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【DXの現場】重工業の数十年変わらなかったレガシーに変革を。東京ファクトリーが挑む製造現場の「見える化」

【DXの現場】重工業の数十年変わらなかったレガシーに変革を。東京ファクトリーが挑む製造現場の「見える化」

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近年、「DX(Digital Transformation)」というワードを耳にすることが増えました。さらに、2020年には新型コロナウイルスの影響や新内閣の発足といった要素も相まって、DX企業のプレゼンスは強まり、期待も高まっています。しかし、あまりにも多くの領域・分野でDXが叫ばれているため、「DXとは何か?」と問われるとその解像度はぼやけてしまうのもまた事実です。

DXの市場規模を見ると、その成長速度を客観的に捉えることができます。富士キメラ総研が公開したDXの国内動向の調査によると、「デジタルトランスフォーメーションの国内市場(投資金額)」は2030年度には2兆3,687億円となり、これは2017年度比で4.2倍の規模にのぼります。いかにDXが巨大かつ急成長中のマーケットであるかがみて取れます。

TOMORUBAの企画『DXの現場』ではDXを推進する企業への取材をもとに、具体的にどのような価値を創出するためにDXという手段を選び、事業を展開しているのかを解説します。

今回は、2月から製造業向けのSaaS製品「Proceedクラウド」の販売を開始した東京ファクトリーのDXの現場に迫ります。紙媒体の図面や、ハンコ文化といったレガシーが色濃く残る製造の現場で、どのようにDXの導入を推進しているのでしょうか。創業者でCEOの池実氏に取材の協力をしていただき、そのソリューションを紐解いていきます。

“日本品質”は強い。しかし国際的な競争力が課題

東京ファクトリーのSaaS製品「Proceedクラウド」の取り組みを紹介する前に、ターゲットとなる重工業分野における課題がどのようなものか振り返ってみます。

池氏はキャリアをスタートさせた川崎重工業で、中国との合弁会社のプロジェクトに携わっていました。その中で、外から見た“日本品質”の評価の高さを実感する一方、国内リソースだけでプロジェクトを回そうとするとコストが高くなってしまうため競争力が弱まると感じていました。

日本の重工業には蓄積してきた経験による“ものづくり力”があるため、その強みを生かし国際的な競争力を得るためには国内で生産を行うことが重要です。池氏は、そのために「コスト競争力」「品質維持・向上」「実証実験の場として国内工場を活用」の3点がポイントになると考えました。

ではなぜ、国内の製造業がこれらの3点をクリアできていないのでしょうか。製造の現場ではA1で印刷した紙の図面を用いることが常識で、ハンコを捺印した書類が掲示板に貼られているのが一般的で、数十年前からオペレーションが変化していないレガシーがあります。

池氏は「セル生産方式であるがゆえに最新のテクノロジーが入り込む余地が少ない」ことが理由なのでは、と仮説を立てました。セル方式はモノが固定されて、人間が動きながら作業をします。対して、ライン方式は人が動かずに固定され、製品が動いて作業をします。


▲出典:川崎重工とBCGで感じた重工業の課題 -note-


ライン方式は作業が単純かされるため、AIやIoTといったテクノロジーが入り込む余地があるのです。にもかかわらず、業務やプロセスのデジタル化に取り組めていないプレイヤーが多い。東京ファクトリーはこの課題に対するソリューションとして「Proceedクラウド」を開発、販売するに至ったのです。

「Proceedクラウド」で製造現場にモバイルシフトを起こす

製造業のDXを推進するために今年2月から販売開始された「Proceedクラウド」は、これまで有効活用されてこなかった工程写真をベースに製造情報DBを構築することで、業務効率化だけでなくサプライチェーンの見える化、技能継承の効率化を実現するソリューションです。

欧米の重工業シーンに目を向けると、すでにProcoreやCioplenuなどのスタートアップがDXソリューションの提供を始めています。これらはいずれもモバイル端末で利用可能なサービスとなっているのが特徴です。

Proceedクラウドも現場にモバイルシフトを起こすことを狙いに、プロダクトを開発しています。というのも、これまで、業務に関わるデータは紙媒体やPCのローカルに保存されていることがほとんどで、有効活用されていない実状がありました。

現場で働く50代、60代の技能者は必ずしもパソコン操作が得意ではありませんが、スマートフォンの操作には慣れています。そのため、スマートデバイスを活用することでリアルタイムの製造情報の共有や、フリックによるデータ入力、技能継承のためのデータ蓄積が容易になります。


▲尾道市の工場(画像は池氏によって撮影)


Proceedクラウドはこうしたユーザビリティの高さを勝ち筋として見据えています。また、画像の整理方法や工程情報の連携方法についての特許も出願中です。さらに、こうした強みをブーストし事業展開を加速させるためにANRIを引受先とする第三者割当増資により、約1億円の資金調達を実施しています。

参考記事:製造業のDXを支援する東京ファクトリー、「Proceedクラウド」の一般提供を開始し1億円をシード調達

日本の製造業が世界No.1であるために

池氏はこれまで日本の製造業を内側そして外側から見てきた経験から、重工業の現場をDXすることで「日本の製造業が今後も世界No.1であることに貢献したい」という思いから、2020年4月に東京ファクトリーを創業しました。

満を持してリリースしたProceedクラウドは直近のマイルストーンでは、動画を保存する機能や図面を保存する機能の追加開発を予定しており、将来的にはタブレット端末の対応、基幹システムやPLMとの連携、製造業向け画像解析ライブラリの提供を視野に開発を進めています。

また事業展開の戦略として、海外ベンダーと取引のある企業を経由して東アジアの製造ベンダーにもプロダクトを提供していくことで海外展開も計画しているとのことです。

【編集後記】レガシー変革にそびえる意思決定の壁

東京ファクトリーCEOの池氏は新卒で入社した川崎重工業から、コンサルティング会社のボストンコンサルティンググループへ転職した理由のひとつに「経営の意思決定の重要性」を挙げています。

なぜなら、企業のレガシーを変革するには経営層の意思決定が不可欠だと感じたからだそうです。そのため、企業の意思決定を支援するコンサルティング会社での経験を経て東京ファクトリーを起業するに至りました。

そういう意味では、業界を問わず話題となっているDXの波は好機と言えます。日本の製造業がDXに成功して国際的な競争力を高めれば、そのインパクトは計り知れないものになるでしょう。

TOMORUBA編集部 久野太一)


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