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月間ユーザー4億人、Snapchatのマップ機能「Snap Map」に世界のZ世代がハマる理由

月間ユーザー4億人、Snapchatのマップ機能「Snap Map」に世界のZ世代がハマる理由

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写真・動画共有SNS「Snapchat(スナップチャット)」は、2025年5月7日、デジタルマップ機能「Snap Map(スナップマップ)」の月間アクティブ ユーザー数が4億人を超えたと発表した。

2017年にリリースされた同機能は、友人と位置情報を共有したり、身の回りの人気スポットを発見したりする目的で使われているという。Snapchatのデイリーアクティブユーザー数(DAU)は4億6,000万人にのぼり、欧米を中心に10〜30代の若年層に広く浸透している。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第64弾は、世界的なトレンドとなっているデジタルマップ「Snap Map」を取り上げる。世界のZ世代は、なぜ「位置情報の共有」を好むのか。

月間アクティブユーザー9億人の「写真共有SNS」

2011年に米国でローンチされた写真・動画共有SNSのSnapchatは、欧米を中心に若年層から絶大な人気を誇る。同サービスを運営するSnap社の2025年第1四半期の決算報告書によれば、月間アクティブユーザー数(MAU)は9億人を突破。デイリーアクティブユーザー数(DAU)は4億6,000万人で、前年同期比で3,800万人(9%)増加した。

▲友人とのコミュニケーションのほか、世界中のトレンドを見つけることもできる(Snapの公式資料より)

▲豊富なフィルターを使った写真を友人に共有できる(Snapchatのスクリーンショット)

主な機能は、①写真や動画(Snap)を撮影して指定した相手に送る、②フレンド(相互でフォローしている相手)とチャットをする、③ユーザーのストーリーを閲覧する、④デジタルマップだ。ユーモラスなカメラエフェクトが満載で“エンタメ”の要素が強い。送ったSnapやメッセージが自動的に“消える”のも特徴だ。保存しない限りは、閲覧後すぐ、あるいは一定期間で削除される。

受け手が「返信しなければ」というプレッシャーを抱きづらく、1対1のメッセージよりも気軽に受け取れる。送り手にとっても、大勢に向けて発信するその他のSNSよりも狭いコミュニケーションとなり、気楽さがあるのかもしれない。

▲ローンチ以来、Snapchatは次々と新機能を実装(Snapの公式資料より)

Snapchatは、ローンチ以来121の機能追加を行い、ユーザーを飽きさせない企業努力をしてきた。今となっては投稿が消える仕様や位置情報共有はめずらしくないが、普及よりもだいぶ以前から、こうした機能を導入しているところを見ると、トレンドをキャッチする鋭い洞察力がありそうだ。

▲サブスク会員数も伸びており、1,400万人以上に増加(Snapの公式資料より)

2022年に開始したサブスクリプションサービス「Snapchat+」も右肩上がりで伸びており、2024年第4四半期の時点で1,400万人に達している。サブスク会員は、実験的な機能やプレリリース機能を使えるほか、カスタマイズ性の向上などの特典がある。

ドイツの調査会社Statistaによれば、2024年4月時点でSnapchatのユーザー数が最も多い国はインドで2億251万人。次いで、米国(1億670万人)、パキスタン(3,193万人)、フランス(2,750万人)、英国(2,306万人)となる。

「Snap Map」は最もパーソナライズされたマップ

Snapchatの最新ニュースとして、この5月にデジタルマップ・Snap Mapの月間アクティブ ユーザー数が4億人を超えた。2017年のリリース以降、さまざまなアップデートがされているが、現在の主な機能は以下4つだ(2025年5月時点)。

▲パーソナライズしたマップを作れる「Snap Map」が人気を集めている(Snap社のプレスリリースより)

1、位置情報の共有

指定した友人に位置情報を共有したり、共有をオンにしている友人の位置情報を確認したりできる。共有設定は細かく調整でき、共有したい相手と非表示にしたい相手を選択できる。安全性の観点から、24時間アプリを開かなかった場合、再び開くまでマップ上の友だちに表示されない。また、しばらく共有を有効にしているとリマインダーが表示される。

2、写真や動画(Snap)の投稿

撮影したSnapをSnap Mapに投稿できる。掲載期間は1~2日のみ、または長期までさまざまあり、自動システムによりマップに反映しているため表示されないこともある。名前やその他のプロフィール詳細に関連付けずにコンテンツを投稿したり、送信したコンテンツを削除したりもできる。

3、人気のスポットを見つける

マップ上でスポットの情報を入手できたり、ユーザーが投稿したSnapを閲覧できたりする。Snapを撮影した場所は「訪問した場所」としてマップ上に表示されるほか、「お気に入りの場所」のストックもできる。

4、足跡の確認

これまでに自身が訪れたスポットを追跡したり、その国をどの程度、探索したかが把握できたりする。足跡をオフにしたり、データを消去したりも可能だ。

2024年10月にはブランドパートナー向けの新サービスとして、Snap Mapに自社ブランドの店舗などを掲載できる「Promoted Places(プロモートプレイス)」を導入した。月間アクティブユーザー数が4億人を超えた今、世界中の若年層にリーチできるとして、ますます注目を集めそうだ。

なぜ若者は「位置情報の共有」を求めるのか

位置情報は自身で「オン」に切り替えなければ、自動的に共有されることはない。とはいえ、使い方を間違えれば、意図しない相手に「自宅」や「活動エリア」を知られてしまうリスクをはらむ。

デジタル地理学者・地理空間コンサルタント/元Google 地理空間テクノロジーアドバイザーのEd Parsons氏の投稿によれば、Snap Mapのリリース当初は、好奇心とプライバシーへの懸念が入り混じる反応があったという。

しかし、結果的にSnap Mapは反響を得ている。その理由について、「静的な地図の概念を生き生きとしたリアルタイムのソーシャルワールドへと変貌させたからだ」とParsons氏は指摘する。

▲Snap Mapは地図の概念を「静的からリアルタイムの情報共有ができるSNSの世界」に変えた(Snap社のプレスリリースより)

ユーザーがSnap Mapを開くと、位置情報を共有している友人がマンガ風の「Actionmoji」として表示され、友人の大まかな位置と行動(速度や時間帯などの要素に基づいて判断)が表示される。

「こうした機能により、『お、近くにいる? 一緒にコーヒーでも飲もう!』といった自然な出会いを促進し、さまざまなエリアに散らばった友人とのつながりを感じさせ、常に存在する取り残される恐怖(FOMO)を視覚的に魅力的な方法でさりげなく刺激します。誰かがどこにいるのかを知るだけでなく、その人の目の前の現実や潜在的な活動とのつながりを感じることで、ミレニアル世代が求める『本物のその場での体験』と一致するのです」(Ed Parsons氏の投稿より)

FOMOとは「Fear Of Missing Out」の頭文字で、「取り残されることへの恐怖」を意味する。SNSの普及によって他人の楽しい出来事やトレンドを常にチェックできるようになり、「自分だけが何かを逃しているかもしれない」と不安を感じる若年層が増えている。体験や仲間からの評価を重視する特徴もあると言われる。

▲活発なアクティビティが発生しているエリアがヒートマップで一目瞭然(Snapchatのスクリーンショット)

Snap Mapは、こうした若年層のインサイトを読み取り、マップ上のヒートマップ表示を導入。Snapchatで活発なアクティビティが発生しているエリア(大規模なコンサート、地元のフェスティバル、人気のスポットなど)が視覚的に示される。そして、気になるエリアの公開Snapを見れば最新情報が把握できる。Snap Mapは生き生きとした地域の出来事を伝える地図メディアなのだ。

従来のオンラインマップのニーズである「ルート検索」「営業情報」「連絡先」の提供においては、依然Googleマップが最強だ。一方、Snap Mapはより体験的で即時性のある情報を提供することで同ツールに対抗している。

Instagramも「フレンドマップ」機能を追加

Snap Mapのトレンドが影響してか、その他のSNSでも地図機能に注力する動きが見られている。Instagramでは、2022年7月頃から地図機能が追加された。

▲Instagramも位置情報を共有できる「フレンドマップ」機能を追加(Instagramのスクリーンショット)

当初は「人気のあるスポットを表示する」「スポット情報を友人と共有できる」といった仕様だったが、2024年8月に「Friend Map(フレンドマップ)」の機能が追加された(日本では2025年4月から開始)。

フレンドマップでは、友人間での位置情報共有のほか、マップに追加した投稿やストーリーを友人同士で閲覧できる。位置情報を共有する友人は、「相互フォローのアカウント」や「特定のアカウント」など細かく設定できる。

日本発の「位置情報共有アプリ」も人気に

日本ではSnapchatのユーザー数が伸び悩んでいるが、「位置情報共有アプリ」は若年層から人気を獲得している。その火付け役が、Snap社が以前に運営していた「ゼンリー (Zenly)」(2023年2月に終了)で、月間約4,000万人のアクティブユーザーを抱えるなど絶大な人気を誇っていた。

Snap社はフランスのZenly社から2017年にゼンリーを買収したが、業績悪化によるリストラが主な原因でサービスを終了。その後、日本発の後継アプリが人気を伸ばしている。

▲ゼンリーの後継アプリとして人気を集める「whoo(フー)」(LinQ社のプレスリリースより)

▲whooのユーザーは中高生〜大学生が73%を占める(LinQ社のプレスリリースより)

2022年12月にリリースした「whoo(フー)」は特に勢いがあり、2025年1月時点で世界累計ダウンロード数が1,500万件を突破。利用者は男女比がほぼ半々、中高生〜大学生のユーザーが73%を占める。

2025年1月以降、企業向けの広告事業へ本格的に参入しており、アジアや欧米圏へのさらなるグローバル展開にも注力するという。

位置情報共有を提供する全てのアプリにおいて、個人情報流出の高いリスクは依然残る。だが、世界的に利用者が拡大している様子を見ると、懸念よりも体験価値向上のメリットが上回るようだ。

編集後記

日本でSnapchatは流行らずとも、そのうちの機能の一つである「位置情報共有」は各国同様に若年層のニーズが高い。Parsons氏が話していたように、恋人や家族など関係性が深い間柄だけでなく、ゆるくつながる友人とも位置情報を共有することで、「今から会おう!」「私もここに行ったよ」などとコミュニケーションが活発化しそうだ。リスクを理解して適切に使えば、魅力的なツールになり得るのかもしれない。

(取材・文:小林香織

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  • 中務稔也

    中務稔也

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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