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埼玉発・オープンイノベーション拠点「渋沢MIX」始動!──大野知事が登壇したオープニングセレモニーで語られた共創の現在地と未来図

埼玉発・オープンイノベーション拠点「渋沢MIX」始動!──大野知事が登壇したオープニングセレモニーで語られた共創の現在地と未来図

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2025年7月25日、埼玉県はさいたま新都心にオープンイノベーション拠点『渋沢MIX』を開設した。

渋沢栄一の理念を現代に継承し、官民・地域・産業を“ミックス”して生まれる新たな価値。そこに「事業化」「資金化」「拡張」を一気通貫で支援する設計を備えた、埼玉発のオープンイノベーション・ハブである。

渋沢MIXが掲げるのは、 ①オープンイノベーションの促進、 ②スタートアップの創出・成長支援、 ③イノベーション人材の育成という3つのコンセプト。その実現のために、専門のコミュニティマネージャーや支援人材が常駐し、イベント、セミナー、ワークショップ、1on1相談など多彩なプログラムが予定されている。

本記事では、オープニングセレモニーで実施されたトークセッションをレポート。埼玉県知事 大野元裕氏、ミライドア株式会社 投資本部副本部長インベストメントオフィサー 石坂颯都氏、株式会社eiicon 代表取締役社長 / founder 中村亜由子氏、渋沢MIXチーフコミュニティマネージャー 星野邦敏氏、MCとしてビジネスメディア「PIVOT」MC・プロデューサー 野嶋紗己子氏が登壇した。

『渋沢MIX』が担う、イノベーションの苗床

「私はこの場に、あえて“計画通り”の未来は期待していません。むしろ、ここに集まった人たちが、思いもよらない化学反応を起こしてくれることを期待しています」そう語るのは、『渋沢MIX』の構想を自らの公約に掲げ、実現に導いた大野元裕埼玉県知事だ。施設には、上記のように3つの柱が据えられている。

1.オープンイノベーションの促進

2.スタートアップの創出・成長支援

3.イノベーション人材の育成

だが知事は「この3つに縛られず、面白い人・技術・アイデアが勝手に混ざり、育ち、羽ばたく場になること」を目指していると話す。

「オープンイノベーションは、社外の人や技術と“意図的に”手を組んで、新たな事業を生み出す“手段”です。『誰かと出会えば何かが起こる』という幻想では、決してうまくいかないでしょう」。

そう語ったのは、オープンイノベーションの第一人者である株式会社eiiconの代表である中村亜由子氏だ。eiiconが運営するオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」は、全国で3万社超の企業をつなぎ、新規事業創出を支援してきた。

「成功している事例には共通点があります。それは、当事者が『何を外部と連携してまでやりたいのか』を自覚していることです」。逆に言えば、「自社の課題や挑戦テーマが言語化できていない企業」は、どれだけ素晴らしい技術や人材と出会っても、共創の扉を開けないという。

「多くの企業が“社外との出会い”を重視しますが、その前にやるべきは自社内の“棚卸し”なんです。何を持っていて、何が足りなくて、何を実現したいのか。その解像度を高めることが必要です」

実際に、eiiconでは、渋沢MIXオープンイノベーションプログラム「Canvas」の運営を受託。埼玉県内の県内企業11社と全国の大手企業4社がテーマブラッシュアップを進めているという。県内では、コエドビールで知られる川越の「協同商事」や、サバの陸上養殖に取り組む東松山の「さかなと」といったユニークな事業を手がける企業が参画している。

支援から資金まで──一気通貫の“事業実装型”イノベーションハブ

施設運営を担う渋沢MIXチーフコミュニティマネージャー 星野氏は、空間デザインの工夫をこう語る。

「作業スペースとイベントスペースがゆるやかにつながり、“ふらっと参加”できる動線を設計しました。入退室システムで誰がいるかも見えるようにして、人と人が“偶然っぽく出会える”環境をつくっています」

さらに、コミュニティマネージャーが常駐し、参加者同士のマッチングを“編集”するという役割も担う。この「人による仕掛け」が、他の施設と『渋沢MIX』を明確に分ける差別化ポイントだ。

また、『渋沢MIX』では、「事業化のための資金提供」にまで支援が及ぶ。投資を担うミライドアの石坂氏は、次のように語る。「アイデアを一緒に磨き、事業計画をつくり、ファンドから出資できる状態に持っていく。

この導線が、すべてこの場所で完結するのが強みです」すでに第1号投資先となった「レグミン」(※)は、埼玉県内の製造業と連携し、農薬散布ロボットの開発と実証を進行中。「県内で完結できるから、スピード感が出る。これが『渋沢MIX』の真価です」と石坂氏は語った。

※ニュースリリース:一般社団法人AgVenture Lab、埼玉県渋沢MIXイノベーション創出支援ファンド、他から資金調達を実施

グローバルも視野に──「埼玉発」で世界とつながる構想

中村氏は、「支援者がつながっている自治体は強い」と話す。「オープンイノベーションは、支援者が“本気で連携しているか”に尽きます。埼玉は、金融・行政・大学・民間が連携できている非常に稀有な地域です」。

この言葉を受けて、大野知事も「支援機関やプレイヤー同士の“連合体”を県内に張り巡らせたい」と構想を語る。『渋沢MIX』はその“ハブ”であり、同時に“接点の装置”でもある。点と点が、線になり、やがて面となる。それが埼玉県の目指す“ミックス型エコシステム”だ。

また中村氏は、『渋沢MIX』のポテンシャルを“国内連携”にとどまらず、“世界への接続点”として捉えている。

「先日も、トルコを拠点に欧州・シリコンバレーでCVCを展開する企業と話しました。そういった企業をこの場に招いて、埼玉発の事業と接続させたい」。加えて、「交通インフラ」「生産年齢人口の増加」「製造業の集積」といった埼玉の地理的・産業的優位性が、グローバル連携を可能にする基盤になると中村氏は語る。

「この地域には、実証場所が豊富で、技術力の高い中小企業も多い。まさに“隠れた有望地域”。世界を目指すスタートアップにとっては、最高の育成環境です」。

渋沢MIXの全貌

【設置場所】

埼玉県さいたま市大宮区吉敷町4丁目262番18(さいたま新都心駅コンコース直結)

商業施設併設型複合賃貸住宅「ekism(エキスム)さいたま新都心」5階

▲入口受付

▲イベントスペース

▲コワーキングスペース

▲コワーキングスペース

【施設の機能】

コワーキングスペース、イベントスペース、ラウンジ、個別ブース(打合せスペース)、受付、情報掲示スペース など

  • フリースペースとイベントスペースが緩やかにつながる設計:偶発的な出会いが自然と生まれる空間づくり

  • 月に20件以上のイベント開催が可能:ハード面が十分に整備されており、利用者の熱量を引き出す

  • 入退館データに基づいたマッチング支援:コミュニティマネージャーによる“マッチング”が期待される

取材後記

「埼玉を“日本一創業しやすい場所”に」。これは知事の言葉であり、同時に今回のセレモニーで語られた共通の願いだ。渋沢栄一が興した500を超える企業。その精神を、リアルな場で現代に再実装する試みが『渋沢MIX』だ。セレモニーに立ち会った関係者たちは、皆口々に“未来への交差点”としての期待を語った。この日を起点にどんな出会いが芽吹き、どんなイノベーションが生まれるのか。埼玉県の一角から新しい物語が動き出している。

(編集・文:入福愛子・眞田幸剛、撮影:佐々木智雅)

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