meet ▶[Final Aim]:Web3で「デザイン×製造業」をアップデート。Final Aimの挑戦
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#デジタルトランスフォーメーション #ブロックチェーン
今でも多くの非効率が残っているデザインと製造業。新たな技術を取り入れることができず、DXが進まないという課題を抱える大企業もある。そんなデザインと製造業をWeb3の力で効率化する事業を展開しているのがFinal Aimだ。知的財産権が絡む複雑な契約書も、ブロックチェーン技術を使うことで効率的に一元管理と執行できる仕組みを作っている。
eiiconのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、株式会社Final Aim 取締役最高デザイン責任者 横井康秀氏にインタビューを実施し、起業の背景からデザインと製造業が抱える課題、同社サービスの特徴や将来のビジョンについて語っていただいた。
▲株式会社Final Aim 取締役最高デザイン責任者 横井康秀氏
煩雑な契約業務によって生じるデザイン・製造業界の非効率
――まずはFinal Aimを起業した背景を聞かせてください。
横井氏 : Final Aimは、私と代表の朝倉(※代表取締役社長 朝倉雅文氏)がデザインと製造業の課題を解決するために立ち上げました。朝倉とは前職の3Dプリンターのスタートアップで一緒に働いており、2017年にその会社が東証一部上場企業へM&Aで買収され、PMIに従事した後に起業を決めたのです。
2019年に東京で創業した当社ですが、当初からグローバル展開を目指していたため、翌年2022年に米国デラウェア州に本社を立ち上げ東京オフィスを子会社としました。
――解決しようとしているデザインと製造業の課題とは、どのようなものでしょうか?
横井氏 : 端的に言えば「利益率の低さ」です。私は以前カメラメーカーにも勤めていたのですが、商品を企画してからデザイン〜設計〜生産〜販売し、利益化するまで数年はかかっていました。その原因は長いサプライチェーンと、下請け企業の多層構造にあります。
サプライチェーンが長くなり、多層構造になれば、それだけデザインに関わる意匠権や商標権など知的財産権を取り扱う契約書も増えていきます。製造業ではグラフィックデータ、図面データ、3Dデータなど、様々なデータを取り扱っており、そのデータの取り扱いやプロセスも契約書で定めておかなければなりません。
しかし、契約書を管理し執行するのは大変です。リソースがもともと限られている小規模の下請け企業やフリーランスは例に漏れず、年間数万件も契約書を取り扱う大企業においても、その管理や執行にリソースをとられています。また開発期間が長ければ、その間に担当者や部署なども変わって、契約書やデザインデータなど重要なファイルの所在や知的財産権の管理が分かりにくくなってしまうのです。
――煩雑な契約業務によって、効率が悪くなっているのですね。なぜWeb3で、その問題を解決できるのか教えてください。
横井氏 : 例えばスマートコントラクトなどのブロックチェーン技術を使えば、デザインや製造業における契約業務の様々なスキームを自動化し効率化できます。加えて契約書の内容を改ざんすることができず、一企業や一担当者の勝手な都合で契約内容を改ざんされることがなく、透明性やトレーサビリティも担保されるのです。
これまで管理しきれていなかった多層にわたる下請け企業との取引も一元管理できるため、これまで契約書の管理や執行に割いていたリソースを削減し、デザインやものづくりといった本来業務での価値創造に集中できるようになるのです。
世界で唯一「Web3×デザイン・製造業」市場を開拓
――今は様々なWeb3スタートアップが生まれていますが、競合企業がいれば教えてください。
横井氏 : ダイレクトな競合はこれまで見たことがありません。昨年、シリコンバレーの世界的なスタートアップアクセラレーターの「Berkeley SkyDeck」に採択されたのですが、そこでも様々な投資家やアドバイザーに「こんなサービスは聞いたことがない」と言われました。
もちろん、契約書の管理サービスなど個別のソリューションは存在しますが、ブロックチェーンやスマートコントラクトといったWeb3技術を活用した私たちのようなサービスで、デザインと製造業を変えようとしているスタートアップは世界を見ても他に知りません。
――なぜ市場の大きなデザインと製造業で、Web3技術が活用されてこなかったのでしょうか?
横井氏 : 私の仮説ですが、デザインと製造業はテクノロジーが浸透するのが遅くサービスとして確立するのに時間がかかると思われているからかもしれません。スタートアップによっては超短期でのイグジットを狙っていることもあり、他の業界と比べると時間のかかるデザインと製造業よりもフィンテックやエンタメ業界の方が、相性がいいのでしょう。
私たちもデザインと製造業でサービスを展開していて、テクノロジーが浸透するのに他の業界と比べると時間がかかるのは感じています。しかし、デザインと製造業は裾野が広いだけあって、効果とリターンがその分大きいのも事実。そして、私たちがフォーカスしている契約書の課題は頻度高く日常的に発生しており、難易度は高いですがテクノロジーやソリューションの浸透スピードは早いと考えています。多少難易度が高くても、デザインと製造業に大きなインパクトを残したいと思ったのです。
――どのようにデザインと製造業界にサービスを広めていくのか聞かせてください。
横井氏 : まずは大企業の意識を変えることが重要です。これまで長らくデザインと製造業界にいて学んだのは、大企業が変わらなければ業界全体はなかなか変わらないということ。逆に言えば、大企業の導入にさえ成功すれば、下請け企業も含めて業界全体を変えられるのです。
また、グローバルで事業を展開するのも重要な戦略です。なぜなら、大手のメーカーは海外にもデザイナーやパートナーを抱えているので、私たちもグローバルで事業を広げなければなりません。現在は日本とアメリカだけで事業を展開していますが、今後はアジアやヨーロッパにも積極的に進出していきたいと思います。
求めているのは「10年後の当たり前を先取りしたい企業」
――今後はどのような企業とのオープンイノベーションを考えているのか聞かせてください。
横井氏 : 今はWeb3の黎明期なので、とにかくWeb3に前向きな姿勢の企業と組みたいと思っています。近年は社内にブロックチェーンの研究部隊を作るメーカーなど、Web3に前向きな企業も少なくありません。社内のリソースだけでは、どうWeb3を取り入れればいいかわからないという企業は、ぜひ相談していただきたいですね。
――最後にFinal Aimさんがサービスを提供する、製造業の方々に向けてメッセージをお願いします。
横井氏 : デザインと製造業の人たちにWeb3の話をすると「あやしい」「私たちの業界には関係のない技術でしょ」と言われることがよくあります。しかし、例えば10年ほど前に同じようなことを言われていたクラウドサービスも、今では当たり前のようにデザインと製造業では使われていますよね。
今やスマートフォンで写真を撮れば、気づかぬうちにクラウドに保存される時代になりました。きっとブロックチェーンやスマートコントラクトなどのWeb3も、10年後には私たちの生活に欠かせない技術になるはずです。社会の当たり前になってからでは遅いので、10年後から逆算して考えられる未来思考の経営者の方は、ぜひ一緒にWeb3の可能性を探っていきましょう。
▲2023年2月16日に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.6」に登壇した横井氏。
(取材・文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)