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欧州ネクストユニコーン6社が決定!フランス発カンファレンス「Viva Technology」が「ネクストユニコーンアワード2022」を発表

欧州ネクストユニコーン6社が決定!フランス発カンファレンス「Viva Technology」が「ネクストユニコーンアワード2022」を発表

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フランス・パリで毎年開催されているスタートアップ、及びテクノロジーのイベント「Viva Technology(ビバ・テクノロジー)」。2022年は6月15日〜18日に、現地とオンラインのハイブリッドで開催された。

Googleやマイクロソフトといった名の知れた企業が多く出資し、同イベント受賞企業の多くがユニコーンに成長している。なかでも、筆者が注目したのは、将来ユニコーンになることが強く期待されるスタートアップを表彰するプログラム「Next Unicorn Award(ネクストユニコーンアワード)」だ。

毎年、トップ100の有望スタートアップをあらかじめ選出、イベント中に上位6社を発表して表彰するものだ。過去の実績として、2019〜2021年のトップ100のリストでノミネートされた企業の40%以上がすでにユニコーンになっている。2021年はトップ6社のうち3社がユニコーンに成長。この結果から、精度の高いリストであることがうかがえる。

「ネクストユニコーンアワード 2022」もユニークな顔ぶれがそろった。ーー世界の企業が取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第25弾では、2021年に受賞してユニコーンになった3社と2022年のアワードでトップ6社に選ばれた期待値の高い企業のビジネスモデルを紹介したい。

TOP100リストに見る欧州の熱いスタートアップ

まずは、100社の有望なスタートアップを紹介するViva Technologyのオリジナルリスト「“Top 100” European Scale-Ups」を紹介したい。

これは、Viva Technologyチームのほか、世界的な投資会社のGP Bullhoundなど複数の投資会社、EIC(European Innovation Council)、国際的な法律事務所のWhite & Caseにより、イギリスとイスラエルを含むヨーロッパから100社が選出されたものだ。

14ヵ国から選ばれた100社の資金調達の総額は、100億ユーロ(約1兆4千億円)にのぼる。


▲Viva Technologによる「“Top 100” European Scale-Ups」の一覧(Viva Technologyの公式ホームページより)

2022年の上位3地域は、イギリス(24社)、フランスとドイツ(各17社)で、2021年とトップ3は同様だった。そのほか、北欧/バルト海沿岸地域では合計14社がランクイン。オランダは昨年の3社から2倍以上となる7社に、スイスは1社から4社に急増した。

同ランキングの基準は、成長速度、将来性、資金調達額、従業員数の増加、地理的分布、社会にプラスの影響を与える能力などが加味される。Viva Technologyは、「今年のリストには、サステナビリティ活動を事業の中核に据えたスケールアップ企業が非常に多かった」とコメントしている。

ランクインした100社のうち、40%以上が "for good "なビジネスモデルを持っていたという。二酸化炭素排出量ゼロへのコミットメント、廃棄物削減のためのスマートなソリューション、製品へのリサイクル素材の使用、全体的なエネルギー消費の削減など、気候変動に配慮した持続可能性が事業の価値観の軸にあったそうだ。

2021年は受賞6社のうち3社がユニコーンに成長

続いて、2021年の「ネクストユニコーンアワード」から、すでにユニコーンに成長した3社を紹介したい。

●世界中でクラウドデータプラットフォームを提供「Aiven」 


▲Aivenの日本向け公式ホームページより

2016年にフィンランドで創業し、フィンランド、カナダ、アメリカ(ボストン)、オーストラリア、日本(東京)にオフィスを構える「Aiven」。開発時間やコスト削減を実現するクラウドデータプラットフォームを提供する同社では、オープンソースサービスと主要パブリッククラウドをひとつの直観的なプラットフォームにまとめており、最短10分でデータ基盤のセットアップが完了するという。

2021年10月の資金調達により、評価額20億ドルを突破し、ユニコーンとなった。2022年6月8日には、Aivenとの戦略的リセラーパートナーシップを締結したクラウドエース株式会社が、自社のプレスリリースで日本展開の加速を発表している。日本を最重要マーケットと位置づけるAivenは、クラウドエース、及び吉積ホールディングスと協力し、日本市場でのロケットスタートを目指すようだ。

●サッカーをテーマにしたNFTゲームを提供「Sorare」 


▲「Sorare」の公式ホームページより

2018年にフランス・パリで創業した「Sorare」は、サッカーファンによる、サッカーファンのためのNFTゲーム(※)を提供する。

※NFT(非代替性トークン)とは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」を指し、デジタルアートやデジタルゲームといったデジタル資産の価値を証明できる(SBクリエイティブが運営するウェブマガジン「FinTech Journal」より)。NFTゲームとは、ブロックチェーン技術を用いて開発されたゲームを指し、プレイすることでお金を稼ぐことができる(株式会社 CAICA DIGITALが運営するウェブマガジン「Marketα」より)。

「Sorare」では、Sorare内のマーケットプレイスで販売されている実在するサッカー選手のNFTカードを購入し、5枚1組のチームを作りスコアを競う。NFTカードの購入はブロックチェーン・プラットフォームのイーサリアムを利用する。

「Sorare」のスコアは現実世界でのサッカーの成績に基づいており、高スコアを出すには現実のサッカーの試合を分析しながら、戦略的にチームを編成する必要があるという。ユーザーがお金を稼ぐには、ゲーム報酬で仮想通貨(ETH)を得たり、ゲーム報酬で得た、あるいは購入したNFTカードを売却する方法があるそうだ。

2021年9月には6億8000万ドル(約920億円)の驚異的な資金調達を実施し、同社の評価額は43億ドル(約5,820億円)に。一気にフランス内のトップユニコーンの一つとなった。同社のNFTカードは、2021年1月以降、170か国で2億5,000万ドル(約約340億円)を売り上げている。

●支払いを迅速にするソリューションを提供「SumUp」 


▲「SumUp」の公式ホームページより

2012年にイギリス・ロンドンで創業した「SumUp」は、店頭の支払いを迅速にするカードリーダー、及びオンラインストアの立ち上げから運営に関連する支払いのソリューションを提供している。

同社が提供するカードリーダーは初期導入費用はかかるが、月額費用はかからない。1取引につき1.69%の手数料を徴収するビジネスモデルだ。スマートフォンと同期できる低コストのカードリーダーから、レシートの発行ができるプリンター機能を備えたものも。

その他、飲食店や小売店に適したPOSレジシステム(月額29ポンド/約5,000円〜)、ビジネス用のオンライン銀行口座(無料、取引に応じて要手数料)、オンラインストアの構築システム、請求書・支払いのシステム(手数料2.5%)も提供する。

ユニコーン評価については、EUのスタートアップ情報を提供するウェブマガジン「EU-Startups」が2018年9月に「SumUpがユニコーンに達した」と紹介している。ただし、「SumUp」は評価額については公表しておらず、Viva Technologyでは2021年の表彰以降にユニコーンになったと捉えているようだ。同社のクライアントは、ヨーロッパを中心に300万以上の企業にのぼる。

「ネクストユニコーンアワード2022」受賞6社を発表!


▲優勝した「Luko」の共同創業者Benoît Bourdel氏

最後に、「ネクストユニコーンアワード 2022」の受賞企業とそのビジネスモデルを紹介したい。同アワードは、6つのカテゴリーに沿って1社ずつ受賞企業が発表され、最後に6社の中から優勝が決定する。2022年の優勝企業「Luko」はどんな企業なのか、ぜひチェックしてみてほしい。

●マーケットプレイス部門「Malt」 


▲「Malt」の公式ホームページより

2013年に創業、ベルギー、フランス、ドイツなどヨーロッパ5ヵ国に拠点を持つ「Malt」は、フリーランスと企業をつなぐプラットフォームを展開する。36万人以上のフリーランスが同社のプラットフォーム上に登録しており、4万以上の企業と取引があるという。

「Malt」は企業がフリーランスに業務を委託する際の契約の締結からオンライン上での支払い等を提供する。企業側は無料でも使用できるが、いくらかの手数料を払うことでパーソナライズされたサポートを受けることも可能だ。

日本でいうランサーズやクラウドワークスのような、クラウドソーシングサービスに近いビジネスモデルといえそうだ。


●エンタープライズ SaaS部門「IDNow」 


▲「IDNow」の公式ホームページより

2014年に創業し、ドイツ・ミュンヘンに本社を構える「IDNow」は、銀行や通信会社、フィンテック関連企業などに向けて、本人確認プラットフォームを提供する。

AIベースの自動化されたID認証、法的に有効なオンライン署名、IDの管理、強力なセキュリティが同社の強みとなるようだ。ID認証は、高度な資格を持つID、及び詐欺の専門家の専門知識を生かし、AML(マネー・ローンダリング防止対策)に準拠している。なおかつ、承認プロセスが迅速に完了するため、コンバージョン率が高いという。

同社のプレスリリースによれば、2021年は取引数が2倍に成長し、ヨーロッパのトップ20銀行の半数、フランスとドイツのトップ4の関連通信事業者が「IDNow」のプラットフォームを利用しているそうだ。ホームページには利用料など価格に関する説明がなく、直接問い合わせる必要がある。


●デジタルメディア部門「Brainly」 


▲「Brainly」の公式ホームページより

2009年にポーランドで創業し、ポーランドとアメリカ・ニューヨークに拠点を持つ「Brainly」は、無料で学習に関する質問の答えを得られる学習プラットフォームを提供する。プラットフォーム上には3億5千万人の生徒と教師のコミュニティがあり、質問を投稿すると、専門家による確認済みの回答などが得られるという。

ユーザーは35ヵ国から広く集まっており、インドには1,500万人と多くのユーザーがいる。というのも、インドには他国と比較して子どもへの教育資金を惜しまない傾向があり、同社はインドを最重要市場と位置づけているようだ。

「Brainly」は、ほとんどの機能やコンテンツに無料でアクセスできるが、際限なくアクセスをしたり、すべての回答を閲覧したりする場合は、サブスクリプションの購入が求められる。ただし、インドでは未だサービスを有料化せず、潜在的なユーザーへのリーチ拡大を優先しているそうだ。


●AI、ディープテック、ビッグデータ部門「Privitar」 


▲「Privitar」の公式ホームページより

2014年にロンドンで創業した「Privitar」は、顧客情報などの機密情報を扱う事業者向けにデータプライバシーを守るソリューションを提供する。

顧客、パートナー、従業員の個人情報を適切に守るほか、自社に合わせたプライバシーポリシーを設定してデータプラットフォームに適用したり、トレースしたデータを証明したり、データを保護するための多くの機能を持ち合わせている。

ホームページには利用価格などの説明が見当たらず、デモをリクエストして詳細を問い合わせる必要がある。

これまでに1億5,000万ドル(約200億円)以上の資金を調達し、クライアントはグローバルな2000の銀行、ヘルスケア、保険、ライフサイエンス、専門サービス、小売、電気通信会社など多岐にわたる。



● インパクト部門「Tibber」 


▲「Tibber」の公式ホームページより

2016年にノルウェーで創業した「Tibber」は、電気エネルギーの使用量や電気料金を削減するためのデジタルプラットフォームを提供する。

同プラットフォームは、該当地域で利用可能な1時間あたりでもっとも安い電力を顧客に提供する。さらに、電気使用量や料金を下げるために、リアルタイムの電気使用量や電気料金、室内と室外の温度などをプラットフォームで閲覧できる。

つまり、顧客はもっとも安い電気エネルギーを購入しつつ、プラットフォームの情報を参考にしながら安いタイミングに充電するなど、電気と料金の節約が叶うのだ。「Tibber」は、販売する電力ではなく、プラットフォーム利用料のみから利益を得ているという。

ノルウェーの水力発電会社Statkraftとの事業提携により、365日にわたり水力発電を供給できる体制も整えている。ノルウェー、スウェーデン、ドイツで毎月20万人以上が利用しているそうだ。


●フィンテック部門/2022の優勝者「Luko」 


▲「Luko」の公式ホームページより

2016年にフランス・パリで創業した「Luko」は、住宅保険を中心としたオンラインで完結する保険サービスを提供する。

持ち家、別荘、賃貸住宅の居住者向け、マンションや賃貸ビルの所有者向け、住宅ローン保険のほか、学校や課題活動における子ども用の保険、電動キックボードや都市型電気自動車の保険も完備する。ホームページには、一般的な住宅保険は月額11ユーロ(約1,600円〜)、電動キックボードは月額3.3ユーロ(約470円)〜、学校保険は月額1.7ユーロ(約250円)〜と説明されている。

いずれにおいても、2分で終わるオンラインでの手続き、従来の2倍の速さでの払い戻し、2日以内の修理という迅速さを強みとしている。

すでに30万人以上の顧客がおり、2022年にはドイツの保険会社Coya、フランスの保険会社Unkleの買収を立て続けに発表。同社は「この買収は、欧州の保険テック企業ナンバー1としてのLukoのポジションを強化するものだ」とコメントしている。

アグレッシブな事業戦略で急成長しているLukoは、ネクストユニコーンアワードの優勝者にふさわしく、今後の展開にも期待したい。


写真提供:Viva Technology

編集後記

「Viva Technology」や「ネクストユニコーンアワード」は日本では知名度が低いと思うが、個人的には非常に興味深いアワードで、来年以降も追い続けたいと感じた。受賞企業と筆者の接点としては、過去に「Tibber」に取材打診をしたことがあるが、「まだ日本に注力するタイミングではない」といった理由で断られてしまった。ユニコーンに成長した際は再トライしたい。すでにユニコーンになったサッカーゲームのSorareも、最先端のビジネスモデルに欧州トップレベルの資金調達額と話題が盛りだくさんで、もっと深掘りしたくなった。

(取材・文・撮影:小林香織)  

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コメント2件

  • 萩広史

    萩広史

    • Belle fleur
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Global Innovation Seeds

世界のスタートアップが取り組むイノベーションのシーズを紹介する連載企画。