単に利用するためのウォレットです。利用するのに特別なリテラシーは必要なく、普段使っているようにインターネットサービスを使うだけで、自動的にNFTを取得・利用できるようになります。
NFTと聞くとデジタルアートを思い浮かべる方もいると思いますが、それはNFTを使った事例のほんの一部にすぎません。NFTには他にも多様な機能や特性があるため、私たちは様々な企業と一緒に新しいNFTサービスを立ち上げているのです。
――今やウォレットを開発している企業も多いと思いますが、他社とどのような違いがあるのか教えてください。
尾下氏 : ブロックチェーン上にユーザー毎に付与されたウォレットでありながら、中央集権的な構造を持っているところです。ブロックチェーン技術はもともと非中央集権、つまりは管理者がいないという概念で作られていますが、それによる弊害も起きています。管理者がいないということは全て自己責任なため、盗まれたり、流出しても取り戻す術もなければ補償もしてもらえません。
それではあまりにもNFTを保有するリスクが高いですよね。その点、私たちのサービスには管理者が存在するため、NFTを盗難されたり、間違って送付した場合も取り戻すことができるのです。従来の中央集権のメリットと、NFTのメリットを両取りできるようなサービスになっています。
デジタルアートに留まらないNFTの可能性
――デジタルアートの他にも、NFTでどのようなことが可能になるのか教えてください。
尾下氏 : 複数の事業でプロジェクトを進める際にも大いに役立ちます。たとえばスタンプラリーでは、様々な事業者を巻き込んでスタンプをもらうことがありますよね。紙では簡単にできましたが、デジタルになるとデータの扱いが非常に難しくなるのです。ユーザーの許可なしに複数の事業でユーザーのデータを共有するのは違法になってしまいます。
これは特定の企業がデータを持っているため問題になりますが、Web3技術でユーザーがデータを保有していれば問題ありません。他にもライブ会場周辺の飲食店が「ライブ参加者はドリンク一杯無料」といったクーポンを発行する際にも、Web3なら簡単に実現できます。さらに、どれくらいの人がクーポンを利用したかトラッキングもできるため、マーケティングにも活用できますね。
――そのような使い方もできるのですね。今後はどのような企業とのオープンイノベーションを考えているのでしょうか。
尾下氏 : 一つは放送系の事業者です。これまで所属がはっきりしている芸能人はファンクラブを作れましたが、ワンクールでいったん終わってしまうアニメなどはファンクラブを作るのが難しい。
しかし、NFTを使えば、そのようなコンテンツでもファンクラブを容易に作れますし、ノベルティやクーポンにもNFT技術を使えます。イベントに参加した人や特定の商品を買った人向けの特典映像を用意することもでき、ファンに対して多様なアプローチが可能になるはずです。
――最後にNFTに興味のある企業にメッセージをお願いします。
尾下氏 : すでにNFTを実装している会社には、私たちの技術を使ってお役に立てることがあると思うので、ぜひ相談してください。また、NFTに興味はあるけど、自分たちのサービスにどのように活かせばいいかわからないという方からの相談もお待ちしています。
これまで事業企画の段階から、一緒にアイデアを考えて事業化してきた実績があるので、ぜひ一緒にWeb3の普及を進めていければと思います。
▲2023年2月16日に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.6」に登壇した尾下氏。
(取材・文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)