「2022年ベンチャー投資動向の国際比較」発表ーーVC投資金額・件数/社数は日本のみ前年比増加
ベンチャーキャピタル等投資動向調査等の「調査・情報提供」を手がける一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)は、6月27日に『2022年1-12月ベンチャー投資動向(米国・欧州・中国・日本の4地域比較)』を発表した。
これは、2022 年暦年のVC投資動向を、米国・欧州・中国・日本の4地域に焦点を絞って比較したものだ。米国は NVCA(※) の「YEARBOOK 2023」、欧州は Invest Europe の「Investing in Europe : Private Equity Activity 2022」、中国は清科研究中心の「2022 年中国股权投资市场研究报告」のデータを参照し、日本についてはVEC 四半期報のデータを合計することにより、2018年~2022年の暦年ベースの数値を算出している。
本記事では、『2022年1-12月ベンチャー投資動向(米国・欧州・中国・日本の4地域比較)』について紹介していく。
※NVCA : National Venture Capital Association(米国ベンチャーキャピタル協会)
【VC投資】 金額と件数/社数は、日本のみ前年比が増加
まずは、VC投資金額とVC 投資件数/社数の国際比較について見ていく。
VC 投資金額の国際比較(2018~2022年)-日本のみ前年比が増加
米国・欧州・中国・日本の4地域における2022 年暦年のVC投資金額(円換算)をみると、米国が 31.7兆円と前年の45.4兆円から13.7兆円の減(△30.3%)、中国が4.8兆円で前年の7.2兆円から2.4兆円の減(△33.0%)、欧州が2.5兆円で前年の2.8兆円から0.3兆円の減(△10.4%)といずれも大きく減少した。
そのなかで、日本の2022年のVC投資金額は3,403億円で、前年の2,948億円から455億円の増(+15.4%)を記録している(図表1)。
▲図表1:VC投資金額(円換算)の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
(注1)米国・欧州・中国の投資金額の円換算に際しては2022年の各国通貨の平均為替相場(1 ドル=131.50円、1ユーロ=138.09円、1人民元=19.49円)で2018年~2022年のデータを日本円に換算
(注2)米国・中国は国内投資。欧州・日本は海外投資も含む
なお、各国通貨建ての VC 投資金額の推移は図表2のとおりだ。
▲図表2:4地域のVC投資金額の直近5年間の推移(現地通貨建て)
VC 投資件数/社数の国際比較(2018~2022年)-日本のみ前年比が増加
2022年のVC投資件数/社数は、米国の16,464件、欧州の5,883社、中国の4,515件、日本の 1,994件の順になっている。これを前年比でみると、投資金額と同様、日本のみが増加している。
地域別に前年比増減率を算出すると、中国が△13.3%、米国が△11.6%、欧州が△7.5%と、いずれも減少しているのに対し、日本は+18.5%の増となっている(図表3)。
▲図表3:VC投資件数/社数の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
(注1)欧州のみ社数。他は件数
(注2)米国・中国は国内投資。欧州・日本は海外投資も含む
【VC ファンド】 組成金額・本数は、前年比で日本は減少
次に、VCファンドの組成金額と組成本数の国際比較について見ていく。
VCファンド組成金額の国際比較(2018~2022年)-前年比、日本は減少
米国・欧州・中国・日本の4地域における2022暦年のVCファンド組成金額(円換算)をみると、米国が21.4兆円、中国が10.2兆円、欧州が3.2兆円、日本が0.3兆円の順になっている。
これを前年比増減でみると、米国と欧州はいずれも前年を上回って、直近5年間のピークを記録した一方、中国と日本は前年比減少しており、なかでも日本は2019年以降の4年間で最少の組成金額となった。
地域別に前年比増減率を算出すると、欧州が+12.8%、米国が+5.0%の増加に対し、中国は△2.1%の微減、日本は△14.4%と大きく減少している(図表 4)。
▲図表4:VC ファンド組成金額(円換算)の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
(注)米国・欧州・中国の投資金額の円換算に際しては 2022 年の各国通貨の平均為替相場(1 ドル=131.50 円、1 ユーロ=138.09 円、1 人民元=19.49 円)で 2018 年~2022 年のデータを日本円に換算
なお、各国通貨建てのVCファンド組成金額の推移は図表5のとおりだ。
▲図表5:4地域のVCファンド組成金額の直近5年間の推移(現地通貨建て)
VC ファンド組成本数の国際比較(2018~2022年)-前年比、日本は減少
2022年のVCファンド組成本数をみると、前年比で中国以外は減少している。米国の784本は前年の 1,286本から△39.0%の減、日本の38本は前年の54本から△29.6%、欧州の341本は前年の383本から△11.0%と、いずれも減少しているなかで、中国のみ1,835本と前年の1,669本から 9.9%の伸びを示している。(図表 6)。
▲図表6:VC ファンド組成本数の国際比較(米国・欧州・中国・日本)
さいごに
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが発表した『2022年1-12月ベンチャー投資動向(米国・欧州・中国・日本の4地域比較)』を見てきた。VC投資金額の国際比較において日本のみ前年比が増加するなど、米国・欧州・中国に比べて勢いが増している。
日本政府による「スタートアップ育成5か年計画」のもと、6月には「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023 改訂版」が公表された。
これにより実効性のある具体的な施策が打ち出され、VCによる投資はもとより、事業法人・CVC等による投資が加速されて、スタートアップ投資への大きな弾みとなり、今後の日本の起業環境が大きな飛躍に導かれることが大いに期待される。
※参考ページ:一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)「2022年1-12月ベンチャー投資動向(米国・欧州・中国・日本の4地域比較)」
(TOMORUBA編集部)