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セイノーが持つ有形資産を活用し、品質管理・経理・ファイナンス・廃棄物など企業の課題解決に資する共創パートナー4社を採択!『SEINO O.P.P. BUSINESS BUILD』で披露された共創事業とは?

セイノーが持つ有形資産を活用し、品質管理・経理・ファイナンス・廃棄物など企業の課題解決に資する共創パートナー4社を採択!『SEINO O.P.P. BUSINESS BUILD』で披露された共創事業とは?

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1930年の創業から90年以上にわたり、企業間をはじめとした物流を支えてきたセイノーホールディングス株式会社。ホールディングス傘下には、カンガルーのトレードマークで知られる西濃運輸も持つ。そんな同グループが今年度、新たにスタートさせたのが『SEINO O.P.P. INNOVATION PROGRAM』である。セイノーの有形資産(土地・建物・車など)を活用して、お客様へ+α の価値創出を目指す共創プログラムだ。

本プログラムは、今年2月から共創パートナーの募集を開始。数ある応募企業のなかから、選考を経て合計10社が選ばれた。そして、4月25日と26日の両日、応募企業である9社(1社未参加)とセイノーの担当者らが東京・浜松町の会場に集まり、『SEINO O.P.P. BUSINESS BUILD』を開催。共創によるビジネスプラン構築に取り組んだ。

2日間実施されたBUSINESS BUILDで、各共創チームは社外メンターやセイノー決裁者のアドバイスも得ながら、プランの中身をブラッシュアップ。最終的に磨き込んだ共創事業案を、来場者らに向けてプレゼンした。

本記事では、BUSINESS BUILD で披露された9件の共創事業についてダイジェストで紹介する。全国各地にある物流拠点や建物、形状様々な車両、物流ネットワークや約20万社にも及ぶ顧客――こうしたセイノーのアセットやリソースと、応募企業の強みが掛けあわさることで、どのようなビジネスの可能性が描かれたのか。

壁打ちを繰り返す2日間の凝縮プログラムで、共創事業の骨組みを創り、ロードマップまでを描く

初日である<DAY1>は、ターゲット顧客と課題の明確化やソリューションの方向性の検討を実施。参加者らが白熱した議論を交わした。

一夜明けた<DAY2>は、ビジネスモデルの骨子やPoCの計画を策定。さらに、中長期でのマイルストーンを描く。参加者らはメンターからのアドバイスをヒントに、当初のアイデアを磨き込んだ。

2日間の成果を発表する最終プレゼンでは、応募企業とセイノーの担当者が完成した共創事業案を披露。そして、プレゼン終了後、次の5名による審査のもと4つの共創チームがPoC費用を獲得。残る5チームも協業に向けた取り組みが開始されることが発表された。

<メンター/審査員>(写真右→左)

■セイノーホールディングス株式会社 執行役員 オープンイノベーション推進室 室長 河合秀治氏

■セイノーホールディングス株式会社 執行役員 経営企画室担当 神谷敏郎 氏

■セイノーホールディングス株式会社 ブランド戦略室室長 兼 ラストワンマイル推進室担当部長 田口義展 氏

■Spiral Inovation Partners株式会社 General Partner 岡洋 氏

■株式会社eiicon 代表取締役社長 中村亜由子 氏

「品質管理」「経理」「ファイナンス」「廃棄物」など、中小企業の課題解決に資するアイデアが高評価を獲得!

ここからは、PoC費用を獲得した採択4チームの発表から順に、計9チームのプレゼン内容を紹介する。

●株式会社グリーンテック 「スマートQCプロジェクト」

グリーンテックは、製品の品質サポート事業を展開している。本プログラムでは、物流におけるスマートI(検査)S(保管)D(配送)の実現を共創ビジョンに掲げ、売上10億円以上の中堅・中小製造業を対象顧客に、検査から配送までを一括して引き受けるサービスを考えた。自動車業界ではとくに、数多くの企業が広範囲かつ複雑に入り乱れ、国内外でサプライチェーンがつながっている。その結果、管理が難しくなり高コストになることも多い。こうした課題に対処するため、セイノーの倉庫で検査から配送までを一括して行う事業を実現したいと話す。

この事業を実現するにあたり、セイノーの保有する倉庫や物流網と、グリーンテックの持つ検査ノウハウや人材を活用。製造工場からの委託料でマネタイズする。顧客に対する提供価値は、コスト削減と効率化だ。

PoCではセイノーの荷主である製造工場のなかから複数社をピックアップ。1社に対して2アイテムを受注し、検査・保管・配送サービスを提供するという。将来的には、セイノーとグリーンテックの合弁会社(JV)を設立し、事業を拡大させていきたい考え。本共創事業を通じて、「物流のサプライチェーンを革新していきたい」と語った。

セイノー・田口氏は「弊社の物流機能の可能性を広げていただいた提案だった」と評価した。グリーンテックの登壇者は「末永いおつきあいができればと思う」と喜びを伝えた。

●Miletos株式会社 「バックオフィス系 AI-BPOサービス」

Miletosは、『SAPPHIRE』などのAI経費精算ソリューションを開発している企業で、経理財務領域に特化している。同社が着目する課題は、電子帳簿保存法による経理業務の負担増だ。セイノーの顧客においても、領収書などの整理・回収に多大な工数がかかっていると想定する。そこで本プログラムでは、セイノーのサービスやアセットとMiletosのサービスを組み合わせ、セイノーの顧客に対して経理支援サービスを提案したいと話す。

具体的には、顧客から請求書や領収書などの書類を、セイノーの既存物流を用いて回収する。それらを、Miletosの持つOCR技術(※)ですべてデータ化し、既存の会計ソフトで仕分け可能な形にして納品するという。書類の保管を希望する顧客に対しては、セイノーの余剰倉庫を用いた保管サービスも提供する。将来的には、決裁処理や調達支援を行うサービスの展開も考えている。書類紛失が懸念点だが、通い箱を使用することでリスクを軽減するという。PoCでは、ニーズ調査やペインの確認、請求書等の様式の把握などを進め、2025年中のローンチを目指したいとした。 ※OCR技術とは、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する技術のこと。

セイノー・田口氏は「今、我々が抱えているお客様の困りごとをダイレクトに解決できるサービスだ」と評価し、一緒に事業を発展させていきたいと伝えた。Miletosの登壇者は「実現に向け踏み出せて、大変嬉しく思っている」と笑顔で語った。

●株式会社Stayway 「デジタル経営支援サービス」

Staywayは、『補助金クラウド』などのプロダクトを通じて中小企業の経営支援を行っている企業だ。公認会計士が多く在籍していることから、ファイナンス面での支援を得意とする。本プログラムでは、中小企業のヒト・モノ・カネの動きを活発化させることで経営支援につなげていきたいと話す。初期ターゲットは、設備投資等に資金が必要だが財務基盤が脆弱な中小企業に設定。そうした企業に対して、補助金や融資・M&A、売掛債権担保ローンなどから最適な資金調達手段を提案する、ファイナンスマッチングプラットフォームを構築する。“速く、手軽に、最適な”ファイナンス手段を見つけられることを、サービスの強みとする。

まずは、直近の決算書等をアップロードするだけで、同社の課題・対応策・ファイナンス手段を導出する経営課題診断サービスの開発・提供を目指す。セイノーの顧客である中小企業に対して提案を行い、プラットフォームへの流入を増やす。マネタイズポイントは様々だが、プラットフォーム上で行われる金融取引での成果報酬、ビジネスマッチングの手数料などを想定。PoCではニーズや実現可能性の確認を行うという。将来的には、総合ファイナンスサービスへと事業を発展させていきたいとした。

セイノー・田口氏は「弊社が掲げている“お客様に寄り添う”という考えにマッチしていた。お客様の経営課題にしっかり寄り添って、ソリューションを一緒に考えていきたい」と述べた。Staywayの登壇者は「今回考えたプロジェクトを実効的なものとして、より早く世間に届けることが重要だと思っている」とし、スピード感を持って推進していく旨を伝えた。

●株式会社Spacewasp 「サステナブルO.P.P.」

Spacewaspは、植物廃棄物を加工して樹脂に変え、3Dプリンターで成形を行い、建材や家具を製造している企業で、サーキュラーエコノミーの実現を目指している。今回は、セイノーとともに『植物ゴミの引き取り便』を事業化したいと話す。想定顧客は、運送業・食品製造業・木材加工業といった植物廃棄物を排出する企業。これらの企業は、植物廃棄物の処理に多大な費用を支払っている。加えて、保管場所の確保や衛生面でも課題は多い。こうした課題に対処することが狙いだ。

具体的には、セイノーが植物ゴミ排出事業者から植物ゴミを回収して倉庫に保管する。それらをSpacewaspの技術で樹脂化・成形して、建材などへと作り変えるという。アップサイクルした建材を用いて、セイノーの老朽化した社員寮や会議室をワークスペースへとリニューアルし、お客様に利用してもらう構想も描く。また、展示会で使用される備品なども制作していきたい考えだ。PoCではまず、技術検証としてセイノーから排出される使用済みの木パレットを使い、植物由来のカンガルーモニュメントを試作するという。将来的には、植物物流から日本の新たなインフラを構築していきたいとした。

セイノー・田口氏は「我々がゴミと考えている負の資産に対して、ソリューションを提案していただいた」と述べ、「負の資産をプラスの資産に変えていけるよう一緒に頑張っていきたい」と伝えた。Spacewaspの登壇者は、グリーン物流の構築に向け「一歩一歩着実に積み重ねていきたい」と意気込んだ。

セイノーのアセットを活用したユニークなビジネスアイデアを披露した5チーム

ここからは、惜しくも採択には至らなかったが、独自のビジネスアイデアを披露した5チームの発表を紹介していく。

●pickupon株式会社 「中小企業のお困りごと 解決カンパニー創出プロジェクト」

『「こまってる。」で世界をかえる』をビジョンに掲げるpickuponは、通話内容を自動で音声+テキスト化するサービスを展開している。本プログラムでは、セイノーの顧客である中小企業の経営者から悩みを聞き、理解して解決するサービスの提供を目指す。

具体的には、セイノーの顧客に架電し、経営課題をヒアリングする。架電中の音声データを自動でテキスト化して、課題を整理・分類。課題に応じてソリューションを、両社のサービスや他社サービスから探索して提案をするという。さらに、このビジネスモデルを、他社に横展開することも検討している。展開先は、地方銀行やインフラ会社といった大きな顧客基盤を持つ企業を想定。パッケージ商品として提案し、収益化していきたい考えだ。

●コニカミノルタ株式会社 「思いを届ける架け橋に」

精密機器メーカーとして長い歴史を持つコニカミノルタは、『AccurioDX』という1to1紙マーケティング支援サービスを展開中だ。本プログラムでは、このサービスを用い、発荷主のマーケティング効果最大化を着荷主とのコミュニケーションを革新することで実現していきたいと話す。

具体的には、着荷主に向けて伝えたい想いを載せた個別最適化した紙のチラシ(パーソナライズチラシ)を作成する。チラシにユニークなQRコードを付けることで効果や反応を測定することも可能だという。セイノーのドライバーが、荷物とともにパーソナライズチラシを着荷主のもとへ届ける。発荷主からマーケティング費用をもらう形でマネタイズする。モノを運ぶだけではなく、モノとともに情報も運ぶことで、発荷主への提供価値を高めていきたいとした。

●株式会社BISITS 「ONE STOP Live commerce 2.0」

ECサイトの構築支援や運用代行を手がけるBISITSは、ライブ配信機能を備えた販売プラットフォームアプリ『Macroz』を開発中だ。本プログラムでは、『Macroz』とセイノーのリソースを活用し、フルフィルメント倉庫に商品を預ければ、商品撮影からPR文の作成、決裁、発送までの運営を丸ごと委託できるECサービスを構想する。

想定顧客は、魅力的なプロダクトを持つが、ECでうまく販売できていない企業等。提供価値は、販路拡大による売上増だ。ライブ配信においては、従来のようにインフルエンサーに依存せず、販売者でも対応できるようにすることで、迅速なプロモーションを実現する。また、3分オークション機能により顧客参加型の販売も行えるようにするなど工夫を凝らす。こうしたワンストップでの支援体制をセイノーとともに構築し、日本の素晴らしいモノづくりを世界中に届けていきたいとした。

●株式会社アセンティア・ホールディングス 「無農薬野菜の適正価格販売」

無農薬野菜の栽培に使用できる植物活性用バクテリア製剤『TOKYO8』を共同開発・販売するアセンティア・ホールディングスは、セイノーとともに無農薬野菜の適正販売に取り組みたいと話す。無農薬野菜といえば、一般的な野菜よりも高価格になりがちだ。この課題に対し、セイノーが農作物の保管や流通すべてを一括して担うことでコストを下げ、販売価格を一般的な野菜の同等以下にしたいという。

野菜はJAで取引されるが、“無農薬野菜のJA”をセイノーで構築しようという提案である。初期ターゲットは、オーガニックビレッジ構想に取り組むエリアの農家、およびアセンティア・ホールディングスの既存顧客である首都圏の小売店など。これらをセイノーの物流でつなぎ、無農薬野菜の適正価格化を目指したいと語った。

●株式会社Sonoligo 「小規模の移動空間(荷台)を活用した文化創出」

Sonoligoは、『文化体験をもっと身近に』をビジョンに掲げて活動する企業だ。本プログラムでは、子どもの体験格差に着目。土日祝に稼働していないセイノーのウイング車(荷台の側面が開くトラック)を用い、トラックの荷台を小規模なイベント空間に変えて、音楽などの文化体験を子どもたちに届ける事業案を発表した。

対価を払う顧客は、自治体・オーケストラ・スポーツチームなどのイベント主催者や子どもを応援したい企業・親。Sonoligoの持つイベント企画力や調整力、スポンサー企業、オーケストラ等とのコネクションを活かして形にする。コンテンツは、カルテットによる演奏などを検討中だという。日本のすべての子どもたちに、明るい未来と夢を「積込み」「届け」ていきたいとした。

「これで終わり」ではなく「ここからがスタート」、全10社とともに共創事業を前進させたい

表彰終了後、2日間のイベントの締めくくりとして、審査員らが総評を述べた。まず登壇したのは、プログラムの運営を担うセイノーホールディングス オープンイノベーション推進室の髙橋一馬氏。「今回参加していただいた全企業と、協業を進めていきたい」と述べ、本イベントをスタート地点として、全10社(1社未参加)と共創事業に取り組んでいく考えを示した。

セイノーホールディングス株式会社の河合氏は「スピードでは僕らも負けないように走るので、ぜひ一緒にスピード感を持って推進していきましょう」と呼びかけた。

また、セイノーホールディングス株式会社の神谷氏は、「本取り組みをブラッシュアップしながら、新しいものを一緒に作り出す取り組みを進めていきたい」と述べた。

次に、本プログラムの支援を担う株式会社eiiconの代表・中村氏は「オープンイノベーションは価値の総和の最大化だ」と述べ、共創事業の実現に向け「我々も全チームを応援していきたい」と語った。

Spiral Inovation Partnersの岡氏は「誰がなぜそれを使って、なぜ当社でなければならないのか。それはセイノーと組むことで、なぜ良くなるのかを常に考え続ける必要がある」と述べ、「我々も一緒に考えていきたい」と伝えた。

最後に、セイノーホールディングス株式会社の田口氏が「2日間、本イベントに参加させていただき、皆さんとワンチームで新たな事業創造を進めていくことができた」と振り返りつつ、引き続き全社とともに共創事業を前進させていきたいと語った。

2日間にわたって開催されたBUSINESS BUILD終了後は、ネットワーキングを実施。参加者やセイノーホールディングスの関係者、メンター陣が交流した。

取材後記

土地や建物、車両などセイノーホールディングスグループの持つ有形資産を活用し、同グループの顧客である企業を対象とした新規事業を考える本プログラム。高評価を得た事業案のなかには、経理支援や資金調達支援など、従来の物流事業とは異色の領域も含まれ、同グループが新しい領域へと積極的に投資しようとしている様子が印象的だった。物流を超えた先にある事業領域へ、オープンイノベーションでどのように進出していくのか。今後の動きにも注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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