meet ▶[あめつちデザイン]:宿泊施設を地域のショールームに。あめつちデザインが考える地域創生戦略
https://auba.eiicon.net/projects/37270
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急激に人口が減少し、存続が危ぶまれている日本国内のローカルエリア。魅力的な伝統工芸が眠っているにもかかわらず、その魅力を伝えきれていない地域も数多い。そのような状態が続けば、継承者がいないために途絶える伝統技能も少なくないだろう。
そのような課題を解決する事業を手掛けているのが、あめつちデザイン。同社は、地方の宿泊施設を地域のショールームに変えるサービスを展開している。宿泊体験をデザインし直すことで、地域のファン、つまりは関係人口を増やす取り組みを行っている。
eiiconのオリジナルピッチ企画「eiicon meet up!!」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。――今回は、あめつちデザイン株式会社 代表取締役兼CEO 霜竹 弘一氏に起業の背景から同社サービスの強みや将来のビジョンについて語っていただいた。
▲あめつちデザイン株式会社 代表取締役兼CEO 霜竹 弘一氏
「自分の経験を活かして日本の未来に貢献したい」―起業の背景にあった想い
――まずは霜竹さんのキャリアについて聞かせてください。
霜竹氏 : 私は1992年から8年間、商社で働いていました。当時はインターネット黎明期。仕事柄、周囲よりも早くインターネットの世界を知ることができた私は、ITビジネスに大きな可能性を感じていました。より人と人がシームレスに繋がれる世界が実現すると考え、会社を飛び出し起業することにしたのです。
旅行が好きだった私は、インターネットを使い旅行取引に関するプロバイダーと旅行者が直接繋がれるサービスを作りました。単身でインドネシアに渡り、現地の最新情報を発信しながら、オンラインでオーダーメイドの旅行プランを提案するサービスです。加えて、当時は珍しかったオンラインブッキングもはじめるなど、10年に渡って旅行サービスを展開し、最終的には会社を売却しました。
――次のキャリアの転機はあったのでしょうか。
霜竹氏 : 次の転機になったのは、システム会社での経験です。そこでは、クライアントがどのようにエンドユーザーとの接点を持ち、事業者からのメッセージを受け取っているのかという、いわゆる「CXデザイン」の仕事をしていました。
独自のCX理論を確立し、小売業や外食チェーン、自動車メーカーなど様々な企業にコンサルティングサービスを提供しながら、その理論を磨いていったのです。どのタイミングで、どんなメッセージを投げかければ定期的に購入してもらえるのか、CXデザインについて深く理解することができました。
――あめつちデザインを立ち上げた経緯も聞かせてください。
霜竹氏 : あめつちデザインを立ち上げたきっかけは「未来の年表」という書籍を読んで、日本の未来に大きな不安を感じたからです。このまま人口が減り続けると、多くの自治体が立ち行かなくなり、国力がますます失われていく。その過程で多くの中小企業や伝統芸能、匠の技が失われると思った私は、どうにかして未来を変えたいと思ったのです。「旅行業」と「CXデザイン」の経験を活かして、何か日本のためにできないか。そう考えて立ち上げたのがあめつちデザインです。
CXデザインとECで、これまでにない宿泊体験を
――どのように今のサービスを考えたのか聞かせてください。
霜竹氏 : まず私が考えたのが、人と地域の接点を作るということです。そこで目を付けたのが旅館やホテルといった宿泊施設。旅行客の多くは、宿泊施設を拠点にします。宿泊施設での体験を変えれば満足度も上がり、地域のファンになってもらえると考えたのです。
特に、小さな旅館などは、地域の工芸品や特産品を扱っていることが多いですが、その魅力を十分に伝えられている宿は多くありません。地域の魅力を的確に伝え、商品を気に入ったお客様がスムーズに購入できる導線を作るために開発したのが「cocodake(ココダケ)」です。
――どのようなサービスなのでしょうか?
霜竹氏 : cocodakeには大きくECとDXの2つの機能があります。EC機能は、宿に置いてあるスマホやタブレットで、インテリア家具や特産品を購入できる機能。欲しいと思った商品を注文すれば、メーカーに直接注文が届くため、宿泊施設が在庫を抱える必要がありません。
ただ商品が羅列されているだけでなく、どんな職人がどんな技術を使って作っているのか、背景にあるストーリーを伝えることで、商品への魅力を十分に伝えられるのです。興味を持ったお客様の中には、工房に足を運んだり、定期購入してくれる方もいるでしょう。
――通常のECサイトからでも購入できると思いますが、それらとの違いも教えてください。
霜竹氏 : 私たちのサービスの最大の特徴は、クライアントごとにCXデザインのコンサルティングをして、効果的に商品に触れてもらえる体験を作り出すことです。宿泊客が宿の中でどのように過ごすのかシミュレーションしながら、どのタイミングでどの商品に触れるかデザインしていきます。
システムを導入するだけではなく、戦略的にCXデザインをするため、単に商品を買ってもらうだけでなく、商品のファン、ひいては地域のファンになってもらえるのです。手間はかかりますが、他の競合と比べると大きな優位性になるでしょう。
――DX機能とはどのようなものでしょうか?
霜竹氏 : 宿泊施設の配布物やご案内をデジタル化するサービスです。宿泊施設では地域のイベントや特産品のポスターを貼っていますが、その更新作業も楽ではありません。デジタル化することで、更新作業が効率化され、本当に重要な作業に集中できるのです。一日だけの特別なおもてなしの案内などもできるため、工夫次第でお客様の満足度も高められるでしょう。
▲cocodakeの主な特徴として、上記の6つが挙げられる(画像出典:あめつちデザインホームページ)
「面」のサービスで、地域全体を盛り上げていきたい
――今後、どのような企業とのオープンイノベーションを検討しているのか聞かせてください。
霜竹氏 : 私たちのサービスは、メーカーさんとの相性が良いと思っています。特に旅館でじっくりと触れることができ、商品の価値が分かるものだとなお良いですね。たとえば寝具。寝具は店頭で少し触っただけでは、本当の価値は分かりません。旅館で寝てもらうことで本当の良さを分かってもらい、スムーズに購入に繋げることができます。
――宿泊施設の中で使えるものであれば、様々なメーカーと組めそうですね。
霜竹氏 : 宿泊施設の中だけではありません。最近は自転車をレンタルして回る観光客も多いですよね。自転車の乗り心地を体験してもらえれば購買にも繋がりますし、アンケートをとることで新たなビジネスモデルにも繋げられるでしょう。現在は宿泊施設をメインにしたサービスですが、今後はさらにビジネスを展開していく予定なので、オープンイノベーションできる企業の幅も広がっていくと思います。
――どのように展開していく予定なのか聞かせてください。
霜竹氏 : 現在は宿泊施設をショールームにする「点」のサービスですが、今後は街全体を回遊してもらえるように「面」で展開していきたいと考えています。たとえば今は宿で飲んだお酒を買ってもらうような、「モノ」の消費を促していますが、今後は酒造見学など「コト」消費にまで繋げていきたいですね。
そのように街全体を回ってもらえるように促すことで、旅行客の方にもこれまでとは違った旅を提案できます。これまで観光客が行かなかったような場所にも足を運んでもらうことで、より地域の魅力を感じてもらえればと思っています。
――様々な事業者とのオープンイノベーションが考えられますね。
霜竹氏 : そうですね。地域の活性化を考えている企業であれば、どんな組み方もできると思います。観光客が増え、街の周遊が活発になれば、鉄道会社やバス会社にも大きなメリットがありますよね。どんな業態であれ、地域を盛り上げたいと思っている会社とのオープンイノベーションを進めていきたいです。
――最後に、これからのビジョンを聞かせてください。
霜竹氏 : 私たちのビジョンは、旅行を通して地域のファンを増やしていくことです。ファンというのは、決して移住する人たちだけはありません。たとえば、都会に住みながらも地域と繋がりを持ち、時には自分のスキルを提供する人も含めます。様々な人が様々な繋がり方ができる仕組みを作っていきたいと思っています。
▲2023年8月に開催されたピッチイベント「eiicon meet up!!vol.8」に登壇した霜竹氏。
(取材・文:鈴木光平)