meet ▶[ファミワン]:妊活で悩む夫婦をゼロに
https://auba.eiicon.net/projects/27010
#ヘルスケア #未病 #予防医療
以前に比べて妊活や不妊治療に関する話題を見聞きすることは増えたものの、今でもどのような選択肢があるのか適切な情報を得られず、悩みを抱えている人も多い。それは周囲の人にとっても同じで、サポートしてあげたいが何をしてあげればいいか分からないという人も少なくないだろう。
そのような課題に対し、妊活・不妊治療について専門家にLINEで相談できるサービスを展開しているのがファミワンだ。専門家の領域は多岐にわたり、不妊症看護認定看護師を中心に、臨床心理士、胚培養士、キャリアカウンセラーなど30名が在籍している。
また、不妊治療の問題は、女性のキャリアに大きな影響をおよぼす。実に3組に1組の女性が、不妊治療と仕事の両立ができずに離職しているという現実があり、頭を抱えている企業は珍しくない。ファミワンはそのような企業に対し、福利厚生としてのサービスも展開し、様々な業種や規模の企業の他、自治体にも導入し始めている。
「eiicon meetup」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。今回は、株式会社ファミワン代表の石川勇介氏にインタビューを実施。創業の経緯や事業の進捗、今後のビジョンを聞いた。
▲株式会社ファミワン 代表取締役 石川勇介氏
自らの不妊治療の経験が起業のきっかけに
――まずは起業しようと思ったきっかけを教えてください。
石川氏:私自身が不妊治療に悩んだ経験がきっかけです。妊活を始めるまでは、すぐに妊娠するものだと思っていましたし、不妊治療に関しても自分は知識がある方だと思っていました。しかし、いざ蓋をあけてみると知らないことばかり。さらに、調べれば調べると同じように不妊治療で悩んでいる声は多く出てきて、こんなにも苦しんでいる人が多いのかと思いました。
加えて、創業当時(2015年)はヘルスケアに関連するメディアも玉石混交で、不妊治療に関する間違った情報も多かったことも課題に感じていました。私はエムスリーという医療情報を扱う会社にいたので、情報の真偽がある程度調べることができたのですが、間違った情報をそのまま信じている方もいて。妊活について、しっかりと正しい情報を発信するメディアやサービスが必要だと思ったのです。
――エムスリーにいたのであれば、社内で新規事業を立ち上げることもできたかもしれませんが、なぜ起業を選択したのでしょうか。
石川氏:企業の新規事業として始めるのであれば、数年以内に結果を出さなければなりません。しかし当時は、想いはあったものの、この領域での事業化は難しく、数年で黒字化するイメージがなかったのです。それなら自分でリスクをとってやるしかないと思い、独立して起業しました。
実際にその予想はあたっていて、創業してから3~4年はピボットの繰り返しで、うまくいきませんでした。もしも会社の新規事業として始めていたら、この取り組みは続けられなかったと思います。
妊活をサポートする福利厚生で、企業の悩みも解決
――現在の事業の内容について教えてください。
石川氏:現在力を入れているのは、妊活や不妊治療について相談できるチャットサービスと、研修などの周囲のかたにも向けた啓発のセミナーを企業向けに福利厚生として提供する事業です。実は不妊治療に悩んでいる方の2~3割は、会社を辞めたり働き方を変えてしまっており、優秀な人材が離れていくことに悩んでいる企業も多々あります。
私たちのサービスを導入することで、社員が妊活を続けながらも安心して働き続けてもらえると、導入企業からは好評を得ています。また、管理職向けに不妊治療をしている社員にどのように接すればいいのかという研修も行っています。
個人向けにも同じサービスを提供しているのですが、世の中を変えていくという意味でも、今は法人向けの事業拡大に注力していますね。
▲妊活・不妊をLINEでサポートするファミワンのサービス(画像出典:ファミワンHP)
――実際に利用しているユーザーからはどのような反応があるのでしょうか?
石川氏:病院で治療を受ける決意が固まったと言う人もいれば、出産してお子様の写真を送ってきてくれる方もいます。また、このような福利厚生を用意している会社に対して、エンゲージが高まったという話を聞くこともありますね。
妊活に関する悩みは、一緒に働く会社の上司や同僚になかなか相談できません。ファミワンがあれば、仕事とは関係のない人に相談できるので、心が軽くなったと感じる方もいるようです。また、研修を受けた管理職の方々からは「冗談で言っていたことが、実は言ってはいけないことだった」と反省の声をもらうこともあります。
――ファミワンさんのHPを拝見すると、導入企業例として小田急電鉄・TBS・コクヨアンドパートナーズ・GAtechonologiesといった社名をお見受けします。大企業やメガベンチャーに導入することができた秘訣も教えてください。
石川氏:シンプルに数多く様々な企業に提案してきた結果ですね。よく「女性活躍推進に力を入れている企業のほうが提案しやすいんじゃないですか」と言われるのですが、そんなことはないんです。女性の働き方に力を入れている会社は、自分たちで制度を作ったりスケジュールを決めて動いているので、意外に私たちのサービスを必要としていないこともあります。
また、特定のターゲットを絞ってしまうと「大企業だから導入できる/柔軟なIT企業だから導入できる」という印象を持たれてしまうのも好ましくありません。私たちのサービスはあらゆる企業に必要だと思っているので、業種や規模で企業を絞らずに提案しているんです。直近でも、食品スーパーの会社にも導入が決まるなど、本当に幅広くどの会社も取り組むべきものと認識されています。
また、最近では企業だけでなく、自治体にも導入してもらっており、都心部の自治体だけでなく、地方の自治体にも同じように提案させてもらっています。
▲ファミワンの法人向けサービス(画像出典:ファミワンHP)
ユーザーが安心して相談できる3つの特徴
――ファミワンの強みについても聞かせてください。
石川氏:3つあると思っていて、一つは専門家の幅です。看護師さんや臨床心理士さん、胚培養士さんや助産師さんなど、様々な専門家と繋がっているので、多角的なサポートが可能です。大学や病院ともつながっていることが、ユーザーの安心感にも繋がっていると思います。
2つ目は、不妊に悩んでいなくても利用できる点です。不妊の相談サービスなどは数多くあるのですが、いざ不妊で悩んでしまうとなかなか人に相談できないんですね。その点、私たちは悩む前からサービスを使ってもらえています。約半数が未受診の時に登録いただいています。悩む前からつながっているので、悩んだ後も気軽に相談してもらえるんです。
3つ目は、大量のアクセスにも耐えられるシステムや仕組みです。相談に乗ってくれる専門家は30名ですが、最初の問診などはbotやアンケートフォームを使って自動で応えてもらえる仕組みになっています。専門家の負担を減らすことで、より多くの人の相談を聞くことができるため、ユーザーが増えてもストレスなく利用してもらえると思います。
――現在も様々な企業さんと組んでいますが、今後どのような企業と組んでいきたいですか?
石川氏:ユーザーと向き合いつつも、多様な選択肢を認められるスタンスの企業と組んでいきたいです。例えば、妊活のサービスをしているからといって、必ずしも妊娠をゴールにしなくていいと思うんです。ユーザーに対して、幅広い選択肢を用意できる会社さんとはいい共創ができると思います。
――最後に今後どのように事業を展開していくのかお聞かせください。
石川氏:今後も不妊治療を切り口にしつつも、領域を徐々に拡大していきたいと思っています。例えば月経や更年期、性教育もそうですし、パートナーシップで悩んでいる方も多くいます。そのような人たちを幅広く支援できる会社になっていきたいですね。
しかしその一方で、あまり領域を広めてしまうと会社のドメインがブレてしまうのは課題です。あくまで「不妊治療と言えばファミワン」というブランドは維持しながら、多くの企業とパートナーシップを組んで事業領域を広げていければと思います。
▲4月27日に開催されたピッチイベント「eiicon meetup!!vol.2」に登壇した石川氏。
(取材・文:鈴木光平)