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【10/3最終応募締切】 NEXCO東日本の第2期アクセラ説明会をレポート!高速道路やSA・PA、各種データを活用しながら実現したい「4つのテーマ」とは?

【10/3最終応募締切】 NEXCO東日本の第2期アクセラ説明会をレポート!高速道路やSA・PA、各種データを活用しながら実現したい「4つのテーマ」とは?

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高速道路の建設・維持・管理を手がける東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)は、高速道路会社として初めての試みとなったアクセラレータープログラム『E-NEXCO OPEN INNOVATION PROGRAM』を昨年に引き続き開催する。

2期目となる今回は「ヒトとモノの“移動”をアップデートする」、「SA・PAの価値向上、新たな顧客体験の創出」、「SA・PAをハブとした地域の魅力創出・発信」、「サスティナブルな事業運営の実現」の4つをテーマに掲げ、これからの時代にあった「安全・安心・快適・便利」を実現すると共に、さらなる価値の創出を目指す。

エントリーは既に始まっており、2022年9月7日までの早期応募に対しては、希望に応じて提案内容のフィードバックが行われる。その上で再度の応募が可能。最終締め切りは同年10月3日となる。

合わせてこのほど、プログラムのオンライン説明会が実施された。テーマの背景や詳細をはじめ、昨年度の実績や事例が紹介されたほか、担当者の意気込みが語られた。以下に当日の様子をレポートする。

高速道路のアセットを用いたユニークで新規性のある提案に期待

まず東日本高速道路株式会社 サービスエリア・新事業本部 新事業推進部 ドラぷらイノベーションラボ推進チーム 代表 市川 敦史氏から同社の概要が説明された。同社は2005年に日本道路公団が分割・民営化して誕生した歴史を持ち、主に関東から北海道の高速道路の建設・管理、SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)の運営を行っている。高速道路は陸上輸送を担うほか、地域の振興・雇用創出、医療アクセス、震災時の復興の道としての役割がある。

同社が管轄する高速道路の規模は営業延長3,943km、交通量274万台/日、年間収入7,144億円、SA・PA328箇所と非常に広大だ。また、現在は新規85㎞の高速道路を建設し、既存道路243㎞の4車線化を進めている。このほか、老朽化した構造物の大規模更新・修繕、地域と連携した個性的なサービスの提供、HIBIYA RIDE(駐輪場)やホテルの運営、再生エネルギー、カード、ツアー事業などが紹介された。


近年の目立った取り組みとして、先端技術を活用しアセットマネジメントの高度化を図る「スマートメンテナンスハイウェイ」(SMH)構想、自動運転社会の実現を加速させる「moVision」構想などが取り上げられた。市川氏によれば、高速道路はスタートアップ企業の方々にとって未開の地であり、こうした構想に対するアイデアも求めているという。

今回のアクセラレータープログラムについて市川氏は「高速道路のアセットは『未開』のものだと考えられます。ユニークで新規性のある提案ができるのではないでしょうか。共創パートナーの企業様、高速道路をお使いになるお客さま・地域の方々、そして当社の、トリプルウィンの関係を作っていきましょう」と呼び掛けた。

【テーマ・リソース説明】 「安心・安全・快適・便利のアップデート」が共通のコンセプト

次に、ドラぷらイノベーションラボ推進チーム リーダー 瀬川 祥子氏からテーマ・リソース説明が実施された。テーマの説明に先立ち、NEXCO東日本グループの根幹にある考え方を紹介。同グループは経営方針「お客さまを第一に考え、安全・安心・快適・便利を向上させます」を掲げ、「『つなぐ』価値を創造」をビジョンとしている。これらを踏まえ、テーマ全体のコンセプトとして「安全・安心・快適・便利のアップデート」が明示された。


同グループでは死亡事故・事故・渋滞のゼロを常に目指しており、これらを最優先することは今後も変わらない。一方で、災害の激甚化、自動運転社会の到来など事業環境は大きく変化しており、「未来に向かい、今までなかった安全・安心・快適・便利を共創し届けたい」と熱意を伝えた。引き続き、個々のテーマについて詳細が説明された。

●4つのテーマについて

1.ヒトとモノの“移動”をアップデートする

瀬川氏は「移動そのものを楽しくすることや、時間や場所の制約を外したシームレスな移動に関するアイデアや提案を歓迎します」と伝えた。人が移動したくなるような魅力の創出を行ってほしいという。また、移動の安心・安全の具体例として、落下物や逆走のいち早い発見・伝達が取り上げられた。災害時の情報提供の革新の可能性についても触れられた。


2.SA・PAの価値向上、新たな顧客体験の創出

既存の利用者はもちろんのこと、若者の車離れに言及しながら「Z世代に刺さる価値の創出」を目指していることが強調された。あわせて、ヘビーユーザーとも言える物流事業者などへのサービスの向上も視野に入れた。SA・PAの機能を向上させながら、「多様なユーザーへの『快適・便利』を届けたいと考えています」と述べた。


3.SA・PAをハブとした地域の魅力創出・発信

高速道路を使わずに利用できる施設(ウェルカムゲート)が107カ所あり、また、SA・PAから地域に出入りすることが可能となっている場所(スマートインター)もある。そうしたことを踏まえると、「地域の魅力を外に発信したり、地域のコミュニティの核や課題解決の拠点となったりすることもできるのではないでしょうか」と述べ、新たな価値の創出に期待を寄せた。


4.サスティナブルな事業運営の実現

人口減少社会に触れ、インフラ機能の安定供給が課題になっていることが述べられた。瀬川氏は、これは高速道路に限らず日本全体の課題とし「未来に向けて共に考え、解決策を導き出したい」と述べた。また、脱炭素、循環型社会についても、同社のアセットを活かして貢献する方法を模索していることも伝えられた。



なお、テーマによって採択の難易度は異ならないこと、テーマごとの採択数の枠がないことも明示された。

●アセット・リソース活用について

同社では3,943kmの高速道路や328箇所のSA・PA、約274万台/日のユーザー、各種データなど豊富なアセット・リソースを用意しているものの、注意点として安全を最優先する関係上、「すべてが自由に使えるわけではない」と説明された。特に物理的アセットは一定の制約があるため調整を必要とするので、活用を視野に入れている場合は事前相談を活用して欲しいということである。なお、商業施設や高速道路ののり面などは活用しやすいものの、高速道路の中を使用するのは「ハードルが高い」という傾向はあるという。

また、ビッグデータについては、オープンデータとして共同研究に活用しているものもある。具体的には路線データ、橋梁・トンネルデータ、トラフィックカウンターデータなどがある。ただし、いずれもデータ販売のビジネスは不可。高速道路利用者の交通安全等に資するためのみに利用できる。


●応募の流れ

応募前にビジネスアイデアを含め、さまざまな相談ができるのが大きな特徴だ。事前相談は1回30分以内となっている。また、9月7日までの早期応募に応じた場合は、1時間の事前面談を受けられる。面談を踏まえて、応募内容の修正・変更が可能だ。このほか、複数の窓口を設け、応募についての相談を随時、受け付けている。(※問い合わせ先などは、こちらをご覧ください)

●審査の流れ

書類・面談の2段階で審査を行う。面談審査はWebで行い10月24~28日を予定している。面談審査の結果は11月の上旬をめどに連絡される。また、「インキュベーション期間」を設置し、PoCに向けた事前の調整が実施される。


●第1期の実績

3テーマで募集し、採択5社、連携検討3社という結果になった。採択5社については実証実験等を進め、次の段階に入ることを見据えている。連携検討3社は実証実験等に向けて準備が進められている。


NEXCO東日本×スタートアップによる2つの共創プロジェクトを紹介

次に、昨年度の第1期プログラムで採択された2社(FaroStar/デジタル・フロンティア)との共創プロジェクト事例を紹介していく。


【FaroStarとの共創】空を飛ぶドローンと陸上輸送の高速道路の共創を実現

ドラぷらイノベーションラボ推進チーム サブリーダー 長谷川 弘幸氏からFaroStar社との共創事例が紹介された。FaroStar社とはドローンの自動管制に関する検証を行った。南相馬鹿島SAの隣接地を舞台に衝突防止システムを搭載したドローンが飛行。その際、別のドローンを近づけ衝突を回避して飛行ルートに戻れるかを確認した。


高速道路を管理するNEXCO東日本がなぜ空を走るドローンを採択したのか?――長谷川氏は「SAやPA、IC(インターチェンジ)は異なる交通インフラとの接点という側面があり、宅配ドローンを扱う事業者とのラストワンマイルのサービスが期待されるからです」と回答した。

一方、安全が担保されない限りサービスを提供するのは困難だが、「FaroStar社の提案は親和性も信頼性もありました」と話した。実証実験は人の往来が少なくかつ広い敷地の確保が欠かせなかった。最適地とされた南相馬鹿島SAの隣接地はNEXCO東日本とは別の企業が管理・運営しており、また、ドローンを飛行させるに当たり自治体の許可を得る必要もあった。同社は独自のネットワークを活かして交渉を行い、実証実験の実現に結び付けた。

苦労した点として、長谷川氏は「非常に特殊なケース」と前置きした上で、実証実験を行う直前に最大震度6の地震が起こり、予定変更を余儀なくされたことを明かした。ところが、FaroStar社は建造物の損傷を確認できる技術も有していることから、高速道路の被害状況を把握する実証実験に切り替え、急遽実施した。

「お互いにフットワーク軽く動いたことで、別の成果が得られました。とても価値のあることだったと実感しています」と当時を振り返った。さらに長谷川氏は「トラブルは起きても、情熱の強さがあれば乗り越えられると確信しました。今年度もそんな熱い人たちと一緒に仕事がしたいです」と期待感を込めて語った。

【デジタル・フロンティアとの共創】ビジョンが合致。高速道路ならではのリソースを活かす

新事業推進部 ドラぷらイノベーションラボ推進チーム 石井 絢佳氏からデジタル・フロンティア社との共創事例が紹介された。デジタル・フロンティア社とはアバターによる有人遠隔接客サービスの検証を行った。デジタルサイネージ上に表示されたアバターを通じ、人と人がやり取りをする。常磐道の守谷SA下り線で2週間にわたり実施され、メディアから取材も行われた。


NEXCO東日本がアバターに着目したのは、デジタル・フロンティア社の高い技術はもちろんのこと、場所を選ばずに働ける体制を作り上げることで同社の「地方の雇用創出に貢献するというビジョンが当社の思いと合致からです」と石井氏は語る。

日常から大勢の人の行き来がある守谷SAで実証実験を実施。また、アバターの操作に当たってはNEXCO東日本の接客のプロ、エリアコンシェルジュが対応しており、同社のリソースや強みが存分に活かされた。

一方で、実証実験が必ずしもスムーズに進んだのではなかったという。両社にとって初めての試みだったこともあり、システム障害など予期せぬトラブルが起きたことを明かした。安定稼働させるために、デジタル・フロンティア社のエンジニアたちが何度も現地に足を運び、時に深夜に及ぶまでの調整があったと話す。

その甲斐あって利用者からのクレームはゼロで高い評価を獲得するに至った。石井氏は「同じ目標に向かい進んでいくのは、本当にワクワクする体験でした。今年度も多くの人たちに出会い、未来のために夢のある共創を行いたいと思います」と熱意をのぞかせた。 

――説明会の締めくくりとして、瀬川氏は「取り組みはまだ2年目で始まったばかりです。忌憚のない意見をお寄せください。楽しさも苦しみも共に味わいながら、一緒に新しい価値を創造していければと思います」と述べ、市川氏は「高速道路のアセットを使うのは新しい試みです。チャンスも可能性も多くあるはずです。チーム一同、多様な提案をお待ちしています」とエールを送った。

編集後記

NEXCO東日本の共創にかける思いが伝わる説明会となった。本アクセラレータープログラムの大きな特徴は、やはり高速道路という未開の分野のアセットを使えることだろう。単に物珍しいばかりでなく、物理的に広大なフィールドがあり、多くの人の利用もある。うまく活用することで、これまでにない価値の創造ができるのではないか。サポートが手厚い点も見逃せない。応募前の相談も受け付けているし、早期応募の制度を利用すれば、提案のブラッシュアップができる。採択の可能性を高められるだろう。その意味でも、少しでも興味を持ったら早めの応募をお勧めしたい。

『E-NEXCO OPEN INNOVATION PROGRAM 2022』の早期応募締切は9/7、最終応募締切は10/3となります。


※プログラム説明会のアーカイブ動画はこちら 

(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士)

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