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愛知県を舞台にしたビジネス共創プログラムの中間DEMODAYをレポート!採択スタートアップ10社が挑む、地域の課題を解決するビジネスアイデアとは?

愛知県を舞台にしたビジネス共創プログラムの中間DEMODAYをレポート!採択スタートアップ10社が挑む、地域の課題を解決するビジネスアイデアとは?

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モノづくりをはじめ、農業、ヘルスケア、観光など産業が盛んな愛知県は、スタートアップ×地域のビジネス共創プログラム『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM2023』を推進している。このプログラムは、スタートアップと共に、愛知県内の自治体・スタートアップ支援機関・商工会議所・商工会・金融機関などの地域パートナーが、地域に根ざしたビジネスを創出することが狙いだ。

プログラムでは、2023年7月25日から9月3日まで、地域が抱える課題(①ヘルスケア・ウェルビーイングに関する地域課題、②農業や食などに関する地域課題、③まちづくりや観光に関する地域課題、④ものづくり企業を中心とした中小企業の課題、⑤脱炭素やサスティナビリティに関する課題)を解決するビジネスアイデアを募集。多数の応募があった中、以下10社のアイデアを採択した。

●株式会社はんぽさき

●株式会社アシスト

●エーテンラボ株式会社

●株式会社キャリアサバイバル

●codeless technology株式会社

●株式会社スタジオフィルス

●株式会社セラピア

●株式会社テックシンカー

●株式会社ホーン

●me株式会社

各社のビジネスアイデアごとに「仮説構築・プロジェクト計画フェーズ(10~11月)」を経て、11月30日に中間DEMODAY(中間成果発表会)を開催した。以降、「検証フェーズ」には県内地域パートナーも協力に加わり、2024年3月のDEMODAY(最終成果発表会 オフライン開催予定)を経て、ビジネスのさらなる具体化、事業化を目指す。

――そこで今回、TOMORUBAでは、スタートアップや地域パートナーが集結した中間DEMODAYを取材した。以下に10社の発表を中心にレポートする。

※参画 地域パートナーについて

ビジネス創出に向けて、以下24の自治体・商工会議所・スタートアップ支援機関等が地域のネットワークの提供、インタビュー協力、実証実験の協力などサポートしている。(2023年10月31日現在)

■自治体……安城市、大府市、岡崎市、尾張旭市、蒲郡市、刈谷市、北名古屋市、設楽町、新城市、豊明市、豊川市、豊田市、豊橋市、西尾市、日進市

■商工会議所……一宮商工会議所、大府商工会議所、春日井商工会議所、豊橋商工会議所 

■金融機関……三菱UFJ銀行

■地域団体……地域クリエイティブプロジェクト

■スタートアップ支援機関……ウェルネスバレー推進協議会、STATION Ai 株式会社、東三河スタートアップ推進協議会

採択スタートアップ10社が挑む、地域の課題を解決するビジネスアイデアとは?

●株式会社はんぽさき 「LivMapを用いた災害時やイベント時の情報共有の効率化」

同社は、地理情報システムやソフトウェア技術を用いた業務課題の解決などに取り組んでいる。提案したのは「LivMapを用いた災害時やイベント時の情報共有の効率化」だ。LivMapは位置情報をベースにさまざまな情報を共有できるアプリで、メンバーは画面の地図上に写真を取り込んだり、印をつけたりできる。現在までに、複数の自治体などと共創が進んでいるという。

具体的には、愛知県庁の一宮建設事務所とは管理者が不明の橋の把握、豊橋市農業企画課・農業委員会とは農地の貸出しの管理、大府市、刈谷市、東海市とは固定資産税の調査・滞納整理、豊橋市を拠点とするJAひまわりとは貨物転送の効率化・位置把握での活用を試みている。

同社では、以前からLivMapの機能は自治体で活きると考えていたが、実際に共創を進めることで、新しい発見もあったという。今後は「災害対策などでも活用を広めたい」と意気込んだ。

●株式会社アシスト 「生成AIを活用した外国人従業員の母国語対応対話AIサービス」

同社は、外国人の雇用手続きについて、デジタル活用でのアップデートを試みている。人手不足が深刻化する日本では、外国人の活躍が期待されている。これまで「技能実習」として外国人を受け入れてきたが、2019年に「特定技能」の制度が新設された。

同社によれば、技能実習は受け入れに中間組織を通すことが必須だったが、特定技能は自社で対応が可能。大きな制度転換だが、実際には手続きの煩雑さや言語の問題などがあり、9割以上が外部委託をしているという。こうした状況に対し、同社ではSaaSとプロフェッショナルサービスがセットになったLaporterを開発。適切なサポートを実施しながら、受け入れの手間を大幅に削減できる。外部に委託すると一人約3万円とされるコストを半減できるという。

現状ではまだ企業とのマッチングに至っていないが、一宮商工会議所等の地域パートナーを通じて認知が広がり、面談も予定されていることだ。同社では顧客の課題をより深く理解した上で、サービスをより良いものにしたいと強調した。

●エーテンラボ株式会社 「習慣化アプリで地域住民の健康づくり・フレイル予防プロジェクト」

同社は5人1組の励まし合いで行動変容を実現する習慣化アプリ「みんチャレ」を手がけている。提案したのは、アプリを高齢者のフレイル予防、デジタルデバイド解消に活かすというビジネスプランだ。実証では「広域での有効性」や「アプリの機能追加」などを検証する。今後は尾張旭市を中心に共創を進めていくという。

具体的には、同市健康づくり推進員会(健康課)の呼びかけで参加を希望した高齢者に対し、12月中に2回の講座を通じてアプリの導入・使い方を伝える。その上で、2月中旬まで実際に使用してもらい、実績や機能評価を行っていく予定だ。同市の企画課がプロジェクトマネジメントを担うほか、健康課も参加する。尾張旭市のほか、北名古屋市にも打診しており、さらに設楽町とも共創を行いたいと話した。

●株式会社キャリアサバイバル 「ものづくり企業の職人評価システム開発プロジェクト」

同社は「HR×ITの相乗効果で働く活力をアップデートする」に取り組んでいる。提案したのは「ものづくり企業の職人評価システム開発プロジェクト」だ。特に中小の製造業に対し、円滑な技術伝承とやりがい創出を実現する人事評価システムを開発したいと話した。

具体的なプロダクトはまだないとのことだが、大府市、刈谷市、西尾市の企業を訪問しヒアリングしたところ、評価システムを変更するのは簡単ではないことがわかってきた。そこで着目したのが日報である。現状、日報は現場スタッフが手書きし、それを担当者がExcelなどに転記していることが多い。

同社では、まずは日報をデジタル化し、その上で、技術伝承や評価にもつなげていきたい考えだ。日報のデジタル化について、刈谷市内の企業の協力が得られていると話した。このほか、豊田市、豊橋市などでセミナーを開催し、日報のデジタル化について認知を広める計画を立てている。同社は「2024年3月以降の実用化を目指したい」と意気込みを見せた。

●codeless technology株式会社 「Photolizeを使った製造業のDX推進の課題解決」

同社は、社内で使用している書類の写真を撮るだけで、同じデザインのデータ入力フォームができるシステム「Photolize」を開発している。従来の書類と同じ感覚でデータ入力ができることから導入のハードルが低く、スムーズなDX化を図れることが特徴だ。

同社では、勘に頼ることが多い中小の製造業の現場にデータという武器を提供すること、また、書類処理が煩雑になりがちな自治体に導入して職員の負担を軽減――この2つを狙う。現在までに、刈谷市、豊橋市、新城市、尾張旭市、大府市でセミナーなどを開催し、Photolizeの認知を広めている。このうち、尾張旭市では、児童クラブの申込書フォームで活用できないかと話が進んでいるという。

同社では、企業などへの導入について、予算・顧客情報が絡み、二の足を踏む場合は、交通費や休日の申請など心理的にも取り組みやすいところからまずは試してほしいと呼びかけた。また、使用料は無料とし、端末も可能な限り無料にすると強調した。

●株式会社スタジオフィルス 「お店と地域と人をつなぐデジタルツールの活用プロジェクト」&「人の命と財産を守る新しいデジタルサイネージ」

スタジオフィルスは、デジタルサイネージのサービスをリリースしている。同社では、デジタルサイネージをコミュニケーションやエンタメのツールと捉えており、「人と街、地域をつなぐデバイスになると確信している」と強調した。デジタルサイネージを通じ、楽しくやり取りをしたり、メッセージ性の強い情報を伝えたりすることを構想する。

同社のデジタルサイネージにメッセージなどを挿入する操作方法は簡単で、マニュアルは不要、SNSの感覚で使えると伝えられた。また、従来通り広告媒体として使用できるが、自社専用のスペースに使用料を受け取ることで他社の広告を挿入できる仕組みとする。これにより、デジタルサイネージを持つ企業は収入を得ることができ、かつデジタルサイネージを持たない企業でも安価に広告出稿が可能となる。「広告の民主化」を図りたいと述べた。

スタジオフィルスでは今後、「地域に愛されるデジタルサイネージ」になっているかを検証する。12月中に設置場所を決定して1月に運用を開始、2~3月で最適化・評価する計画だ。設置場所として、既に西尾駅や日進市の就職説明会場などが決まっているとのことだ。このほか、北名古屋市、豊川市、豊橋市とも話が進んでいると伝えられた。

●株式会社セラピア 「ものづくり中小企業を対象とした現場主導型DXの導入」

同社は教育を通じたDX化の支援を行っている。今回のプログラムで目指しているのは、ITがあまり得意ではない中小の製造業に教育を実施し、DX化を支援することだ。同社では現場のスタッフがITスキルを身につけられるプロダクトを持ち、既に東京・墨田区で現場主導型のDX化を実現した実績もあるという。そのモデルを愛知県内の各地域にも展開したいと語った。将来的には、県内全域に広めるのが狙いだ。

現状では、愛知県内企業では実施されていないが、自治体主体のイベントなどに参加し、認知を広めている。その過程で、複数の企業と面談も決定したとのことだ。中でも、日進市の商工会議所からは、最初から適正価格で事業を進めることを提案されたと明かした。補助金もうまく活用し、スタートアップにとってもサステイナブルなモデルを作ることが大事なのではないかと説かれたという。同社は「これまでになかった提案なので印象的」と話し、今後は適切な座組を作り、実証フェーズに進みたいと熱意を見せた。

●株式会社テックシンカー 「中小企業の脱炭素化と地域創生の実装プロジェクト」

同社はCO2排出量の可視化やカーボンフットプリントに関する事業を展開している。デジタルソリューションを提供するほか、社会とのコミュニケーション支援をしているのも特徴だ。具体的には、NFT、マーケットプレイス、特設サイトなどを通じ、ステークホルダーに効果的に情報発信をできるようにしている。

そうした同社は、今回のプロジェクトについて「事業活動のカーボンオフセットを通じて、GXの推進や事業の付加価値向上に貢献する」をビジョンに掲げた。現在までに、大府市、蒲郡市、新城市、豊川市、豊橋市などに提案。このうち、大府市では、大府商工会議所から環境課題について先進的な取り組みを進めている企業の紹介を受け、実証実験を行うことになったと報告された。

その企業は産業廃棄物のリサイクルを営んでおり、取引先などからCO2排出量の算出や脱炭素のヒアリングが増えてきているという。このため、テックシンカーのソリューションが課題と合致したとのことだ。同社では、さらにカーボンフットプリントの可視化も進めたいと語った。

●株式会社ホーン 「ひとり旅(おでかけ)をきっかけとしたロングテールな関係づくり」

同社は、ソロメシ(一人外食)、ソロトリ(一人旅)といった事業を手がけている。今回提案したのは「ひとり旅(おでかけ)をきっかけとしたロングテールな関係づくり」だ。同社では、一人だからこそ生まれるゆるいつながりから、ゆるやかに孤独・孤立の問題をポジティブに解決できるのではないかとの考えのもと、社会的な役割から離れて一人になる時間の大切さを広めることを目指している。その上で、地域での「ソロトリクエスト」の実施を試みる。

ソロトリクエストとは、ミッション型・ストーリー性のある一人旅で、ある地域・場所に赴き、特定のミッションを完遂するというもの。同社は「スタンプラリー以上謎解き未満」と解説する。これにより、地域とのつながりを構築し、来訪頻度や現地での消費額の増加を狙う。

今後、実証したいことは「コンテンツつくり」「財源の持続可能性」「コンテンツの持続可能」「実際のクエスト運営をいかに魅力的・効果的にするか」の4つだ。現在までに、東三河地域や一宮市商工会議所の連携が進んでおり、新城市の高校でソロトリクエストのコンテンツの企画についてワークショップをするなどしている。

●me株式会社 「ものづくり系中小企業の新事業創出プロジェクト」

同社はもともと、地域の中小企業と副業人材のマッチングを提案していた。しかし、マッチングが困難と判断し、さらに集客に対する課題が見えてきたことから、大きく方向転換した。同社が試みるのは、InstagramやX(旧・Twitter)、LINEなどのフォロワーのファン化である。

現状、仮にフォロワーが1000人いたとしても一人ひとりの属性などを知ることは難しい。しかし、同社が開発したソリューションを用いれば、年代や家族構成、趣味、自社製品やサービスの購買の有無などがわかるようになるという。この特性を活かし、フォロワー一人ひとりについて顧客やファンとなり得るかどうか、ランク分けをする機能を付加する。その上で、ランクに応じて適切な措置を取っていく方針だ。

現状、既に一宮市内の企業との連携が進んでいる。このほか、蒲郡市や北名古屋市などで説明会を行っている。meでは行政、観光、NPOなどのアカウントで効果を発揮しやすいのではないかと見ており、ソリューションの導入を呼びかけている。

スタートアップと地域パートナーが交流し、ビジネスのさらなる具体化・事業化へ

各社発表の後は、採択された企業と参画パートナーとのディスカッションが行われた。活発に意見交換や議論などをする様子があちこちで見られ、会場は熱気に包まれた。

なお、今後、県内地域パートナーも協力に加わって「検証フェーズ」に入り、継続審査される。2024年3月中旬のDEMODAY(最終成果発表会 オフライン開催予定)を経てビジネスのさらなる具体化、事業化を目指すことになる。

取材後記

応募したアイデアが採択された後、プランの策定から中間DEMODAYまでわずかな期間しかない。その間に実際に各地域に足を運び、課題をヒアリングして、アイデアを練り直すなど、非常にスピーディーにプロジェクトが進められた。それでも、発表された内容はいずれも可能性を感じさせるものばかりだった。今後、最終発表に向けてさらに加速をかけていくことになる。アイデアがどのような進化を遂げ、どんな価値を創造することになるのか。楽しみも期待も大きく、今後の展開にますます注目である。

(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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