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2021年は約100社が誕生。急成長の欧州ユニコーン、2022トップ15社のビジネスモデル【後編】

2021年は約100社が誕生。急成長の欧州ユニコーン、2022トップ15社のビジネスモデル【後編】

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近年、急成長しているヨーロッパのスタートアップ市場。英ベンチャーキャピタルのAtomico(アトミコ)が毎年発行している「State of European Tech 2021」によれば、2021年のヨーロッパのスタートアップへの投資額は過去最高の1,000億ドル(約14兆円)に達した。これは、2015年の投資総額の約10倍にもなる。

また、2021年にヨーロッパで誕生したユニコーンは約100社にのぼり、ヨーロッパのユニコーン企業数は323社となった。

ーー世界の企業が取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第28弾では、アメリカとヨーロッパにオフィスを持つ事業開発・投資企業「i5invest」が2022年1月に発表した「The European Unicorn & Soonicorn Map 2022」に着目。同マップで紹介されたユニコーンの評価額ランキングで、トップ15社にランクインした企業のビジネスモデルを紹介する。前編では15〜8位、後編となる本記事では7〜1位を対象にしている。

※本文中で紹介している評価額は直近の企業のプレスリリース、あるいは海外メディアでの報道を参照しており、同ランキングとはズレが生じている。

【7位】欧州初のモバイル専用銀行「N26」


▲N26のホームページより

2013年、ドイツ・ベルリンで創業したN26は、ヨーロッパ初のモバイル専用銀行で、消費者向けにデジタルの銀行口座やクレジットカードなどを提供する。2015年にドイツとオーストリアで、初の商品となる無料のデジタル銀行口座とマスターカードを発売。その後はヨーロッパ内で急速に支持を獲得し、現在は25の市場で700万人以上の顧客を持つ。

強みは、簡単に素早く安全な銀行口座やクレジットカードを持てること。わずか8分で口座を開設可能で、アカウントを開設した直後にマスターカードを入手して、Apple Pay、またはGoogle Payに接続して、すぐに支払いに利用できる。

ホームページには「セキュリティが最優先事項だ」との説明があり、2016年には完全なドイツの銀行免許を取得している。取り引きには、生体認証や3Dセキュア技術などが活用されている。

2021年10月には、シリーズEでの9億ドル(約1,230億円)以上の資金調達を発表。結果、評価額は90億ドル(約1兆2,300億円)を越え、世界のフィンテック企業のトップ20にランクインしているという。

【6位】プロセスマイニングのパイオニア「Celonis」


▲Celonisのホームページより

2011年、ドイツ・ミュンヘンで創業したCelonisは、業務プロセスを可視化して分析、効率化に役立てるプロセスマイニングツールを提供する。10年前からこの市場を開拓してきたCelonisは業界のパイオニアともいわれ、同社のホームページによれば、プロセスマイニングを使用する企業の90%以上がCelonisを選択しているそうだ。

導入企業の事例には、Johnson&Johnson、DELL、アクセンチュアなど知名度の高い企業がずらりと並ぶ。時間やコストの節約、顧客満足度の向上のほか、ルフトハンザ航空ではツールの利用により炭素排出量の削減を達成したという。

2019年2月には日本法人を設立。ブラザー工業、日立、TDKなどの大手企業をはじめ、導入事例が出てきている。現在、世界17都市にオフィスを構え、2,800人を超える従業員が働いている。

2021年6月には、10億ドル(約1,370億円)のシリーズDの資金調達を実施。評価額は110億ドル(約1兆5,000億円)を超える。

【5位】大規模なデータセンター「Global Switch」


▲Global Switchのホームページより

1998年創業、イギリスやオランダなど世界8都市に拠点を構えるGlobal Switchは、ヨーロッパとアジア太平洋地域に約428,000平方メートルの大規模なデータセンタースペースを所有・運営している。アジアでは、香港、シンガポール、シドニーに拠点を持つ。

長年の実績を持つ同社は、自社の強みとして「カスタマイズ性」「遅延しづらい接続」「グローバルな相互接続」「世界各地へのアクセス能力」「財務力」などを挙げている。

持続可能性にも注力するGlobal Switchは、国際的なコンサルタントチームと協力して、CO2排出量の削減などに挑む。具体的な目標として、100%再生可能エネルギーを購入することで、2030年までにカーボンニュートラルの達成に取り組んでいる。

2020年10月には初のグリーンボンドを発行し、純収益として6億9300万ユーロ(約970億円)を調達。グリーンボンドとは、企業や地方自治体等が国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券を指す。この資金は、新しいグリーンデータセンターの開発、および既存施設のエネルギー効率改善による拡張計画に配分されるという。

2022年5月のBloombergの報道によれば、「Global Switchは売却の準備ができている」らしく、その価格は100億ドル(約1兆3,700億円)とのこと。年内に新たなニュースがあるかもしれない。

【4位】CO2排出量が90%少ないバッテリー「Northvolt」


▲写真提供:Northvolt

2016年、スウェーデン・ストックホルムで創業したNorthvoltは、世界でもっとも環境に配慮したバッテリーの開発を目指す。同社の製品は、1,000回以上の充電と95%のリサイクルが可能で、通常のバッテリーと比較してCO2排出量が90%少ないという。

Northvoltの原材料調達は国際基準に準拠しているだけでなく、独自で設けた環境基準も導入している。それに値しない原材料の場合はリサイクルを実施する。2030年までに、原材料の50%をリサイクルバッテリーから調達することを目指している。

製品の種類は、さまざまな用途に使用できる四角や筒状のほか、エネルギー貯蔵システム、自動車などのモビリティ用バッテリー、工事やイベント時にも現地で活用できるモバイルタイプなどがある。BMWやVolvo Cars、Volkswagen Groupなどが主要顧客となる。

2022年7月には、ヨーロッパでの生産拡大を目的とした11億ドル(約1,500億円)の資金調達を実施。Bloombergの報道によれば、Northvoltの評価額の詳細は不明とされているが、この資金調達後も以前の評価額120億ドル(約1兆6,400億円)を維持すると見込まれている。

【3位】グローバルの金融アプリ「Revolut」


▲Revolutのホームページより

2015年、イギリス・ロンドンで創業したRevolutは、グローバルな金融アプリを提供する。オンラインで口座を開設すると、手頃な手数料での送金やお金の受け取り、Google Payでの支払い、アカウントを持たない人との割り勘、投資などができる。

消費者向けとして無料を含むいくつかのプランがあるほか、事業者向けのサービスも提供する。現在、世界中に1,800万人の一般顧客、50万人以上の企業顧客がいるという。

日本では、2020年10月に正式サービスを開始。現状は一般顧客向けのみとなり、無料のスタンダード会員、月額980円のプレミアム会員、月額1,980円のメタルの3つのプランを提供する。日経クロステックの記事によれば、日本でも徐々に会員が増えつつあり、2022年は複数サービスを開始する予定があるそうだ。

この7月には、イギリスとアイルランドで決済端末のRevolut Readerの発売を発表している。2021年7月にシリーズEで18億ドル(約2,500億円)のを資金調達を実施し、評価額は330億ドル(約4兆5,000億円)とされている。

【2位】デジタル決済ソリューション「Checkout.com」


▲Checkout.comのホームページより

2012年、イギリス・ロンドンで創業したCheckout.comは、グローバルな決済ソリューションを提供する。同社のプラットフォームは、各社のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるほか、150カ国以上の市場で同じeコマース決済ゲートウェイ技術を利用できる。低コストで多様な支払い方法を提供できることから、導入企業の売上に貢献しやすいという。eコマースのほか、フィンテックやゲーム業界にも顧客を持つ。

最新のニュースでは、2022年4月にリアルタイム決済が可能なPayoutsをローンチしている。このプラットフォームでは、174ヵ国で40億枚以上のカードへのリアルタイム決済と、約40ヵ国の現地銀行口座への決済が可能になる。同社によれば、加盟店や個人は国境を越えた決済のコストを削減しながら、リアルタイムで資金を移動させることができるようになるという。

2022年にシリーズDで10億ドル(約1,370億円)の資金調達を実施し、評価額は400億ドル(約5兆4,700億円)にのぼる。

【1位】eコマース向け後払い決済「Klarna」


▲Klarnaのホームページより

2005年、スウェーデン・ストックホルムで創業したKlarnaは、「決済を可能な限りシンプルで安全にする」というミッションを掲げ、後払いの決済ソリューションを提供する。無利子のPay in 4(4回払い)とPay in 30 days(30日以内払い)、および融資(6〜36ヵ月以上の分割払い)がある。

顧客に決済方法の柔軟性を提供することで、AOV(平均注文金額)が41%増大、コンバージョンが30%伸長するという実績があり、新規顧客の獲得にも役立つという。ユーザーの70%がZ世代とミレニアル世代だ。

すでに、日本を含む17ヵ国で40万を超える加盟店を有し、1億4,700万人のユーザーに決済ソリューションを提供している。日本進出の正確なタイミングはWeb上では判明しなかったが、Klarnaを扱う日本語のニュース記事は2020年頃から見られている。資生堂、ユニクロ、良品計画(無印良品)といった大手が導入済みだ。

REUTERSの報道によれば、2022年7月11日、Klarnaは新たな資金調達ラウンドで8億ドル(約1,100億円)を調達。評価額は67億ドル(約9,200億円)となり、2021年の456億ドル(約6兆2,300億円)から85%下落した。TechCrunchの報道によれば、KlarnaのCEO、Sebastian Siemiatkowski氏は「ロシアのウクライナ侵攻による消費者心理の変化、インフレの急激な上昇、非常に不安定な株式市場に加え、おそらく不況もある」とその原因を話したそうだ。

サムネイル写真提供:Northvolt

編集後記

1〜7位のうち4社がフィンテックとなった。いずれの企業も続々と次の一手を打っており、巨大化する可能性が大きいと同時に、いかに競争が激しい業界であるかを物語っている。衝撃だったのはランキング1位となったKlarnaの評価額の急落。ランキングは2022年1月に公開され、4月に編集されている。それから、わずか3ヵ月の間に状況が急変したことになる。同社は5月に「全世界の労働力の10%を削減する」と発表した。厳しい局面を迎えたKlarnaの運命はーー。今後の動きも注視したい。

(取材・文・撮影:小林香織)  

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世界のスタートアップが取り組むイノベーションのシーズを紹介する連載企画。