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EUトップのユニコーン数を誇るスイス。注目すべき10社のビジネスモデル

EUトップのユニコーン数を誇るスイス。注目すべき10社のビジネスモデル

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人口100万人当たりのユニコーン設立数が3と、スウェーデンと並んでEU内でトップクラスを誇るスイス(参考値として、イスラエルは9、イギリスは2、ドイツは1)。同国のスタートアップの企業価値は合計1490億ドル(約7,500億円)で、2016年から3.7倍に増加している。30社以上のユニコーン候補も存在し、投資家にとってスイスは見逃せない国の一つといえそうだ。

そんなスイスでは、2013年〜2021年の間に10億ドル以上の評価に達した27のユニコーン企業が生まれ、そのうち12社がヘルステックだった。世界の企業が取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第19弾では、注目したいスイスのユニコーン企業10社をピックアップし、そのビジネスモデルを紹介したい。


ビットコインを安全に保管【Numbrs】


▲「Numbrs」のホームページより

2013年に設立され、プライバシーやセキュリティなどの面ですぐれたビットコイン保管用のアカウントを提供する「Numbrs」。一部のチームのみスイスに在籍しているものの、オールリモート体制で運営されているという。

アカウントは名前、住所、電話番号などの個人情報が必要なく、匿名で利用できる。自身のアカウントにアクセスできるのはユーザー自身のみで、サービスを提供する「Numbrs」さえも、アカウントにアクセスできない。さらに、データは軍用レベルの暗号化で守られている。

さらに、ビットコインの送金、受信、支払いができるほか、より賢明な投資判断のための分析も提供する。同社は7日間の無料期間を設けており、その後、四半期ごとに125ドル(約15,000円)または年会費として449ドル(約53,000円)の支払いプランを選択でき、取り引きごとの追加料金は発生しない。

グローバルな旅行体験プラットフォーム【GetYourGuide】


▲「GetYourGuide」のホームページより

2009年にスイスで設立され、現在はドイツ・ベルリンに本社を構える「GetYourGuide」。旅行者向けに世界中のアクティビティを展開する同社は、世界14ヵ国にオフィスを持ち、6万以上の旅行体験を予約できる。

550以上の旅行の専門家や技術者と連携し、定番の観光ツアーからニッチな体験まで取り扱う。ヨーロッパの人気観光地の優先入場券や観光パスも提供し、ルーヴル美術館をはじめ他社サービスでは販売されていない「GetYourGuide」独占のものも。入場時の待ち時間を省き、効率的に観光できるため人気を集めているようだ。同サイトは日本語でも利用できる。

共同創業者4名はスイス連邦工科大学の同級生で、大学在学中に「GetYourGuide」を創立。これまでに、8億8300万ドル(約1,000億円)以上の資金調達を実施し、世界最大級の旅行体験プラットフォームに成長している。

150ヵ国以上にサイバーセキュリティを提供【Acronis】


▲「Acronis」のホームページより

2003年にシンガポールで設立され、2008年にスイスで法人登録された「Acronis」。同社は、サイバー攻撃やハードウェア障害等に対応できるオールインワン型のサイバープロテクションを150ヵ国を超える75万社以上に提供する。

製品は、サービスプロバイダ向け、企業向け、個人向けの3種類で、あらゆる脅威からデータを保護するほか、バックアップと復元、ファイル同期と共有などの機能も。これまでに100を超える受賞歴も持つ。

日本法人のアクロニス・ジャパンがあり、GMOグローバルサイン・ホールディングスやエヌ・ティ・ティ・スマートコネクトなどが同社の製品を採用している。

自動車やビルの窓をAR仕様に変換【WayRay】


▲「WayRay」のホームページより

2012年に設立され、チューリッヒを本拠地とする「WayRay」は、独自のAR技術で世界的に注目を集める。自動車をはじめとした乗り物や重機のフロントガラス、あるいはビルや住宅のガラスをAR仕様に変換することができるのだ。

例えば、車のフロントガラスの内側に速度や燃料残量などの情報を写したり、信号の手前で一時提示の指示や待ち時間を写したりする。商業用や住宅用のビルのガラスには、周辺の交通の流れ、天気予報、ランドマークや小売店などの情報を写せる。通常、ARを活用するには専用のヘッドセットが必要だが、同社の技術は道具を身に着ける必要がないそうだ。

とりわけ自動車業界から熱視線を注がれており、現代自動車(ヒョンデ)やポルシェ、JVCケンウッド、アリババグループなどから、合計1億ドル(約120億円)の資金を調達している。

従業員のITツール使用状況を管理【Nexthink】


▲「Nexthink」のホームページより

2004年に設立された「Nexthink」は、スイス・ローザンヌとアメリカ・ボストンに本社を置くグローバル企業だ。従業員のITの利用状況を把握できるソフトウェアを提供し、1,000社以上がサービスを利用しているという。

同サービスは、パソコン、タブレット、スマートフォンといったITツールと、それらにダウンロードしたアプリやソフトウェアにいたるまで、従業員のITの使用状況を把握できる。それによりITにまつわる課題を見つけ出し、改善に導くための足がかりとなるのだ。

近年のIT化やリモートワークの導入に伴い、サービス利用が増加しているのかもしれない。業務効率化や従業員のマネジメントにメリットがありそうだ。

スマートデバイスでのスキャン技術を提供【Scandit】


▲「Scandit」のホームページより

2009年に3人の研究者により設立された「Scandit」。同社は、スマートフォン等のスマートデバイスにおけるスキャン技術を提供する。商品のバーコード、テキスト、IDカード等の証明書類などを高速でスキャニングできるほか、一度に複数のバーコードを読み取ったり、ARと組み合わせたりすることも可能だ。

小売店での導入が目立っており、例えば商品のバーコードをスキャンすることで魅力的なプロモーション等の情報を顧客に提供したり、店頭で顧客がバーコードスキャンした商品を追って自宅に配送したりできる。また、店員が在庫管理等に利用するケースもあるそうだ。

日本では、イオンが同社の技術を利用して、独自のセルフレジアプリ「レジゴー」を提供している。買い物をしながら商品のバーコードをスマートフォンでスキャンすることで、買い物しながら合計金額やカゴの中身を把握できるほか、レジでのバーコードスキャンを省くこともできる。スマートフォン上の支払いコードを見せると、会計が完了する。

没入型体験を創造するスポーツテック企業【Sportradar】


▲「Sportradar」のホームページより

2001年に設立された「Sportradar」は、スポーツを軸にさまざまなソリューションを提供するスポーツテクノロジー企業だ。例えば、スポーツ連盟向けにオーダーメイドのデータ収集システムや視聴覚コンテンツの販売・制作等を提供したり、スポーツ運営団体向けに八百長やドーピングの防止・検出システムや収益化の機会を提供したり、賭博業界向けに専用システムを提供したりしている。

同社は120ヵ国以上に1,600社以上のクライアントがおり、NBA、NHL、MLB、NASCAR、FIFA、UEFAの公式パートナーにもなっている。スポーツ業界のDXを世界的に牽引する存在といえそうだ。

グローバルな医療データを構築【SOPHiA GENETICS】


▲「SOPHiA GENETICS」のホームページより

2011年に設立されたヘルスケアテック企業「SOPHiA GENETICS」。同社は、AIなどのテクノロジーを用いて、遺伝子疾患や腫瘍の診断を支援するSaaSプラットフォーム「SOPHiA DDM™プラットフォーム」を開発、世界780以上の病院、研究所、バイオファーマ施設で利用されている。

92万以上のゲノミクス(ゲノムと遺伝子についての研究)プロファイルと特許取得済みの分析により、信頼性の高い高品質のデータを提供。分散型デジタルヘルスデータ解析のパイオニアとなった。

2022年2月には、放射線生物医学の分野で日本最大級の大学研究機関を有する日本の広島大学と血液がん疾患の病因となる変異体を調べるための分子プロファイリングを支援する契約を締結したと発表した。

脳疾患のリハビリ用VRソフトを開発【MindMaze】


▲「MindMaze」が提供するデジタル治療薬の利用イメージ(MindMazeのホームページより)

2012年に設立されたヘルスケアテック企業「MindMaze」は、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病などを患う患者に向けて、脳の回復と学習を加速するためのVRソフトウェアを提供している。

同社のデジタル治療薬は、75を超える病院や診療所に導入されており、1万人以上の患者が利用。VRのゲームソフトにより没頭しやすい世界観を演出し、手足や体幹を動かす多様なアクティビティを通じて、神経の回復を支援する。患者の状態に応じてレベルを調整でき、レポートを通じて脳の早期回復を目指す。

同製品は、FDA(アメリカ食品医薬品局)承認とCEマーク(EUの基準適合マーク)を取得しており、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの患者に利用されているそうだ。

革新的な医薬品を迅速に開発【Roivant Sciences】


▲「Roivant Sciences」のホームページより

2014年にニューヨークで設立されたが、2016年にスイス・バーゼルに本拠地を移したことから、スイスのユニコーン企業といわれているバイオテック企業の「Roivant Sciences」。同社が強みとするのは、創薬プロセスの迅速化だ。独自の計算プラットフォームに加え、幅広い実験能力と深い創薬経験との緊密な統合により、多様なターゲットに対応する新薬の迅速な設計と最適化を可能にしているという。

日本との関わりでいうと、2017年にソフトバンクがファンドを通じて1,000億円以上を投資したほか、2019年には大日本住友製薬がRoivant Sciencesと戦略的提携契約を締結し、同社はRoivant Sciencesの株式を11%(10億米ドル)取得している。

編集後記

スイスのユニコーン企業はヘルステックが多いと冒頭で紹介したが、それ以外の分野もバラエティ豊かで印象的だった。個人的にはビットコイン保管用アカウントを提供する「Numbrs」、車のフロントガラスやビルの窓をAR仕様に変える「WayRay」のユニークさに惹かれた。引き続き、スイスらしいビジネスセンスを持つスタートアップを追っていきたい。

(取材・文:小林香織) 

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世界のスタートアップが取り組むイノベーションのシーズを紹介する連載企画。