生活サービス・環境負荷軽減・再エネ発電支援――『TOHOKU EPCO OPEN INNOVATION PROGRAM 2022』の募集テーマと共創イメージを各責任者が語る(7/18応募締切)
5月27日よりエントリー企業の受付が開始された『TOHOKU EPCO OPEN INNOVATION PROGRAM 2022』(応募締切:7/18(月))は、スマート社会の実現に向けたビジネスモデルに挑戦する東北電力グループが、幅広い外部パートナーとの連携・共創により、新たな価値創造の実現を目指すために立ち上げたオープンイノベーションプログラムだ。
東北電力は、創立70周年にあたる昨年度からオープンイノベーションプログラムをスタートさせており、『TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD』の名称で開催された昨年度のプログラムでは、3社を採択。すでにサービス提供・業務提携なども進めており、成果を残している。
今期のプログラムでは、以下3つの募集テーマを設定。昨年度以上にタイムリーかつ電力会社らしい課題に迫るテーマが設けられるなど、より幅広い分野の企業がチャレンジできるプログラムに進化した。
【募集テーマ①】快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供
【募集テーマ②】企業向け環境負荷軽減につながるサービスの提供
【募集テーマ③】再エネ発電の拡大を支援するプラットフォーム事業の実現
※プログラム説明会(6/16(木)18:00~19:30)も参加申し込み受付中!
今回、TOMORUBAでは、同プログラムの運営をリードする古内氏に、昨年度に引き続きプログラムを開催することになった背景やプログラムの特徴・参加メリット、アップデートされたポイントなどについて伺った。
また、プログラム開始後、採択企業と実際に共創を行っていく各テーマオーナーにもインタビューを行い、テーマ設定の目的と背景、共創企業に期待していること、さらにはパートナーに提供できるリソースやアセットなどについても詳しくお聞きした。
昨年度は、サービス提供・業務提携などの成果も。今年度もお客さまの豊かさの最大化と社会課題解決のための事業展開を加速させていく
まずはプログラムの運営事務局を務める東北電力 事業創出部門の古内氏に、昨年度に引き続きオープンイノベーションプログラムを開催することになった背景をお聞きするとともに、今年度のプログラムの特徴や参加メリットなどを伺った。
▲東北電力株式会社 事業創出部門 スマート社会実現ユニット 古内氏
――昨年度、東北電力グループとして初のオープンイノベーションプログラムを開催されましたが、今年度も引き続きプログラムを開催されることになった理由・背景についてお聞かせください。
古内氏 : 昨年度は『TOHOKU EPCO BUSINESS BUILD』という名称でプログラムを開催し、非常に多くの企業様からご応募をいただきました。その中から最終的に3社の企業様(ワンデイワーク/Mysurance/ウィメンズ漢方)のアイデアを採択させていただきました。そのうち、1件は既にサービスリリースし、さらにもう1件は業務提携契約を締結し、サービスリリースに向けた準備の詰めに入っており、スピード感を持って具体的なサービスリリースを進めているところです。
このように前回のプログラムで一定の成果が得られたこともあり、私たちとしては、今後もお客さまの豊かさの最大化や社会課題解決のための事業展開を一層加速させていく必要があると考え、昨年度に引き続き、様々な企業様と一緒に東北発のスマート社会の実現を目指すべくプログラム実施を決定しました。
▲昨年度のプログラム最終審査会(2021年12月開催)
――今年度のプログラムの特徴を教えてください。
古内氏 : 今回のプログラムでは、“東北発のスマート社会の実現”と東北6県および新潟県が継続して発展していくため、人口減少や少子高齢化などの社会課題解決のほか、地域のカーボンニュートラルおよび再生可能エネルギー拡大に向けた共創をテーマに実施いたします。
各募集テーマに関しては、お客さまの暮らしや生活に直接関連する「【募集テーマ①】快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供」に加え、当社の基盤事業である電気・エネルギーサービスに関連した「【募集テーマ②】企業向け環境負荷軽減につながるサービスの提供」や「【募集テーマ③】再エネ発電の拡大を支援するプラットフォーム事業の実現」のようなテーマも設定させていただきました。
――今年度のプログラムに参加するメリット、提供できるリソース・アセットなどについて教えてください。
古内氏 : 昨年度のプログラムに引き続き、マーケティングやサービス検証、実証実験フェーズでは、東北電力グループの顧客基盤を存分に活用いただけると考えています。たとえば昨年度は、当社が展開している会員制Webサービス「よりそうeねっと」の会員様を対象としたデジタルマーケティングを実施し、お客さまの反応を検証し、サービス展開やターゲット顧客の見極めなどをスピーディーに行いました。
また、東北・新潟エリアにおける東北電力グループのブランドイメージも共創企業のみなさまにとっての大きなメリットになるはずです。毎年行っている好感度調査でも高い支持をいただけているため、「東北電力」という名前を出していただければ、地場の企業様や自治体様などからの協力も得やすいと思います。
――昨年度の経験を踏まえ、運営体制や伴走組織の中で強化・刷新された部分はありますか?
古内氏 : インキュベーション期間中、社外のメンターさんなどに協力いただき、アイデアの壁打ちやブラッシュアップができるタームを設けたいと考えています。昨年度のプログラムでもVCの方々にメンタリングいただき、スタートアップのみなさまからも「アイデアの磨き上げにつながった」とのお声をいただいていますので、引き続きそのような仕組みを強化していく方針で動いています。
――今回のプログラムのゴールについて教えてください。また、応募パートナー企業に期待することがあればお聞かせください。
古内氏 : 繰り返しになりますが、今回のプログラムでは「お客さまの豊かさの最大化」と「社会課題の解決」を目指しています。東北電力グループでは、2020年2月に策定した中長期ビジョン「よりそうnext」において、東北・新潟の様々な社会課題の解決に挑戦し、社会とともに持続的に発展し、「東北発のスマート社会の実現」をありたい姿に掲げています。
我々の目指しているビジョンに共感いただける企業様、さらにはこれらの目標、東北・新潟の社会課題解決、スマート社会の実現に向かって熱意を持って取り組んでいただける企業様と一緒に走っていきたいと考えています。
各テーマオーナーが語る、「テーマ設定の背景」と「共創イメージ」
続いて3つのテーマそれぞれのテーマオーナーの方々に、各テーマの設定背景と実現したい目標、共創相手としてイメージしている企業像、提供できるリソース・アセットに関する活用ポイントなどについてお聞きした。
【募集テーマ①】 快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供
○「子育てファミリー」の楽しみや利便の向上を支援するサービスの提供
○「食」の楽しみや便利を向上するサービスの提供
○「レジャー・アウトドア」等のアクティビティサービスの提供
○「住まい」の快適や省エネにつながるサービスの提供
▲東北電力フロンティア マーケティング本部 サービス開発部 稲持氏
▲東北電力フロンティア マーケティング本部 サービス開発部 乙部氏
【募集テーマ①】のテーマオーナーである稲持氏と乙部氏は、東北電力グループの東北電力フロンティア株式会社のメンバーだ。同社は東北発のスマート社会を実現に向けて、“電気”の枠組みを超えた様々なサービスを通じたお客さまへの提供価値向上と、東北・新潟の社会課題解決を進めるために2021年4月に設立された新会社である。
――まずは【募集テーマ①】を設定された目的や背景について教えてください。
乙部氏 : 私たち東北電力フロンティアでは、お客さまご自身の時間やご家族との時間を「楽しむ、つくる、支える」というサービスコンセプトを掲げており、お客さまに新たな価値を提供するとともに、それらを通じて、少子高齢化や地域活性化等の東北・新潟の様々な社会課題解決にも貢献したいと考えています。
主なターゲットとしては、単身・二人世帯、子育てファミリーのお客さまを考えています。例えば、これら世代のお客さまは、就職、引越、趣味、結婚、出産、子育て、新居の購入など、様々なライフイベントが発生します。くらし、仕事、家族などの変化に応じて、新たなニーズが生まれますので、このような世代のみなさまに向けて、価値あるサービスを提供するために、幅広い企業の皆様と新たなサービスを共創したいと考え、今回のテーマを設定させていただきました。
――テーマは「快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供」ということで、かなり幅広いサービスが考えられると思います。具体的な共創のイメージについて教えていただけますか?
稲持氏 : まずは東北電力グループがカバーしている東北・新潟の社会課題にしっかりと寄り添ったサービスを、ともに創っていきたいと考えています。東北・新潟の最大の課題は、人口減少や少子高齢化です。若い方々を中心に首都圏への人口流出が続いており、結果として地域の人口減少や少子高齢化に歯止めがかかりません。人口減少という非常に大きな課題が、日々の暮らしはもちろん、福祉、教育など幅広い分野に影響を与えていますし、今後もその影響がより大きくなっていくと想定しています。
一方、東北・新潟の暮らしに目を向けると、首都圏などと比べて共働き世帯が多く、持ち家比率や自動車の所有率が高いという特徴があります。家の外に目を向ければ、自然に恵まれた環境があり、四季の変化が非常に豊かな地域です。さらに、農業や水産業など一次産業も特徴的で、豊かな食文化が地域毎に育まれていることなども特徴の一つです。このような東北・新潟特有の社会課題や特徴を踏まえた上で、4つの共創領域を想定しています。
――想定している4つの共創領域について教えてください。
稲持氏 : 1つ目の領域は「子育てファミリー」に向けたサービスです。共働き世帯、ファミリー世帯に向けて、育児や家事の負担軽減につながるサービスや、ご家族の生活の楽しみ・彩りにつながるサービスを提供することで、「これからも東北・新潟に住み続けたい」「これからは東北・新潟に住んでみたい」という方々を増やし、、東北・新潟の少子高齢化といった課題にも貢献できればと考えています。
2つ目の領域は「レジャー・アウトドア」です。東北・新潟は自然環境に恵まれており、また、お祭りなど、地域毎に特徴的な伝統行事や文化があります。それらの魅力を東北・新潟の内外の方々が発見できるような体験型のサービスを想定しています。サービスを通じて、ぜひ、東北・新潟の交流人口が増え、地域を盛り上げていければと思っています。例えば、家族や仲間とのかけがいのない時間をより楽しめるようなサービスや場の提供が創れれば良いですね。
3つ目の領域は「食」です。実は先日、東北電力フロンティアでは、東北・新潟のブルワリーを中心とするクラフトビールの販売サービスを開始しました。東北・新潟の美味しいお酒を多くの方々にもっと楽しんでいただきたいという想いからスタートしたものです。これに限らず、生産者と消費者をインターネット上のECやローカルの流通でつなぐような仕組みなど、東北・新潟の素晴らしい「食」をエリア内外の人たちに対して広めていくような取り組みを進めていこうと思っています。このような取り組みを通じて、東北・新潟の一次産業の振興にも貢献し、「食文化」も広く発信できるのが理想ですね。
4つ目の領域は「住まい」です。「住まい」はお客さまご自身やご家族との時間を過ごす基盤となる場所です。また、より一層の省エネ・創エネなどの観点から、我々電力会社の扱う「エネルギー」とも非常に近い領域です。東北・新潟は四季の変化が豊かです。暑い夏、寒い冬であっても住まいで過ごすかけがいのない時間をより良いものにできるようなサービス、さらに地球環境にもやさしく、カーボンニュートラルにも寄与できるようなサービスを作っていきたいと考えています。
▲東北電⼒フロンティアとカメイ株式会社が業務提携契約を締結し、東北・新潟のブルワリーの銘柄を中心としたクラフトビールをお届けする「クラフトビール販売サービス」を開始した。(出典:プレスリリース)
――共創パートナーに提供できるリソース、アセットがあれば教えてください。
乙部氏 : やはり東北電力グループの顧客基盤は大きいと思います。電力契約のお客さまだけで約400万件、webサービス「よりそうeねっと」に関しても120万人を超えるお客さまにご利用いただいており、多くのお客さまにアプローチするサービスを生み出すことが可能です。
また、東北電力フロンティアは、昨年11月の事業開始以降、10社以上のパートナー企業様と連携して様々なサービスをリリースしています。今回、共創領域の1つとしている「子育てファミリー」に向けたサービスも展開しているので、これまでに蓄積してきた経験・ノウハウ・販路なども活かしていただけると思います。
――先ほど稲持さんからクラフトビールの話をお聞きしましたが、子育てファミリーに対してはどのようなサービスを展開されているのでしょうか。
乙部氏 : リユース子供服の購入サービスを展開しているほか、株式会社ワールドライブラリーさんと提携して世界各国の絵本を毎月お届けするサービスなども行っています。
――共創したいパートナー企業のイメージなどはありますか?
稲持氏 : 企業規模や歴史は全く問いません。大切なのは、「ビジョンを共有できるか否か」の一点です。東北電力は創立以来、約70年にわたって「東北・新潟の繁栄なくして当社の発展なし」という基本的な考え方を掲げ、この地域に根を下ろして、地域とともに事業を行ってまいりました。
これから作っていく新サービスについても、まずは「地域のためになるか」「お客さまのためになるか」という思いを大切にし、私たちと同じビジョンを共有いただき、お客さま・地域、我々、パートナーとなる企業様と一緒になって、ともに持続的な成長を描いていければと思います。
また、昨年度よりも、より、「共創(ともに創る)」ということは強く意識したいと思います。お互いの顧客基盤やサービスを持ち寄るだけの「協業」ではなく、パートナーとなる企業様の強みも活かしながら、ともに新しいサービスの開発に挑戦していきたいと考えています。社会課題先進地の東北・新潟から、全国に向けて、「おっ!」と言わせる新サービスを生み出せるのが理想です。東北・新潟では、それにチャレンジできるフィールドはありますし、我々も昨年度以上に全力で取り組んでいきます。ぜひ我々の思いに共感いただける企業様には積極的に応募いただければ幸いです。
――本プログラムへのエントリーを検討されている企業の皆様へのメッセージをお願いします。
稲持氏 : 東北電力グループとして2期目のプログラムとなるため、昨年度以上に東北・新潟のお客さまや地域の課題にしっかりと刺さるようなサービスを創っていく考えです。
また、私たち東北電力フロンティアは、社員数50名程度の生まれたばかりの会社であり、大企業にはない機動力やフットワークの軽さもあると自負しています。昨年度のプログラムでも、スピード感を持ってテストマーケティングやサービスリリースを進めてきました。東北電力グループの強みやリソースを活かしつつ、パートナー企業様の強みを掛け合わせることで、有意義な「共創」を実現していきたいと考えています。
乙部氏 : 昨年度のプログラムに参加した際、スタートアップの皆さんのスピード感や考え方に触れ、本当に多くの刺激を受けました。今回もパートナー企業の皆様から様々なことを吸収させていただきながら、東北・新潟の社会課題解決に繋がるサービスの共創に向け頑張っていきたいと思っています。皆様の積極的なご応募をお待ちしています。
【募集テーマ②】 企業向け環境負荷軽減につながるサービスの提供
○コスト削減(または売上増加)と環境負荷軽減の両立が可能なサービス
○温室効果ガス削減につながるサービス
▲東北電力株式会社 事業創出部門 クリーンエネルギーサービスユニット グリーンビジネスチーム 藤峰氏
――【募集テーマ②】を設定された目的や背景について教えてください。
藤峰氏 : 東北電力グループでは、以前より地球温暖化対策を経営上の重要課題に位置付けており、再生可能エネルギーの開発、既存の火力発電の高効率化、ヒートポンプを活用した電化推進など、様々な形でCO2の削減を積極的に推進してきました。
また、昨今では日本政府が2050年までのカーボンニュートラル実現を掲げるなど、これまで以上に社会全体で地球温暖化対策を推し進めていく機運が醸成されつつあります。
そのような状況の中、私たちは改めて地域とお客さまに寄り添う企業として、自社だけでなく、地域の企業様のCO2排出量削減も含めてサポートしていくことで、持続的な社会の実現を目指したいと考えており、このようなテーマを設定しました。
――東北電力グループ自身の取り組みを、地域の企業様に対しても広げていきたいということでしょうか?
藤峰氏 : そうですね。私が所属しているグリーンビジネスチームは、法人のお客さまに活用いただけるようなCO2削減や環境負荷軽減などのサービス創出をミッションとしており、多くの企業の方々とお話しさせていただく機会があります。「カーボンニュートラルと言っても何をしたらよいか分からない」というお客さまもいらっしゃいますし、ある程度の解決策を理解していたとしても、短期的な現業へのメリットを見出せないために、「最初の一歩を踏み出せない」というお客さまも少なくありません。
――そもそもの方法を知らないお客さまに加え、理解していてもコスト面から二の足を踏んでいるお客さまもいらっしゃるということですね。
藤峰氏 : その通りです。当社も省エネのソリューションを持ってはいるのですが、より多くの企業様の導入を促すべく、様々なソリューションを用意し、選択肢を増やしていきたいと考えています。とくに現業へのメリットを見出せない――つまりは「コスト的に割に合わない」と考えている企業様でも無理なく導入いただけるような、環境負荷軽減とコスト削減・売上増加を両立できるようなサービスやソリューションを創出したいという思いが強いですね。
――求めている共創パートナーの条件や具体的な共創イメージについて教えてください。
藤峰氏 : すでに環境負荷軽減につながるサービスを持っている企業様、あるいは開発・提供の予定がある企業様とお会いしたいと考えています。
具体的な共創イメージの一例としては、当社が提供している電気使用量の見える化サービスと別の技術やプロダクト、アイデアなどを組み合わせることで、電気使用量だけでなくCO2排出量の可視化・削減などまで一気通貫で提供できるようなサービスを作ることができればいいなと考えています。
また、エネルギー関連以外の領域でも脱炭素につながるようなサービスがあれば、様々な可能性につながると考えているので、そのようなサービス・技術・プロダクトを持っている企業様とも話をしたいです。
――エネルギー関連以外ということですが、具体的にはどのようなものをイメージされているのでしょうか。
藤峰氏 : デジタルやIT関連の分野ですね。直接的ではなくとも、間接的にCO2削減につながるようなサービスに期待しています。また、デジタル観点ということで言えば、排出権取引に関するITソリューションなどを提供している企業様とも話をしてみたいと考えています。
――共創パートナーに提供できるリソース、アセットがあれば教えてください。
藤峰氏 : 他のテーマと共通しますが、東北6県と新潟県全域に広がる顧客基盤や法人営業のネットワークを活かしたサービス展開ができる環境は、パートナーの皆様にとっても大きなメリットになると思います。また将来的には、先ほどお話しした電気使用量の見える化サービスから得られたデータを活用できる可能性もあるので、それらのデータを活かした新サービス開発もできるようになると考えています。
――本プログラムへのエントリーを検討されている企業の皆様へのメッセージをお願いします。
藤峰氏 : 私たちとしても皆様の提案を受けながら、より良い共創の進め方を構築していきたいと思っていますし、パートナーの皆様が100%のアウトプットを出せるような環境を作っていくつもりです。また、顧客へのヒアリングなどに関しては、営業部門や関連子会社とも連携を取りながら進めていくので、グループのネットワークを存分に活かしていただきたいと考えています。
【募集テーマ③】 再エネ発電の拡大を支援するプラットフォーム事業の実現
○再エネ(太陽光・バイオマス等)の発電システムの構築
○遊休地のマッチングとファイナンスノウハウの提供
○全国での施工・保守メンテナンス可能な体制の構築
○再エネをより効率的に運用するための蓄電システムの構築
▲東北電力株式会社 事業創出部門 クリーンエネルギーサービスユニット 次世代エネルギーチーム 蘇武氏
――【募集テーマ③】を設定された目的や背景について教えてください。
蘇武氏 : 再生可能エネルギー、いわゆる「再エネ」の事業環境から説明します。2012年に、太陽光などの再エネで発電された電気を国が定める価格で電気事業者が買い取ることを義務付けたFIT制度(固定価格買取制度)がスタートしました。
国が再エネの活用を後押しするために作った制度でしたが、このFIT制度は昨年で終了しました。そのため、再エネの発電事業者様は、FITの補助に頼らない非FITの環境で発電を行う必要に迫られています。
非FITの環境下では、計画値同時同量の発電が求められることになります。計画値同時同量とは、事前に電気の発電量と需要量を予測した上で発電・供給を行う制度であり、私たちのような電気事業者は日々行っていますが、再エネの発電事業者様にとっては相当大きな負担となるため、事業環境の悪化が予測されます。
この10年で大きく広がった再エネですが、非FITの世界に移行することで、発電事業者様が事業を続けるハードルが非常に高くなってしまったのです。そのような状況の中、一般電気事業者として豊富な運用ノウハウを持つ東北電力が、再エネ事業者様の事業を何らかの形で支援することで、再エネ発電の普及・拡大に対して継続的に貢献していきたいと考え、今回のようなテーマを設定しています。
――求めている共創パートナーの条件や具体的な共創イメージについて教えてください。
蘇武氏 : 私たちに足りていないピースとしては、再エネ発電を行うための用地が挙げられます。たとえば太陽光であれば、太陽光に適した土地が必要になりますが、そのような土地を持っている企業様、あるいは用地に関する情報を持っている企業様が候補に上がります。
加えて発電システムなどを全国で施工できる企業様も求めています。いわゆるEPC(設計・調達・建設)企業です。東北電力グループにも発電システムの施工を担当するグループ会社(東北エネルギーサービス)があるのですが、東北エリアに限定して事業を行っているのが現状です。これを全国規模で行える企業様を探しています。
さらにファイナンスノウハウを持っている企業様も対象となります。発電事業には相当な初期費用がかかるため、資金調達が重要なポイントとなります。FIT制度の元ではSPC(特定目的会社)を作ってプロジェクト単位で資金を調達するスキームが一般的でしたが、そのようなプロジェクトファイナンス、あるいはコーポレートファイナンスの知見を持った金融系の企業様も対象になります。
また、気象状況により出力が変動する再エネをより効率的に運用するためには蓄電池システムも重要になります。一般的な家庭用・防災用の蓄電池ではなく、再エネの発電所に併設または系統に直接接続するような大規模大容量の蓄電池システムを調達・施工できるような企業様にも協力いただく必要があると考えています。
――発電システムを「全国で施工できる企業様を求めている」というお話がありました。東北電力の管轄エリアである東北6県と新潟県だけではなく、全国での展開を考えられている理由を教えていただけますか?
蘇武氏 : 今まで再エネ事業を拡大してきた事業者様の多くは、エリアを限定せずに全国で事業を展開しています。たとえば「東北でも展開しているが、中部や九州でもやっている」というお客さまに対して、「東北のエリアは私たちが担当しますが、中部のものは中部電力に、九州のものは九州電力に頼んでください」ということになると、再エネ事業者様からすれば非常にやりにくい環境となってしまいます。お客さまである再エネ事業者様のニーズを考慮すると、どうしても全国での施工が必要になるのです。
――共創パートナーに提供できるリソース、アセットについて教えてください。
蘇武氏 : 長年、電気事業者として事業を展開してきた実績を持つ当社は、先ほどお話した非FITの世界で必要不可欠となる計画値同時同量を管理するノウハウを有しています。
また、発電した電気の売り先に関しても、東北エリアの需要家をご紹介するなど、発電と需要家のマッチングを行えるようなコネクションを持っています。さらに言えば、発電・需要予測に関する分析技術を提供することもできますし、施工管理系のグループ会社から施工人員を紹介・提供させていただくような組み方も可能であると考えています。
――本プログラムへのエントリーを検討されている企業の皆様へのメッセージをお願いします。
蘇武氏 : カーボンニュートラルに向けて今後の再エネ事業を「末長く支えていきたい」という使命感を持った企業様と共創したいと考えています。単なる投資目的ではなく、10年後、20年後の未来を見据え、再エネを主力電源として電気を供給していけるような未来の電力会社を共に作りたい。そんな志を持っている方々と共に事業を作っていきたいですね。
取材後記
東北電力グループのオープンイノベーションプログラムとして2期目を迎える今回は、昨年度以上にテーマの幅が広がり、より多くの企業に参加のチャンスが広がっている印象を受けた。とくに「企業向け環境負荷軽減につながるサービスの提供」や「再エネ発電の拡大を支援するプラットフォーム事業の実現」といったテーマは、昨今話題になることの多いSDGsに絡む複数の社会課題を内包しており、このプログラムを通じて生み出されたイノベーションが世界標準として広がっていく可能性も秘めている。
そのような意味でもスタートアップやベンチャーはもちろん、中堅企業や大企業の新規事業担当者も含めて要注目のプログラムになりそうだ。エントリー企業の受付は5月27日よりスタートしている。『TOHOKU EPCO OPEN INNOVATION PROGRAM 2022』(応募締切:7/18(月))に興味を持った方は、ぜひ応募を検討いただきたい。また、参加申込を受付中のプログラム説明会(6/16(木)18:00~19:30)にも、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己)