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meet ▶[グレイスグループ]:はたらく女性に「卵子凍結」の選択肢を

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https://auba.eiicon.net/projects/31689 

#ヘルスケア #少子高齢化 #課題解決No.5「ジェンダー平等を実現しよう」 #病院 #臨床診断・検査

――2021年、日本の出生数は過去最少の81万人となり、何十年にもわたって少子化対策を続けてきた日本にとって、惨憺たる結果となった。さらに踏み込んだ少子化対策が求められるなか、ひとつのソリューションに注目が集まっている。「卵子凍結」である。福利厚生の一環として導入を検討する企業が増えているなど、徐々に認知が高まりつつある「卵子凍結」だが、この領域にフォーカスして事業創出を進める企業がある。2020年に誕生した株式会社グレイスグループだ。

「eiicon meetup」登壇企業に話を聞くインタビュー企画『meet startups!!』。今回は、グレイスグループ 代表の勝見祐幸 氏にインタビューを実施。創業の経緯や事業の進捗、今後のビジョンを聞いた。


▲株式会社グレイスグループ 代表取締役CEO 勝見祐幸 氏

自らの経験を通じ、「不妊治療」に課題感を持っていた

――まず、「卵子凍結」に注目をされた理由についてお聞かせください。

勝見氏: 友人たちと集まって、ご飯を食べているときに、たまたま卵子凍結の話題になったのです。実は私自身、約7年間の不妊治療をへて、クリニックも3回変え、ようやく子どもを授かったという経験を持っています。不妊治療が非常に大変だということは、身をもって知っています。結果的に3人の娘を授かることができましたが、一方で課題も多いと感じました。

例えば、何回も体外受精を繰り返して、精神的にも肉体的にも疲弊してしまい、結果的に仕事の第一線から外れたり、不妊治療が原因で離婚に至ってしまったりするといった課題です。

――もともと「不妊治療」に課題感をお持ちだったのですね。

勝見氏: はい。ただ私自身、医師ではないので、自分が何かできるとは思っていませんでした。しかし、友人との会話から、卵子凍結がアメリカの大企業で福利厚生として導入され、会社が社員のために金銭的な支援をしていることを知ったのです。

その話を聞いて、アメリカの大企業が有用性と安全性を認めて、卵子凍結を導入しているのに、なぜ日本では聞いたこともないのだろうと疑問を持ちました。そこで、産婦人科医の知人である中林先生(中林稔氏)に聞いてみることに。すると、卵子凍結は2014年以降に世界的に普及しはじめたもので、まだ十分な症例数も論文も出ていないというんです。したがって、日本産婦人科学会としては、否定はしないけれども推奨もしていないのだと…。

――なるほど。

勝見氏: 自分でも色々と調べてみたところ、驚くべき事実がたくさん分かってきました。出生数81万人の日本で、実は年間46万件もの体外受精が行われているんです。アメリカでさえ、33万件だというのに。さらに驚くべきは、アメリカでは体外受精の成功率が約25%。それが日本だと、約13%しかない。惨憺たる成功率です。

この背景にある理由はシンプルに「卵子の年齢」です。アメリカだと、体外受精する平均年齢が34歳ですが、日本では40歳。女性の妊娠する力は、30代前半で急激に落ちるので、成功率が下がるのは当然ですね。これが残念ながら、日本の生殖医療の現実なんです。これらの現実を知って、本当にいても立ってもいられない気持ちになり、立ち上げたのがグレイスグループです。


他社とのパートナーシップで誕生した、卵子凍結保管サービス『Grace Bank』

――卵子年齢が低いうちに採卵し凍結しておくことで、将来の出産確率を高めるということですね。具体的に、どのようなサービスを展開されているのですか。

勝見氏: 『Grace Bank(グレイスバンク)』という卵子凍結保管サービスを提供しています。

――安全性の高い卵子凍結保管体制を、0→1で構築するのは難しそうです。どのように整備されたのですか。

勝見氏: 自社ですべて0→1で立ち上げるよりも、先行して技術をお持ちの企業とパートナーシップを組んだほうがいいだろうと考えました。そこで注目したのが、臍帯血バンクの運営で実績を持つ株式会社ステムセル研究所。代表の清水さん(清水崇文氏)とはSNSでつながっていたので、「一緒に組めませんか」と提案したところ、興味を持っていただき、資本業務提携を結ぶことができました。

臍帯血は赤ちゃんのへその緒のことなので産婦人科の領域。ステムセル研究所は、全国の産婦人科とネットワークを保有しておられます。また、20年以上にわたり臍帯血の保管で無事故という実績もお持ちです。

卵子の保管も臍帯血と同様に、液体窒素の入ったアルミタンクで行います。私たちは現在、ステムセル研究所の保管施設の一部を使って卵子を保管しています。各クリニックの中で保管するよりも、まとめて1カ所で保管するほうが効率化できますし、安全性も高められる。コストも下げることができます。

――クレディセゾンやサイバーエージェント、湘南美容クリニックとも一緒に取り組まれていますが、それぞれ提携の意図は?

勝見氏: クレディセゾンさんとは、若い人が使いやすくするためのファイナンス商品をつくりました。というのも、コストを下げたといっても卵子凍結は高額。ですから、一括で支払うのではなく分割で支払えるような仕組みを整えました。サイバーエージェントさんとは、若い人たちに対してどう発信していくかを一緒に検討していく予定です。また、湘南美容グループさんについては、同グループの120万人ものお客さまに対して、卵子凍結サービスを紹介していく狙いを持った提携です。

――すでに各方面で盤石なアライアンス体制を構築されていますが、今後は、どのようなパートナーと事業を拡大していきたいですか。

勝見氏: 女性の活躍推進に興味をお持ちの企業なら、どんな企業・団体でも組みたいですね。日本では昨年5月に、メルカリさんが自社の社員向けに、卵子凍結支援制度を開始されました。最近になって、少しずつ興味を持つ企業が増えてきましたが、まだそれほど多くありません。そういう意味では、規模を問わず、どんな企業でも理解を示してほしいです。

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

勝見氏: 今年の4月、卵子凍結にフォーカスしたクリニック「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」を開業しました。このクリニックでは、オンライン診療なども取り入れ、お客さま視点でサービスを改善していく予定です。まずはここでモデルケースをつくり、成功事例を提携クリニックにインストールしていきます。そして、一緒に取り組んでいる皆さんとともに、不妊治療や生殖医療業界全体をブラッシュアップしていきたいと考えています。


(編集・取材:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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