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「スマート玩具」が市場拡大 世界のスタートアップが挑むAI×おもちゃ 最大の壁は“規制強化”か

「スマート玩具」が市場拡大 世界のスタートアップが挑むAI×おもちゃ 最大の壁は“規制強化”か

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AIなどのテクノロジーを搭載した「スマート玩具」市場が拡大している。世界のスマート玩具市場は、2024年に19.3億ドル(約3,000億円)と評価され、今後も成長が続くと見込まれている。子どもの教育支援や遊び相手として市場が広がるなか、規制強化の動きも加速している。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第72弾は、成長トレンドの「スマート玩具」に着目する。同市場で注目されているスタートアップ各社の事業戦略、そして、規制強化の壁とはーー。

サムネイル写真出典:Haiviviのプレスリリース

市場は右肩上がり 「小学生向け」がシェア半数を占める

グローバル市場調査やコンサルを提供するグローバルマーケットインサイトによれば、世界のスマート玩具市場は、2024年に19.3億ドルと評価され、2025年から2034年まで14.4%を超えるCAGRで成長すると推定されている。

AIや音声認識、タッチセンサーなど技術開発が進んだことに加え、保護者が重要視するSTEM学習に注力した製品展開が、市場拡大につながっているという。

▲スマート玩具市場は14.4%以上のCAGRで成長すると推定される(出典:グローバルマーケットインサイトの調査リリース)

スマート玩具の市場シェア(年齢層別)では、「小学生(6〜12歳)」が47%と約半数を占める。次いで、「3〜5歳」と「13歳以上」が続く。6歳以上を対象とするスマート玩具は、高性能AIを搭載したり、教育アプリと連携させたりと機能が複雑化しており、それが子どもの創造性や問題解決能力を強化するのに役立つとされる。

▲スマート玩具市場は小学生向けが約半数を占める(出典:グローバルマーケットインサイトの調査リリース)

世界のスマート玩具スタートアップの動向

続いて、スマート玩具市場で注目度の高いスタートアップをピックアップして紹介する。

●AI搭載の学習ロボ×教育アプリ Miko(ミコ)/インド

2015年にインドで創業したミコは、子ども向け教育ロボットと教育アプリを融合させ、世界的に支持を得ている。主力製品は「Miko 3」(199ドル/約32,000円)で、本体に顔と足(タイヤ)が付いていて、表情を変えながら会話をしたり、自走したりする。

教育アプリは、ディズニーやパラマウントなどの大手企業とコラボし、IPを活用したプレミアムコンテンツを強みとする。月額14.99ドル(約2,400円)、年額99ドル(約16,000円)のサブスクで継続的な収益を確保するビジネスモデルだ。

さらに、自社開発だけでなく、買収によって製品ポートフォリオを拡大している。2022年には、AI搭載の自動チェス盤などを開発するスタートアップ「Square Off」の株式70%を取得。これにより、「AIボードゲーム」という新たな製品ラインを獲得した。

●表現力豊かな小型ペットロボ KEYi Tech(キーアイ・テック)/米国

2014年に中国で設立され、現在は米国に本社を構えるキーアイ・テックは、ペットのように動き回る小型ロボットを販売する。3Dセンサーと強力なモーター制御により耳や足を器用に動かし、まるで生きているかのような感情表現をする。ChatGPT搭載により会話もできる。主要製品は、犬のような形状をした Loona(ルーナ)で価格は499ドル(約8万円)だ。

2022年にクラウドファンディングサイト・Kickstarterで実施したプロジェクトでは、8,000人弱の支援者から約300万ドル(当時のレートで約4億3,000万円)の資金を集め、製品化が実現した。「CESイノベーションアワード 2024」や「iFデザインアワード 2024」など複数の受賞暦があり、完成度が高いと評価されている。

●多様なキャラクターを持つ会話ロボ Curio(キュリオ)/米国

2023年に米カリフォルニア州で創業したキュリオは、スクリーンを使わずに自然な会話ができるAIロボット(119ドル/約19,000円)を販売する。現在、8種類が展開されており、それぞれにキャラクター性(ペルソナ)が設定されている。

▲キュリオが販売する8種類のAIロボット(キュリオの公式ホームページより)

カナダのミュージシャンであり、イーロン・マスク氏の元パートナーとしても知られるGrimes氏と提携しており、彼女は製品ラインナップの一つであるロケット型のキャラクター「Grok(グロック)」の声を担当している。ちなみにGrokは、 イーロン・マスク氏が率いるxAI社の対話型AI・Grokとは別物だ。

●幼児教育に特化した教育ロボ  Roybi(ロイビ)/米国

2019年に米国カリフォルニア州で創業したロイビは、3〜7歳の子どもを対象にした教育ロボットを販売する。科学、技術、数学など73のカテゴリーで1,000以上のレッスンを提供し、英語、スペイン語、フランス語、中国語に対応。子どもの発話を認識し、発音矯正や語彙学習をサポートする。価格は149ドル(約2万4,000円)だ。現状は月額利用料はかからない。

▲ロイビが発売する教育向けのロボット(ロイビの公式ホームページより)

TIME誌の「最高の発明品(Best Inventions)」のほか、複数の受賞歴がある。メタバース教育プラットフォーム「RoybiVerse」の展開も進めており、同サービスは7〜15歳が対象だ。ハードウェアと仮想空間を融合させた次世代教育を目指す。

●ぬいぐるみに命を吹き込むAIデバイス Haivivi(ハイビビ)/中国

2023年に中国で創業したHaiviviは、ぬいぐるみに命を吹き込むAIデバイス「Haivivi BubblePal(ハイビビ バブルパル)」(99ドル/約16,000円)を販売する。

▲ぬいぐるみに命を吹き込むAIデバイス「ハイビビ バブルパル」(出典:Haiviviのプレスリリース)

同社のホームページでは、AIGC(人工知能生成コンテンツ)を搭載した“ストーリーテリング玩具”と紹介されており、子どもとの会話を通じて、共に物語を創作する機能が特徴的だ。さらに、数十種類の定番IPキャラクターを声のトーン、世界観、性格特性といった側面から再現している。

子どもの創造性や表現力を育む点がメリットとされていて、多言語にも対応。カメラや録音機能がなく、プライバシー保護の観点でも安心感が高い。同製品の総販売台数は20万台を超えている。

▲2025年8月には、第2世代の「CocoMate」も発売(Haiviviの公式ホームページより)

2025年8月には、第2世代の製品「CocoMate(ココメイト)」も発売。特定キャラクターの世界観を深く再現した、より没入感の高いハイエンドモデルとされ、現在は「ウルトラマン」を販売する。ぬいぐるみの中に電子部品が挿入されており、着脱可能。ぬいぐるみは水洗いや交換が可能だ。価格は約800元(約18,000円)となる。

※価格は、全て2026年1月時点の公式オンラインストアを参照

不適切発言により一時販売停止も 露呈した「課題」

市場が急速に拡大するなか、見えてきたのはプライバシーやセキュリティの課題だ。

2025年11月、シンガポールのスタートアップ・FoloToyが発売するAIテディベア「Kumma」は、性的嗜好などの不適切な発言や自傷・事故につながる情報提供をすると米国公共利益研究グループ(PIRG)に指摘された。その後、同社は同製品の販売を停止し、調査や安全性の再評価を実施。改良により安全性が確保できたとして、販売は段階的に再開されている。

▲一時販売停止となったAIテディベア「Kumma」。現在は販売が再開されている(FoloToyの公式ホームページより)

こうした問題を受けてか、玩具大手の米Mattel(マテル)は、2025年内の発売が見込まれていたAI玩具の発売を延期した。同社は2025年6月にOpenAIと提携し、自社の象徴的なブランド(バービー、ホットウィールなど)に、ChatGPTなどのOpenAIの技術を組み込んだAI玩具を同年後半に発売予定だと発表していた。

こうした背景があり、AI玩具を販売している各社では、コンテンツフィルターやプライバシー設計、厳しいペアレンタルコントロールを導入し、保護者の懸念の払拭に注力している状況だ。

例えば、米スタートアップのキュリオでは、子どもとAIロボットの会話を全て文字起こしした上で、90日後にデータが自動削除される仕様を導入している。保護者はアプリ上で該当データを閲覧できるほか、データの即時削除も要求できる。

米国で進む「規制強化」の動き

保護者やテクノロジー研究者、そして議員たちは、AI玩具が流行する以前から、AIチャットボットが未成年者のメンタルヘルスに与える影響について懸念を表明していた。

実際、欧米ではAIとの恋愛関係にのめり込んだ結果、利用者が自殺や自殺未遂をするなどの悲劇的な事例が複数出ており、訴訟に発展している。こうした訴訟事例に直面したAIアバターサービス「Character.ai」では、2025年11月、18歳未満の利用者に対してチャットボットとの自由な会話を禁止した。

▲Character.aiは18歳未満のチャットボットとの自由な会話を禁止した(写真はイメージ、出典:UnsplashVitaly Gariev

また、カリフォルニア州では「18歳未満向けのAIチャットボット機能を搭載した玩具の販売・製造を4年間一時停止(モラトリアム)する」規制案が、2026年1月2日に提出された。現在のAI技術には、不適切なコンテンツの共有、プライバシーの侵害、学習意欲への悪影響などのリスクがあると調査で示されたためだ。

その危険性を解明し、安全な規制の枠組みが確立されるまでの間、AI玩具の販売を停止する必要があると、Steve Padilla州上院議員はプレスリリースで訴えている。同法案は、今後数か月以内に上院で審議される予定だ。

この法案に対し、The Toy Association(米国玩具協会)は、「米国で毎年販売される30億個のおもちゃの安全性は、消費者にとって十分な信頼に値するものだ。正規の信頼できる販売者が販売するおもちゃは、米国の玩具安全基準に適合しているかどうかが検査されている」と声明を発表している。

同法案が可決されれば、米国でAI玩具を販売する各社は根本的な戦略の見直しを迫られる。今後の動向も引き続き注視したい。

編集後記

米国や中国のAI玩具市場は、日本と比較して先進的な印象を抱いた。自由に会話ができ、家族の顔を認識するAIロボットは確かに魅力的だが、保護者の立場で考えると、子どもへの悪影響やプライバシー侵害の懸念は拭いきれないだろう。カリフォルニア州における今後の展開次第で、同市場の新規参入が激減する、米国での安全基準が確立されるなどの動きがあるかもしれない。

(取材・文:小林香織)  

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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