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5回目を迎える『日本サービス大賞』の募集開始!――革新的で優れたサービスを表彰する同賞が受賞組織にもたらした変化とは?

5回目を迎える『日本サービス大賞』の募集開始!――革新的で優れたサービスを表彰する同賞が受賞組織にもたらした変化とは?

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日本のGDPと雇用の7割超を占める「サービス産業」。従来はサービス業とは異なるものと見なされてきた製造業や農業などの他産業も、最近ではサービスの要素を取り入れ、サービス産業化している。ただ一方的に製品を提供するだけでなく、顧客と影響し合いながら、価値共創を通じて顧客にとっての価値を向上させていくプロセスが重視されてきているのだ。

そんな広義での「サービス産業」のなかから、革新的で優れたサービスを表彰する『日本サービス大賞』が、エントリーの受付を開始した(応募締切:7月23日(火) 15時まで)。2015年に創設された『日本サービス大賞』は、今回で5回目の開催となる。主催者は、公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会(SPRING)。内閣総理大臣賞や地方創生大臣賞など、大臣名を冠した賞が設けられており、各府省も後援している。

本記事では、第5回『日本サービス大賞』のエントリー受付開始に際し、この表彰制度に応募する意義や価値を、受賞組織の声なども交えながら紹介する。『日本サービス大賞』が、応募組織や受賞組織にもたらした変化とは。受賞前後で、組織や事業に変化はあったのか。そして、価値共創によるサービスイノベーションを実現していくためのヒントとは――。

受賞組織の生の声から紐解く、『日本サービス大賞』がもたらした3つの変化

過去4回開催されてきた『日本サービス大賞』では、地域・規模・業種に関わらず、様々な優れたサービスが本賞を獲得してきた。その総数は109件にも及ぶ。受賞組織は、本賞を受賞することで、どのような恩恵を享受できたのだろうか。

第4回の『日本サービス大賞』で、内閣総理大臣賞を受賞した株式会社エアークローゼット 代表の天沼聰氏は、5月21日に開催された第5回日本サービス大賞 応募説明会の中で、本賞のインパクトについて次のように語る。「創業10年未満のスタートアップ企業として初めてこの賞を受賞しました。この賞を受賞した当日の登壇直後から、たくさんのメッセージをいただきました。メディアでご紹介いただいた後も、知人や報道関係者からたくさん連絡をもらいました」

第4回『日本サービス大賞』表彰式において「内閣総理大臣賞」を受賞したエアークローゼット・天沼氏。

さらに、「印象的だったのが、表彰式の降壇直後に業界メディアの担当者の方が走ってきてくださり、『ファッション・アパレル業界がこの賞を獲れたなんて…』と涙目で言ってくださったこと。業界に対してもメッセージングができたと感じた瞬間でした」と述べ、受賞発表の直後から知人や報道関係者から数多くの反響があったことを明かした。

天沼氏は講演中、『日本サービス大賞』を受賞することで得た恩恵を、大きく3つに分けて説明する。1点目が「信用・信頼の向上」だ。由緒ある賞の受賞により、外部・投資家からの信用・信頼が向上したと話す。2点目が「事業の整理・言語化」である。選考過程において改めて、自社事業の魅力や細部に凝らした工夫を言語化できたそうだ。3点目が「社内メンバーのエンゲージメント向上」。賞の受賞によって、社内メンバーの士気が高まったのだという。こうした恩恵を得られたことを振り返りながら、改めて「応募してよかった」と感じていると話した。

同様のメリットを実感したと話す受賞組織は他にも多い。『日本サービス大賞』の特設ページ内にある受賞組織からの応援メッセージを見ると、「社内外からの信用と自信になった(第2回優秀賞 株式会社AsMama)」「受賞はメディアにも取り上げられたが、お客様の反響がとても嬉しかった(第2回優秀賞 株式会社東急コミュニティー)」といった声が寄せられている。内閣総理大臣が自ら、表彰式に臨席する日本最高峰の賞であるがゆえに、受賞することで信頼性が高まった様子がうかがえる。

社内メンバーのエンゲージメント向上につながったというコメントも多い。一例を挙げると「何よりもインナーブランディングとして、ロイヤリティ形成にもつながった(第4回経済産業大臣賞 アイリスオーヤマ株式会社)」「今回の受賞はビジョン実現に向け社内の士気がより高まるきっかけとなった(第4回経済産業大臣賞 株式会社マクアケ)」などだ。

また、「社内チャットで式の写真やライブ映像を共有し盛り上がり、社員が皆で喜びを分かち合えた貴重な機会となった。Bitfanはまだ発展途上のサービスだが、選考の過程そして受賞が、より一層気を引き締め、士気を高める良いきっかけとなった(第3回総務大臣賞 株式会社SKIYAKI)」という声もあるように、受賞することが社員のモチベーション向上やチームの一体感醸成につながっている様子も読み取れる。

応募すること自体が、自社サービスの言語化や整理につながったという声もある。例えば「応募によって自社サービスの軌跡や取り組んできた内容を改めて整理・確認することができた(第2回地方創生大臣賞 総合メディカル株式会社)」「応募によって、自社の取り組みについて強みや課題を整理し、棚卸することができた(第3回経済産業大臣賞 徳武産業株式会社)」などだ。書類審査から始まり、現地審査、最終審査の3段階で丁寧に審査が行われる賞だからこそ、その過程において何度も自社の強み・弱みを考えることが求められ、結果として事業の自己評価ができるのだろう。

本賞の目的は「評価・表彰」だけにあらず、広く「周知・展開」することが活動の主旨

この表彰制度は、革新的で優れたサービスを称えるだけでなく、その優れたサービスの事例を広く普及させていくことに主眼を置いている。受賞組織は具体的に、どのような広報支援を得られるのだろうか。

第一に、全受賞組織が招待される表彰式は、大きな注目を集めるイベントだ。内閣総理大臣や関係各府省の大臣らも出席し、その様子はリアルタイムで動画配信される。そのため、首都圏だけでなく全国へと瞬時に受賞したことが広がる。さらに、各府省のWebサイトやSNS、様々なメディアを通じて、全国に情報が拡散される。自社サービスの知名度向上に大きく寄与することは、疑いようもないだろう。なお、第4回の表彰式には、計270名もの関係者が集まり盛大に開催されたという。

第二に、主催者である日本生産性本部が、毎回『日本サービス大賞受賞事例集』を発行している。これに掲載されることも、自社サービスの知名度向上に大いに貢献するだろう。事例集のほかにも『日本の優れたサービス 選ばれ続ける6つのポイント(生産性出版)』や『価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)』などの関連書籍も発行されており、多くの人たちに読まれている。2024年3月には、新たにサービスイノベーションの実践を目指したWebサイト『サービスイノベーション・サファリ』も開設された。このサイトでは、すべての受賞事例をはじめ171件のベストプラクティスを閲覧することができる。

第三に、本賞を受賞した革新的な優れたサービスを、1事例ずつ取り上げるオンラインセミナー『受賞事例に学ぶ!』シリーズも開催されている。ここでは、本賞の選考専門委員との対談を通じて、自社のサービスを紹介することもできる。

『日本サービス大賞』は、自社サービスを広く知らしめるための有効な機会であることが確認できたが、この表彰制度の概要や目的、賞の種類にも簡単に触れておきたい。

◆目的:「革新的な優れたサービス」を評価・表彰し広く周知・展開することで、サービス産業のイノベーションと生産性向上を促し、地域経済や社会の活性化への貢献、市場の成長や雇用の創出などに繋げること

◆賞の種類:内閣総理大臣賞、経済産業大臣賞、総務大臣賞、 厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、国土交通大臣賞、地方創生大臣賞、JETRO理事長賞、優秀賞、審査員特別賞

◆応募対象者:日本国内に拠点を置く事業者であれば、業種や事業の営利・非営利を問わない。製造業、農林水産業によるサービス事業も応募可能。

◆応募期間:2024年6月3日~7月23日15時  応募締切後、書類審査・現地審査・最終審査を経て決定。

※そのほか、応募詳細についてはこちら

「審査基準」から紐とく、サービスイノベーション実現のためのヒント―価値共創のサービスモデルとは?

『日本サービス大賞』は、どのような「審査基準」で選考されているのだろうか。『日本サービス大賞』のWebサイトには、サービスの送り手と受け手の「価値共創」を軸に、以下に示したような観点から、定性的・定量的に段階的な審査を行うと明記されている。

―― 審査基準 ――

サービスの高度化と産業の発展を先導する「革新的な優れたサービス」であること

【4つの観点】

(1)顧客から見たサービスの良さ(明快性、革新性、優越性)

(2)「サービスをつくりとどけるしくみ」(※)の良さ(明快性、革新性、優越性)

(3)成果(顧客価値、事業の継続性・発展性)

(4)サービスイノベーションを通じた社会の発展への寄与(モデルとしての期待)

※ここでは、サービスを提供するための構造やプロセス(改善・革新のプロセスを含む)の総体を、「サービスをつくりとどけるしくみ」と呼ぶ。

サービスの送り手と受け手の「価値共創」とは、どのような概念なのだろうか。先ほど紹介した『サービスイノベーション・サファリ』内に掲載されている、「価値共創のサービスモデル」がヒントとなる。説明によると、価値共創のサービスモデルとは、サービスを最適なかたちに実装していくための思考のフレームワークであり、サービスを提供していく一連の流れを可視化・構造化し、その仕組みを明らかにするものである。

右側が、サービスの受け手である利用者サイド(①顧客接点)。左側が、サービスの送り手である提供者サイド(②事業組織)の側面だ。その間の下部に両者が出会う、市場サイド(③企業経営)が位置付けられている。3つの側面(顧客接点、事業組織、企業経営)での検討を循環させることを通じて、持続性のあるサービスイノベーションを実現させていくフレームワークだという。

さらに、このフレームワークをベースに、サービスイノベーションの実行に必要不可欠な突破口が、「7つの経営革新」として説明されている。その7つというのが次の通りだ。

(T1)革新的で優れた価値提案を行う

(T2)利用価値共創の仕組みの創り込み

(T3)満足度を評価し、新たな事前期待の形成につなげる

(T4)革新につながる価値発信を把握する

(T5)提供価値共創の仕組みの創り込み

(T6)学習度評価して知識・スキルを蓄積・共有

(T7)付加価値の適正配分で付加価値を共創し拡大する

このフレームワークの特徴は3つある。「サービスをプロセスとして捉えている」こと、「顧客を単なる消費者ではなく、価値を一緒に創り出す共同生産者と捉えている」こと、「サービスの流れ全体から見た改善点を探る」ことである。まずは、自社のサービスと、このフレームワークとを照らし合わせて考えてみるとよい。

「受賞事例」から紐解く、サービスイノベーション実現のためのヒント―どのようなポイントが評価されたのか?

前段では本賞の「審査基準」を確認したが、さらに踏み込んで、過去の受賞事例から評価のポイントを見てみよう。ここでは、第4回の「内閣総理大臣賞」と「地方創生大臣賞」の2つの事例をもとに紹介する。

<株式会社エアークローゼット>※第4回「内閣総理大臣賞」受賞

https://service-award.jp/result_detail04/prime.html

株式会社エアークローゼットは、スタイリストが提案する月額制ファッションレンタルサービス『エアークローゼット』を展開中だ。メインターゲットは、30代~40代の働く女性。サイズや好みを登録(約50項目)すると、それをもとに300ブランド35万着以上の中から、プロのスタイリストが選んだ洋服(コーディネート)が届けられるという。返却の期限はなく、クリーニングも不要。服の返却時には、アンケート評価に加えて、次回の要望も書き込める。顧客からの感想や要望をAIを活用したデータベースに組み込み、次回以降のコーディネートに反映している点も特徴だ。

では、どのような点が、革新的で優れたサービスだと評価されたのだろうか。サービスイノベーションの観点から見た評価として、次のコメントが記載されている。

「スタイリストが提案する洋服のサブスクという革新的で優れた価値提案を行い、適切に価値共創の仕組みの創り込みを行っている。また、顧客接点からの価値発信を、的確に事業組織に伝達し、人とITのベストマッチでサービスを持続的に革新する仕組みを創り込み、知識・スキルを体系的に蓄積・共有している。さらに、経営がイノベーションへの投資にコミットして、顧客接点、事業組織、企業経営をつなぐ持続的なサービスイノベーションを実現している。事業を通じて、アパレル廃棄問題解決に寄与しようとしている」

つまり、サービスそのものの革新性が高く評価されたこと、ユーザーの声や反応を拾いあげて事業改善に活かす仕組みが整備されていること、さらに、アパレル廃棄問題という社会問題の解決も目指すという社会発展への寄与度も高く評価されたと考えられる。

<琴平バス株式会社>※第4回「地方創生大臣賞」受賞

https://service-award.jp/result_case04/creation01.html

琴平バス株式会社は、香川県を拠点に事業展開するバス会社だ。同社はコロナ禍中に、いち早くオンラインバスツアーを企画して事業化。15人限定90分間のツアーで、特産品代金を含めて約5,000円で販売した。利用者アンケートでは、最大の満足要因が「現地ガイドとの交流」と回答されるほど、参加者とのインタラクティブなコミュニケーションを旅先の現地案内役が実践している。このサービスは非対面型ながらライブ感・シズル感を演出し、観光地全体で取り組むことで、新型コロナ危機初期の2020年5月という先行き不透明な時期に先駆的なオンライン観光の事業化に成功している。ツアー開催後には交流会として30分の時間を設け、参加者一人ひとりから直接感想をもらってサービス改善に繋げている点も特徴的だ。

サービスイノベーションの観点から見た評価としては、次のコメントが記されている。

「新型コロナ危機の不安感・不透明感が増す中、前例のないオンラインバスツアーに地方密着型のバス会社が取り組み、在宅時間が長い消費者に新たな観光体験を提供した。革新的で優れた価値提案を行い、適切に価値共創の仕組みを創り込んでサービスイノベーションを実現している」

これは、移動が制限された新型コロナ危機という苦境を逆手にとり、顧客に新しい価値提案を行い成功した点が高く評価されたと言えよう。特に(T2)利用価値共創の仕組みの創り込みの観点で高評価を得ており、ツアー開催後も交流会を企画し、参加者から直接感想を回収してサービス改善に役立てた点が優れた点と見なされたのではないだろうか。

最後に、受賞組織からの「応援メッセージ」をいくつか紹介したい。

<株式会社ヤクルト本社>※第2回「経済産業大臣賞」 

応募を通じて、ヤクルトレディによるサービスをはじめ、当社事業を多面的に見つめ直す大変良い機会になりました。さらに受賞により、ヤクルトレディ自身の働き甲斐や意識の向上にもつながったと思います。皆さまのサービス向上に向けた良い機会になればと祈念しています。

<株式会社ハクブン>※第3回「地方創生大臣賞」 

日本サービス大賞への参加は、応募内容を書き上げるだけでも価値があります。自社の事業内容を体系立てて整理できましたし、これからの課題や方向性を知ることもできました。特に私のような中小企業の後継者という立場にある方は、自社の過去の取り組みを通して未来の施策に繋げる必要がございますので、是非ご参加下さい。

<スカイマーク株式会社>※第4回「国土交通大臣賞」 

「新たな発想を具現化してより良いサービスを提供する」ことに日々試行錯誤を重ねながらもひたむきに取り組んでいる会社は数多いはず。弊社も日本サービス大賞を受賞したことで、その「努力と挑戦と成果」が社外から認められ、それが「自信と誇り」になりました。次は御社です。

取材後記

世の中には様々な表彰制度がある。それらに応募をする際、「時間や手間をかけて応募する意味があるのか」と疑問に感じることもあるかもしれない。しかし、今回取り上げた『日本サービス大賞』は、受賞組織のコメントにもある通り、「信用・信頼の向上」「事業の整理・言語化」「社内メンバーのエンゲージメント向上」の3つの観点から、応募する価値が大いにあると感じた。本賞の受賞は、所属する業界や地域内に留まることなく、広く社会に自社サービスの特徴を知ってもらう機会ともなる。日本国内に拠点を置く事業者であれば、あらゆる企業・組織が応募可能だ。応募書類をまとめるにあたっては、『サービスイノベーション・サファリ』のWEBサイトも参考になる。この機会に『日本サービス大賞』へのエントリーを検討してみてはいかがだろうか(応募はこちらから)。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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日本中の革新的な優れたサービスを表彰する

2021年で4度目の開催となる、「日本サービス大賞」。内閣総理大臣賞をはじめ、過去に79ものサービスが表彰され、人を笑顔に、地域を元気に、そして社会を豊かにしてきた。同アワードが評価する、ポストコロナの社会を切り拓く 革新的な優れたサービスに迫る。