
「1粒1,000円」の高級いちごを開発。宮崎発・AIロボット×LED照明で切り拓く次世代農業モデル
農業が直面する人手不足や気候変動といった課題に、最先端テクノロジーで挑む動きが宮崎県で始まった。スマート農業のスタートアップ・AGRIST株式会社と、LED照明や植物工場技術に強みを持つ株式会社共立電照がタッグを組み、「1粒1,000円」の高級ブランドいちごを生み出す新規事業を始動。2025年5月、両社はAIロボットとLED照明を活用した実証実験に着手し、持続可能で収益性の高い農業モデルの確立を目指している。
AIロボット×LED照明で、天候に左右されないいちご生産へ
本プロジェクトの核となるのは、共立電照が保有する植物工場内での「AI自動収穫ロボットによるLEDいちご栽培」だ。AGRISTは自社開発のIoTセンサー群を圃場に設置し、温度、湿度、CO2濃度、日射量などのデータをリアルタイムで収集・分析。そこから導き出される最適な生育環境のもとで、共立電照の高効率LEDと環境制御システムを活用し、通年で安定生産が可能な栽培技術を構築する。
この仕組みが確立されれば、農業が抱える「天候リスク」「労働力不足」「収益性の低下」といった構造的な課題に対し、抜本的な解決策となる。
“1粒1,000円”を実現する、Miyazaki ICHIGO “M”とは
本取り組みのもう一つの柱が、高級いちごブランド「Miyazaki ICHIGO “M”」の開発である。AIとLEDを駆使して育てられた高品質いちごは、ふるさと納税の返礼品や、国内外の高級ホテル、都市部の百貨店などでの販売を目指してテストマーケティングが進行中だ。
初年度は露地栽培(高設式)を併用しながら生育データを蓄積。2年目に植物工場での本格生産へ移行、3年目には他地域への技術展開と、ステップを踏んで事業化を加速する。
将来的には、この栽培システムをコンテナ型のパッケージにし、海外輸出を視野に入れている。
地域農業の再生と観光への波及も
露地栽培においては、作業効率を高める高設栽培方式を導入し、観光客がいちご狩りを楽しめる体験型観光農園としての展開も視野に入れており、これにより農業と観光の融合を促し、地域活性化にも貢献する狙いだ。
AGRISTは「100年先も続く持続可能な農業」をビジョンに掲げ、AI自動収穫ロボットで農家の省力化・収益性向上を支援してきた。新富町に拠点を構え、農林水産大臣賞をはじめ20以上の国内外アワードを受賞するなど、実績も確かだ。
一方、共立電照は長年にわたり電気設備の開発に携わり、近年は農業向けのLED照明や環境制御技術で脱炭素社会の実現を支援。両社の技術とビジョンが交わることで、農業の課題に真正面から立ち向かう先進的なプロジェクトが誕生した。
AGRIST株式会社 代表取締役CTO・秦裕貴氏は「日本の農業再生には、異分野の知恵と技術を集結させることが不可欠です。共立電照との協業は、私たちが掲げる持続可能な農業への実現に向け、大きな一歩となると確信しています」と語る。
テクノロジーがもたらす農業の未来は、もはや夢物語ではない。「1粒1,000円」のいちごは、その象徴となるかもしれない。宮崎から世界へ。次世代農業のモデルが、静かに動き出している。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)