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急成長中のフェムテック領域。その最前線で活躍するスタートアップ5社はどのように女性の健康課題を解決するのか?――eiicon meetup!!イベントレポート

急成長中のフェムテック領域。その最前線で活躍するスタートアップ5社はどのように女性の健康課題を解決するのか?――eiicon meetup!!イベントレポート

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去る4月27日、eiicon companyオリジナルピッチ企画「eiicon meetup!!vol.2」が東京・大手町にて開催された。このイベントは新規事業・オープンイノベーションコミュニティの活性化を目的に、話題のスタートアップ企業がピッチを行い、共創につながる“出会い”を生み出す場としての役割を持つ。

3月8日に開催した第1回「Vertical DX」に続く今回のテーマは、「フェムテックスタートアップ――女性市場を牽引する新価値創造」だ。女性が抱える健康の課題の解決を目指す5社(フュージョンワークス、スルミ、ファミワン、TRULY、グレイスグループ)が登壇し、事業やビジョンについて会場に語り掛けた。本記事では、同イベントの様子をダイジェストでお伝えする。


イベントの冒頭では、eiicon company Incubation Sales / Consultingの曽田が挨拶。同イベントの趣旨や開催にかける想い、そして「この会場から、新しい事業の創出につながる出会いが生まれたら、大変嬉しく思います」とメッセージを送った。

【フュージョンワークス】更年期でも立ち止まらない女性のための高機能インナーウエア


■株式会社フュージョンワークス(Become) 代表取締役 山下 浩史氏

トップバッターは、株式会社フュージョンワークス 代表取締役の山下浩史氏だ。同社は、英国発の更年期の女性のためのインナーウエア「Become」を日本国内で展開している。

「Become」は、“For unstoppable women with the menopause”(更年期でも立ち止まらない女性のために)というブランドスローガンを掲げ、更年期障害の代表的な症状であるホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)やナイトスウェットに対応するインナーウエアブランドだ。モニタ試験を何度も重ね、イギリス、ドイツ、フランスで特許を取得した「アンチフラッシュテクノロジーTM」技術により、衣服内の温度変化を調整。更年期の女性たちが快適に過ごせるような製品開発にこだわりを持つ。

山下氏はアパレル専門商社を経て、2013年に55歳でフュージョンワークスを創業。インナーウエアやスポーツアパレルを中心にシームレス製品のOEM生産を行ってきた。商社時代には、ヨーロッパを中心に海外出張が多かったという。あるときイタリア出張に行っていた山下氏は、現地でシームレスウエアに出会い、文字通り「恋をした」。帰国後もその熱は冷めず、2009年には「バイシームレス」という店舗を大阪市西区新町にオープン。シームレス製品を自分で生産していきたいという想いに加え、独立後はエシカルやサステナブルを重視しながら、BtoBビジネスを展開してきた。

そして、その生産背景の1社であるMASが高い技術力を駆使して開発した「Become」に出会い、その機能性や技術力の高さはもちろん、ビジョンにも強く共感。正規輸入代理店として2022年1月より、日本での展開をスタートさせた。ゆくゆくは更年期だけではなく、マタニティなどに伴う問題にも向き合う製品を展開していきたいという。

【スルミ】AIを活用したヘルスケアアプリで、女性活躍を推進する多様な企業と提携


■株式会社スルミ 代表取締役CEO/日経xwomenアンバサダー 石塚 つばさ氏

女性向けヘルスケアアプリ「Hers care」を開発する株式会社スルミ。ジェンダーギャップの解消と、誰もが平等に働ける世界の実現を目指す。

同社は、働く女性の課題に真摯に向き合う企業のバックアップを行っている。現在開発中の「Hers care」は、企業の健康経営や福利厚生としての利用を見込んでいる。その機能は大きく3つ。1つは、毎日感情の記録を付ける機能だ。これにより、モチベーションを可視化することができる。2つ目は、認知行動療法プログラムが組み込まれているAIチャットボット。妊娠中や生理中など気分が落ち込む時に会話をし、気持ちを癒す。ユーザーがもっと専門的な解決法を求めた際には、公認心理師や心療内科、ピル処方などその人に合わせた送客を行う。そして3つ目の機能が、毎日のメイクスコアチェックだ。スマートフォンのカメラで顔を撮影・表情解析で診断を行い、ユーザーにあったコスメなどのレコメンドを行うとともに、当社の強みであるAIの表情解析機能により表情からストレスを検出する。

法人向けのサービスも3つ提供をしていくという。1つは、女性従業員が自社の採点を行うサーベイだ。現在働いている部署や企業は働きやすいか、女性活躍に向いているのかを採点していく。2つ目は、女性のキャリア形成コンサルティングや、女性コミュニティ形成の支援だ。そして3つ目は企業の意識向上セミナーだ。これらを提供することにより、女性が活躍する土壌をつくり、ジェンダーギャップの解消につなげていく。

こうした機能をSaaSサービスとして開発し、2022年12月のリリースを目指すスルミ。ローンチ前にもかかわらず、女性活躍を推進する多様な企業と提携している。代表の石塚氏は大学4年生の時に起業し、現在は大学院で知的財産を専攻。そしてボードメンバーや顧問には、様々な領域のエキスパートが名を連ねる。日本スタートアップ協会のビジネスコンテストで準グランプリを受賞、2021年にDELL×EY女性起業家専門アクセラレータプログラム採択、経済産業省協力 One Young World Summit 2022(通称 ヤングダボス会議)の日本代表に選出されるなど、ローンチ前から注目の存在だ。

株式会社スルミのPRページはこちら:https://auba.eiicon.net/projects/31707

【ファミワン】妊活・不妊治療のコンシェルジュサービスを企業の福利厚生として提供 


■株式会社ファミワン 代表取締役 石川 勇介氏

妊活や不妊治療についての話題を見聞きすることは、以前に比べてかなり多くなった。しかし、「なんとなく知っているつもりになっていることが多い」と、ファミワン代表の石川氏は話す。どのような選択肢があるのか分からなかったり、適切な情報を得られなかったりして、悩みを抱えている人も多い。そして、それは周囲の人にとっても同じで、サポートしてあげたいがどうすればいいか分からないという意見がよく聞かれる。同社はそうした課題を解決すべく、妊活・不妊治療について専門家にLINEで相談できるサービスを展開している。

その使い方は、非常にシンプルだ。LINEで友達登録をすると、妊活チェックシートが送られてくる。それに回答すると、専門家からアドバイスが得られるという流れだ。専門家の領域は多岐にわたり、不妊症看護認定看護師を中心に、臨床心理士、胚培養士、キャリアカウンセラーなど30名が在籍している。ユーザー数は約3万人。既に体外受精を行っている人から、そもそも妊活をするか迷っている人まで多様であり、6割が未受診であるという。早期段階からサービスを活用してもらい、不妊治療をするかどうかの決断や病院選びの相談まで、当事者に対して継続的に支援をしている。

また、不妊治療の問題は、女性のキャリアに大きな影響をおよぼす。厚生労働省の調査によると、不妊治療を理由に退職した女性は16%、そして雇用形態や働き方の変更または不妊治療の中断をした女性は35%にも上るという。実に3組に1組の夫婦が、不妊治療と仕事の両立ができていないという現実があるのだ。こうした課題に対して、ファミワンはサービスを企業向け福利厚生として提供している。

ただし、「制度をつくるだけではなく、風土をどう変えるかが重要」だと、石川氏は熱を込めて語る。そこで、前述のLINE相談サービスでも周囲の支える側からの相談に対応している。その他、風土を変えていく取り組みとして、管理職研修や全社セミナーなどを実施し、「企業が社員の妊活支援をすることは当たり前だ」と、ダイバーシティの観点から啓蒙し続けている。導入企業は、あらゆる業種・業界にわたり、企業規模もさまざま、さらに都道府県や市区町村といった自治体にも幅広くサービスを提供しているという。

株式会社ファミワンのPRページはこちら:https://auba.eiicon.net/projects/27010

【TRULY】女性の更年期に寄り添うオンライン相談サービス


■株式会社TRULY 代表 二宮 未摩子氏

「閉ざされた悩みに向き合い、男女が理解し合える社会へ」とミッションを掲げ、更年期にフォーカスしたサービスを展開するTRULY。2020年6月、まだフェムテックという言葉もあまり浸透しておらず、月経や妊娠というテーマはあったものの、更年期についてはほとんど語られていなかった頃にローンチされた。様々な共創を進めており、2021年は33の企業・自治体と実証実験などを行っている。

2025年には世界で11億人もの女性が迎えるという更年期。最近ではフェムテックの中でも更年期の課題に特化した「メノテック」市場も生まれている。女性は平均50.5歳に閉経を迎えるが、更年期はその前後5年間、実に10年間にわたると言われる。その時期に、個人差はあるものの身体的・精神的な症状が発生するのだ。日本企業では女性管理職の割合を増やしている企業も多いが、7割もの女性が更年期の症状を理由に管理職を辞退した・辞退を考えたというデータもある。マネジメント職として重要な責務を任される年代と、更年期が重なることから、キャリアとの両立に悩む女性は多いのだ。

また、最近では女性だけではなく男性の更年期障害にも注目が集まる。男性は女性とは異なり、緩やかに症状が出てくるという。ただ、男性ホルモンのはたらきが低下するに従い、病気のリスクも高くなる。脳梗塞や認知症への注意も必要だ。

こうした更年期の症状に悩む人に対して、TRULYでは「知る」「調べる」「相談する」という3つのメソッドでサービスを提供している。「知る」ステップでは法人向けセミナーを行う。「調べる」では、現在の心や身体の悩み状態を可視化する。そして「相談する」はチャット相談サービスで、宋美玄氏を中心とした豊富な実績を誇る女医・専門家チームが監修しており、現在ネットワークを弁護士や薬剤師などにも広げているという。チャット相談は個人向けにも展開中であるが、法人向け福利厚生サービスとしての提供も進めている。専門家からの丁寧な回答や、幅広いジャンルの悩みに対応できることに、非常に高い評価を獲得しているサービスである。

株式会社TRULYのPRページはこちら:https://auba.eiicon.net/projects/31685

【グレイスグループ】少子化や女性活躍の課題に貢献する「卵子凍結・保管」


■株式会社グレイスグループ


世界に類をみないほど少子高齢化が進展し、人口減少が深刻化している日本。グレイスグループは、卵子凍結保管サービス「グレイスバンク」を提供し、少子化の解決や女性が活躍できる社会を目指している。 

体外受精での出産率には、卵子の加齢が大きく影響しているとアメリカCDCのデータを示しながらの説明。30代前半までは高い確率で妊娠出産が可能だが、年齢を重ねるにつれて出産率は大きく下がっていく。一方で、卵子が若ければ、母体が高齢になってもかなりの出生率を維持できるという。アメリカでは60代の女性が、若い女性の卵子提供を受け出産したという事例もある。つまり卵子は年齢と共に老化していくが、子宮は加齢の影響を大きく受けないということ。

グレイスグループが提供する卵子凍結保管サービスとは、若いうちに自身の卵子を採取し、凍結保存しておくものだ。これにより、半永久的に卵子は加齢せずに保管できる。同社サービスには、3つのステップがある。まずは「知る」こと、そして「採卵・凍結」、3つ目に「保管」だ。

「知る」ステップでは、様々な形での無料セミナーを実施しており、提携するクリニックの女医が説明を行うという。2つ目の「採卵・凍結」について、同社は2022年4月に「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」を渋谷にオープンした。このクリニックは、日本屈指の不妊治療クリニックである杉山産婦人科グループ理事長の杉山力一医師を顧問に迎え、施術技術やスタッフ教育、院内オペレーションなど、同グループの全面的なバックアップを得て運営する生殖医療・婦人科クリニックとのこと。渋谷という立地を活かして、女性のヘルスリテラシー啓発活動や、情報発信を考えているという。そして「保管」については、22年間無事故のステムセル研究所と資本提携をしていることから、万全な環境で保管ができるという。一般的なクリニックでは、液体窒素を手動で補充しており、温度センサーなどの導入は少ない。それに対してステムセル研究所では専用の大型タンクを設置し、全自動で液体窒素を補充、24時間365日温度モニタリングをしている。

また、高価なイメージのある卵子保管だが、グレイスバンクでは10年計で40万円(初期費用10万円、年間3万円)からと安価な価格で提供している。10年間の保管で200万円というクリニックもあるというから、価格はかなりおさえられている。「最高峰の医療体制と安全な保管体制、そして低価格を実現することにより、卵子凍結保管をより身近な選択肢として捉えていただけるよう尽力していきます」と、プレゼンを締めくくった。

株式会社グレイスグループのPRページはこちら:https://auba.eiicon.net/projects/31689

イベント後記


▲ピッチ終了後は、登壇者も交えたネットワーキングが行われた。

2022年4月より、不妊治療の保険適用が拡大された。また政府は、女性の更年期障害が日常生活に与える影響について、実態調査に乗り出した。日本でも女性の身体や健康の問題に、国策として取り組む動きが生まれてきた。女性の社会進出、少子化といった社会課題と密接にかかわる領域であることから、今後もその動きは加速していくだろう。

こうした中で、今回登壇した5社をはじめとするフェムテックスタートアップの力は不可欠だ。様々な企業から参加した来場者が活発に意見交換を行った。今回のピッチイベントから、どのような共創事例が生まれるのか、楽しみだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)

<次回開催予告>

6月23日(木)の19:00より、第3回eiicon meet up!! -世の中を変えるロボティクス- を開催予定です。公式facebookにて最新情報を発信してまいりますので、興味のある方は是非フォローください!

https://www.facebook.com/eiiconmeetup

※関連記事:DXの社会実装を目指す、注目のスタートアップ5社によるピッチ!ここから社会を変革する共創が生まれるか?――eiicon meetup!!イベントレポート

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