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三重県から全国、そして世界の市場へ。共創に挑む採択5社が決定!スマート工場、脱炭素、室内農業、フェムテック、心地よさ市場

三重県から全国、そして世界の市場へ。共創に挑む採択5社が決定!スマート工場、脱炭素、室内農業、フェムテック、心地よさ市場

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古いものを作り替え、永遠に若々しくある「常若(とこわか)」の精神のもと、イノベーションの土壌を育んできた三重県。その三重県が取り組む「TOKOWAKA-MIEオープンイノベーション推進事業」の一環として、去る10月21日(金)・22日(土)の2日間、県内企業と全国から募集したパートナー企業で、新たなビジネスモデルの創出や社会課題・地域課題の解決をはかるプログラム、「TOKOWAKA-MIE BUSINESS BUILD」が、四日市市文化会館にて開催された。

ホストを務める三重県内企業は、株式会社マスヤグループ本社 (主な事業・製品:おにぎりせんべい)、南出株式会社 (主な事業・製品:造園緑化資材)、有限会社二軒茶屋餅角屋本店 (主な事業・製品:クラフトビール・清涼飲料)、三重化学工業株式会社 (主な事業・製品:保冷剤)の4社。多くのアイデアが寄せられる中で、7社がパートナー企業候補として選抜され、BUSINESS BUILDに挑んだ。今回TOMORUBAでは、本プログラムの様子を最終発表と審査結果を中心に紹介する。

※関連記事:三重県からイノベーションを巻き起こす!革新的な老舗ホスト企業4社が描く共創未来とは?―8/22パートナー募集開始

2日間の議論とメンタリングにより、事業計画を練り上げる

DAY1(10/21)は、午前中に各ホスト企業の本社工場を訪問し、現地見学を実施。リアルな現場を視察した後、四日市の会場へ移動し、提案アイデアにおける課題やターゲットについて、参加企業とホスト企業で入念に議論を交わした。夕方に行われた中間プレゼンでは、時にシビアなフィードバックも交えながら、実現可能なビジネスプランに向けてメンターよりアドバイスを実施。翌日に向けてビジネスアイデアの整理を行い、1日目を締めくくった。


DAY2(10/22)は、最終発表に向けた資料作成やプレプレゼン、メンタリングを重ねた後、2日間の集大成として最終発表を行った。

審査員は、ホスト企業4社の代表者に加え、主催者である三重県 デジタル事業推進課の三野剛氏、メンタリングを手がけたパラレルキャリアエバンジェリスト・常盤木 龍治氏、Spiral Innovation Partners・岡 洋氏、eiicon company・中村亜由子の8名が担当。(1)新規性 (2)市場性 (3)実現可能性 (4)事業拡張性 の4つの観点から審査を行った。


――2日間のBUSINESS BUILDで、各社はどのような共創アイデアを練り上げていったのか。最終発表の内容を、採択企業をメインに紹介する。

【株式会社マスヤグループ本社】 AIやロボットなどのテクノロジーによるスマート工場システム

全国のスーパーやコンビニで販売されるロングセラー商品『おにぎりせんべい』など、米菓の製造販売をおこなうマスヤ。同社は、「デジタル技術を用いて工場の生産計画をアップデート」をテーマに掲げ、共創パートナーを募集した。そして最終的に、「株式会社フューチャースタンダード」の提案が採択された。

■株式会社フューチャースタンダード 「AIやロボットを用いた低コストスマートファクトリーの実証」

映像解析AIプラットフォーム「SCORER」を提供するフューチャースタンダード。同社は、「SCORER」の基礎技術と、マスヤの現場の知見と“カイゼン文化”を掛け合わせ、ハンドメイドスマート工場パッケージシステム「マスヤメソッド」を創り上げ、日本や世界の製造業に展開する提案を行った。


スマートファクトリーの流れは、大企業の間では進んできている。しかし、中小工場では従来型の機械のままで効率化が進まず、若手人材への職場魅力が低減しているという課題がある。そこに対して、“マスヤメソッド”を導入し、最新テクノロジーの活用やデータドリブンな現場の改善を行うことにより、中小規模の工場でもスマートファクトリー化の実現を目指す。

システム導入には高い専門性が求められるが、そこを「SCORER」で培ったノウハウで解決する点がポイントだ。まずはマスヤの工場にて、AIやロボットなどのテクノロジーを導入して業務改善をはかり、“マスヤメソッド”を確立する。その後、食品業界への外販・コンサルティングに乗り出し、さらにその先にはグローバルでの拡販を目指す見込みである。

<ホスト企業・受賞者コメント>

マスヤグループ本社 代表取締役社長 浜田𠮷司氏は、「中小食品製造業は働き手の確保に大きな課題を抱えている。ご提案いただいたソリューションは、業界全体に提供できる可能性がある」と採択理由を話した。常務取締役 製造統括責任者 山本豊氏は、「製造業全体に共通する課題に対して真摯に向き合い、フューチャースタンダードさんと共に取り組んでいきたい」と展望を語った。また、採択されたフューチャースタンダードの代表取締役社長 鳥海氏は、「この分野は非常に面白いと思うので、ぜひ攻めていきたい」と決意を述べた。


【南出株式会社】 カーボンニュートラル市場への進出と室内農業の実現を目指す

創業98年の造園緑化資材メーカー・南出。独自性の高い製品群で、全国250社以上の顧客ネットワークを築いている。同社は、「テクノロジー活用でサステナブルな都市緑化の仕組み創出」を今回のテーマとして掲げ、「株式会社環境エネルギー総合研究所」「スパイスキューブ株式会社」の2社が最終プレゼンを行い、両社とも採択されることとなった。


■株式会社環境エネルギー総合研究所「”保水マット”を全地球へ!」

エネルギー関連調査・分析・開発などを専門とするシンクタンク環境エネルギー総合研究所は、「これからカーボンニュートラルに取り組まない企業、カーボンニュートラルに寄与しない製品は淘汰される時代になる」と明言し、カーボンニュートラルを牽引する新商品の開発を提案した。



<ホスト企業・受賞者コメント>

南出株式会社 代表取締役 南出紘人氏は、「初期段階から目的が明確で、共創しようと考えていた。話せば話すほど展開が拡がる。今後とも末永くお付き合いをしたい!」と、コメントした。環境エネルギー総合研究所の代表取締役 大庭氏は、「工学系の知識を活かしたコンサルティングの経験とあらゆる業種とのパイプを活かして、共創に取り組みたい。」と、今後の展望を述べた。


■スパイスキューブ株式会社 「オフィスを愛と緑の海にする」

スパイスキューブは、水と電気だけで植物を栽培する植物工場の事業化支援や、室内農業装置開発を行う都市型水耕栽培ベンチャーだ。同社は、「オフィスを愛と緑の海にする」というコンセプトで提案を行った。


内容は、南出が屋内緑化を支援しているオフィスビルの法人に、スパイスキューブが開発する室内農業装置を導入し、そのオフィスビルで働く人々が室内農業を体験するというもの。このプロダクトで栽培できる野菜は300種類、観葉植物は未知数に及び、自ら栽培した野菜を収穫して、昼食時などに食べることが可能だ。これによって、オフィス内でのコミュニティスポットとして輪の広がりが期待できるなど、労働環境に多様性を持たせ、QOL向上につなげることが狙いである。

従来の屋内緑化は、その空間を楽しむ“オフィスインテリア”としての側面が強かったが、本提案ではそこに“農業”を付加することで、オフィスビルの不動産価値を向上させることができる。年間1400億円の都市緑化市場に向けた、新たなモデルとして展開が期待できるだろう。


<ホスト企業・受賞者コメント>

今回、2社採択となった南出株式会社。代表の南出氏は、「対話を重ねる度に、スパイスキューブの独自性の高い知識や技術に触れることができ、面白いプロダクトになると感じた」と、期待を込めて語った。スパイスキューブ代表取締役 須貝氏は、「ただの農業オタクにスポットライトを当ててもらえて嬉しい」と、ユーモアを交えながら採択の喜びをコメントした。


【有限会社二軒茶屋餅角屋本店】 女性をターゲットとする、新たなフェムテック飲料

味噌・醤油製造のノウハウをもとに1997年にスタートした、クラフトビール『伊勢角屋麦酒』で確固たる地位を築く、有限会社二軒茶屋餅角屋本店。同社は、コロナ禍でアルコール類を提供できなくなった飲食店の声を受け、清涼飲料水「HOP SPARKLING」を開発した。今回のテーマは、「ホップの未知なる可能性を秘めた新たな清涼飲料の市場を創造する」。最終ピッチの結果、「株式会社DELICE」が採択に至った。

■株式会社DELICE 「注目市場にNEWSを起こす。新しいフェムテック・コラボ商品」

フェムテックブランド「The LADY.」を展開するDELICE。同社が提案するのは、健康志向で多忙な20代~50代女性をターゲットとする、新たなフェムテック飲料だ。


女性は、年齢やライフステージの変化、社会進出によるストレスなどにより、様々な身体的・精神的な不調に悩まされる。近年フェムテック市場が急速に拡大しているが、そこには科学的な根拠のない信頼できない商品も増えているという。また、女性自身も自らの健康についての知識が十分ではなく、適切な商品を選択できないという課題もある。

そこでDELICEは、「真に女性の健康を考え、気軽に取り入れられる真摯な商品の提供が必要」だと強調。成長市場であるフェムテック市場とウェルネス飲料市場に、新しい切り口で挑む商品として、アロマホップ機能性飲料を提案した。ビールの原料であるホップには、キサントフモールという女性ホルモンに似た働きをする成分が豊富に含まれている。この商品を筆頭に、すべての女性の健康課題に対応する商品・ブランドへと育てていくことを想定しているという。


<ホスト企業・受賞者コメント>

有限会社二軒茶屋餅角屋本店 代表取締役社長 鈴木成宗氏は、「いい商品をしっかりと世の中に伝えていくことにコミットして、お互い思ったことを言い合いながらビジネスを育てていきたい」と、期待を込めて語った。DELICEの杉浦氏も、「きっと素敵なプロジェクトになる。5年10年と末永く女性の悩みを解決させられるようなビジネスにしていきたい」と、想いを込めて語った。


【三重化学工業株式会社】 保冷剤×消臭抗菌剤の技術革新により、新たな市場を創造する

自社ブランド保冷剤『スノーパック』をはじめ、独自技術で多様な製品を生み出してきた三重化学工業。今回は「保冷剤製造で培った独自技術の応用で日常生活を支える新製品を開発」をテーマに設定し、共創企業を募集した。審査の結果、「株式会社インターリンクス」が採択され、先のステップに進むこととなった。


■株式会社インターリンクス 「心地よさ市場の創出」

夏場の気温上昇など環境の変化、光熱費をはじめとする値上げラッシュ、そしてライフスタイルの多様化――消臭抗菌に強みを持つインターリンクスが三重化学工業との共創で実現を目指すのは、すべての生き物に快適な生活環境を提供する、新しい付加価値商品の創造だ。


三重化学工業の保冷剤開発のノウハウに、インターリンクスの消臭抗菌剤開発のノウハウを掛け合わせることにより、保冷のみならず消臭、抗菌、鮮度維持、忌避効果といった機能を付加した商品を開発。そして、“心地よさ市場”という新たな市場の創出を目指す。その市場は、ペット、介護、暮らし、医療、アウトドア、防災、物流など、幅広い領域に拡大できる可能性があるという。

インターリンクスがまず着目するのは、ペット市場だ。夏期の気温上昇により、ペットの熱中症を心配する飼い主は多い。さらに、コロナ禍の影響でペットを飼う人が増えていることから、市場の拡大が見込まれる。また、同社は既に中国のペット市場にブランドを展開し、販路を開拓しているため、この点も本共創の強みとなる。ペット市場の後は、快適さを追求する他市場にも販売をしていくという道程を描いている。


<ホスト企業・受賞者コメント>

三重化学工業株式会社 専務取締役 山川輝氏は、「『三重から、守るもんを創る』という当社の方針に沿うものであり、これまでにない価値を付加する提案に未来を感じた」と、提案内容を評価した。インターリンクスの成瀬氏は、「今回は弊社の販売網を活かしつつ、まずペット市場に踏み出すが、その先は技術的な課題をクリアしながら、商品・サービスを発展させていきたい」と、ビジョンを語った。


食品製造工場のムダ削減・チルド専用移動販売ショーケース――可能性あふれる提案

今回は惜しくも採択に至らなかったが、株式会社ZAICO、ティー・エス・ビー株式会社もBUSINESS BUILDに参加し、ビジネスプランを提案した。

■株式会社ZAICO(マスヤグループ本社への提案) 「食品製造のムダ0」

「世界中のモノの情報を、集め、整え、提供し、社会の効率を良くする」をビジョンとして掲げ、クラウド在庫管理『zaico』を提供するZAICO。製造現場は、突発的な工場稼働の変更による人員配置や、生産計画の変更により、工場内廃棄や残業増加などのムダを抱えている。それに対して、最新の消費者動向を捉え、食品製造のムダをゼロにするソリューションの提案を行った。


■ティー・エス・ビー株式会社(三重化学工業への提案) 「チルド専用移動販売ショーケース」

電子部品の商社であるティー・エス・ビーが着目したのは、保冷剤と親和性の高い「チルド市場」。そこで、移動販売用のチルド専用デジタルショーケースを提案した。チルド状態のものを効率よく運ぶことで、どこにでも、誰にでも安全に食を届けることができる。さらには、作り手と食卓を繋ぐプラットフォーム事業への構想も提示した。



三重から世界にインパクトを出せるサービスを生み出してほしい

採択企業の発表後は、メンターの3名がこの2日間および最終発表に対する講評を行った。eiicon company 中村亜由子は、密度の高いスケジュールの中で、ホスト企業の想いや、叶えたい世界観に近づける提案を練り上げた参加企業に対して、労いの言葉をかけた。そして、「採択に至ったチームにとっては、ここからがスタート。事業をつくることは、プロダクトをつくることとは異なる。イノベーションを起こし、市場を変えていく取り組みを、我々もサポートしていきたい」と話した。


Spiral Innovation Partners 岡洋氏は、「三重県を代表する、全国的にも有名な商材をお持ちの企業がホストとして参加してくださることに、まずワクワクした。この材料を、スタートアップのみなさんがどう料理するのか、BUSINESS BUILD参加前から楽しみにしていたし、お互いの良さを掛け合わせていいものが生まれると実感した2日間だった」と感想を述べた。

ただ、「これを世の中に出して両社にとっての収益を生み出すには、まだ乗り越えるべき課題がたくさんある。技術的なエビデンス、商品のグランドデザイン、ディストリビューション、プライシングなど、これから詰めていって欲しい。面白いプロダクトというだけではなく、ビジネスとしての面白さを追求していただきたい」と、エールを送った。


株式会社EBILAB 常盤木龍治氏は、「今回のBUSINESS BUILDで、三重県のイメージが変わった。これまでは保守的な印象を受けていたが、その場所で新たな事業を生み出し、道を切り拓こうというホスト企業の経営層や現場の意志に感動した。そして、まだ日本ではオープンイノベーションを実践している事例が少ない中で、試行錯誤しながら自分の心の壁を越えていくプロセスに向き合っていた参加企業の皆さんに拍手を送りたい」と称賛した。

さらに常盤木氏は続けて、「イノベーションの中で超えるべき一番の壁は人ではない。一人ひとりの中に眠っている自分自身の怠惰な気持ちや、成功体験を捨てきれない感覚。それがある限りイノベーションは成功しない。三重県は、日本の中心にある。そして日本の経済をリードするどころか、世界にインパクトを与えるサービスを生み出せる人たちがいることを今日確信した」と述べ、「みんなでオープンイノベーションやるぞ!」と鼓舞した。


最後に、本プログラムの主催である三重県庁 デジタル社会推進局 デジタル事業推進課長 和田桃子氏が閉会の挨拶を行った。和田氏は、「オープンイノベーション推進事業は、三重県として今年度から取り組んできた事業。地方自治体の事業の中で、オープンイノベーションは未だわずかしか事例がないが、今回みなさんのおかげで開催することができた」と感謝を述べた。

そして「本日から共創は新たなステージに入るが、きっと様々な障壁や苦労、危機があるはず。しかし、オープンイノベーションのトップランナーの方々の協力に加え、県庁もしっかりとバックアップ体制を整えている。この三重から新しいビジネスが生まれることを心から期待している」と、今後に向けた言葉で締めくくった。


取材後記

スマートファクトリー、カーボンニュートラル、屋内農業、フェムテック、消臭抗菌――多彩な方向性から新しい事業の種が集まる、まさに「常若」の精神が反映されるBUSINESS BUILDとなった。

採択された企業は、これからホスト企業との共創を本格的にスタートさせる。メンターのサポートを受けながら、社会実装を目指してインキュベーション・実証実験を進めていき、2023年の2月にはデモデイを予定している。最終発表での事業プランから、どのように発展していくのか、実証実験の結果はどう出るのか、そして事業化に結び付くのか、今から非常に楽しみだ。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)

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