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山口県のイノベーション戦略が掲げる共通認識「4つの強み」「重点9分野」「10のプロジェクト」とは

山口県のイノベーション戦略が掲げる共通認識「4つの強み」「重点9分野」「10のプロジェクト」とは

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山口県は本州と九州をつなぐ要所となっていますが、産業についてどのような印象があるでしょうか。ファーストリテイリングの本社所在地になっていることを思い浮かべる人も多いでしょうが、それ以外だと全国的に有名な企業は多くはない地域でもあります。

主要都市のような華やかさはないものの、山口県には「ものづくり」という明確な特徴があります。“強い”中小企業が多い山口県では共創によるイノベーションも活発に実施されています。地方のオープンイノベーション事情に迫る連載CLOSEUP OI、今回はものづくりを盛り上げる山口県の産業戦略を紐解いていきます。

山口県の「4つの強み」「重点9分野」「10のプロジェクト」

山口県産業戦略本部が2018年10月に策定し推進している『やまぐち産業イノベーション戦略』には、山口県がイノベーションに踏み切る背景と方針がまとめられています。2021年2月の改訂版では、コロナ禍によって発生する制限をDXで解決する文脈などが追加されており、歩みを止めずにイノベーションにチャレンジしていることがわかります。

『やまぐち産業イノベーション戦略』を端的に表現するなら「4つの強み」「重点9分野」「10のプロジェクト」と言えるでしょう。県の強みをしっかりと言語化し、ブーストする分野を明確にして、具体的なアクションをプロジェクトに落とし込んでいます。


出典:やまぐち産業イノベーション戦略

4つの強み

1.成長分野の技術・製品開発基盤となる大手化学企業等基礎素材型産業の集積

2.自動車産業を中心とした国内における一大生産集積地の形成

3.高度なものづくり技術を有し、「バリューチェーンの要」となる中堅・中小企業の立地

4.水素利活用の取組やJAXAとの連携、県内大学の研究開発拠点機能の強化等のシーズ

9つの重点成長分野

1.基礎素材型産業

2.輸送用機械関連産業

3.医療関連産業

4.環境・エネルギー関連産業

5.バイオ関連産業

6.水素エネルギー関連産業

7.航空機・宇宙産業

8.ヘルスケア関連産業

9.未来技術関連分野

10の産業戦略プロジェクト

1.瀬戸内産業競争力・生産性強化プロジェクト

2.自動車新時代に対応したイノベーション創出プロジェクト

3.大規模産業用地活用促進プロジェクト

4.地域中核企業創出・成長支援プロジェクト

5.地域中核企業等立地促進プロジェクト

6.高度産業人材確保・活用支援プロジェクト

7.産業インフラ輸出促進プロジェクト

8.地域産業IoT等導入促進プロジェクト

9.スタートアップ企業立地促進・育成プロジェクト

10.新山口駅北地区拠点施設整備支援プロジェクト

自動車産業と人材確保・活用はオープンイノベーションでアプローチ

前述したように、山口県の産業戦略は10のプロジェクトに集約されていることがわかります。10のプロジェクトのうち、2つ目の「自動車新時代に対応したイノベーション創出プロジェクト」と6つ目の「高度産業人材確保・活用支援プロジェクト」は、オープンイノベーションをエンジンとして推進していく方針となっています。


出典:山口県のオープン・イノベーション推進に向けて

オープンイノベーションを加速するために、①やまぐちR&Dラボ、②自動車イノベーション推進会議、③やまぐち高度技術者・研究者OB等人材バンクの三つの組織が連携します。それぞれ、どのような役割を担う組織なのでしょうか。

【やまぐちR&Dラボ】研究者・技術者の交流の場としてオープンイノベーションの起点に

やまぐちR&Dラボの事業趣旨は「県内企業を中心とした研究者・技術者の交流の場(プラットフォーム)を設置することで、企業・研究者・技術者のネットワークを形成し、オープンイノベーションの視点に立った企業連携による県経済の持続的成長を促す。」とされています。

具体的にはワークショップやセミナーを開催することで研究者・技術者と企業とのマッチングを発生させることがミッションとなっています。前述した「重点成長分野」に指定されている9分野でのオープンイノベーションに寄与することが期待される組織です。

【自動車イノベーション推進会議】自動車分野のオープンイノベーションを推進する産学公金連携組織

自動車イノベーション推進会議は2019年2月に設立された組織で、読んで字のごとく自動車分野のオープンイノベーションを推進する産学公金連携組織です。協力機関・企業は経済産業省、マツダ、トヨタカローラ山口、デンソーなど、幅広く横断的で、会員になるとワークショップやセミナーなどの交流ができるほか、技術展示会等の参加機会の確保と支援や専門部会における研究サポートを受けることが出来ます。

やまぐちR&Dラボが9分野いずれにも対応しているのに対して、自動車イノベーション推進会議は自動車分野に特化した組織だと言えるでしょう。ものづくりが強みである山口県らしい取り組みです。

【OB人材バンク】R&Dラボでのオープンイノベーション加速のための高度技術者・研究者人材バンク

やまぐち高度技術者・研究者OB等人材バンクはやまぐちR&Dラボと連携して9分野でのオープンイノベーションを加速させる組織です。OB人材バンクは多くの自治体にありますが、高い専門性をもった人材を特定の目的に特化させて人材紹介するというのが特徴です。

人材バンクでは人材の確保と紹介だけでなく、研究機関や企業の課題をヒアリングした上で適した人材を紹介してマッチングするところまでを一気通貫で担います。ものづくりに強い中小企業が多い山口県だからこそ発揮できるバリューだと言えるでしょう。

【編集後記】迷っても原則に立ち返ることで道を外れない、美しい戦略

数多く新規事業やオープンイノベーションの事例を見てきましたが、優れた戦略には共通認識としての“原則”があります。判断に迷った時に、原則に立ち返ることでロードマップから逸脱せずにミッションを遂行できるのです。

山口県の場合はその原則が「4つの強み」「重点9分野」「10のプロジェクト」です。今推進している事業の道筋が正しいのかどうか、迷ったらこれらの原則を反芻することで事業の方向性を調整・修正することが出来ます。自治体の戦略のひとつとしてだけでなく、組織の戦略としてもお手本にできる事例と言えるでしょう。

TOMORUBA編集部


シリーズ

CLOSEUP OI ー地方のオープンイノベーション動向ー

全国の自治体が官民で取り組んでいるオープンイノベーションに迫るシリーズ企画。