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【第4弾】「渋沢MIX」発!埼玉県が牽引するOIプログラム『Canvas』を深掘り――「ウェルビーイング」をテーマにしたホスト企業3社(SAL・BHQ・エアデジタル)が語る、プログラムを通して実現したい未来

【第4弾】「渋沢MIX」発!埼玉県が牽引するOIプログラム『Canvas』を深掘り――「ウェルビーイング」をテーマにしたホスト企業3社(SAL・BHQ・エアデジタル)が語る、プログラムを通して実現したい未来

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明治期の資本主義勃興を支えた実業家・渋沢栄一。その出身地である埼玉県では、彼の名を冠したイノベーション創出拠点「渋沢MIX」を2025年7月、さいたま新都心駅前に開設した。

「渋沢MIX」は、「オープンイノベーションの創出・促進」「スタートアップの創出・成長支援」「イノベーションを担う人材の育成」のコンセプトを掲げ、県内外の多様な企業や人々の出会い・交流を促してイノベーションの創出を目指している。同施設による「オープンイノベーションの創出・促進」事業としてスタートしたのが、【渋沢MIXオープンイノベーションプログラム『Canvas』】だ。

本プログラムは、埼玉県内の中堅・中小企業・スタートアップ企業がホストとなる「中小企業プロジェクト提案型」(11社)と、全国区の大企業がホストとなる「大企業テーマ提示型」(4社)とに分かれ、それぞれ、各ホスト企業が設定した事業テーマに基づき、パートナー企業のエントリーを募っている。(※応募締切:2025年10月10日)

TOMORUBAでは、パートナー企業募集開始に先立ち、ホスト企業各社に取材を実施。全5回のシリーズ企画を掲載する。――第4弾となる本記事では、「ウェルビーイング」を事業テーマに据えたホスト企業3社(SAL、BHQ、エアデジタル)にインタビューを実施。各社が本プログラムに参画した背景、課題意識や共創テーマ、求めるパートナー像について聞いた。

【SAL】 「子供たちにスポーツを通じた価値のある体験を提供する」

埼玉県さいたま市を拠点に、クロスフィットジムやスポーツ学童事業を展開している株式会社SAL。2024年度に「さいたま市SOIP(Sports Open Innovation Platform)」に採択され、プロサッカークラブ「RB大宮アルディージャ」と協業するなど、積極的にオープンイノベーションに取り組んでいる。今回のプログラムでは、遊休施設などを活用し、子どもたちにスポーツを通じた価値ある体験の実現に挑む。

▲株式会社SAL 代表取締役 清水郁也氏

――まずは御社の事業概要と特徴についてお聞かせください。

SAL・清水氏 : 当社はさいたま市内に2カ所、日常生活で繰り返し行う動作をベースとする画期的なトレーニング手法「クロスフィット」を取り入れたジムを運営しています。昨年度からスポーツに特化して民間学童にも携わっており、部活動への指導者派遣、スポーツチームの指導を行っているほか、地域のスポーツ指導者と連携し、イベントやコミュニティスペースなどの企画・運営も手がけています。

――どのようなきっかけで創業したのでしょうか。

SAL・清水氏 : もともと私は関西でトレーナーの仕事をしていたのですが、父の病気をきっかけに地元の埼玉県に戻ってきました。その時、地元でスポーツに関わる事業を続けようと2019年に創業したのです。海外でトレーニングについて学んだ経験があり、海外の最新のスポーツ理論などを持ち込みたいという思いもありました。

――『Canvas』に参画した背景について、お聞かせください。

SAL・清水氏 : 現在、地域で子どもたちが安全に外で遊べる場所が減っており、子どもの運動不足や放課後の居場所不足が生じています。その一方で、スタジアムや観光施設などは平日昼間の使用が多いとは言えません。こうした状況を受け、私たちは子どもと施設、さらには地域の方を結びつけることで、課題の解決につなげたいと考えています。

昨年度は「さいたま市SOIP(Sports Open Innovation Platform)」に採択され、プロサッカークラブ「RB大宮アルディージャ」との共創を進めました。その過程で、当社が行おうとしていることは、共創でこそ実現できると確信し、『Canvas』に参加することにしました。

――昨年度の「さいたま市SOIP」における共創とは、どのようなものだったのでしょうか。

SAL・清水氏 : NACK5スタジアム大宮の平日昼間の遊休時間を活用したスポーツアフタースクールの実証実験を3月に行いました。現在はRB大宮アルディージャさん、NTT東日本さん、当社で事業を継続し、10月のグランドオープンに向け計画を進めています。そうした経験を『Canvas』にも活かしたいと考えています。

――『Canvas』で取り組みたいテーマを教えてください。

SAL・清水氏 : 子どもたちにマルチスポーツの環境を提供することが大きなテーマです。遊休化したスタジアムやアリーナ、観光施設などを放課後や平日昼に開放し、BMX、バスケ、サッカー、スケボーなど子どもたちに多様なスポーツ体験を提供する仕組み作りに取り組みたいと思います。

また、長期の休みを利用し、親子でスポーツを楽しみながら、運動の重要性を理解してもらう取り組みの実現も目指しています。長期の休みにフォーカスすることで、より幅広くスポーツ体験を提供することが狙いです。これは、スタジアムを活用したスポーツアフタースクールの発展形と言うべきもので、地域を越えた子ども同士の交流を生む「マルチスポーツ留学」型のサマースクールをイメージしています。

さらに海外へと体験の場を広げることを視野に入れています。子どもたちが海外のスポーツ文化に触れると共に、現地の子どもたちと交流して多様な価値観を学ぶことを支援します。

――どのような事業を展開している企業をパートナーに迎えたいとお考えでしょうか。

SAL・清水氏 : スタジアムやアリーナ、観光施設など、遊休時間のある施設をお持ちの企業との共創を視野に入れています。また、海外でスポーツ教育や地域交流に力を入れている教育機関・アフタースクール・自治体・スポーツ団体をはじめ、旅行や教育旅行、留学事業を手がける企業とも出会いたいですね。特に現地コミュニティとつながりを持つ企業は歓迎です。これまでの教育旅行や留学とは一味違う、より実践的な学びの場を共に創り出したいと考えています。

――御社が提供できるリソースやアセットをご提示いただければと思います。

SAL・清水氏 : 当社が運営している学童は一定の所得のある家庭をターゲットにしています。スポーツの重要性を理解し感度の高い方たちに対して、コンテンツを訴求できるのもメリットです。このほか、私自身が昨年度に「さいたま市SOIP」でオープンイノベーションを経験したので、その経験が活かせます。

――最後に、応募企業へのメッセージをお願いします。

SAL・清水氏 : これまでの世の中にない、エンターテインメント性の高いものを共に創っていければと思っています。ワクワクする体験を提供することで、地域もスポーツ業界も盛り上がるはずです。共に新しい事業の創出を楽しみましょう。

【BHQ】 「BHQ技術を活用した、“脳の健康”を起点とするヘルスケアサービスの共同事業化」

内閣府ImPACT山川プログラムを通じて、日本発の国際標準に承認された脳の健康指標「BHQ」(Brain Healthcare Quotient)を事業化するために創業されたスタートアップ・BHQ株式会社。“脳の健康”を測ることが当たり前の社会を、共同事業で創出していくことを目指す。

▲【左】京都大学経営管理大学院 特命教授 山川義徳氏、【右】株式会社BHQ 取締役副社長 岡本摩耶氏

――社名であるBHQは脳の健康状態を測る指標ということなのですが、BHQという技術の説明に加え、創業の背景などについてお聞かせください。

京都大学・山川氏 : もともと、内閣府が実施している革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)において、私がプログラムマネージャーとなって進めた「山川プログラム」というものがありました。これは一言でいえば脳の状態を誰でも見えるように可視化し、制御できるようにしようという研究です。

例えば、体重や血圧の数値で自分の体の状態が客観的に示されるように、脳の健康状態を客観的に表す指標として開発されたのがBHQ(Brain Healthcare Quotient)です。BHQは脳健康指標の国際標準として承認されており、年齢やライフスタイル、ストレスなどによって変化することが研究によって明らかにされています。そして、このBHQ指標や脳の健康に関する解析技術などを事業化するために創設されたスタートアップが、BHQです。

――これまでに、御社はどのような事業を手掛けられてきたのでしょうか。

BHQ・岡本氏 : まず、MRIを使って脳の健康状態を計測する仕組みであるBHQドックシステムを、病院などに提供してきました。また、自治体への認知症予防支援、さらには、フィットネスクラブや電機メーカー、日用品メーカーなどの民間企業との連携による、脳の健康を実現する製品やサービスの研究開発と社会実装を推進しています。これらの研究開発などのために、BHQの活用方法を学び情報交換できるコンソーシアムも運営しています。

京都大学・山川氏 : 従来のBHQドックシステムはMRIを用いるため、費用面、時間面で利用のハードルが高いことが難点でした。そこで、パナソニックと共同で、簡単にBHQを計測できるアプリ「クイックBHQドック」を開発しました。利用者がスマホカメラで「喜・怒・哀・驚」の4種の表情データを撮影して送信するだけで、2分くらいでBHQがわかるという仕組みです。この8月から個人向けサービス提供を開始しています。

BHQ・岡本氏 : このサービスをもう一段高めるために、いろいろな企業の方たちとオープンなコラボレーションを進めたいと思い、『Canvas』に参加することにしました。

京都大学・山川氏 : 少し補足させていただきます。脳の健康は、一度悪くなると戻らないと思っている人が大半ではないでしょうか。しかし実際には、生活習慣によって体重が増えたり減ったりするように、脳の健康状態は環境や行動によって良くすることもできるのです。そこで、単にBHQを計測するだけではなく、それを活用して脳の健康状態を良くしていくためのビジネスが広く求められています。

▲カメラ付き端末(PC、スマートフォン等)からブラウザ経由で簡単に利用できる、脳の健康年齢推定Webアプリ 「クイックBHQドック」。表情データ(喜・怒・哀・驚の4種)を約2分で計測し、脳の健康年齢を推定。レポートとして表示される。(画像出典:プレスリリース

――今回の事業を通じてどういったことを実現したいというイメージをお持ちでしょうか。

BHQ・岡本氏 : 脳の健康というと中高年の課題と思われるかもしれませんが、本来は全世代に関わる普遍的なテーマだと思います。しかし、これまでは十分にケアされてきませんでしたし、またケアする方法もよくわからなかったという問題意識があります。

そこで、多くの人に脳の健康に関心を持ってもらうきっかけや、実際に計測する体験など、BHQ指標の価値を拡張できるようなサービスを今後展開したいと思っています。そこで、エンタメ領域や推し活支援、環境制御、ロボティクスなどの技術を持つ企業との共創を進めたいと考えています。

具体的には、「脳が整うオフィスソリューションの共創」、「住・働空間から生まれるヘルスケア価値の創出」、「ミドルシニアの自発的行動を支えるヘルスケア共創」という3つの共創イメージを想定しています。

――次に、御社からパートナー企業に提供できるアセットなどには、どのようなものがあるでしょうか。

BHQ・岡本氏 : まず、2分で脳年齢を推定できるスマホアプリ「クイックBHQドック」や国際標準の脳健康指標「BHQ」といったアセットが提供できます。また、すでに様々な大学や医療機関、自治体などと共同研究や事業連携をしており、信頼性の高い実証フィールドがある点も、パートナー企業様のメリットとなるかと思います。

さらに、私たちは専門家で構成されているため、多くのナレッジが蓄積されているという点もあります。それは脳科学だけではありません。例えば私はELSI(Ethical, Legal and Social Issues/倫理的・法的・社会的課題)が専門です。脳のデータをプロダクトやサービスとして活用する際には、非常にセンシティブな扱いをしなければならない面もありますので、専門家がいてそういった面に配慮できる点も強みでしょう。

それから、BHQコンソーシアムには、国内の大手企業が多数参加していますので、そういった企業とのネットワーキングも可能です。

――では最後に、応募企業へのメッセージをお願いします。

BHQ・岡本氏 : 私たちは、毎日体重計に乗るような感覚で、誰でも自分の脳の状態を測り、改善していくことが当たり前になるような社会ができればいいと思っています。そういった社会の実現のために、ぜひ力を貸してください。

【エアデジタル】 「デジタルスポーツを活用した運動習慣化・健康促進サービスの開発」

デジタルとリアルを融合した新しい運動体験を提供するエアデジタル株式会社。今回は、デジタルスポーツを「遊び」から「社会的価値」へと転換し、運動習慣の定着を目指す新たなサービスモデルの共創パートナーを求めている。

▲エアデジタル株式会社 代表取締役 前田相伯氏

――まずは、御社の事業について教えてください。

エアデジタル・前田氏 : エアデジタルは、多様な競技に対応したデジタルスポーツ空間の開発・販売・貸出を行う会社です。デジタルスポーツ空間とそれに連携したトレーニングマシンを多数設置した店舗型運動施設の運営も行っています。全国にいくつかの導入先があり、メンテナンスも一括で対応。導入施設では当社のコンテンツを楽しんでいただくことが多いため、満足度向上に向けたコンテンツづくりや改良にも日々取り組んでいます。

▲埼玉県久喜市のショッピングモール「アリオ鷲宮」で展開しているデジタルスポーツ施設「スポーツ60&スマート」。

――本プログラム『Canvas』に参加を決めた背景や理由は?

エアデジタル・前田氏 : 私たちが取り組んでいるのは一般的なeスポーツとは異なり、野球をしたりサッカーボールを蹴ったりと実際に体を動かすものです。この分野は運動に限らず、さまざまな技術との組み合わせによって、ヘルスケア領域への転用など多くの可能性があると感じています。私たちは埼玉県の小さな会社ですが、他社の技術や新たな発想と掛け合わせることで、新しいビジネスを生み出せるのではないかと思い、このプログラムに応募しました。

――次に、今回のプログラムで実現したいことをお伺いします。「デジタルスポーツを活用した運動習慣化・健康促進サービスの開発」というテーマを掲げられました。

エアデジタル・前田氏 : 当社は「デジタルスポーツ空間」を保有しており、それが体験できる約200坪の店舗を、埼玉県久喜市のショッピングモール「アリオ鷲宮」内で運営しています。

その店舗には、子どもから高齢者まで幅広い世代の方々が、遊びや健康維持のために来店されます。現在もこの場所を使ってさまざまな実験をしていますが、さらにパートナーの皆さんとも一緒になって、新たな取り組みを実現したいと思っています。

――3つの共創イメージを挙げていただきました。それぞれご紹介いただけますか。

エアデジタル・前田氏 : 1つ目の「地域拠点で広げる運動支援サービス開発」ですが、私たちのデジタルスポーツ空間はゲーム性を活かして作られており、実際に楽しめる設計になっています。ただ、「楽しい」だけでは終わらせず、それを「健康づくり」や「収益化」に結びつけられるような、新しい発想やご提案を歓迎しています。

2つ目の「多世代が集う運動支援サービス開発」についてですが、行政が所有する施設やショッピングモール内などに、まだ活用されていない空きスペースが数多くあります。そうした場所で、当社のコンテンツと他のサービスを組み合わせて、より深く利用者さまに望まれるサービスを提供したいと思っています。

現状、当社のサービスは、デイサービスに通うご高齢者や放課後等デイサービス・学童に通う子どもたちに団体利用していただくことが増えています。需要があることは把握できているので、もっと多くの人たちに来てもらうために、サービスを進化させていきたいというのが、この2つのテーマにかける想いです。

――3つ目はいかがですか。

エアデジタル・前田氏 : 3つ目「地域に合った移動の再設計と運動機会提供の共創」ですが、現在の当社の店舗は交通の便があまり良くない場所にもありますし、高齢者だと運転免許を返納されていることも多いです。そうした方たちの移動課題の解決も、共創で図っていきたいと考えています。

――共創において、御社が提供できるリソース・アセットなどがあれば教えてください。

エアデジタル・前田氏 : アリオ鷲宮店内に自社店舗を持っているほか提携企業もあるので、それらのスペースを実証実験の場として活用できます。また、行政とデジタルスポーツマシンの活用に関連した連携協定を結んでおり、そのネットワークを活用することもできます。さらに、自社店舗では高齢者の利用が増加していますし、子ども向けやファミリー向けのイベント開催も、商業施設や行政を巻き込んで開催可能です。

――最後に、応募を検討しているパートナー企業に向けてメッセージをお願いします。

エアデジタル・前田氏 : 私たちが手がけるデジタルスポーツ空間は、昨今のeスポーツの盛り上がりに比べてまだ認知が低く、取り扱う企業も少ないのが現状で、競合が非常に少ないと言えます。楽しみながら運動できる空間の提供は今後、ヘルスケア機能などとの融合で、ブルーオーシャンとも言える他を寄せつけない新たな市場を切り開けると感じています。デジタルスポーツ空間の深くて広い可能性を感じ取っていただき、一緒に共創を進めていければと思います。

※ ※ ※ ※

今回の第4弾記事では、「ウェルビーイング」を事業テーマに据えたホスト企業3社(SAL、BHQ、エアデジタル)にインタビューした模様をお届けした。――次回掲載するシリーズ最後の第5弾記事では、全国区の大企業がホストとなる「大企業テーマ提示型」において参画した4社(ロッテ、マツダ、リンテック、丸文)に話を聞く。

※【渋沢MIXオープンイノベーションプログラム『Canvas』】についての詳細や応募はこちらをご覧ください。

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  • teijiro handa

    teijiro handa

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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シリーズ

渋沢MIXオープンイノベーションプログラム「Canvas」

渋沢MIXオープンイノベーションプログラム「Canvas」は、埼玉県内企業の成長を支援するため、 県内企業と全国の企業をマッチングし、新規事業創出や企業の課題解決に向けた伴走支援を行うプログラムです。 プログラムを通じて、持続的にイノベーションが創出される共創のエコシステム構築を目指します。